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20代の働き方・経験の積み方(全3記事)

「右脳で決めて、あとで左脳で考える」 クックパッド・有安氏が語る、自分らしく生きる決断力

GREE(グリー)やDeNA(ディー・エヌ・エー)など、いまや就活“新御三家”と呼ばれるまでに成長したメガベンチャーで活躍中の若手起業家たちが、自らの学生時代を振り返り、起業に至ったエピソードや信念、今に至るまでの経緯について学生たちに向けて語りました。大企業、ベンチャー、起業。自分らしい仕事の選び方を考えさせられるセッションです(IVS 2014 Spring Workshopより)。

登壇者紹介

IVP 小林雅氏:セッション1、「20代の働き方・経験の積み方」というテーマです。僕らのワークショップに何回か参加されているとわかるんですけども、必ずこのテーマを扱うようにしています。皆さん、20代前半とか20代半ばとかいらっしゃるかもしれませんけども、結構皆さん悩むと思うんですよね。そもそも就職ってどうしたらいいのかとか、自分のキャリアップ、スキルアップとかってどうしたらいいんだろうとか。

そういう風に日々悩んで生活されているんじゃないかなと思うんですが、その悩みに登壇者の方が答えてくれるという素晴らしい会でございます。それでは1人ずつお呼びいたしますので、拍手でお迎えいただければと思います。

まず1人目ですけども、グリーの最近金髪になりました荒木さんです。続きまして、最近はクックパッドさんの子会社といいますかね、EXIT(会社を売却)してしまいましたけども、活躍されていますコーチ・ユナイテッドの有安さんです。3人目、最近は就職新御三家とも言われているDeNAの執行役員の赤川さんです。最後に、サイバーエージェント卒業して会社を作った、昨日の夜中に鯖にあたって調子が悪いという、ワンオブゼムの武石さんです。最後にインフィニティ・ベンチャーズを一緒にやっています小野です。ここからは小野にバトンタッチして進めさせていただければと思います。では着席していただいてよろしくお願いします。

年々起業に興味を持つ学生が増えている

小野裕史(以下、小野):テーマがちょうど20代の働き方ということなんですが、(会場に向けて)将来ベンチャーに勤めたいと思っている方? あんまりいないですね。起業しようと思っている方? 結構いますね。大企業に行ってみたいなという方? まだわかんないぞという方? 少ないですね。毎年やっていて思うんですけども、年々ベンチャーに行きたいとか、ベンチャーを起こしたいという層が増えてきているのが、我々にとっては嬉しいことです。

早速ですね、ここにいる4人の方は全員SFC出身。それぞれ全然違うキャリアパスをたどってきていますので、自己紹介も兼ねてどういうキャリアパスで今に至るのか、今何をやっていて、学生時代からどういうきっかけで今に至るのか、という話をご紹介します。まずは荒木さんからよろしくお願いします。

グリーがまだ“どベンチャー”の頃に入社

荒木英士(以下、荒木):よろしくお願いします。荒木です。僕は現時点ではグリー株式会社の役員をやっています。いくつかの事業の責任者をやらせていただいています。僕は2001年にSFCに入学していて、2005年卒業なんですけれども、入学当初に当時SFCのキャンパスで学生がやっていたベンチャーを見つけまして。

面白そうだから入ってみたというのがインターネットというか、ベンチャー業界的なところの始まりでした。大学生の時はずっとそこで働いていて、途中で売却をしたりして、売却先の会社に移って2年ぐらい働いたり、2005年つまり実際には卒業する年にグリーに入っています。

当時、グリーは4人とか5人くらいしかいない非常に小さい会社だったんですけれども、そこに入りまして、あらゆることをやってきました。いろんなサービスの企画だったり、ただエンジニアリングのバックグラウンドなので自分でプログラムを書いたりとか、例えばKDDIさんと提携とかも担当したんですけど、そういうときの提携のこともやったりとかして、いろいろプロダクトを作ってきまして。

