2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小野:大きな流れとして、B to Cのいろんなプレイヤーが出てきている中で、1つ特徴としては、Cに近いスモールBも含めたショップが続々と立ち上がっています。たとえば、BASEさんとか、STORES JPさんとか、それぞれ報道では5万店舗という数字が出ています。
楽天の三木谷さんはインタビューで、「ヤフーさんが無料化したことは、特に心配していない」と語っていましたが、こうした小規模のところはあまり気にしない、あくまでも、大きなところだけを育てていくという考え方ですか?
北川:むしろ、そこの部分をテクノロジーでなんとかしたいと思っているんですね。だから、スモールビジネスがネット上で売れる仕組みをテクノロジーで解決するという方向性です。僕ら自身が、物を売ってあげるのではなく、サポート機能をどんどんよくしていくという、質の担保のほうに走っています。必ずしも数で勝負しにいくという考え方は持っていないかもしれないです。「店舗数が多ければ多いほどいい」という考え方ではないですね。
小野:ヤフーさんにとって、このあたりは十分競合になりうるゾーンだと思うんですが、川邊さんからまずお答えいただく感じでしょうか?
川邊:いや、もう省略します(笑)。
小澤:STORES.JPさんもBASEさんも、すべてYahoo!ショッピングに出店できるようになればいいと思っています。結局、STORES.JPに出店したら、自動的にYahoo!ショッピングに出店できる仕組みにするため、これからSTORES.JPに営業に行こうと思っています。これはマジで思っていて、そっちのほうが売れるはずなんです。なぜならSTORES.JPさんもBASEさんも、モールではなく、機能の提供だから。
集客の機能というのはヤフーが最も得意としています。機能とメディアとの組み合わせは、最高だと思っております。なので、とにかく、こういう機能系のところは、全て提供して参りたいところです。これは、我々が勝手に思っているだけなので、先方はどう思われているかは分かりませんけれども、そういうことだと思っています。
川邊:一応、さっき小澤さんが言っていましたけれど、今のヤフーのECに対する見立ては、検索にかなり近くなっています。それはどういうことかというと、検索も、大体400万事業者くらいが検索エンジンに登録されて、日々クロールされているわけです。そして、その400万事業者というのは、いわばヤフーもグーグルも無料でお客さんを紹介しているわけですよ。
そのなかで、「あ、なんか検索からお客さんが来たり問い合わせが来たりするようになったから、もうちょっと、うちのホームページを目立たせたい」みたいな理由で、検索連動広告を買う事業者が、ヤフーの場合、大体30万社から40万社いるわけです。
ですから、我々は母数としてまずそれくらいあって、そのなかで10%くらいのお客さんが、何かしらお金を払ってくれるようになればいいな、と。それは、検索エンジンのほうで今までやっていたのに、なんでECのほうではやってなかったんだろうね、今になっては不思議だよね、みたいな話です。そういう考えなので、店舗の数はすごく大事ですし、店舗の主体性や自主性によって、ビジネスはどんどん回っていくことになるかなと考えております。
小野:ありがとうございます。(三越伊勢丹の)大西さんのほうでは商品のデータベースはぜんぶ統合して、インターネットに掲載する方向ですでに動いていると思います。そういった検索の機能的なものに関して、外部のネット企業と組んでいくことについてはどうですか。既存プレイヤーとの連携について教えてください。
大西:すごく私たちもハッとしたんです。結局、我々も、マーケティングという観点から、Aさんがどういう物を買って、どこでどういう物を買ったかは、情報としてはカードを通して取れるんですね。でも検索まで踏み込めていないので、本当の意味で、どういう行動でどういう背景でそれを買って、次にどうするかについて、まだ踏み込めていないのは事実です。これは、百貨店がこの業界ではるかに遅れてしまっていることとは別の次元で、少し考えさせられる部分がありました。
