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ベンチャーはどう大企業と付き合うべきか?(全5記事)

大企業だけでイノベーションは起こせない ベンチャーとの共創関係を作る秘訣 

2015年12月8日、9日の2日間にわたって、「IVS 2015 Fall Kyoto」が開催されました。Session3のテーマ「ベンチャーはどう大企業と付き合うべきか?」には、プロノバ・岡島悦子氏、セガゲームス・里見治紀氏、IBM・北城恪太郎氏、Supership・古川健介氏の4名が登壇しました。最終パートでは、イノベーションを起こすために必要な大企業とベンチャーの共創関係について語り合いました。

「ベンチャーの人がうらやましかった」

岡島悦子氏(以下、岡島):この辺で、会場から質問をとらせていただきたいと思います。ぜひリアルなご質問などいただければ大変助かります。勝屋さん、どうぞ。

勝屋久氏: 里見さんと北城さんに質問したいことがあります。私、ベンチャーと関わる仕事をずっとやっていて、ベンチャーと関わるとすごく楽しいんですよ。楽しいだけじゃなくて自分と向き合うんですよ。自分とは何者かとか。すごく深いんですね。

例えば北城さんであれば教育分野ですとか、ベンチャーと関わっている。別にアーティストと関わっても同じかなと思ってたんですけども、例えば里見さんもいろんな芸能人と関わるとかいろいろあるじゃないですか。

楽しさだけじゃなくて深さもけっこうあって。人生も含めてなんですけども、ベンチャーと関わる楽しさというのをお二人の視点で聞きたいなと思ってるんですけども。

里見:どういうことを話したらいいのかなと思ってたんですけど。率直な自分の気持ちとしては、誤解のある言葉であると思うんですけども、うらやましいなと思ってるんですね。

ベンチャーの人は逆に我々をうらやましいと思ってる人もいるし、自分の立場がうらやましいと思ってると思うんですけど。資金のことで頭を悩ませてないですし、提携先や取引先も既存のところがいっぱいあるので。

僕自身、本当はベンチャーを自分で起業したいなと思ってたんですけども、家庭の事情でできなかったと(笑)。

(会場笑)

ただあきらめてもいないんですけどね。なので、3年前に社内ベンチャーというかたちでスマホのゲーム事業を切り出させてくれということで切り出して、自分でやったというのもあります。ただ、資本を持ってるわけではないので。

なのでベンチャーの人たちが活き活きしてどんどん伸びていく。先ほど言ったf4samuraiなんて本当に15人ぐらいしかいない会社から、今100人を超える会社に成長して、社長もみんな顔色が変わって自信に満ちあふれているのを見てると、本当にうらやましいなというのが僕の率直な気持ちですね。

勝屋:わかります!

(会場笑)

エキサイティングな人を応援したい

北城:やっぱりベンチャーで働いてる人ってエキサイティングですよね。今まで世の中にないものを自分たちがつくって、それで社会に役に立ってるとか事業が伸びてるというところがすごくおもしろい。

だからベンチャーは伸びてるときがすごくエキサイティング。それで、お金がなくなったときがものすごく悲惨。だから、いかにそのお金を確保しながら伸ばすかというのが大事で。

野球はスリーストライクでアウトだけど、ベンチャーは1回空振りしたら会社が倒産しちゃうのでものすごく大変。だけどエキサイティング。

僕はエキサイティングな人を応援するほうに回ってるんですね。古希を過ぎたから自分がベンチャーをやる気はないんだけども。でもベンチャーはすごくエキサイティングで、そういう人たちと一緒に仕事してると、一緒にエキサイティングを感じることができるのがいいと。

だからベンチャーはチャレンジだしエキサイティングだし、本当に夢があると思うんで多くの人挑戦してほしいし、挑戦するときにお金を借りないでほしいと。要するに、お金を借りると担保を要求されちゃって、失敗すると資産がなくなっちゃうので。ともかく資本金を集めて人のお金で挑戦してほしいと思ってますと。

勝屋:ありがとうございます。

IBM時代の勝屋久氏

岡島:古川さんも一言どうですか?

