2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鈴木貴歩氏(以下、鈴木):ゲームを通じてコミュニティができてるっていうのはおもしろいですね。そのBrain Warsのヒットを受けて、Brain Dotsにいったと。
1作目と2作目で大元のコンセプトはあまり変わらないと思うんですが、Brain Dotsに込めてるものって、1作目と違ったものはありましたか?
高場大樹氏(以下、高場):基本的にはほとんど同じベース。全世界、全世代の人が使えるものを作るっていうのが1番根底にあるんです。その上で、対戦をやめました。
鈴木:対戦をまずやめた。最初の2つの大きなコンセプトのうちの1つをやめた、と。
高場:なぜなら対戦って、2対1の対戦なので勝ち負けがあるんですよ。だから、勝った人はうれしいけど負けた人はうれしくないっていう構図になってしまう。そういう対戦ゲームって勝つから楽しいんで、勝つ人はひたすら続けるんです。
なので強い人1割がずっと残るっていうのは対戦ゲームのスタイルとしてあることで、それがBrain Warsの良さなんですけど、逆に負けちゃう人はなかなか長続きしないっていうのが課題だったんです。
それを今回、1人でゲームをコツコツ進めるかたちにしたのがBrain Dots。これは本当に幅広い人に使ってもらえます。ただ競う要素が少ないので、長期的な深さはないってところで、両アプリちょっと特性が違う感じになっていますね。
鈴木:木下さん、そのポートフォリオというか、両者のゲームの住み分けについては最初どう思いましたか?
木下慶彦氏(以下、木下):作るときですか?
鈴木:作るときというか、2作目にいくときに「2作目こうするぞ」みたいなことを聞いたとき。
木下:それでいくとちょっと恥ずかしい話ですけど、事業のことは社長が決めると思っているので、もう「やりたいようにやってくれ」と。僕が口出しなんかしたら絶対いいものができないと思っているので、本当に何も言わないですね。
鈴木:そういうふうには言わないと。
木下:ただプロトタイプを見せてもらったときに「これはおもしろい!」とか、そういうのは言う。もちろん、それはただのユーザーというか1人のユーザー候補みたいなインサイトなので、そこは「社長が命かけて作ってるものを応援します」って感じです。
鈴木:なるほど。そういうスタンスということですね。
高場:月に1回株主を集めて報告会みたいなのをしてるんですけど、Brain Dotsをリリースする前、ちょうどプロセスの真ん中ぐらいである程度できたときに、端末に全部インストールしてみんなに配って(ゲームを)やってもらったら、20分ぐらいみんなやり続けちゃって。すごいハマッて、そこで「おもしろそうだな」っていうのを感じましたね。
鈴木:株主の皆さんも結構、お忙しい方ばかりですもんね。
高場:そうですね。
鈴木:20分がそのプレイに消えてしまったと(笑)。
高場:20分が消えましたね(笑)。でも、そんな株主ばかりですね。
鈴木:なるほど。それはいいですね。もうちょっと具体的な話も聞きたいんですけど、英語化とかマルチランゲージ化ってどういうふうに? メニュー画面もマルチランゲージになってるんでしたっけ? ストアの説明文とか。
高場:なってますね。
鈴木:それは英語だけですか?
高場:Brain Warsが8言語、Brain Dotsが15言語。プラスもう1言語、アラビア語を今増やそうとしています。
鈴木:アラビア語。それはなぜですか?
高場:アラビア語が扱えるインターン生を見つけたんで(笑)。来てくれるインターン生に翻訳してもらってます。
鈴木:なるほど。それは翻訳はインターンとか、そういう人に頼んでやってもらっているというイメージですか?
高場:そうですね。すごいたくさん翻訳するんで、エンジニアの仕事が大変になっちゃうんです。組み込みとか。それはシステム化をしていて、それを利用して翻訳にあたるように仕組みを作っちゃってるんです。
内部システムを作ってるんですけど、自分の友達とかを誘って、そのシステムにアカウント登録してもらって。自分の友達とその友達の友達、っていうので16言語集まったという感じです。
鈴木:翻訳クラウドソーシングみたいなのが、トランスリミットだけのためにあるっていうイメージですか?
高場:はい。
鈴木:それはおもしろいですね。
高場:なので本当に外注って感じじゃなくて、友達にやってもらっているという感じで、お礼をお渡しするような感じですね。
鈴木:それを聞こうと思ったんですけど、いやらしい話ですけどギャラはどうなのかなと(笑)。
高場:本当に友達関係なんで、そんなに多くはないですけど。チョロっとしたギャラ。彼ら自身も翻訳して、そのサービスが自分たちの国で使われるというのはすごくうれしいみたいで。
韓国語を翻訳してくれた子は、韓国の無料ランキングで2週間か3週間ぐらい、ずっと1位だったことがあったんですけど、大喜びで。毎日プレイ動画を上げたり、友達に勧めたり。「これ、翻訳私が携わってるんですよ」みたいな感じで、どんどん広めてくれるっていう。
鈴木:なるほど、アンバサダー的なこともやってくれてるってことですよね。
高場:そうですね、まさにそういう感じになっています。
鈴木:でも、コミュニティ作りを意識してなかったとしても、コミュニティができて、それをちゃんと巻き込んで、アンバサダーになってもらう仕組みっていうのは、これは結構エンターテインメントにも当てはまることだと思うんです。
それをソーシャルメディアでやっているパターンもありますし。木下さんから見ていかがですか?
