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IVSスタッフから世界で活躍する起業家へ(全3記事)

「テクノロジーよりも、使いたいサービスかどうか」 日本人初のY Combinator出身者が語る、アメリカで成功できた理由

DropboxやAirbnbといった、世界で注目される企業を育てるスタートアップ養成所・Y Combinatorの日本人初の出身者となったAnyPerk・福山太郎氏。独立系ベンチャーファンド・ANRIのGeneral Partner 佐俣アンリ氏をインタビュアーとして迎え、世界で注目される起業家の思考法を説いた。(Infinity Ventures Summit 2014 Springより)

野球の野茂のように、海外起業の先駆者となる

佐俣:なるほど。会社がある程度の規模にはなってきていて、今はどこを目指しているんですか?

福山:いい質問ですね。みんな何て答えるんですか? どこを目指しているのか。1兆円企業をつくりますみたいな?

佐俣:とか、ユーザー何万人とかもあるし、結構日本のスタートアップは今、やっぱりもう一回アメリカに行こうというので、メルカリとかグノシーみたいに調達して「アメリカを目指します、北米を目指します」と言う人もいるけれども、今、何を考えているのかなという。

福山:今すごい意識しているのは、最初に始めたときは、やっぱりどうやったら売上を少しでも立てられるかとか、何%成長とか考えているんですけれども、ある程度マーケットがすごかったり、お客様にも感謝されたりとかを感じているので、もうここまで来たら圧倒的に世界一は取りたいなというふうに思っていて。

やっぱり野球とかも野茂さんが行ったりとか、それで成功されて、じゃ俺も行けるんじゃないかとダルビッシュが行ったり、マー君が行ってるじゃないですか。Googleの創業者がもし日本人だったら、多分もっと日本人の人は行っていたと思うんですよね。

なので、個人的には圧倒的に世界一になって、日本人でもいけるんだぞということを証明さえできれば、最初に感じていたアメリカに対するコンプレックスとか、どうせ日本人はアメリカで成功しないよと外野でガヤガヤ言っているおっさんたちとか、先輩方とか、黙らせることができるので。圧倒的に今は結果だけですね。

最初は、多分IVSに来ても、「おっ、頑張っている若者」みたいな感じで皆さんにチヤホヤしていただいたんですけれども、ここからは結果勝負なので、やっぱり日本人の起業家相手には向こう30年手を出せないなみたいに思わせるぐらいの気持ちで、全力で世界一を取ろうとしていますね。

"普通の人間"が成功する意義

佐俣:僕がやっぱり福山さんがすばらしいのは、めちゃめちゃできた人じゃない、というのがすごいなと思っています。やっぱり孫さんとかのストーリー見ても、もうギャグ漫画にしかならないじゃない? だから何にも参考にならないというか。ただ、とりあえず向こうの高校へ行って、飛び級して大学に行って、教授を口説いて、何かプロダクトをつくって1億円で売りましたみたいな、意味がわからないみたいな。

僕なんかもう大学生になったぐらいには、そこまで行っちゃっているじゃないですか。何も参考にならない。それこそ、今の福山さんだけ見ているとわからないと思うんですけれども、結構紆余曲折を経て、本当にしんどいところからちゃんと浮上してきていて、人間頑張ればできるんだというので、このストーリーをつくってくれているなと思っていて、後は大成功すれば……。

福山:確かに。いいことをおっしゃいますね。

佐俣:でも、僕は福山さんが起業される前から見させてもらっているので、やっぱりチャレンジし続けるというのは本当にすごいなと。普通にガンガンチャレンジするみたいのをやっている日本人が少ないだけなんだろうなというのは……。

福山:さすが、格好いい(笑)。

佐俣:投資させてもらえばよかったな、本当に。

福山:ちょこちょこ打診はしたんですけれどもね。Facebookで既読になっても返信が返ってこなかったので(笑)。

佐俣:えー? ちょっとそれ、何か悪い人みたいですね。

日本から持ってきたアイディアだったから成功した

スタッフ:福利厚生のメニューの中で、イケているものというのは何ですか。

福山:今、携帯電話、事務、旅行、エンターテインメントが大きいですね。

スタッフ:やっぱり割引の面が違うという?