古川:勝屋さんみたいな、ちょっと頭の中あれな方がいられるIBMってすごかったんだなと……。

勝屋:いい会社ですよ。本当、IBMは愛のある会社。

古川:なかなかですよね。

岡島:ちなみに北城さんにちょっとうかがってもいいですか? 勝屋さんは今ちょっと傍流だったとおっしゃってたんですけど、99年くらいだったかと思いますが、いろんなところに出入りされて、いろんな人たちをかわいがってくることのできる勝屋さんををどうやって見出されたのですか?

北城:私、経済同友会の代表幹事をやってるときに、もうともかくベンチャーが日本社会を発展させると。だからもうベンチャーを応援したいという気持ちでいたところ、ベンチャーの窓口をやってる勝屋君というおもしろい社員がいて、ちょっとうちの会社の中でも異色だったので。

しかしこういう異色の人に自由に合わせる会社でおもしろいじゃないかと。彼がいろんなネットワークで、中にはベンチャーで我々のシステム使ってくれる会社が出れば、それもまた良しということで、ともかく自由にやってもらいました。

でも彼ぐらい自由にうちの会社の中で仕事してた人は他にはいないかもしれない。

(会場笑)

岡島:そして今やもうプロフェッショナルコネクターというお仕事をされている。

北城:それでちゃんと仕事できてるんだからすばらしい。

岡島:人をつなぐことを仕事にされているってすばらしい。

勝屋:ありがとうございます。涙出ます。

岡島:他、ご質問ぜひ。挙手をお願いします。

北城:私はIBM Corporationでアジアの責任者をして、グローバルでいろいろ仕事してたんだけども、グローバルでいろいろな会議をやったときに2つの不可能なことがあるというんですね。

1つは日本人に質問してもらうのは不可能だと。日本人は話は聞いてるけど質問といったら誰も手を挙げない。もう1つはインド人に質問をやめてもらうのが不可能だって。

(会場笑)

彼らはどんどん質問するので。今日は日本人だけの集まりみたいですね。

岡島:そうですね。ちょっと台湾の方とかもいらっしゃいますけど。

北城:あ、そう。

岡島:インド人の方はちょっとあんまりいらっしゃらないようですね。

どうでしょう、ご質問。それを聞いて、いや私、ちょっとインド人っぽいからみたいな方いらっしゃらないですか? お願いします。

社外取締役の心構え

古関:じゃあそれで。本当にその冗談、私もよく言うんですけど、ビッグローブの古関です。

北城さんが先ほど社外取締役をやれということをおっしゃって、本当にそうだなと。私も今、副会長をやってるので。そうか、社外取締役をやるんだと。それがちょっと心に思ったんですけど。

北城さんのように大企業で非常に成功された方が社外取締役をやって、ベンチャーから見てカルチャーが違うところで、どういう視点で社外取締役をやってらっしゃるのかをぜひお聞きしたいと思います。

北城:まず、元経営者の人は社会貢献の1つが社外取締役だと思うんですね。ボランティアで福祉をやるのもいいし教育をやるのもいいんだけども、経営者としての経験があって、ネットワークがある人はぜひベンチャーの社外取締役やってほしい。

とくに現役の人は忙しいので、現役を退任した人はもうぜひやってほしいと思うんですね。

そのときにベンチャーもそれぞれ違うし、その会社のニーズもそれぞれ違うから、その中で内部統制だとか、収益管理の仕組みだとか、大企業にいれば組織運営のノウハウがあるので、その中で足りないものがあれば補完していったらいいと思うんだけど。

一番大きいのは、だいたい販売先を探すのがすごく難しいと。ベンチャーがいくら大企業に売り込みに行っても、下の人を説得するのが精一杯でなかなか部長にも行かないと。

役員の意思決定のところまで行かないので、ともかく自分の知ってるネットワークで経営者に連絡をして担当役員を紹介してもらって販売先を探すと。

だから販売先支援が一番大きな役割だと思うんですね。その他に社外取締役をやってると、信用補完になるので、ベンチャーキャピタルと話をするときにも、「あの人が社外取締役やってるんなら」というので、ある程度内部統制も信用されるので、そういう意味では信用補完になりますね。