2010年に今からちょうど3年くらい前に海外進出するぞということで、アメリカに行きまして、また4〜5人のところから始めてアメリカの支社を立ち上げて400人位までにして、去年の秋ぐらいに日本に戻ってきてここに至る、という感じになっています。

小野:ありがとうございます。学生時代から起業して、卒業して、グリーがまだ4名の“どベンチャー”の頃に入ったんですよね。それがすごいなと思うんですよ。一番最初に学生時代に入った企業は、一番最後のセッションに登壇するユナイテッドという会社に最終的になってるんですよね。すごいベンチャーですよね。

荒木:そのとき僕が学生ベンチャーに行ったら、アドバイザーとして有安さんがいました。

有安伸宏(以下、有安):え、そうだっけ?

荒木:いましたよ。週1くらいで呼ばれてきていました。

有安:俺が? 覚えてないです(笑)。俺がアドバイザーだったの?

荒木:そうです。一番最初は。

有安:覚えてないです(笑)。

小野:学生起業家つながりでもあるんですよね。

有安:そうですそうです。

何かしなきゃと焦って大学1年生で起業した

有安:有安と申します。よろしくお願いします。僕は(荒木)英士くんの一つ上で、2000年入学2004年卒業です。僕は慶応の内部進学で慶応高校出身で、起業したいな、インターネットで何かビジネスやりたいなと思って、SFCがいいなと思ってSFCにしました。

SFCに入ってからは、自分が何ができるかとか全然わかんなくてすごく焦っていて、周りにはなんかすごい人がいっぱいいてどうしようという中で、すごくいい出会いに恵まれて、1年生の終わりに自分で起業して。その会社はなかなかうまくいかなくて、その会社を売却して、卒業したらユニリーバという消費財メーカーのマーケッターとして入社して、2年くらい働いて、そのあと起業して、そしてその会社はネット上でいろんな先生が見つかるサービスをやったんですけど、それをだいたい6年くらいやって。

去年の6月にクックパッドっていうレシピの会社、その会社もSFCのOBが作った会社で、その会社に売却をして、今現在はクックパッドグループの中の子会社の社長ということで経営をしています。

小野:ありがとうございます。大学1年で起業されたんですね。早いですね。

有安:1年目です。焦ってましたね。何かしなきゃって思っていて。

小野:そのあと大企業という選択をして、そのあとまた起業に。この辺りまた後ほど紐解いていければと思うのですが。続いて、赤川さんお願い致します。

強い起業家精神があったわけじゃなかった

赤川隼一(以下、赤川):おはようございます。DeNAの赤川です。僕はDeNAで執行役員をやっていまして、今ゲーム第1本部長ということでゲームを作っています。僕がSFCに入ったのが2002年で、卒業は2006年ですね。僕は学生時代、起業家精神に全くあふれてなくて、ただお酒を飲み、ただ友だちとだべりですね、音像工房っていうサークルがありまして、この裏に部室があるんですけど、1日中授業の合間にLinuxのPCでゲームばっかりやっていました。

典型的なダメ学生をやってました。研究会も福田和也先生の研究会にいまして、僕は音楽が大好きで、少なくとも俺は音楽は日本で一番詳しいと当時思ってて、そのままバンドやるか、音楽ライターになるかということを考えていて、周りが就活をするという3年生の秋に「え? マジ就活って怖いの?」と焦りまして、就活を始めてみたというくらいの気持ちで始めました。

最初そこそこうまくいきまして、結構余裕じゃんって思っていたら、最終面接で最初の企業に落ちて、そのあと一次面接でブワーっと落ちて、仕事って難しいんだと思って、初めて会社説明会っていうものに行ってみようと。会社説明会にたまたま行ったのがDeNAっていう会社で、そこで南場智子っていう創業者が出てきて、ブワーっと話すんですね。なんてクレイジーで面白い人なんだと思ったんですね。