木下:彼は僕らみたいな投資家もそうだし、今の仕組みもそうですが、「自分が関わる意義を見つけてくれるような人」をすごく巻き込める人だなぁと思っていて。これはなかなか代替がきかない。
探してもなかなか難しいし、ここでやっているのは今、世界に向けたユニークなサービスなので。世界に向けてというところがキモだと思います。だからこういう仕組みでチャレンジすると、いろんな国の人が手伝ってくれる。そういうチャレンジはもっとしたいなと。
鈴木:なるほど。やり方として具体的に教えていただいてすごい参考になりました。ここからちょっと木下さんに聞きたいんですけど、木下さんもベンチャー投資をやって、先ほど投資先が出ていましたけど、どういう視点で選んでいるんですか?
木下:ちょっと前まではとにかく大きいマーケット、「世界に向けて」みたいなところがスローガンだったと思っています。
大きいマーケットっていうのは、今だったらいろんなものがネットに接続されていく。さっきちょっと紹介しましたが、歯磨きとかそういうものがIT化されると実はめちゃくちゃマーケットが大きいんじゃないかっていう空想値から見たのが大きかったです。
トランスリミットの場合、「ゲームっていう領域を世界向けにやりたい」というのはすごくいいなと思いました。
ただ、最近思ってるのはそれと合わせて「人」なんですよね。人はすごく大事にしてきたので、僕の投資先はみんな天才ばかりなんですが、これは結果論だと思っていて。その天才かどうかを見分ける方法もあるわけです。
鈴木:木下メソッドがある?
木下:木下メソッド。……スカイランドメソッドにしていただいて(笑)。
鈴木:マックスメソッド(笑)。
木下:「ある」っていうのは結構簡単な部分で、もうすでに何かやってるんですよね。それをちゃんと聞くっていう。鈴木さんはあと50年、「音楽×デジタル」やりますか? どうですか?
鈴木:やります。
木下:ですよね。みたいな人を、いい業界に当てないといけなくて。それだけだと思います。たとえばさっき「エンジニアで50年」っていうのを言ってくれましたが、いいエンジニアを探すのはCTOや社長のときと同じで、本当にいい人は自分で毎日コードを書いている。
毎日コードを書いていて、土日も書くっていうふうにやっている。イチローとかもやっぱり、土日も(バットを)振ってたはずなんです。土日とか関係ないですね。
コードを書いていた結果、Webサービスを作ったり、今だったらアプリを作ったりっていうのがあるんですよね。
みんなアプリを作ってた人やWebサービスを作ってた人を「うちのチームに入れたいんです」って言うんですが、僕もそんな感じでした。
でも、それはラッキーじゃないとわかんないですよね。Webサービスを作っている人が起業したいかもわからないし、その人自体見つけることが難しい。だから質問が間違ってたなと僕は思っていて、「毎日やってることをちゃんと聞く」ってことが重要というか。
鈴木:今回の「日本から世界を狙っていく」ってところでいうと、スカイランドベンチャーズとしても、#SVFT(注:グローバルスタートアップイベント)をやられていて、全編英語のスタートアップカンファレンスっていうのを、何月でしたっけ?
木下:6月にやりました。
鈴木:6月にやられていて。その時点では木下さん、確かそんなに英語が……でしたよね(笑)。
木下:(笑)。
鈴木:そのなかでそれを立ち上げるっていうのが、それはもう習慣じゃないですけど、「何をすでにやっているか」みたいなことに関係してくるのかなと思ったんですけど。そのあたりのきっかけから教えていただいていいですか?