福山:そうですね。うちだと、例えばアメリカで4大キャリア携帯電話あるんですけれども、そのうちのAT&T、T-Mobile、Sprintは押さえていて、日本でいうと、使っている携帯電話の使用料が毎月15%オフになる、というのは結構すごいですよね。

佐俣:すごい。それはうれしい。

スタッフ:アメリカにいっぱい企業がある中で、そういうサービスが今までなかったというのは、そもそも気づかれていないニーズだったのか、それとも、アメリカにおいての福利厚生という、そもそものそういう……。

福山:福利厚生は多分日本よりもっとすごい意識は高くて、例えばGoogleの無料の社員食堂というのは多分典型的な例だと思うんですけれども、あっちのほうが人材競争が激しいので、福利厚生のマーケットは多分アメリカのほうが僕は大きいと個人的に思っています。

最初の質問で何で今までなかったのかというと、今までも結構あって、ベンチャーとかも何社かはやっていたんですけれども、みんな失敗して倒産されるか買収されるかで、結構いなくなっているんですよね。やっぱりあんまり成功しなかったです。

僕は、ラッキーだったのは、やっぱり日本で成功している企業様を見て、彼らはどうやって成長したのかというのをすぐ調べて、そのエッセンスを持ってやったので。あっちの投資家に最近言われるのは、みんなシリコンバレーからアイデアをパクっていくけれども、日本から持ってきたのは君が初めてだよみたいのを結構言われますね。

テクノロジーよりも、使ってもらえるか

佐俣:なるほどね、同じようなことができると思います? 日本で発達しているモデルを向こうに持ってって。

福山:全然いけるんじゃないですか。

佐俣:AnyPerkではテクノロジー系のサービスという感じじゃないですよね?

福山:今のところはそうですね。これから変えていこう。でも、僕が思うのは、特にアメリカもそうなんですけれども、「俺クールなテクノロジー持っているぜ」みたいのとか言うんですけれども、誰も使ってないじゃんみたいなものが結構多くて。

僕的にはテクノロジーはツールの1つでしかないというか、やっぱり最終的にはお客さんが喜んでお金を払って使いたいと思ってくれるかが1番大事だと思っているので、テクノロジーをどうしようとかは考えたことは、ほぼないですね。

できるだけ、最初とかはもう、Eメールとかみんなでニュースレターとか送るんですけれども、やり方がわからなくて全員Bccにいれて、僕が直接送るとか。そんなのやっていましたね。

基本的にアナログなので、テクノロジーかどうかはあんまり意識しないようにしていましたね。特にアメリカは移民にそういうイメージがあるかもしれないんですけれども、全然それはそんなことないなって気がします。

「何も知らない」ことが武器になった

佐俣:アメリカで使われるサービスをつくるって本当すごいなと思って。

福山:個人的に良かったなと思うのは経営もサービス作りもそうなんですけど、一番最初に僕が気づいたのは、僕は何も知らないってことに気づけたんですよね。特にアメリカなので、携帯電話というのは、どこかもわからなかったですよ。AT&T、Sprint、T-Mobile みたいなのを。

なので、僕の経営のモットーは、僕は何も知らないというのをすごい意識するようにしていて、何も知らないというのをちゃんと心の中で認識すると、お客さんのヒヤリングとかに行っても、多分全てを吸収できるし、経営する時にも、固定観念で「おまえ、こうしろ」とか言わずに、「おまえのほうが多分詳しいから任せる」と言ってやれます。

アメリカに行って僕は特に、国も育った環境も違うから何も知らないというのをフラットに思うことを結構意識して経営していますね。

佐俣:今、すごいいいこと言ったね。

社員のモチベーションを高める秘訣

スタッフ:次の質問。アメリカで経営していて発見したこと。こういうマネージメントが大事なんだなとか、こういう社員との接し方が。

佐俣:AnyPerkのインベスターの人とこの前ディスカッションすることがあったんだけれども、AnyPerk何がすごいかというと社員のモチベーションがすごい高いと。あれはどうやっているんだと。アメリカの会社のメンバーもマネージメントで悩んでいるのにAnyPerkのメンバーはめちゃめちゃみんなモチベーションが高いと。どういうふうになってんだと。

