2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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井上高志氏(以下、井上):お二人にちょっと聞きたいんですけど。事業創造というテーマでもいいですし、グローバル化というテーマでもいいんですけど、そこにおける自社のコアコンピタンスっていったい何ですか? 1個だけ挙げるとしたら。
琴坂将広氏(以下、琴坂):私が聞こうとしていた質問でもあります(笑)。じゃあ、まず井上さんのネクストのコアコンピタンスを。
井上:うちは、ベタなんですけど「どういう日本、世界の社会を作りたいか」というビジョンとか理念をほぼ全員が心底共感・理解しているというビジョナリーなところと、そこに「同志」、志を同じくする人たちが集まってくれているという人の部分。
50年後とか100年後になったとき、たぶんまったく違う事業をやってると思うんです。今も20年前にはなかったようなビジネスが成長産業になってたりしますから。
そのときに変わらないものは何かというと、「世界をより良く変えたい」とか「進歩を革新させたい」とか、「みんながハッピーになる世の中を作れたら自分たちも最高にハッピーだよね」みたいなことを思っていること。そういう集団になっているところなのかなと思います。
その上で、「テクノロジー磨こうね」とか「もっと人を成長させようね」とか「この事業分野にいこうね」みたいなのは後からついてくる話かなと思います。
琴坂:なるほど。どうですか?
宮﨑聡氏(以下、宮﨑):サイバーエージェントにはわりとはっきりしたビジョン、「21世紀を代表する会社を創る」というのがあるじゃないですか。そこから逆算思考で実際、あと数十年後にそういう状態になってるとすれば、今後どういう事業領域やサービスを提供すべきかということを、それぞれの役員陣や事業責任者、幹部が考え「この事業は今参入すべきだと」という目線形成に役立っています。
サイバーエージェントは広告代理事業から始まったインターネット企業ですが、現在は全従業員の半数以上が技術者で、アドテクを含む広告事業、ソーシャルゲーム事業、メディア事業の3つの大きな事業軸があります。
そして、中長期で考えると、優秀な技術者が集い、グローバルという戦場でも十分に通用するプロダクトを開発して、グローバル展開する、そしてグローバルで成功を収めてグローバル企業になるというロードマップが浸透しているので、対ユーザー向けの新規サービスを検討する場合、現状は世の中にないサービスだとしても、今後こういうサービスがあると、それ自体が世の中の多くの人をもっと豊かにできるか、楽しみを提供できるものかということは前提になっています。
先行する他社サービスがある場合は、参入する企業が少なく、長い間技術進歩が止まっている分野で我々が提供して価値を生めそうな分野はよく狙います(笑)。最近は、動画や音楽などのエンタメ領域に注力しているので、その領域の未参入分野は隈無く検討しています。
要は、「21世紀を代表する会社を創るとしたらどういう状況になってるんだっけ?」という大きなイメージから逆算してブレイクダウンしていったときに、そこに繋がる可能性のあるものはやるし、繋がらないものは一切やらないようにしています。
お伝えするのがちょっと難しいですけど、仮にその事業が外れたとしても組織としては血肉化できて経験値が上がって将来に積み上がるものを選択しているというのはあると思います。
青柳直樹氏(以下、青柳):考えてたんですけど、やっぱり会社の存在意義を定義してるミッション、創業からの経緯というものに立ち戻ります。コアコンピタンスを何か1つと言われると戻っていくなと、考えていてそう思いました。
Howの部分は、業界が変わっていく(と同時に変わる)ことで、我々の会社はそうしようとしてますので、そこの部分には(コアコンピタンスは)求められないなと思います。
「インターネットを通じて世界をより良くする」というミッションで我々はやっていて、うちの会社の中でそれに賛同しない人はいないんですね。ただ、それに対しては社員のみなさんなりの経験に基づく解釈があって、その字面というよりは、それにつながっている今までの経験とか学びみたいなものが、我々にとってのコアコンピタンスと呼んでるものになってるのかなと思います。
あともう1個は、うちの会社の創業からの経緯です。田中良和が個人でソーシャルネットワークを作った。ファーストムーバー、自らでプロダクトを作ったので、ある種内製にこだわってやってきているところがあって。最後にいろんな局面が難しくなったとき「ものづくりの力」で局面を打開するとか、そういうことによって開けてきた部分がある。
もちろんビジデブとかファイナンスとかいろんな要素が、強くサポートするものとしてはあるんですけど、最後に立ち返れる部分は会社のオリジンとか会社のミッションステートメントにある。究極的にはそういうところに尽きるのかなと思います。
琴坂:大共感なんですけど、例えば会場のみなさんに3社の社名を隠してミッションだけ出したときに、「なんとなく似てる」と。すごくオリジナリティがあるかというと(そうじゃない)。みなさんの会社のミッションステートメントも、実は似たようなことを言ってたりするんじゃないかなと思うんです。
だから字面というよりは、そこの本当の理解、「具体的にこういうことだよね」「こんなふうに世界が変わっていくんだよね」みたいなのを社員全員が共有してるのが大事なのかなと思います。「浸透させるためにこんなことをやってます」みたいなのはありますか?
