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イベントから見るインバウンド、地方再生(全4記事)

「僕の町に来て!」熱い思いに応える ニコニコ町会議が地方にもたらすもの

「もしもしにっぽんフェスティバル」とのコラボレーションで開催された、日本のエンターテインメントの明日を発信するトークセッションイベント「THE BIG PARADE」。「イベントから見るインバウンド、地方再生」と題したセッションには、日本各地、そして世界でイベントを開催する3名が登壇。本パートでは、ニコニコ超会議の地方版「ニコニコ町会議」やアソビシステムが地方と取り組んだイベント事例が紹介されました。地方でイベントを行うことの難しさや、その意義について話されています。

一人ひとりがインフルエンサーに

中川悠介氏(以下、中川):では次、横澤さんから説明をお願いします。

横澤大輔氏(以下、横澤):はい。僕からご紹介したいのが「ニコニコ町会議」です。先ほども申し上げました「ニコニコ超会議」というイベントを幕張メッセで2日間行っているのですが、ニコニコ動画ユーザーが、約5,000万人おり、その5,000万人に向けて(イベントを)やっていくなかで、全国、世界中に散らばっているユーザーに対して東京中心にやっていくことが、ネットメディアとして正しいのか、と。もちろん中心は東京なんですが、その考えのもとで、超会議のミニ版を地方に持っていこうと始めたのが「ニコニコ町会議」です。今年で、4年目を迎えます。

大体1年で14ヶ所を回りまして、約20万人ぐらいの動員があり、約300万人のネット視聴者がいます。

これは動画を投稿する人たちが投稿する際に、歌が好きな人は「歌ってみた」、踊りが好きな人は「踊ってみた」というかたちでいろいろジャンルが分けられています。そのジャンルごとにブースを設計いたしまして、1つの文化祭みたいなものを作りました。

ニコ動で有名になったアーティストや、実況主といわれるゲームがうまい人、喋りがうまい人などが集まって、皆で作っていくイベントです。

さっき村上さんもおっしゃられましたけど、一人ひとりがもうメディアを持っている時代ですので、彼ら一人ひとりがインフルエンサーになりながら、その地域、地域を盛り上げていく感じになっています。

ニコニコユーザーの55%が若者の強み

特徴としては、地方自治体と組みまして、夏祭りと併催をしています。それによって、夏祭りで集まっているお客様も我々が盛り上げて、我々が連れてきたお客様にも(夏祭りを)楽しんでいただくという感じで、大変親和性がいいです。

普通の街でやられているイベントっていうのは大体低年齢層からファミリー層、お年寄りまでを網羅するんですけど、若者だけとれてないっていう現状が実際にはあるそうです。

我々(ニコニコ動画は)は10代、20代のユーザーさんが大体55パーセントぐらいを占めています。若者を地方のお祭りに融合させることによって、全世代が夏祭りに集まるということがイベントの特徴になっています。

このニコニコ町会議では、今回SUZUKIさんがスポンサーについてくださいまして、こういった地方と町会議のプラットホームを使いながら、ユーザーさんのインフルエンサーを活用して、メディア発信などをしていくかたちです。

地域からのラブコールに応える

これは(開催地を)どういうふうに選定しているかといいますと、ユーザーに来てほしい街を募集します。そうすると大体、今年ですと2,800通ぐらいのオファーがありまして、そのなかで一番熱いメッセージをくれた方のところに行くというようなことをしています。

なぜかと言いますと、今のコンテンツは、わりと消費型なコンテンツが多いと僕は感じていて、そうするとユーザーさんが自分のものというふうに感じない。そういうところが、コンテンツとユーザーを離す原因になっているんじゃないかと、僕はいつも思ってます。

であれば、コンテンツにストーリーをしっかりつけてあげて、そのストーリーにお客さんが乗って、そのコンテンツが自分のものだって思わせられるように(したい)。そのためにはまず、どうするかということの一環で、ユーザーからメッセージをもらったりということをしています。