福山:ここだけの話なんですけれども、実はちょっとアンリさんの影響が強くてですね。カルチャーというのは3つの種類に分別されると。1つが事業モデルがカルチャーを作るので、多分銀行さんとかがそうだと思うんですけれども、それが1つ。

2つ目が、経営者がカルチャーをつくる。これは多分スティーブ・ジョブズとかイーロン・マスクとかですけれども。3つ目は従業員がカルチャーを作るというのを聞いて、うちというのは、ビジネスはそんなにユニークとかそういうわけじゃないし、最初はできないと。

それで、ファウンダーの僕は何も知らないというのが僕のモットーだったので、僕じゃないなと思って、じゃあ、従業員がつくるカルチャーというのをやったら、みんなモチベーションが上がるんじゃないかと思って。例えば採用するときにも必ず、うちは今、無料でランチをやっているんですけれども、そこに候補者の方を呼んで、みんなが1回必ず話すようにして、みんなが採用チームに連絡して。

佐俣:社員のメンバー軸で仲間を選んでいるという。

福山:そうですね。なので会社の制度とかも僕がつくった制度というのはほぼ余りなくて、みんなが作って、じゃ、おまえに任せるからやってよ、みたいなのを言うと、自分たちで作るので、この会社に勤めているというよりかは、自分たちでこの会社をつくっているというか、サークル感みたいなものを結構意識して出すようにはしていて。

佐俣:いい、格好いいな。

福山:アンリさんのおかげで。

no one is perfect

佐俣:それはすごい、いい話じゃないですか。これ、僕の言葉じゃないんです(笑)。nanapiのけんすう(古川健介)さん。

福山:あ、けんすうさんなんだ。

佐俣:惜しい。これは、僕だったら、今、多分すごいいい話だったんですけれども、これはけんすうさんの話ですね。

福山:さっきの質問に答えると、もう1つがNo one is perfect.という僕の中で言葉があって。やっぱり最初は自分で全部やっていたので、どんどん新しい人が来て採用を任せるようになると、俺がやったほうが早いのにとか、おまえ、こうじゃないよとイライラして、どんどんマイクロマネージメントしちゃって、最初それで失敗しかけたんです。

でも、途中で気づいたのは、やっぱりアメリカ人でめちゃめちゃ給料が高いんですけれども、給料が高いとはいえ、みんな人間だから、あんまり完璧な人なんかいないから、いいところをちゃんと見て悪いところは頑張って目をつぶるみたいなことに気づいてから、結構伸び伸びとみんなやるようになりましたね。

キャッシュもKPIも全部社員に共有している

佐俣:アメリカというのは、結構そういう時にメンターがたくさんいるようなイメージなんだけれども、そういうメンターとかにお願いしたのか、自分で見つけてったのか。

福山:最初はやっぱりY Combinatorにすごい助けてもらいましたね。ただY Combinatorというのは、最初の失敗しない方法を教えてくれるんですけれども、社員が10人以上になった後のことって彼らの専門分野ではないので。

そのあたりは投資家の方とかアドバイザーの方というのはすごい重要になっていくかなと思っていて、うちはエンジェルの投資家の方で一回成功された方だとかがいるので、その人たちに結構聞くようにしていますね。

あと僕が抱えている問題も社員に全部言うようにしていますね。資金調達をどうしようみたいのとか、採用をどうしようみたいのは、うちのKPIは全部、社員は知っていますし、売上も、あと、会社に今幾ら残っているのかも、銀行に幾ら残っているのかとか。

佐俣:それすごいね。結構日本人ってグローバルへ行くと何か肩肘張っちゃいそうなイメージがあって、ここはもう俺流で頑張ろうとか。

福山:いやもう、俺流ないですからね。全部、僕がすごくなくても、すごい人たちさえちゃんと採用できて、彼らに僕と同じ情報与えると彼らが僕と一緒に経営してくれるので。

「福山でもできたんだから」と思ってほしい

スタッフ:平均で人件費ってどういう水準になるんですか?