宮﨑:うちは結構ざっくりしてるじゃないですか。「21世紀を代表する会社」といってもいろいろあると思うんですけど……。
井上:もう、ツッコみたいところ満載のミッションって感じで(笑)。「21世紀を代表する」ってどういう意味だろう、とか。
宮﨑:新卒入社して間もない頃に、それを藤田(晋)と話したことがあったんですけど、「あえてざっくりさせている」ということでした(笑)。
「それはどういう状況か」というのをそれぞれが考えていて……幹部で飲みにいったりすると、その話題になったりするんですよ。「どういうサービスをもっとやっていく」とか「とにかくグローバルで勝負できるプロダクトを生み出す」とか、そういうのがテーマになったりするんですけど。
井上:「何をやったら21世紀を代表すると言えるか?」みたいな。やっぱりそこに立ち返る?
宮﨑:たぶんそこに明確な答えはなくて、いろいろな解があっていいと思うんですけど。
井上:みんながそれぞれ「ああだよね、こうだよね」と言っていく。
宮﨑:それが形成されていく状況を作っていることが、わりと大事かなと思ってます。
井上:ちなみに、22世紀以降はどうされるんですか?
宮﨑:(笑)。
琴坂:結構重要ですよね。
宮﨑:そうですね。それは然るべきタイミングになったときに考えます(笑)。
琴坂:最後に私が聞きたかったことを聞かせていただければと思います。今回のテーマである「事業創出・グローバル展開」について、今の時点でやり方とか方法論があると思うんですけど、この後どう変わっていくのか、どういう事業創造であるべきなのか。
特に今回は「グローバル」という言葉がありますので、世界展開を視野に入れた事業創出というのをどうやるべきか、どうやりたいか、どうあるべきかみたいなことを、最後にメッセージをいただければうれしいんじゃないかと思います。未来の事業責任者に向けてかもしれないですけど。
宮﨑:それぞれの会社の事業創造のレベルもあると思うんですけど……やっぱりこれから我々はtoC向けのサービス、特にメディア事業で大ヒットサービスを生み出すところをもっとやっていこうと思っています。
100%内製で自社の技術力を磨き、ものづくりに集中して、プロダクトの品質を高めてグローバルで勝負できるところまでまずはもっていくということにチャレンジしていきます。
ものづくりの面では、スマホが主戦場の今、新規の動画サービスでスマホに最適化された新しいコンセプトで新しいUIやUXを生み出して提供していく予定ですし、その延長上で、技術力にもっと積極的に投資してグローバルで競争していけるくらいの開発力に高めていこうと思っています、今はそれを粛々と進めているところです。
琴坂:ありがとうございます。井上さん、どうでしょうか。
井上:今は20年前30年前に比べて海外に出やすい時代だと思います。それはつまり、お金とか労力が少ないリソースの投資でできるという意味です。そうなったときに、競争相手が「グローバルのすごく頭のいい、アイデアフルなバリバリのエンジニア」とかそういうチームと戦うことになる。
そうしたときに、基本的には「根源的に世界中の人たちのこういうニーズがあるのに、いまだに解消されてない。ここが不満だよな」というのをどう取り除いたら満足になるかとか、「ここが不安だよね」というところを安心に切り替えられるかとか、不便を便利にするとか……。
万国共通で「そうなったら人類ハッピーだよね」みたいなところまで、ビジネスの根っこを落とし込んでいくことが大事じゃないかなと思ってます。
表層的なアイデアで「ちょっと一発勝負してみるか」というのだと、スタートアップの場合は投入できるリソースに限界があるので、そこまで落とし込むといいのかなと思います。
