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世界に挑め!日本のモノ作り(全2記事)

日本企業はなぜ"ゼロイチ"が苦手なのか? グリー・荒木氏らが語る、海外で勝てるビジネスのやり方

日本で人気のゲームや商品がなぜ海外では通用しないことがあるのか? また逆に、国境を越えて支持を得るプロダクトの特徴とは? ゲームと教育分野でそれぞれ海外展開をはかるグリー・荒木英士氏と、スマートエデュケーション・池谷大吾氏が、自らのリアルな海外事業経験を語った。(IVS 2013 Fallより)

「ごっこ遊び」は世界共通の非言語コミュニケーション

湯川鶴章氏(以下、湯川):はい、では「世界に挑め! 日本のモノ作り」というテーマでインタビューを行いたいと思います。ゲストには、グリーの荒木さんと株式会社スマートエデュケーションの池谷さんにお越しいただきました。簡単に、池谷さんのほうから自己紹介していただけないでしょうか。

池谷大吾氏(以下、池谷):みなさんこんにちは。スマートエデュケーションの池谷です。弊社は子供向けの知育アプリと言われる、スマートフォンであるとか、タブレット上で動く子供向けのおもちゃを、日本だけでなく世界で展開している会社です。今日はよろしくお願いします。

湯川:はい、荒木さんお願いします。

荒木英士氏(以下、荒木):はい、こんにちは。グリーの荒木です。グリーは、ソーシャルネットワークとソーシャルゲームをやっている会社ですけども、今私のほうはですね、日本拠点のネイティブアプリのゲームの開発っていうところの事業責任者をさせていただいております。よろしくお願いします。

湯川:はい、テーマがですね、「世界に挑め!日本のモノ作り」なんですけども、海外向けに池谷さん、どういうことをされているんですか?

池谷:はい。もともと2年前に起業したんですけど、子供向けを選んだのはですね、そもそも非言語で世界中を取れるということと。教育っていうテーマは決めていたのですが、年齢が上に上がれば上がるほど教育っていうのはその国の特性が出てきて細分化していくので、子供のエリアであれば、十分に日本のモノ作りが世界に羽ばたくんじゃないかと思って、そこで思い切って世界に出てみようっていうことをやってですね。

ただ最初は私ももちろん日本人バリバリで、なかなか海外の感性がつかめずにいたんですけど、最近本当にいい人材が採用できて、本格的に、逆に日本を見ずに世界を見るという観点でモノ作りが始まったという感じですね。

湯川:日本で作っておられるんですか?

池谷:実を言うとモノで言うと海外のクリエーターが一部作っていたりするのですけども、ディレクション等はすべて日本で行っています。現状は。

湯川:海外の拠点は何拠点くらいあるんでしょうか。

池谷:いやいや、拠点はなく、日本だけですね。ただクリエーターさんが海外にいたりするので、そこは受発注でお願いしたりとかっていうのは、スカイプとかメールとかでやりとりして納品してもらったりとかでやってますね。

湯川:電子書籍の絵本なんですか?

池谷:いや、海外向けに関しては実を言うと、もともとは我々電子書籍というかインタラクティブな、去年のLaunch Padでも優勝した「スマほん」という絵本のエンジンを使って世界には出していたんですけども。結論から言うと、我々がターゲットとしている北米とかヨーロッパとかにはあまり受けなくて、やっぱりクリエイティブそもそもを変えていかなくてはいけないと。

なので今、海外を目指しているものは「Gocco」という新しいブランドを作っていまして、それはもう音楽でも絵本でもなくて、いわゆる「ごっこ遊び」。一番最初に出すのは「Gocco Zoo」という子供自身が飼育員になったつもりで、動物をいじり倒したり、絵を書いたりとかそういったものを作ってて。今後次に待っているのが「Gocco Firetruck」っていう、消防士さん。これも世界中に絶対消防士っていますし、わかるテーマなんでそういったノンバーバルで世界の子供に通じるような、そういったごっこ遊びを今後たくさん作って配信していくっていうのが海外展開になります。

ゲームの海外共通点と、違う点

湯川:荒木さんのほうはどうでしょう。どんな海外展開を?