福山:人件費は高いです。サンフランシスコはもともと家賃が高いというか、ワンルームでも20万とかなんですよね。なので、最低でも年間700万ぐらい払わないと暮らしていけないので、今Facebookは、新卒で2000万ぐらい払うので。

スタッフ:高っ。

福山:はい、エンジニアの方はもっと高いですけれども、なので大変です。

佐俣:なるほど。時間的にあと5分ぐらいになってきたので、ちょっと締めのほうに入っていきたいんですけれども、福山さんIVSのスタッフとかをいろいろされてきて、そこから得た経験をもとに起業されて。とはいえまだまだ日本の僕から見ると、もうすごい、めちゃめちゃ活躍されているなと思うんですけれども。個人の夢とか今後の目標は何かありますか。

福山:そうですね、個人的にはさっきも言ったんですけれども、日本人でも世界で通用する起業家になれるんだっていことを証明したい。太郎でさえできたんだから俺でもできるんだろうって、みんなにいつか思ってもらえたらうれしいなと思っているので。

そのためにも僕がやること、目立つこととかそういうことじゃなくて、やっぱり地道に結果を出し続けて、最終的にIPOなのか買収なのか全然わからないですけれども、もっと多くのお客さんに喜んでいただいて、もっと会社も大きくしてみんなが幸せになって。やっぱり太郎ってすごい、ひいては日本人から、日本から来たやつがすごいなって、みんなが思ってくれたらいいなというのがある。

なので今は、あんまり大きな目標を立てるというより、コツコツと世界でも、太郎でもできるんだというのを思わせるのを意識してやっていくようにしています。

問題というのは一つひとつの小さな問題の重なりである

佐俣:起業家予備軍とか起業家に向けて、メッセージをいただきたいと思います。

福山:僕がやって結構感じたのは、やっぱり記事とかオンラインとか外から見ていると、みんなすごい人たちでとか、突然、いいの思いついてバッといくとか、失敗もなくてガッといったみたいな感じのイメージが強くて、すごい大きなドアをバンッて開けて行ったみたいな感じが強いと思うんです。

けれども、やっぱり経営やってみて思ったのは、そんな本で書いてあるようなことじゃなくて、毎日毎日小さな問題を解決して、開かないドアがあっても鍵を入れてやって、それが一つひとつが積み上がって。振り返ってみたら、あっ、結構ここまで来たなとか、初めてのY Combinatorは日本人だったなとか、アメリカで成功しているみたいな感じで言われるようになったなというのをすごい感じていて。

会社を始めたの2011年で、社員も実は最初の1年半ぐらいはずっと2人でやっていて、成功するとすごいみんな、かかり切って注目が集まると思うんですけれども、やっぱりそれまでの過程がすごい大変で、かつ、一つひとつの問題というのは、実は結構小さな問題が積み重なっているんですよね。

小さな問題ってそんなに、すごい頭のいい人しか解決できないとか天才じゃないとできないとか、そういういうわけじゃなくて、誰でもできるような積み重ねがすごい大きな問題になって、振り返るとここまで来たなってなる気がしていて。

何を言いたいかというと、起業する前は、天才じゃないとできないのかなという思いがもしかしたらあるかもしれないんですけど、実際やってみるとそうじゃないというか。

情熱を持って解決してけば、ちゃんと方向さえぶれさせなければ、いつか大きなことができるので。やっていることというのはすごい小さなことなので、全然特別なこととかそういうの意識せずに、本当に自分がやりたいのが何かってのを考えて、毎日毎日、一つひとつコツコツやってくと、いつか気づいたらここまで来ていた、みたいなことができると思う。

全然特別なことじゃないし、僕でもできて、名前も太郎というすごい平凡な名前なのに、ここまで来ているので。最悪、駐車場で寝れば、タダであんまりリスクもないので、もし今やりたいなと思っているんだったら、怖がらずにぜひやってみれば、必ず支えてくれる人が周りにいると思いますし、いけるんじゃないかなというふうに思います。

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