個人的に今注目しているところは、HOME'Sの延長線上というだけではないのですが、シェアリングエコノミー。やっぱり地球上に偏在しているリソース、「人」でも「知恵」でも「家」でも「お金」でも「労働力」でも、そこをシェアしていく経済には注目してます。
あと、偏在しているものをつないでいくという意味ではビッグデータとか、AI(人工知能)とか、そこにIoT・IoE・ロボティクスが絡んでくるみたいなのを、未来の姿として想像しています。そのへん領域に投入できるリソースがあれば、そこはより早く実現していきたいなとは思ってます。
琴坂:ありがとうございます。青柳さんお願いします。
青柳:井上さんがおっしゃったようにグローバルの垣根というのが低くなっていて、僕らがアクセスできるチャンスの総和というものは明らかに広がっているなと思っています。それは諸外国のプレイヤーも実は同じ環境だったりするので、良い面と厳しい面があって。総和は広がっているんだけど、コンペティションも(厳しくなる)。
僕らにとってのゲームもそうでした。2008年から始めて、当時は僕らが「国内でナンバーワンになるのは大変だ」って言ってたところに、2010年くらいからZyngaがやってきて。Zyngaもいなくなって、Supercellとかいろいろ出てきてっていう感じで。そういうことがあらゆるマーケットで起きる。Messaging Appsでも起きるし。ある種恵まれていて、楽しい環境にいますねと。
そういうことを考えたときに、僕らは目先よりも5年後10年後のlook aheadというかthink aheadというか、そういうアプローチがより求められているなと。表層的な小さいことではなくて、何兆円何億人という大きいマーケットで勝負しないと。
小さいマーケットのリーダーになるよりも、大きいマーケットでコンペティションがある中でもリーダーになるほうがより社会的に大きな変化をもたらすことができる時代に入っているし、自分たちの兵力というか経営力とかを考えたときに、ユニコーンがたくさんいてプラットフォーマーがたくさんいて、みたいな中で(勝負したい)。あらゆる企業がそうですけど。
まあ、そういった企業も1個1個の事業ユニットでは意外と苦しんでたりするわけなんですけど。
グリーで僕が経営に(携わって)10年目なんですけど、誰もモバイルをやってないときにやってよかったとか、「なんで釣りゲーム作ってんの?」というときにやり始めてよかったなと。誰もが「こんなの成功しないでしょ」と言ってるときに始めたもののほうがうまくいっていて、誰もpredict、予想できないですよね。ブラックスワンじゃないですけど。
より成功の確率を下げていくような話をしてるんですけど、結果的に重要なのは、今2年後のマーケットのために参入して勝負しても、だいたい競合もいてグローバルで大変になる。5年単位でやれることを考えて、それに至るものを絞ってやっていくことが非常にいいのかなと、自分たちの成功と失敗の経験から今思うに至っています。頑張りたいと思います。
琴坂:なるほど。ローカルではなくグローバルだし、2年ではなく5年というような。私も最初、このセッションのタイトルが「事業創出・グローバル展開」ときたときに違うものじゃないかなと思ったんですけど、おそらくこれから先は「グローバル」と「事業創出」というものは1個になっていく時代になるんじゃないかなと思います。
今日はご清聴ありがとうございました!
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