それから、百貨店のECそのものが勉強不足というか、今まで本当に手を入れてこなかったために、あまりにも全体の売上に占めるeコマースの比率が低い。当社でも1、2%くらいです。百貨店ECというコンテンツを広げて、インフラを整備して粛々とやっていけば、ある程度のところまでは、10%くらいまではいくと思うんですけれども。
それとは別の次元のところで、新しいビジネスモデルを創っていきたい。我々は後からの参入ですので、みなさんと同じ土俵で戦っても無理なので。そうではなくて、情報、メディア、あるいはSNSを中心としたコミュニティ作りによる集客といった形で、いろんなことを模索しながらやっているところです。我々の役割というものをどこかに見出していただければ、コラボレーションをどんどんやりたいなと思います。それと、グローバルという観点では、もう本当に、みなさんと一緒にやらせていただきたいと思っています。
小野:ネットの連携について伺ったのは、連携をしないと、なかなか既存のプレイヤーと戦っていけないかもしれないからです。ヤフーさんとしては、全部それを提供されていこうとしているわけですよね。ネットのトラッフィックの中の根っこを掴みにいく、ネットのコマースのショッピングのゲートウェイを取りにいく、みたいな話ですか。
川邊:はい。
小野:また違う視点の話にできればと思います。ご存知の方もいるかもしれませんが、11月11日、中国ではこの日はシングル・デイ、独身の日と呼ばれているらしく、なぜかECが一番盛り上がる日になっています。
2013年の11月11日は、1日だけで、350億元、日本円で約5600億円がTモールで売れています。Tモールは、タオバオグループのショッピングモールです。タオバオは基本的にC to Cのサービスですが、TモールはB to Cです。
この楽天さんやヤフーさんと同じようなショッピングモールで、お祭り的な動きが起きて、これだけの売上が出たのは非常に面白いなと。国をあげて、いわばバレンタインデーみたいなものが新たにできた感じですよね。この辺のテーマについて、今後の楽天さんの展開やヤフーさんの考えはどうでしょうか? ではまず、北川さんのほうから。
北川:まさに、先ほど「感情価値」という話をしましたけれども、イベントによってお祭り気分を出して、「買うことが楽しい」「ここで買わないとなんかミッシング・アウトだよね」みたいな雰囲気を作るのは、すごくいいことだと思っています。
まさに、大西さん、三越さんと一緒に、「うまいもの大会」という形で、催事を一緒にやらせていただいています。私たちも、オフラインの催事というのは慣れたものではなかったんですが、インターネットでよく商品を売られている方々で、あまりオフラインで売られたことのない方々を集めて、一緒に催事をやらせていただき、みなさんにその商品価値を知ってもらうと思っています。
たくさん商品がありすぎて、分からない、どうするんだ、みたいなものを、あえてオフラインで持ってくるみたいなやり方がありまして。それを一緒にやらせていただくなかで、こういった試みをどんどん活発化させていって、どうしたらお客さんが本当に喜んでもらえるような商品を提供できるのかを、一緒に考えさせていただいて、これからもどんどん、ネット上も含めて一緒にやらせていただけたらありがたいと思っております。
川邊:タオバオはアリババがやっているんで、我々にとっては親戚筋みたいなもんです(ヤフーの親会社であるソフトバンクが、アリババに32%出資)。あの日も、「こういうことやったよ」っていう情報が向こうから来たんですけれど、もうすさまじいですよ、一日5600億円ですから。我々の何年分だっていう議論になったもんね、あのとき。要するに、さっき北川さんがおっしゃっていたように、「買い物はエンターテインメントである」っていうのを、もろ、やっているんですよね。
どちらかというと日本は、この10年、20年はデフレで、買い物というと「1円でも安く」みたいな風潮でした。さっきもちょっと大西さんとお話したんですけど、どうしてもECでも、検索のソートが「安い物順」になっていっちゃうんです。けれど、中国では、買い物は快楽ですよ。エンターテインメント。楽しいもの。
