2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岡島悦子氏(以下、岡島):それでは里見さん、お願いします。
里見治紀氏(以下、里見):まずセガサミーグループがどういう投資事業を行ってきたかということをお話しします。
一番最初は、失敗事例からお話しさせていただきます。今CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)がまた流行ってきていますけれども、10年前に丸の内の立派なオフィスも構えて、社員も雇って、CVCをやっていたんですが、やっぱりうまくいかなかったんですね。僕が分析するに、理由は2つあったなと思っています。
1つは、単純に投資されるベンチャー側が期待するものを提供できなかったこと。なにかというと、事業提携ですね。コーポレートベンチャーなので、担当者はその投資しか見ていないんですね。
でも受ける側というのは、VCじゃなくてCVCを選んでいるので、我々のグループ会社との事業提携なり、あるいは顧客になってもらうということを期待しているので。別にお金だけだったらVCでいいわけですね。
そこが切り離されたCVCという部隊が、ちょっと社内の調整力がなかったということもあって、しっかりとした事業提携を組めなかったというのが1つ。
もう1つは、うちの社内的なディシジョン・メーキングの問題です。例えばゲーム会社だったらセガが投資すればいいじゃないかとか、グループ会社のなかにある事業領域だったら、事業会社が直接やりなさいとか。
まったくうちのグループに事業シナジーがなさそうなところに投資してどうするんだという意見が出たりして、そうするとその間しか投資ができなくて、ぜんぜん投資先がなかったというところも失敗の要因かなと思っています。
1回その会社を閉じたんですけど、あらためてどうしていくかというなかで、ここ5年くらいでやりはじめたのは、まず既存のVCさんのファンドに投資していこうというのを始めました。
そこからベンチャー・スタートアップの情報をどんどん吸い上げて、おもしろい会社とは提携して行こうというのをまず始めたんですね。
うまくいった事例ではアメリカのDCMさんとか、今回も来ているインキュベート・ファンドさんには、彼らの投資先を紹介してもらって、うちが買収したり、もしくはうちが出資して価値をあげたりというものができてきたので、CVCよりもVCに投資しようということを始めました。
岡島:ちょっとおうかがいしていいですか? すごくおもしろいなと思っていて、CVCは社内の立て付けとしては独立してやっていらっしゃるわけですよね。
それで、たぶんVC投資も担当する方がいらして、インキュベートファンドさんに出す、DCMを担当する方もいらして、その方たちがまた社内をつながないといけないと。同じ構造ではあるじゃないですか。これはなにが(違う?)。
里見:投資の報告は企画畑の人にするんですけども、投資した会社やその事業に関しては、自分や事業責任者に直接レポートしてもらうことに変えたんですね。それによってけっこういろんな事業がドライブできるようになったなと。
岡島:CVCのなかに情報は蓄積されるものの、そこから社内に流れないというかたちではなくなったというところですかね。
里見:そうですね。それが改善されつつあるので、今回久しぶりにCVCというか、とあるベンチャーキャピタルにお金をどんと預けて、そこがどんどん投資先を紹介してきてくれて、投資の判断は我々がファンドを立ち上げて、ファンドの運営をVCの方にお願いするという、新しいかたちのCVCを立ち上げました。
それで、実質投資委員会みたいなことをやってるんですけども、自分以外は全員管理畑の人で、内部統制や反社チェックを見てくれて、ビジネス面は僕が判断するというかたちに変えたものを2ヶ月ぐらい前に立ち上げました。
岡島:ここがやっぱりすごく重要で。あとでディスカッションするなかにも入ってくると思うんですけれども。古川さんにもあとでうかがいたいと思います。
やっぱり大企業のなかの意思決定にちょっと時間がかかる。あるいはプロセスが多いということがベンチャー企業はボトルネックになるということが解消されてきたという。
里見:そうですね。
岡島:あれですよね。早い話、経営トップが全部の意思決定に関わることができるみたいになってると。
里見:そのように変えていったという感じですね。
(スライドの)上の表になりますけども、事業シナジーがあるところは、事業会社がどんどん投資しようというのをやり始めまして、その芽も出てきたのかなと思っています。
上のほうは買収事例ですけども。バタフライさんはベンチャーですけれども、インデックスやフェニックスシーガイアというのは最近では大型の買収があったんですが。