札幌、名古屋、大阪、福岡に関しては、毎年開催を行い、ほかは、自治体の方と協議をしながら開催をしています。

ステージイベントをメインにしておりまして、そこで地方のおいしいものや特産品を紹介したり、ユーザーさんのインフルエンサーを活用しながら、地方の魅力を発信できている。

ということで、今、テレ東の「なんでも鑑定団」の次に「町会議」を呼びたい、と言ってくれるぐらいのブランドにはなれたのかなと思ってます。

これは1個の手段で、目的ではないので、うちのイベントってすべて赤字なんですね。ポータル事業、ニコニコ動画全体で黒字になればいいというプラットホーム戦略のなかでやっている感じです。

新しい試み、地方創生として、今30ぐらいの地方自治体と組んでいます。ネットとリアルが融合したプラットホームを使って、まだまだできることがいっぱいあるので、そこにひとつの可能性がまだ眠っているんじゃないかな、と。

事例はまだ少ないですけれども、人の波ができて初めてそこからムーブメントだったり文化っていうのは生まれると思っているので、まずはその人を集める作業がこの町会議・超会議でできているんじゃないかなと思ってます。

中川:ありがとうございます。お二人とも(一緒にいても)普段は僕が飯食って飲んでるばっかりだったので(笑)、真面目な話聞くとやはりすごく興味深いですね。

「かわいいね!金沢」をキーワードに

うちも結構、地方でもやらせてもらっていて、アソビシステムの事例を話させてもらいます。去年は沖縄が多かったんですけれど、今年は、大阪と金沢でやりました。

大阪はMBSさんと一緒に組ませてもらって茶屋町、MBSさんの本社がある茶屋町全体を使って、イベントと番組の生放送と連動してやらせてもらいました。普段、茶屋町に集まる、MBSさんのお客さんと違う層が集まってすごく好評を得て、また続きができればいいなと思ってます。

金沢なんですけど、今年3月に新幹線が開通して、新幹線開通の駅の発着音を弊社の中田ヤスタカが作らせていただいて、それをきっかけに、金沢のキャッチフレーズが「いいね金沢」というキャッチフレーズなので、それを「かわいいね!金沢」にしまして。

「金沢21世紀美術館」の館長と僕と増田セバスチャンってアートディレクターと今回、ショーの演出をしてもらった山田淳也さんと篠原ともえさんとで金沢でフォーラムを開きました。

そこで金沢の伝統工芸の方々とトークセッションして、金沢の伝統工芸をかわいい目線で切り口変えてそれを世界に売りだしていこうみたいなことをやらせてもらいました。

そのきっかけで9月にはイベントを開きました。「かわいいね!金沢」というテーマで、金沢の駅の鼓門の下でファッションショーをやらせてもらって、その後はきゃりー(ぱみゅぱみゅ)がライブのときに金沢の伝統工芸品を身につけて出るとか。

地方でイベントをする難しさはある?

そういうようなかたちで地元の取り組みをしてます。僕も実際感じているんですけど、地方の方々ってすごくいろんなイベントに対して前向きにやっぱりやってくれてて。

ちょっとさっきも話したんですけど、やっぱり「東京のイベントが来る」というので警戒する人もいるし、それをちゃんと受け入れようとしてくれて頑張ってくれる人がやっぱりすごく多いなって感じます。

そういう人たちのためにももっと頑張っていくべきだなと思うので、この3社がやってることをいろいろパズルしていけば、47都道府県でいろんなイベントできるんじゃないかなと思うんで、そういう可能性もおもしろいのかなと思ったりしてます。どうですか?