荒木:はい、グリーはですね、というか私は3年前ぐらいに海外事業を始めようというふうに思って。実際3人ぐらいでサンフランシスコに行って、サンフランシスコの拠点を立ち上げました。その後2年半くらいかけて採用したりとかゲームを立ち上げたりとか、あと会社の買収3社くらい行いまして、現在400人くらいの会社になっています。しかもその中に日本人6、7人くらいしかいないので、ほぼ現地の会社になっていて。

事業としては完全にゲームをやっているんですけども、成果としてちょうど先週かな? 先週末とかですね、アメリカのAPPストアの売り上げランキングを見ていただくと、トップ10に3タイトルくらい入っているという状況まできて、まずまずの立ち上がりかなという状況ですね。

僕は日本で生まれ育って、日本のソーシャルゲームとかやっていた経験をもとに、アメリカでも同じビジネスを立ち上げてみようと思ってやってみて。まず同じ部分と違う部分みたいなものでいろいろぶつかりながら、身をもって体験して、なんとなくわかってきたかな、というのが最近になってますね。

湯川:その同じ部分と違う部分というのが非常におもしろいところだと思うんですけど、同じ部分というのは、どういう部分が世界に通用すると思われました?

荒木:まずゲームの、ソーシャルゲームという領域のなかで言うと、ユーザーさんがその遊ぶ、遊び方? いわゆるどういう、パズルならパズル、シューティングならシューティングいろいろありますけども、どういうアクション性が求められているのかとか、あるいはそのどういうことをやると継続して遊んでくれるのかとか、どういうふうにゲームデザインするとお金を払ってくれるのか、っていうのは大体同じなんですね。

ただその全然違うのは、やっぱ見た目の部分。キャラクターだったりとかモチーフだったりとかアートスタイルだったりとか、あるいはそのストーリ性だったりとかっていう部分は、かなり文化的な差異がありますので、そこは違うなと。いわゆる骨組みの部分は同じでいいけれども、それをラップする部分は変えなきゃいけないなというところが今のところ学びですね。

日本のママは保守的

湯川:池谷さんはいかがですか?

荒木:そうですね。実を言うと、私たちの子供向けというのは、大きく違うということがわかってですね。これは日本人のママと世界のママの考え方の違いでして、非常に日本の場合は保守的でして。よく言うんですけれど、例えば日本の子供向けの絵本の売れているランキングって、この20年くらいランキングって変わってなくて、1位は『いないいないばあ』で、2位はエリック・カールの『はらぺこあおむし』と。本当に変わらないんですね。

親がどうしても子供に与える物って過保護っていうのじゃないんですけど、安心安全、例えばアンパンマンとか。僕らが小さい頃も見たし、今でもエースなんですよね。非常に変わらないと。なので、スマートデバイス上でコンテンツを作る際もあまり飛び抜けて……。

例えば面白い例があって、我々今日本でトップシェアなんですけれども、世界でトップシェアのプレーヤーっているんですね。それは実を言うと日本以外ですべてトップの状況で、日本だけ勝ててないという状況なんですよ。これは日本のパパの私たちはわかっていて、一歩先か二歩先か行き過ぎ。いわゆるちょっとこう冒険が必要になるコンテンツで。日本のママにはちょっと手が出にくいだろうなと

逆に言うと海外では前提条件がまったくないので、いわゆるスマートデバイスに対する期待が、さっき言ったクリエイティブを伸ばしてやるとか、キャラクターとかもアンパンマンとか既存のキャラクターとか関係なしに、新しい学びとか新しい子供のパッションみたいなところを求める傾向があるな、と思っていて。

日本で培ったノウハウっていうのは、PDCAサイクルとかみたいのは生かされますけども、本当に知育向けっていうのはクリエイティブ命なので、クリエイティブといいものっていうのはまったく別物っていうのが我々の今の解でして。なのでブランドも分けて、さっき言った「Gocco」っていうシリーズを海外では出しますし、日本は「こどもモード」っていう名前で今までどおり音楽であるとか絵本をやっていこうという、2つに大きく分けたっていう、そういった背景がありますね。

日本はモノづくりが得意?