その後、いろいろ面接を経て魔が差して入社をしたということです。魔が差して入社したときに、福田和也先生には「君のボブ・ディランの文章は大好きなんだけど、君はカタギになるのか」と言われてですね(笑)、カタギの道を選んだと。

それでカタギの道を選んでDeNAに入って、「これだ」っていう起業家精神があったわけではなかったので、とにかく面白いことにもまれて成長したいと。何でも俺にやらせてくれと。最初は営業をやって、すぐ認められてマネージャーに抜擢されて、全く何もわからなくて、全員年上で苦労して。でも結果を出して。

で、マーケティングやって、今度はコンテンツのマネージャーをやって、その後新規事業の「ヤフーモバゲー」っていう新規事業をヤフーさんと一緒に立ち上げまして、そのあと韓国オフィスを立ち上げてDeNAの海外展開の責任者を2年くらいやって、今はゲーム開発事業部ってところで、世界に向けてゲームを作っています。こういうキャリアです。今日はよろしくお願いします。

小野:ありがとうございます。2006年だとDeNAって、とはいえそこそこ大きい……?

赤川:180人くらい。

小野:新卒で入って、今、最年少執行役員。

赤川:そうですね。9年やってまして、7年目から。

小野:自称ダメ学生でもそんな道をたどることができる。

赤川:今日はここにいないSFC生にも夢を届けたいなと思います(笑)。

小野:まだ飲んだくれて寝てるかもしれない(笑)。

赤川:僕は朝の授業とかほぼ来たことないんで。今日来たいって思っていたけどここにいない学生に届けていきたいなと思います。

勉強と“真反対”のベンチャー環境が面白かった

小野:そういう学生でもこういう風になれるってことですね(笑)。ありがとうございました。それでは「あ」行つながりでお願いします。

武石幸之助(以下、武石):おはようございます。株式会社ワンオブゼムの武石と申します。よろしくお願いします。簡単に自己紹介させていただきますと、私は1998年入学、こちらの方々よりも若干年上なんですけども、環境情報学部に入学いたしまして。

僕もだいぶ赤川さんに近いような生き方を学生時代はしていました。自分の興味のあるものだけに突き進んでいたので、実は僕も起業家思考はほとんどというか全くなかった状態でずっとSFCの時期を過ごしていました。いわゆるサークルとかに所属せずに、その当時ちょうどデジタルコンテンツとか、ちょうど1998年にITバブルの時期といわゆるゲームですね、プレイステーションなどのゲームの環境が盛り上がっている時代だったので。

ネットもゲームもこれら周辺のことをとにかく学べるようなことがやりたいということで、プログラムの勉強からというかコンピュータがらみの授業を取りまくっていて、そういう授業しか出てなかったので、逆に興味のないものは全くやらないみたいな、そういうことばっかりやっていました。

それがかなりこじれて、結果的に2002年にSFCを卒業したんですけども、2005年まで別の大学院にいまして。そこでもずっと研究活動をしていたところ、途中自分の中で研究をやっている合間に就活をしたときに、なんかちょっとおかしいなと思ったんです。ずっと自分の研究で自分の興味本位のことをやってて、就活してみたら自分は全然世の中のこと知らないじゃないかと。

あれだけ起業なんか興味ないのに、行くなら大企業だとか。自分が就活をしているさなかで、そこで出会った会社がサイバーエージェントという会社でして。そのサイバーエージェントが上場して3、4年経ったとき、上場してまだ赤字だった時代で。赤字だった時代にも関わらず、ここに行ってみようと。

赤字ながらもとにかく上を見て、ビジネスを作って駆け上がっていくしかねぇみたいな状況が、自分にとっては研究とか勉強ばかりだったので、真反対の環境がすごい面白くて、ずっとそれ以来ベンチャーの道に進んでいます。サイバーエージェント時代は、大学院時代に内定した時からずっと関わっていて、そのとき何をしていたかというと、アメーバブログというブログサービスを、ちょうど最近10周年迎えたところですけど、立ち上げのメンバーとして関わっていました。