鈴木貴歩氏(以下、鈴木):そうですね。やっぱり先ほど横澤さんがおっしゃっていた「イベントがプラットホームになる」ということを3社それぞれがすごく実現されているなって思って。

単に何かを集めて見せるってことではなく、一般の人が上にあがってインフルエンサーになるというところ、取り上げるというところが、その町とか地方自治体の活性化に直結してるのかなと。

多分、単純にアーティストが来て、わーっとイベントをやって帰るだけだとそんなに活性化っていうところには繋がらなくて、それが自然とできてるということが素晴らしいなと思いました。

中川:実際どうですか、地方でやるとき、最初のつまづきとか難しさみたいなものってあったと思うんですけれど、のり君(村上氏)どうですか?

村上範義氏(以下、村上):つまづきというか、いつもほとんど僕らは何もないところからチャンスを見つけてどんどんと生み出していくので。東京ガールズコレクション自体も、「この日にやる」と年2回、僕らが勝手に決めて開催してるだけなので、いつも無から自分たちでこのタイミングっていうのを仕掛けてきた。

なので、すごく難題だらけだなと思ってはいるんですけど。地方と東京の差、僕が一番カギになるなと思ってるのは、多分、情報の格差はもうほとんどないと(いうこと)。

SNSだったり、もちろんニコニコも、テレビメディアもそうなんですけど、スマホの普及もあって、東京の女の子でも北九州の女の子でも長野の女の子でも情報はみんな同じものを持ってる。

ただその体験・体感の格差っていうのはものすごく大きいなと思ってまして。

僕は、そこにイベントというお祭りを起こしていくことのヒントやチャンス、これは3社がやってるところなんですけれど。そういうことがすごく足りないなというのを感じています。

大昔から全国各地でお祭りが存在して、そのお祭りで何をやるかっていうと豊作を祝ったりとか、そこで男女が出会って、子供が生まれていくとか。街を盛り上げていくための1つのきっかけであるお祭りが、人間の営みのなかで何百年も続いていて、そういったなかで僕らも持ってるエネルギーをどんどん生み出していく。

そういうお祭りを中心に新しい価値を創造していくっていうところに、3社ともすごくチャンスを感じて、実際に行動に移してると思うんです。

特に先ほど中川さんが言っていたように、東京でやってたコンテンツがポンと地方に行ったときの、その熱狂たるや本当に大きくて。僕らも手前味噌なんですけどもTGCをすごくメディアに扱っていただいたり、ニュースになったり。

イベントの熱狂が人の心を動かす

市長と「TGCをやろう」って言うと、本当にその何かわからないんですが、わくわく感というか、市の60歳の方もイベントが終わった後涙を流すみたいな。何となくそのイベントの体感、熱狂というところにすごく人の心が動く部分があるんだなっていうのをすごく感じてまして。

先ほどから、いろんなキーワードでSNSとかがすごく出てると思うんですけど、情報が同じだからこそ、人と違う体感をしたい。

で、皆がメディアである、発信したいってことはニュースと同じなので、皆が記者だと思うんですね。皆が記者で、独自の体験をして(発信したい)、自分だけの体験をしたい。

逆に、例えばSNSの「いいね」で、変なものを押すと自分がダサい人だと思われちゃうみたいなことがあると思うんです。

だから、東京にもない地域オリジナルのコンテンツを(作りたい)。例えば、さっきのTGCもそうなんですけど、TGC北九州なんかは東京でもまったく見られないコンテンツなんですね。

東京でやったクリエイティブと、北九州に埋もれていたコンテンツを掛け合わせた見世物、オリジナルのお祭りになっているので、そういうものを北九州の人だけが体感できる、それがすごくキーだと思っていて。さっきの中川さんの金沢の話もそうだと思うんですけど、そこでしか見れないこと。

でも、横澤さんが言っていたように東京でやる必要はないっていうのはまさにその通りで。地域のコンテンツをインキュベートした、何かそのイベントみたいなものを全国それぞれが自分たちの切り口で発信できる時代になってきた。

だから、そういったところをいち早くイベントっていうものを使いながらムーブメント化していけると、たくさんのチャンスがあるんじゃないかなと思ってます。

中川:ありがとうございます。

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