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シリコンバレーで今何が起きているか(全5記事)

「 Googleにまだいるの?」永続性より変化を求めるシリコンバレーの仕事観

2015年4月29日に起業家、ベンチャー経営に関わる学者・政治家・官僚・メディアなどの第一線で活躍するリーダーたちが集う「G1ベンチャー2015」が開催されました。第2部の分科会Aには、グリー・青柳直樹氏、Shift Payments・Meg Nakamura氏、Miselu Inc・吉川欣也氏の3名が登壇。モデレーターのScrum Ventures・宮田拓弥氏の進行で「シリコンバレーで今何が起きているか」をテーマに、現地のスタートアップ支援やモノづくりの最新事情について語り合いました。本パートでは、過密化するシリコンバレーの人口問題やシリコンバレーと日本のVCの違いなど、現地で起業を志す人に向けた実践的なアドバイスを送りました。

熱量が高まる福岡のスタートアップ

宮田拓弥氏(以下、宮田):これからディスカッションに入っていくんですけど、最初のきっかけの質問として、今実際のシリコンバレーの中……移民の話とか、そもそも東京じゃないんじゃないかとか、いろいろあったんですけど。

市長は今4、5年目くらいだと思うんですけど、(福岡が)変わってきたところと、彼らにご質問などがあればお願いします。

高島宗一郎氏(以下、高島):福岡市長の高島と申します。福岡って聞いたことあります? 向こうで全然聞かないでしょう?

(会場笑)

青柳直樹氏(以下、青柳):福岡生まれです。

Meg Nakamura氏(以下、Meg):大好きです。もつ鍋も美味しかったです。

高島:ありがとうございます! でも現実問題、シリコンバレーには福岡というのは届いていないと思うんですよね。

私はシアトルに行ってとてもインスパイアされて、人口が福岡の半分のシアトルでどうしてあれだけ、コストコとかAmazonとかStarbucksとかいろんな会社がいっぱい生まれているんだろうと思ったときに、非常にリバブルな環境があって、大学の研究施設があって、オープンになっているという。

強みとしては福岡とまったく同じだねというところから、自分はとてもインスパイアされて「住みやすい地方と経済」というのが結びついた瞬間だったんですね。

それで声をかけていて特区にも選ばれて、1年間で何が変わってきたか。今日は、麻生外務大臣が「気」が大事だとおっしゃっていましたけど、今めちゃくちゃ「熱量」が集まってきているという印象です。

ですから、IPO直前とかそういうのではなくて、起業前の前、みたいな人たちのボリュームゾーンが一番厚いんです。

つまり一番裾野のところがすごく広がってきた。裾野が広い山でないと高い山になれないので。

スタートアップカフェのような場ができたことによって、中にいる人たちがどんどん有機的につながって、小さなエコシステム、始業の人たちが自分たちでどんどんセミナーやったりとか、人が人を呼ぶようなかたちで集まってきていて。

地方というのも日本にとってすごく大きな「地方創生」みたいなキーワードになっているんですけれども、ベンチャーの方にいろいろお話を聞いても、地方の良さも味わいたいし、でも東京には都会的な「人のネットワーク」という強みがあるので、そういう意味では適度に田舎で、でも田舎過ぎないところがちょうどいいということで。

今福岡には、ビジネスコストがものすごく低くて、同じ一定の額があったら何度もトライ&エラーを長期間お試しができるという強みがある。

そういう場というのは、日本全体のインキュベート施設のイメージで、熱を持った人たちが集まってきているので、今おっしゃったようなコミュニティー、メガシティではない強みというのは、だいたいさっき言った通りです。

今シリコンバレーは集まっても、この人たちが仕切っているというのがわからないほど途方もない数がいるというお話があったんですけど、福岡ってある程度見えるんですよね。

逆にその良さがおせっかいなところもあって、ハンズオンでみんながつながりあって助けているというところがあるので、すごくユニークなコミュニティーができていると思うし、これをぜひいい形で他の地方にも……。そして日本全体が盛り上がってくればいいなと思っています。

シリコンバレーの人口問題

宮田:ありがとうございます。今、高島市長の話を聞いていて思ったんですけど、ある意味青柳さんがおっしゃったように、今シリコンバレーがものすごく強くなっている一方で、ちょっとクリティカルなところにきているのは、家賃とかが異常(に高い)。

ワンルームマンションが4000ドルってもうわけがわからないし、食べ物も高いし、住むところがないんじゃないかというくらい人がいっぱいいる。

うちの小学校も今タウンミーティングを開いて、「人口増えすぎているから先生足りません」って緊急会議をするくらい人口が増えているんですね。

さっきおっしゃったみたいに、東京に対しての福岡みたいなものがシリコンバレーでもできてきたりするんでしょうか? あまりにも集積していて、いいんだけどちょっと限界という感じもしたりして。そんなことないかな?