湯川:日本のモノ作りというテーマなんですけど、日本はモノ作りが得意なんでしょうか? こういった領域では。

池谷:(荒木氏に)いかがですか?(笑)

荒木:難しいですね。部分によって得意なところと得意じゃないところがあるんでしょうけど……。

池谷:ただその、モノ作りの範囲ってあると思っていて、やっぱり日本人のデータをもとに改善していく力って、僕はこれもモノ作りに含まれると思っているんですよ。

荒木:そうですね。改善系は特にですね。

池谷:改善系、特にですよね。なので、ただひらめきっていう意味でも、海外の人はひらめいて日本の人はひらめかない部分もあるし、ここはなんか万国共通な気もしていて。ただ日本の良さは、やっぱり良さを早めに謙虚に学んで、それをデータを中心にどんどん改善していくみたいな。そこで世界を抜いていったり、そういった意味を含めてモノ作りだと思っているので、そういった意味では全然十分勝っているし。

実際グリーさんとかもUSのAPPストアでもトップ10に3本入れるって、まさにその姿で。たぶんそこまで10年かかったかというとそんなことはなくて、最初苦戦はされてますけど、失敗を必ず成功につなげる何か足がかりをつかまれていて。結果的には3タイトルも日本のプレーヤーで入ったっていうのは、たぶんそういうことなのかなと思いますけど。

日本企業がゼロイチが苦手なのは、マネジメントのせい

荒木:たぶんあれですね、今話していて思いましたけど、おっしゃるとおりです。改善が得意なのは間違いなくて、ただその改善じゃない最初のゼロイチにする部分が苦手だと思ってます。で、苦手なのは個人が苦手なわけじゃないんですよ。なぜなら日本人でもひらめいてるし、アイデアもあるんですけど、ゼロイチを会社としてサポートして事業にしていくっていう、そのマネージメントなんですよ、たぶん。

池谷:はいはいはい(笑)。

荒木:僕すごいどっちのマネージメントも見てて、いろいろ思いましたけど、マネージメントの違いが一番大きいのかなと思いましたね。

湯川:でも荒木さんもマネージメントの一人なんで、ゼロイチを認めようと思えば認められるわけですよね?

荒木:はい。

湯川:それはアメリカで認めてこられた、ということですか?

荒木:そうですね、僕その、アメリカではマネージメントでしたけれども、現地の会社何社も買収していて、いわゆる現地のシリコンバレーのトップの人たちと机を並べて一緒に働いていたんで、そういう人たちの意思決定の仕方とか判断の仕方とか結構やっぱ違うなあって、僕も学んだところがあるんですね。

ゼロイチをどう経営としてサポートするかというのは、まず何人に承認取らないとものが進められないのかっていう意思決定構造の違いがありますと。日本だと、自分の上司、上司の上司、上司の上司……みたいな感じで行かないと基本的にものが進められない合議制になっているんで、やっぱり新しいものとかリスキーなものが通りづらい構造になっているんですけど。

典型的な、アメリカでももちろん官僚的な会社ありますけど、そうでないところに関しては基本的には一人が意思決定者なんで、その人がいいといえばいいということで、フィルターとして荒いものでも通りやすいのかな、とは思いましたね。

ゲームと教育は相性が良い

湯川:ゲームっていうのは日本のコンテンツで大きく成長した1つだと思うんですけど、むしろそれくらいじゃないかなと思うほど大きく成長した、成功した分野だと思うんですけど、池谷さんから見られて、教育の分野においてゲームのことで学んだこととか、活かされるようなところとかはないんでしょうか。

池谷:いや、ものすごくありますね。うちはスマートエデュケーションという名前がついているんですけど、キッズなんですよね。子供って基本的に遊びから学ぶというのがポイントでして私たちも前職でソーシャルゲーム作っている部隊が子供向け作ったりするので、非常にゲームの思考であるとかさっきの改善の内容であるとか、そういうところすごく参考になる部分があって。

結構考えているのは、大人向けで流行ったモチーフを子供向けにわかりやすくして提供すれば成功するんじゃないかとか、普通にありえると思っていて。ゲームって悪く言えばいくらでも悪く言えますけど、非常にこう、学習になったりもするわけですよね。

例えばクイズとかたくさんやればやればやるほど、どんどんどんどん知識が溜まっていくみたいなことがあるわけで。我々としてはそういった日本のゲームの成功っていうのはもちろんある上で、あとはもちろん日本はもともと教育水準高いですし、その二つを融合させていけば世界に勝てるんじゃないかっていうのが根っこの考え方であって、十分にいけるんじゃないかって思ってますね。

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