あるベンチャーは私が社外取締役になると新聞に出たら、翌日不動産会社が「ぜひうちのオフィス買いにきてください」と来たっていうぐらい(笑)。

要するに信用補完もできるので、ぜひ社外取締役をやられるといいと思うんだけど、逆にその会社がおかしな会社じゃないということを理解してないと、そこが不祥事を起こすと自分の信用にかかってしまうので。

そういう意味では、いろんな関係でそこの経営者がある程度知っている人じゃないと、単なる事業マッチングでちょっと聞いただけでやるというのは非常にリスクはあると思うんですね。幸い私の場合にはそういう問題起きてませんけども。

どうもご質問ありがとうございました。

大企業が開拓する投資先

岡島:もうお1人いらっしゃいましたよね。後ろお願いします。ちょっと立ち上がっていただいて。

一木:私の会社で、今年の4月からベンチャー連携のプロジェクトを立ち上げまして、投出資を始めたんですけれども、まだ1件しか投資ができてなくて。

会社自体もどこの領域に絞り込んで出資先を探すというところが決められてなくて、それがすごくジレンマなんです。

みなさんが大企業にいらして、どこの領域を絞り込んで探したほうがいいのか、そうではなくて幅広くご縁も含めて検討していくべきなのか、その辺をご教授いただきたいなと思います。

北城:大企業でもいろいろ考え方があると思うので、これというものはないと思うのですが、我々の会社で言えば、自分たちの事業領域の中で足らない技術の分野はどこかというのを先に決めていて、そこに適切なベンチャーがいればそこを買収します。

別に我々はベンチャーキャピタルとして投資した先が利益を出すことでキャピタルゲインを狙ってはいないので、ご縁があればというよりも、自分の会社の事業を拡大するために投資してるんですね。

IBMぐらいの規模の会社になると、ベンチャーキャピタルに投資してそこであんまりキャピタルゲインが出ると困るんですよ。要するに、四半期で業績をずっと上げ続けなきゃいけないのに、あるときバッとベンチャーの上場でキャピタルゲインが出ると、翌期は減益になってしまうので。

だから、我々はキャピタルゲインは狙ってないので、どうしても事業領域で会社を探しながら適切な会社を埋めると。

たぶん御社も自分の会社でないテクノロジーとかコンテンツを持ってるところを探してるんだと思うんです。何を探すかを先に考えてないと、漠然と探してもなかなかいい投資先は見えないんじゃないかなと思います。

事業投資をする場合は提携が大前提

里見:事業会社が事業投資をする場合は、もう提携ありきじゃないとしないというのが今、我々の前提になってますね。

事業で何かしらその会社にバリューを付けられる、我々がバリューを得られるというのであれば投資をしましょうと。そうじゃなければ、ただ仕事をすればいいだけなので、わざわざ投資する必要はないかなと。

もしくはそれに入らないような、先ほどちょろっと出てたのはジーボというMITの教授が作ったロボットの会社ですけども、そこにKDDIさんとか電通さんも投資してます。

逆に向こうが投資家を選ぶみたいなすごいベンチャーにも投資しました。同社とは明日事業提携の話があるわけじゃないんですが、将来的に何かあるかなというところで純投資でもないです。事業投資にもなるかもしれないというカテゴリーで、じゃあCVCからぽんと入れとこうとか。

ある程度我々も目的を持って、事業投資であればもう事業メリットがないものはしない。純投資であれば、本当にリターンしか求めない。その中間であれば、経営判断をしようみたいな感じで振り分けてますね。

岡島:質問者もう一人いらっしゃるようです。短めな質問でお願いします。

大企業で破壊的なイノベーションは起きにくい

ハセガワ:大企業が新しいことをやるときに、ベンチャーに投資したりとかするのと、社内で新規事業部をつくって自分のところで新しいことをやるという2つのやり方があると思うんですけれども。お三方はどっちのほうがうまくいくとかあったら教えてもらえますでしょうか?