当時はブログがまだ一般的ではない時期にブログサービスのメディアを作っていました。そういうところをやって、そこからずーっとどっぷりサイバーエージェントとアメーバという仕事に絡んでいって、その中でいくつかのアメーバ事業に関わっていって。その後2011年に「この際だから自分でやっちまえ!」と自分の会社を起こして今に至ると。

SFCでしかできないバイトをしようと思った

小野:ありがとうございます。という4名なんですが、皆さん話を聞いてわかったと思いますが、向かって右側が「学生の頃から起業家してやるぜ」という起業精神あふれた2人で、左側は「どちらかというと学生の頃はそんなふうにも思ってなかったんだけど、気がついたら経営者だったとか起業していた」というそういう2人なんですが。そもそもじゃあ起業組。起業した側。どういうきっかけで、なぜ?

荒木:起業じゃないですね。

小野:学生の頃からベンチャーで働くという、その辺のきっかけを。

荒木:なんか起業している人たちは意識高い、みたいな発言があったんですけども、どう意識するのとかそういうのはなくて。僕が思ったのは、SFCに入学して、大学でひとり暮らしするからバイトしなきゃいけないじゃないですか。バイトするのに、せっかくだからSFCらしいバイトをしようと思ったんですよね。

別に居酒屋でもコンビニでもなんでもいいんですけど、SFCでしかできないバイトをしようと思って。その当時、まさにここの場で、こういう学生がやってる企業があります、みたいな説明を受けた会社があって、こういうのあるんだと思って、湘南台の駅前にあるというから僕はバイトを申し込んだんです。バイトさせてくださいといってオフィスに行ったら、書類を書かされて。その書類が雇用契約書だったんです(笑)。

有安:サインだ。怖い怖い。

荒木:そうなんですよ。僕は本当にただ単にバイトしに行ったんですけど、入社してたっていう。そういうことですね。

小野:続けなかったら今の話は全くなかったってこと?

荒木:全くなかったですね。

小野:有安さんは?

有安:皆さん内部からじゃないですよね? 外部受験ですよね? 僕、下からなんで高校のときに遊び尽くしてるんですよね(笑)。受験してないんで。僕は日吉に高校3年間通って、アイスホッケー部で。体育会系でスポーツを一生懸命やってたんですけど、それ以外の時はとりあえず雀荘に通って、学ラン着て雀荘に通う、みたいな生活をしていたので、大学に入ったら一生懸命やりたいなという気持ちがすごくあって。

大学に行ったらいろんなことに頑張っている人がいて、焦ってどうしようどうしようって色んなことに首を突っ込んだりしているうちに、大学のOBの人で、当時26歳くらいでシリコンバレー帰りの金子陽三さんっていう、今日も夕方のセッションで登壇するんですけど、今ユナイテッドっていう会社の金子さんと出会って意気投合して「一緒に会社やろうか」ってなったのがきっかけですね。

小野:結果的にはどのくらい続いたんですか? 会社は。

有安:3年半とかそんな感じですね。すごくうまくいかなかくて、いろんな試行錯誤や紆余曲折をして。一番痛感したのが、学生ベンチャーではなくて社会人とやったんですよね。社会人の金子さんと、もう少し年上の京セラ出身のエンジニアの方と、僕19歳だったんで。ファイナンスのプロと、技術のプロと、元気がいいだけの僕っていう感じだったので、その差がすごくて。ちゃんと取締役なんですけど、差がすごくて、自分としてはすごく悔しい思いをして。じゃあどうやったら自分の専門性とか、強い力が身につくかなと思って、いろいろ考えてマーケティングやりたいなと思って、ユニリーバに就職しました。

「周りと真逆のことをしてやろう」と思ってベンチャーに

小野:一方で、こちら起業あんまり興味なかった組。とはいっても、周りにはそういった人たちはいたわけですよね?