青柳:まだ工事してますよね。倉庫街だったところが、今SOMAという地域になっていて、先ほどおっしゃっていたブラナンとか僕が住んでいたキングストリートとかって、ここ10年で犯罪多発地域から、超かっこいいITスポットになったと思うんです。

その南の地域を今どんどんつくっているので、おそらくもうしばらくはいくかなと思います。

吉川欣也氏(以下、吉川):ドッグパッチの向こう側ってまだまだできるから大丈夫です(笑)。

宮田:確かにそうですね(笑)。ちょっとオープンに質問を受けたいと思うので、ぜひ挙手していただければと思います。

シリコンバレーは上場企業にはつらい場所

質問者:バイアウト、IPOを含めたイグジットまでの話って多く語られるんですけれども、ポストIPOとかの事業の存続とか継承って日本とシリコンバレーで違う考え方があるのかを知りたいんですが。

宮田:Yahooがマルチメディアを招き入れたように、まさに紺野さんも今、事業会社をやられているんですけど、たぶん青柳さんが一番適切な気がするので。

スタートアップがでかくなったあと、Twitterがジャック・ドーシーからディック・コストロに引き継いだりとかマリッサ・メイヤーも含めて、プロフェッショナルCEOって結構いますね……みたいなことも含めてもしインサイトがあれば。

青柳:シリコンバレーは上場企業にはつらい場所になっているなとは思います。

スタートアップのIPOとかイグジットのところ、実際M&Aのイグジットは9割なので、そういうところで提供できるアップサイドとかオポチュニティーに比べて、パブリックカンパニーであることのコストが特にベイエリアにおいて高くなっていると思います。

ほかの地域においては、安定と実際そこにいる人たちというのがバランスすると思うんですけれども、シリコンバレーにおいてはパブリックカンパニーに勤めるというのは「ちょっとひと休み」じゃないですけど、「スタートアップ入ったんだけど、うまくいかなかったから1回ちょっとGoogleで働いとくか」みたいな感覚があって(笑)。

若干シリコンバレーコミュニティーの中では、そういうスポットになってしまいがちだなと思います。

パブリックカンパニーの、例えばJINGAとかGoogleモバイルとかいますけど、みんなそういう意味では苦労している。あと、会社をTOBで売ることをとにかく考えているなと。

アメリカと日本のプロ経営者の定義

青柳:プロフェッショナル経営者というときの定義って、日本だとそれこそベネッセに原田(泳幸)さんが行かれてみたいな、ああいうのをプロ経営者って感じですけど。

シリコンバレーのプロ経営者は、会社を高く売れる人をプロ経営者と呼んでいて、その人たちを引っ張ってきて、うまくイグジットさせるみたいなマーケットがPre-IPOでIPOのプロセスとM&Aを同時に走らせるとか、上場した会社を同業の会社に高く売るみたいのがアメリカにおけるプロ経営者。

日本におけるプロ経営者ってそれだとすると相当マイノリティーで、そんな人、魑魅魍魎みたいな感じかなと思っていて(笑)。けっこう定義が違う気がします。

宮田:古くはGEみたいな会社も含めて長く続けることが大事だという、日本と同じような感覚もあるけど、確かにシリコンバレーは永続性よりは成長であり変化なので、そこはけっこう大きく違うところなのかなと思います。

吉川:確かにGoogleの言い方って、シリコンバレーでは「Big G」って言うんですよね。「まだいるのか、Big Gに?」というのは、日本とはたぶん感覚が違うと思います。

宮田:Googleが昔で言うIBMみたいな立ち位置になってきているということですよね。

吉川:そうですね。Yahooもですけど、日本のYahooとシリコンバレーに住んでるYahooイメージは全然違うので。Googleの見方も違います。僕自身も最近Googleには全然行ってないんですよね。

宮田:行く用事がない?

吉川:最近なんか新しいカフェができたらしいので、そこだけちょっと行ってみたいなというくらいで(笑)。

そういう情報くらいで、あとは行く会社がいっぱいあるんですよね。Googleに行くよりも、違う会社が次に出てるんで、そっちに時間使うほうがおもしろいというのがあって。

さっき青柳さんが言われたように「ちょっとひと休み」と、「子どももできたしそろそろ保険のこと考える」とか「Dropboxがエンタープライズやるらしい」「そっち行っとくか」とか。

そういう会話が、IPO前にちょっと成長しなきゃみたいなところに呼ばれる人たちって、もう層が決まってるんですね。「このタイミングであいつぜったい動くな」とか。そういうのが見えるので。

今日のテーマですけど、シリコンバレーはやっぱりスタートアップ、イノベーションするところに一番魅力を感じるので、何か新しいもの、誰も見てないもの、もしくはすっげーお金がかかること、世の中にインパクトが起こること、プラス最後にそれがキャッシュアウトできること。それがおもしろいところですね。

宮田:こんな感じで大丈夫ですか?