木下:これはトランスリミットと繋がっていて。Brain Warsが当たったのはもう1年半弱くらい前。そういう瞬間から僕の身近に世界にサービスを提供している人が来た。でも、さっきお伝えしていたように、英語、そんなに得意じゃないです。
得意じゃないですけど、英語でスピーチとか、今ここ数ヶ月は韓国とか台湾で日本のスタートアップシーンをスピーチさせていただく機会をもらっていて、今後も全然やろうと思ってますね。
鈴木:わざわざ言ったのは、そういう人でもやってるんだよっていう話だけですので(笑)。すごいですよね、やっぱり。
木下:でもそういう問題意識が入口にあって。あとは僕、4月にSLUSH(注:世界的なスタートアップイベント)に出たのがすごい良かったと思いますね。
鈴木:SLUSH ASIAっていう。お台場のULTRA JAPAN(注:都市型ダンスミュージックフェスティバル)をやったところでやってたんですけど。
木下:同じなんですね(笑)。
鈴木:同じです、あそこ。
木下:SLUSHは、第1回で3,000人ぐらいの(集客で)日本でイベントが行われて、外国人が多分4割ぐらいはいたと思いますね。
「こういう場を日本でも作れるんだな」っていうのを非常に感じて。僕は別に運営メンバーだったわけじゃなくて、トランスリミットの支援者でもある孫泰蔵さんが企画を作ってくれたところにお邪魔しただけです。
(孫泰蔵さんが)主導されてたので、興味を持って参加をしたというときに、非常にある意味感動したというか。それも全部英語のイベントだったし、外国人いるなぁと。
いるというか日本にも外国人はこれだけ来るのだと。今回の「もしもしにっぽん」もそうだと思うんですけど、外国人って日本にすごい興味を持ってるんだなというのを非常に肌で感じたので。
どういうふうに、もっとそういう血を入れていくかって思ったときに、シンボリックなイベントをそのあと3ヶ月後ぐらいに600人ぐらい集めてやったという感じです。
鈴木:それも結構早いタイミング、SLUSHから早いタイミングで「やるぞ!」って宣言されてましたよね。
木下:はい! でもだいたい僕はイベントとか1ヶ月で企画してたんで、むしろ遅いかなと思いながらやってました。とにかくイベントをやっているときはいつもいろんな人と会っているので、そのなかで応援してくれる人を募ったり。スポンサーとかそうもですね。
そういう活動をしているので、別にある意味使いわけていないというか。毎日いろんな人と未来に何ができるかを考えて、今も考えているということです。
鈴木:#SVFTをやって、そのあと見える景色が変わったみたいなことってありますか?
木下:さっき紹介したんですけど、ここに載ってる1人、左側の女の子なんですけど、
インド人のインターンがイベントのスタッフをやってくれて。あと、そのときイベントスタッフした子達がインターン生でまず来てくれました。3人ぐらい、インド、中国、韓国人のインターンがうちに来てくれて。
今、インド人2人います。もう1人なんかはIIT、インド工科大学っていう、すごいエンジニアの有名校から東大のマスターに来てる。そういう子が来てくれるようになったんですよ。2人来たら3人目4人目もあるなと(笑)。
インドから日本にスタートアップの仕事をしたい奴は全員僕のとこ来てくれるんじゃないかな、と今仮説を持ってますね。
こういうことがすごい重要だと思っていて、イベントとかをやるとき、特にスタートアップとかビジネスのイベントをやるときって、そこでの出会いをめちゃくちゃ重要視したり。やっぱりオーガナイズをされている鈴木さんやスタッフの人たちって、はっきり言って一番優秀だと思うので。
なので、その人たちと、どうロング・リレーションできるかっていうのをめちゃくちゃ考える。僕らにとっては学生のスタッフなんだけど、彼らは日本で何かをものすごくやりたいから、インドや中国から日本に来てるわけです。そういう人と、この仕事してからあんまり接点がなかったので、すごい大事だなと思っています。
鈴木:なるほど。そういうところが起点になって、どんどん世界が広がっていくっていうことですよね。
木下:そのディパリっていうインド人の女の子、僕が1年前に英語の先生を探していたときに紹介を受けて、結局今は別に先生じゃないんですけど(笑)。でもそんな出会いなんですよ。それが今インターンしてくれてるっていう。
鈴木:「スカイランドの仕事おもしろそうだからやりたい」っていう話だったんですね。
木下:そこから半年後とかに、「インターンで来ない?」とか、さっきの#SVFTってイベントをやろうっていう話があって。どこに出会いのきっかけがあるかわからないですね。
鈴木:それもやっぱり、宣言したりとかやるぞって決めることで生まれてくるということですよね。
時間もそろそろ迫ってきたのでまとめていくと、世界を狙うということは皆さん頭にあったりするんですけど、それをどう分解していくかっていうことがやっぱり大事なのかなと。
トランスリミットさんの話を聞いて、分解した上でそれをぶらさずに追求していく、常にいいものを作っていくっていうところがあるのかと。
やっぱりあとは、発信し続けるってことですよね。発信し続けるとコミュニティが自然にできて、さらにそこからまた自然発生的な広がりができていくというようなことが、今まさにこのお2人が巻き起こしてることかなと思います。
もし質問があれば取りたいんですけど、いかがでしょうか?
木下:ちょっと宣伝なんですけど、僕は50年ベンチャーキャピタリストをやろうと思っていますので。別に10年後でもいいです、もし何らかの接点があると思った方はぜひ(いらしてください)。うちは渋谷の道玄坂にオフィスを構えていて、そこに来ていただいたら今日みたいな話を1対1でさせていただきたいです。
まさに今日みたいな、数十人ぐらいで社内で何らかのセミナー形式で、たとえば僕がスタートアップの話をさせていただく機会とか、今日のトランスリミットの高場さんのような今一番世界に向けてチャレンジしているような人たちを連れて何かやってもいいかもしれませんが、そういう場がもしあれば、ぜひ声をかけていただきたいなと。
いつでも。機会をすぐにほしいとはまったく思っていなくて、「いつか仕事ができるな」と思った人は、ぜひ声をかけてほしいと思っています。
鈴木:ぜひ皆さん声をかけてください。高場さん、木下さん、どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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