赤川:そうですね。いましたが、たまたま僕の友だちにいなかったっていう。僕もバイトしなきゃって思ってたんですけど、たまたま持っていった会社がGREEじゃなくてラーメン屋だったっていう(笑)。運勢の引きの差がありますね。さっき荒木さんが言っていたみたいに環境はすごく大事で。僕がインターネットサービスがすごいなと思った原体験がSFCの授業中にあって、GREEがローンチされた日なんですね。

GREEがローンチされた日は今でも覚えていて、ものすごい勢いでサービスが広まっていった瞬間っていうのをまさに目の当たりにしていて、なんかこれSFCの人がやってるらしいっていうのは、僕の中で「こんなムーブメントみたいなのをやってるんだ、しかもそれを身近な人がやってるんだ」と大きな実感だった。

その後、自分もそれやるかと思うまで僕は時間がかかったんですけど(笑)。 そういう、自然に起業とかWebサービスっていうのが身近にあった環境っていうのには、間違いなく感謝していますね。SFCに。

武石:実は、僕の所属していたゼミはまさにゲーム系の業界を志望している方がいて、ゲームと言っても、今のモバイルゲームというよりもコンソールゲームだったりとか、そういった会社に、スクエニとか、みんなわーっと行っちゃったんで。

僕ひとり、研究続けたいから大学院に行ったんですが、僕の周りにはほとんどそれこそ放送・マスコミが多くて、ザ・就活みたいな、みんな周りがし始めたんで、そこに対してギャップを感じながら大学院に行った部分もあったので、それもあって結局、最終的に「だったら彼らと真逆のことをしてやろう」という感じでベンチャーをやっているところもあると思います。

「その仕事を面白いと思えるかどうか」が基準

小野:冒頭にまだ進路が決まっていないという方もいたかと思いますが、とはいえそれぞれ既にある企業に入るという選択もしているわけですよね。有安さんもそうですよね。他にいろいろ選択肢があった中で、何を基準にどういう考えで会社を探したりだとか、進路を決めたりとかしたのかと。荒木さんは4人目でしたよね。

荒木:GREEに入社したのは、なんとなく意気投合したっていう、それに尽きますね。もともとそうだと思っていて、面白いって思えるかどうかだと思ってるんですよね。当時、自分が大学のときにやっていた会社を売却していて、そこでそれなりに仕事していて面白かったんですよね。しかもその会社があと1年くらいで上場するみたいなタイミングで、普通に考えれば上場直前に行ったら面白いと思うんですよね。

それで上場直前期ということで、あったんですけども、なぜかGREEの今の代表の田中に会って、飲んだりご飯食べてたりしていたら、なんかよくわかんないけど面白い、という風になってしまって。僕の頭のなかで左脳は「こんなのうまくいくはずない」とずっと叫んでるわけですよ。YAHOOとか楽天とか大手が同じことやったら全然、すぐ負けるでしょと。しかもこの人たち3、4人しかいなくて、すでにmixiに負け始めていて、「全然だめじゃん」っていう風に僕の左脳が言うんですけど、右脳が「いや面白い」って言ってたんですよね。いろいろ考えた結果、面白い方に行こうという判断です。

小野:面白いかどうかでいろいろ考えてると。

荒木:はい、そうですね。

面白い人の近くにいると、面白い環境に巡り会える

小野:他のお三方はどうですか? 

赤川:僕はさっき話した説明会にたまたま行ってすごく引き込まれたんですけど、そのときに思ったのは、ずっと音楽が好きでやってたんですけど、とはいえとことんコミットしてたかっていうと、大学時代、どこかで自分をごまかしながら楽しい方、楽しい方にやってたなという思いがあって。強烈なベンチャー経営者の熱に魅せられて、俺ここで変わんなかったらいよいよ人生変われないかな、みたいなことは当時ちょっと思ったんですよね。自分の中での覚悟を決めたというのがひとつですね。

当時、僕もレコード会社とかいろいろ受けたんですけど、全然情熱とかスピード感とかそういうものが違って、このまま俺はそういう自分の中で見えている道を淡々と生きながら居酒屋で愚痴って、みたいな大人になりたくないなと21歳のときにすごく思っていましたね。