インデックスは先週彼らの事業へより投資してくれる澤田ホールディングスへ売却しましたが、もともとゲーム事業をしていた部門は、新生アトラスとして切り離してセガ傘下に取り込みました。
国内投資では、この上のほうは投資の回収なり、上場されたということでほぼ流動性が出た投資先ですね。ポケラボさんはご存知のとおり、事業提携をしたあとにグリーさんの仲間入りをしました。
そのあとは実はポケラボさんとセガで合弁会社つくって事業は提携を続けていたり。直近ではメタップスさんやgumiさん……gumiさんはちょっといろいろありますけども、うちも投資だけでなく事業提携もしてます。
投資したときに、我々の『チェインクロニクル』という当時一番当たってたタイトルの欧米の配信権を渡してバリューアップを手助けしました。それで、我々としては事業シナジーもとれるし投資リターンも得るというかたちでできました。
今、マイネットさんもちょうど上場承認されたところですけども、うちは社外役員も派遣してますし、うちからもセカンダリーマーケットという、もう自社の社員を使って運営するにはボリュームが小さいタイトルの運営移管を行っています。それにより自社のライン開けて新しいゲームをつくるというサイクルができています。
実はこのなかでROIが一番高いのはf4samuraiというところなんですが。ここは逆にうちがグループに取り込んでいる会社ですね。もう子会社化しています。まさに15人ぐらいしかいない、本当にマンションの1室、2DKみたいなところでやっていたときに行って、今や(従業員が)120人を超える。
先週も彼らが開発したアプリがjAppStoreでトップ10に入るなど、非常に好調な会社となっております。
岡島:どの投資先もそういう意味で、すばらしく好調という。
里見:そうですね。ここ4、5年の投資先は非常にいい感じで来つつありますね。
グーパさんは表向きはクラウドファンディングという言い方で行ってるんですけど、実はお客さんに向けてグッズとかの販売をApple、Googleのサイトじゃできないので、独自のサイトでやりたいなというかたちで立ち上げてるベンチャーですね。フジテレビさんと一緒に投資しています。
岡島:やっぱりベンチャー企業と大企業の役割分担がうまくいっているのか、あるいは人の交流も含めて、もうだんだん一体になってきているということですよね。うまく行きはじめた要因は何ですか?
里見:やっぱり我々もベンチャー企業から学ぼうという姿勢があるのがよかったのかなと思ってまして。
最近はちょっと減ってきてるんですけども、ソーシャルゲームが立ち上がった勃興期の頃、セガは技術力はあったんだけど、スピード感がなかったり、ベンチャー企業から学ぶ運営力もなかったので、学ばせていただこうということで。
ポケラボさんもそうですし、f4samuraiもそうなんですけども、うちの社員を彼らのオフィスに派遣して一緒につくったんですね。
今までは下請けさんと言われるところだと、大手の企業の会社に来てつくるというのが多かったんですけども、逆だと。うちの社員が学んでこいと言って。
岡島:行くというのがすごくいいですよね。しかも偉い人たちが行っちゃうわけじゃなくて。
里見:現場のエンジニアやデザイナーを派遣して。逆にポケラボの前田社長なんかも当初言ってたのが、「お互い目から鱗の経験を日々した」と。もう文化がぜんぜん違うので。それは非常にいい化学反応が起きたなと思っています。
岡島:いわゆる「異能のぶつかり合い」みたいなことだと思うんですけれども、そういうのがすごく取り込まれるようになったと。
里見:そうですね。ある程度環境が整ったなかからf4samuraiさんに派遣したときって、まさに先ほど言った2DKのマンションの1室にエレベーターもないところに派遣しました。
ある日、トイレが壊れたんですよ。だから「すいません、近くの公園のトイレ使ってください」みたいな環境に派遣したんですけども。
そこで社員がやっぱりやりきってくれて、その戻ってきたメンバーが今度はもともといた社員にいい刺激になるというのが出たので、お互い学ぼうという姿勢があったのがよかったなと思いますね。
岡島:そこはやっぱり文化なんですかね。会社の大企業側が上から目線で入るみたいなことではなくて、一緒につくろうよって学ばせてもらうたいな。
里見:そうですね。投資するときにそういう姿勢で最初から組もうということをやってたのがよかったのかなと思います。
岡島:ソーシャルゲームという領域もきっとよかったんですね。
里見:そうですね、はい。
岡島:ありがとうございます。
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