北城:どっちが必ずうまくいくというような、そんな簡単なものはないと思うんだけど、外のベンチャーの人はこの会社がつぶれたらもう何もできない。うまくいったら莫大な収入があると思うから、もう必死にやるので、私は外部の必死にやる人のほうに賭けたいと。

社内で新規事業でやって、コーポレートベンチャーでうまくいった例なんてほとんどないと思いますね。だから私は外に賭けたいと思います。

里見:うちも結論から言うとまったく同じなんですけども。ただ社内でも新規事業というのはトライし続けてはいるんですよね。本当にどんなチャレンジがあるかわからないので。

ただやはりサイバーエージェントさんとかGMOさんを見てると、仕組みというところで我々はまだできてないなというのがすごい痛感していて。

リクルートさんなんかもまさにちょうど雑誌で、峰岸社長が特集されてましたけども、コンテストを開いたり、サイバーエージェントさんみたいにどんどん分社化して権限与えてとかいう仕組みがしっかりできている会社であれば、社内ベンチャーもやりようがあるのかなと思ってます。

古川:私はリクルートの新規事業にいたんですが。やっぱり大企業の中でやると、例えば2年で100億ぐらい売り上げて、30億ぐらい利益出さないとダメみたいな話になっちゃって。やっぱり目線が高過ぎてできることが少なくなっちゃうので、個人的にはベンチャーのほうがやりやすいんじゃないかなとは思います。

岡島:新しいことを大企業でやるときに、経営者から聞かれる質問は、「それってもうかるの?」「それってスケールするの?」「それっておもしろいよね」とは言ってくれないんですよね。

古川:そうですね。だから社会をどう変えるのかみたいな話よりも、まず利益がどうかという話がどうしても出ちゃうので、あれはやっぱりイノベーションの気持ちを削ってくので、ベンチャーのほうが夢を語ってても許されるというか、そっちメインでも大丈夫かな。

岡島:改善的なイノベーションは社内からも起きるのですが、やっぱり破戒的なイノベーションみたいなものはどうしても起きにくい。企業として何を目指すかに関係してくるのではないかと思います。

大企業とベンチャーの共創の秘訣

パネリストのみなさんに、大企業とベンチャーの共創、コラボレーションということで、ひと言ずつコメントをいただければと思います。

古川:ここ5年ぐらいで、大企業とベンチャーが組んで何かやるというのがだいぶやりやすくなって、とくに大企業側の人たちがベンチャーと何かやってくれることが増えてきたので、今度は成功事例を積み上げていって、知見がたまればいいなと思ってます。以上です。ありがとうございます。

里見:大企業がイノベーションを起こしてくのは、やっぱりベンチャーと組むほうが近道だなと思っているので、我々も含めてとんどんベンチャーと組みたいなと思ってます。なかなかマッチングが足らないところもあるのかなとは思っていて。

我々は、幸い投資してるVCさんからガンガン持ってきてくれるので、今その中から提携も実現してきてはいるので、ぜひいろんなルートを使って大企業にアプローチを引き続きやってもらって、先ほど言った社長と面識があって好かれておくのはぜんぜんいいことなので。

プラスちゃんと現場を説得して、現場から挙がっていくというところで大企業を口説いてもらえたらなと思います。ありがとうございました。

北城:私は日本社会発展するためにはイノベーションが必要だけれども、イノベーションは大企業だけではできない。とくに研究開発とか新しい事業分野を探すのはベンチャーだと。だからベンチャーも活躍をする、それをまた大企業もうまく利用するということが大事だと思います。

最近大企業も自分で得意じゃない事業はイグジットしたりして新規事業に投資するような会社がたくさん出てきてるので、そういう意味ではこれからベンチャーと大企業はうまいコラボレーションできると思います。

ベンチャーの人たちはともかく積極的に大企業使う気持ちと、それからできれば大企業の経営者OBをうまく利用していただきたい。それが発展をうまく支援してくれるんじゃないでしょうか。

あとはエンジェル税制、ぜひ覚えて使っていただきたい。

岡島:パネリストのみなさま、非常に本質的な濃いお話、ありがとうございました。

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