ただもう1個あったのが、人の魅力というか。僕は大学の時もSFCという大学がすごく好きでしたけど、面白い人が好きで、退屈が嫌いなんで。面白い人の近くにいると、自分も面白い環境にどんどん巡り会えると。ということで、いろんな選択肢の中で一番面白いというか、自分がすげえなと思ったり、変だなと思ったり、クレイジーだなと思った人って誰だろうと思ったときに、DeNAの今の社長だったり、今の仲間たちというのが一番ピンときたと。

就活に失敗して、自分に合う場所に気づけた

小野:じゃあ面白いというキーワードですね。武石さんはベンチャーと言っても、たくさん選択肢があったと思うんですけど、その中でなぜサイバーエージェントを選んだのでしょうか?

武石:当時の就活を思い出したときに、どういう企業を受けていたかというと、最初の志望というか、実は僕、就活を2回経験してまして。大学院3年間行ってしまったんですよ。大学院2年生のときに、結構名だたる大企業を受けて最終面接まで行ってたんです。例えば博報堂とかNHKとか。そこまで行っていて最後いろいろ役員の方々とお会いして。

NHKの北海道かなんかのお偉い方に「武石くんはうちじゃねえな」と最終面接のときに言われたんですね、目の前で(笑)。「なんでだ?」と思ってたんですけど、その当時の面接のとき、僕のやりたいこととか考えていることをバーっと言った中で、ことごとく最終面接で落ちるわけですよ。落ちて結局なくなっちゃって、それで論文も落として留年しちゃったんですけど。

ただ、その時の原体験が僕の中にあって、僕の考えていること、僕のビジョンを一緒にやれる、もしくは僕が下から入っていって、それを成し遂げられる会社ってどこなんだろうって。結局3年目のときに、もう1回いろんな会社を見たときに、今度は大企業じゃなくてベンチャー企業ばかり見ました。

その中で一番共鳴できたというか、特にサイバーエージェントを受けたときに思ったのが、ここで自分が作ろうとしているもの、作りたいと思っているものをそのまま役員とかに見せたときに、それやっちゃえばいいじゃん、みたいな。やっちゃえばいいし、やるからには一緒にやって成功させようよ、みたいな。

そういうことを真顔で言ってくれたんで。これを受け入れてくれたからにはやらないわけにはいかないよな。一緒になって悪巧みができる、デカイことをやれる、そういうところに共感して、サイバーエージェントを選びました。

右脳の直感や納得感を大事に

小野:一方で、起業しながら大企業という選択肢を、有安さんは選択したわけですけど。それはどういうふうに選択されたんですか?

有安:皆さんみたいにちゃんとしたあれはないんですけど。さっき(荒木)英士くんからもあったんですが、直感的な部分がすごく大きくて。右脳、左脳って言ったと思うんですけど、うちの会社にも学生スタッフがいっぱいいるんで、相談受けて。「どういう基準で会社を選んだらいいですか」「どういう基準で意思決定すればいいですか」って。

それって全部左脳の話なんですけど、それよりも、「こっちのほうが自分の人生面白くなりそうだよね」、そういう腹決めというか、納得感があるのはどっちだったかな、っていうのがまず先にあって。そこを制度化するために一生懸命左脳で、言葉で考えるみたいな部分がありました。

僕の場合は、すごく英語ができなかったので、英語しか使わない職場で、外国人上司の下で働いてみるのってどんな感じなんだろうっていうのがあって。そういうグローバルな組織で働いてみようっていうのがあって。あと、大企業のマーケティングの仕事やってみたいっていうのがあって、ユニリーバという大企業に。ただ、もしそのときもっと面白い起業のネタとかあったら、もしかしたらそっちをやっていたかもしれないですけど、たまたまそういうのはなかったですね。たまたまっていうのと、直感といいますか、そっちのほうが良さそうというのが一番大きかったです。

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