11月11日は、テレビ中継もやっていたし、最後に店が閉まったときには、花火がどかーんとタオバオの本社で打ち上げられて、すさまじいお祭り騒ぎで、それをみんなで楽しんでいるんですね。しかも1ヶ月前からいろいろあおりを入れて、巨大なエンターテインメントにしている。ああいうのは、見習っていきたいですね。ヤフーもやりたいと思っています。はい。
小野:小澤さん、なんかお祭りと聞けば、なぜか小澤さんを想像してしまうんですけれども。
小澤:ヤフーの無料化って、端的に言うと、タオバオモデルの作業です。ことあるごとに、会長である孫のほうから、「タオバオを見習え」とか「(アリババCEOの)ジャックがああ言ったこう言った」とか「そもそもタオバオを持ってきたい」とか、言われています。
中国のEC市場では、2000年代までイーベイが9割くらいのシェアがあったんですね。そこに、孫さん曰く、「ジャックに俺がアドバイスした」そうですが、タオバオはECを無料化したことで、今の地位を築いている、と。そのポイントは、「買えないものはない」という世界をあの中国で作り上げることである、と。今、タオバオは、7、8億種類の商品を扱っていて、流通総額は年間17兆円です。途方もないです。
そして、11月11日のシングル・デイには、最初の10秒で16億円売ったと教えてもらって、もう愕然としました。先ほど川邊からもありましたけれども、中国の国民全体が、消費に対するものすごくどん欲な意欲を持っていて、安く買うとかっていう形ではなく、買い物自体を楽しむと。
先ほど北川さんの話にもありましたが、買い物自体の楽しさをものすごく追求した企画が、タオバオのなかにたくさんあります。我々ひたすら、それを見ていて。それを日本流に解釈するとこうなのかなあ、というのが、2013年の年末商戦から始まります。相当タオバオを意識した実験をさせていただいております。
川邊:有り体に言うと、タオバオの真似です。
小澤:まあなるべくその言葉を使わないように話したつもりだったんですけれどね(笑)。意識をして、やらせていただいてますんで。まあちょっと、これからいかに楽しんで買っていただくか。そうでもない限り、Yahoo!ショッピングを使う意味がないと。ここ5、6年、まったく使う意味がなかったYahoo!ショッピングですから、そういったエンターテインメント性を含めて頑張る、ということになろうかと思います。
北川:ありがとうございます。ちょっと僕聞きたかったんですけれども、Tモールって無料じゃないほうですよね? タオバオは2つモールを持っていて、大きいほうがB to C のBTモールで、出店料を取っているほうですよね?
小澤:Tモールは、いわゆるタオバオのなかから、優良な方々だけが集まっているものでございまして。私は今わざと、ごっちゃに話をさせていただいたんでございますけれども。
北川:僕の理解では、タオバオは優良店舗を作ることによって、成功したビジネスモデルを作っています。ヤフーさんはその逆を行っているので、なぜなんだろう、とすごく気になっていたんですけれども。
小澤:それは見方によっては「迷走」というんでしょうね。
小野:見事にはぐらかしましたね。ちょっと今、ヤフーさんのトップ画面を見て驚いたんですけれども。
川邊:タオバオっぽい。うーん。タオバオっぽい。
小野:いろいろと、まさに催事がたくさん、行われてきているんですね。毎日開催中……。これ完全にタオバオっぽいですね。
川邊:そうですね。そうなっちゃいましたね。でもまあ、買い物が楽しくなるんだからいいんじゃないかな、と。
小野:ありがとうございます。
小澤:結局、ここから経由で行った先に、その出店者さんの商品があるわけで。ヤフーのトップに、「自分の商品が出るじゃん」っていうのは、非常に集客面では魅力です。これは、広告価値換算でいったら、1日いくらですかね。すさまじい金額です。
川邊:最終的にはあの枠を、楽天さんとアマゾンさんに買っていただきたいと思っているんです。当然、伊勢丹さんにも、お願いします。
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