シリコンバレーの起業家はVCが大嫌い

質問者:よろしくお願いします。ビットコインをやっている会社で、日本のVCと経営陣の関係、アメリカのVCと経営陣の関係の違いを知りたいです。

私自身、何度かアメリカで資本調達しようと思って、けっこう玉砕してですね。なんとか1社は入れてもらったんですけれども、先週もアメリカのあるVCの人と話したんですが、たとえばプレゼンの途中で「もう時間の無駄だから帰れ」みたいなこともあって(笑)。

私のプレゼンってやっぱり日本人なので分厚いものをつくって見せるんですけど、「3ページにまとめて見せたほうがいいのかな」とか。

日本のVCさんと比べるとアメリカの投資家のほうがなんとなく偉そうなイメージがあるんですよ(笑)。

そのへんの関係性がわかっていないから、うまくいってないのかなという気もしています。

宮田:吉川さんとMegに聞くとおもしろいと思うので、まずは吉川さんから、(日本とアメリカの)両方で調達されて、VCとの関係を。

吉川:あんまり大きな声では言えないんですけど、シリコンバレーの起業家ってベンチャーキャピタル大嫌いなんですよね(笑)。基本的に嫌いというところから始まってるんですよね。

でもやっぱり自分がやらないと世の中変わらないから、資金調達がいると。それがベースになっています。

プラス、トレンドが来るので、起業家は成功・失敗の波があると思うので、絶対1回イグジットしとかなきゃと。イグジットして、またベンチャーキャピタルと信頼関係をつくるということがありますね。

ただ、ほとんどのシリコンバレーの起業家は玉砕してると思うし、「帰れ」って言われていると思います。僕も何度もそういうのを経験しているので。当たれば当たるほど、合うベンチャーキャピタルとか嫌いなベンチャーキャピタルとかがある。

ベンチャーキャピタル同士もみんな嫌いだったりするんですよね。それは絶対メディアには出てこないですね。悪口とかも。

やっぱり結果なので、結果を出せばベンチャーキャピタルも結果を出すし、ベンチャーキャピタルも次のファイナンス、1号できても2号できないところなんかいっぱいあるので。

その距離関係というのはあって、数をこなすしかないですね。GoProみたいなところも全然集まらなかったわけだし、結果的に新しいカテゴリーをつくって。

知ってる人間たちは、ほとんど玉砕していますね。アンディ・ルービンがつくった新しい会社なんかもすごいお金を集めているわけですよね。

そういう関係も1回離れて、いろいろあってまた一緒にくっつくとか、長く10年、20年とかかるので、ある期間だけで玉砕と言わないで、長く時間をかけることが重要かなと思います。

宮田:Megは?

Meg:investorとして、アメリカですと人に投資をしているんですね。ビジネスがこれだけ儲かるというプレゼンをもらって、「こういうリターンがくるから投資しよう」というよりも「彼がいいから投資する」んですね。

聞いた話だけなんですけど、日本のVCにピッチしに行くと、「3年後にはこういう黒字を出して、こういうリターンを目指してます」というローンみたいな感じなんですよね。

アメリカですと、「こういうビジョンがあって、すごい大きくなるけどまあ時間かかるんです」というような感じで、“I am the right person!”という話になるんですね。向こうも一緒にチームになってくれて、頑張ろうという感じなんです。

シリコンバレーのリファレンス文化

宮田:僕も2つあると思っていて、1つは玉砕されているという話だったんですが、日本と違うのは、基本的には起業家がえらいという感覚を僕も持ってるし、みんな持ってると思います。

なので吉川さんがおっしゃったように、適切な人に当たればというのはあると思います。ビットコインって本当にコアな、ビットコインしかやっていないファンドとかもあるので、わかんない人はわかんないじゃないですか。

たぶん資質とかピッチの問題だけじゃなくて、当たっている人の問題もあるかと思います。

もう1つは、さっき人を見るという話をしてたんですけど、僕がさっき言ったエンジェルがたくさん入ってキャップテーブルがものすごく長いという話とも関連するんですけど、誰が入れてるのかというのはすごく気にするんです。

吉川さんのおっしゃったように、まさにつながりで仕事をしているので、僕も日本でシードやった方が「シリーズAやりたい」という相談をたくさん受けるんですけど。

ほとんどできない最大の理由は、日本のエンジェル投資家の方々が、シリコンバレーでいうとつながりがないので、リストを見ても誰にリファレンスコールしていいかわからないから、たぶん魅力的な会社になかなか見えないというか。

僕がアドバイスしたいのは、1人でも2人でもいいので、エンジェルとかアドバイザーにちゃんとローカルでやっている人(をつける)。それは、青柳さんみたいな人なのかもしれないと思います。青柳さんが何かありそうだけど。

青柳:リファレンス文化が圧倒的に強いですね。VCさんのデューデリっていったときの意味するところは、リファレンスコールを20個かけるとかそういうことで、日本はたぶん1人に聞いて「これは誰々がいいって言ってたからいい」みたいな話で。

よっぽどあっちのほうが「あいつの信用」で投資をする比率が高いなと思いました。グリーディーかどうかとかは、けっこう人によると思います。

すごく落ち着いた「もう俺もシリコンバレーで20年もやっててさ、グリーディーにはやらないんだよ」っていう達観したおじちゃんみたいな人もいれば、スタートアップのCEOに「お前今すぐ会社売れ!」って言って、バンカー雇ってフォースするような日本にはいない感じもあっる。

そういう人は会社「WhatsApp(ワッツアップ)」とか、1兆円2兆円で売っちゃうわけですよ。そういう両方を見ているので、そこは人種の違いだと思います。

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