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シリコンバレーで今何が起きているか(全5記事)

読み書き・計算よりもプレゼンテーション シリコンバレーの小学校の教育スタイル

2015年4月29日に起業家、ベンチャー経営に関わる学者・政治家・官僚・メディアなどの第一線で活躍するリーダーたちが集う「G1ベンチャー2015」が開催されました。第2部の分科会Aには、グリー・青柳直樹氏、Shift Payments・Meg Nakamura氏、Miselu Inc・吉川欣也氏の3名が登壇。モデレーターのScrum Ventures・宮田拓弥氏の進行で「シリコンバレーで今何が起きているか」をテーマに、現地のスタートアップ支援やモノづくりの最新事情について語り合いました。本パートでは、アメリカの大学と起業家との関係性や、シリコンバレーの小学校で行われている授業について紹介します。

シリコンバレーの大学と起業家の関係

宮田拓弥氏(以下、宮田):ちょっと軸を変えて話したかったテーマが2つあって、1つは大学の役割という話。

あと、この前のパネルディスカッションで軍事とかDARPAの話がありました。実は僕もアメリカで一番最初につくった会社はDARPAから出資を受けていたので、軍事の研究と技術のつながりってすごく関係があると思うんですけど、少しそんな話をしていきたいと思います。

大学という切り口でいうと、シリコンバレーの真ん中にスタンフォードがあるわけですけど。僕が一番驚いたのが、スタンフォードの教授って金持ちなんですよね。

日本で大学の先生に「投資してくれ」って言っても、先生が投資するお金ってほぼないと思うんですけど、Googleも初期は自分の担当教授から投資をしてもらったように、基本的にスタンフォードの先生って投資家じゃないですか。

実際にシリコンバレーでやっていて、アメリカで大学も出たMegの立場から、スタンフォードに限らず、大学と起業家、もしくはエンジェルとの関係を教えてもらえたらと思います。

Meg Nakamura氏(以下、Meg):さっきのお話にも関係するんですけど、アメリカの教育を受けると「これができない」という考え方がまずないんですね。

「アイデアが浮かべば、これはできるんだ」ということからスタートされるので、基本的にスタートのポジションが全然違う。

squareとかの会社、ペイメントの端末をつくりたいってなると、「元ペイメントの経験があるエンジニアじゃなくて、全然経験がないヤツを雇ってこういうふうにしたいよね」というものをつくっていったという感じで全然違う。

宮田:すごくおもしろいと思うんですけど、日本で教育を受けてないからわからないかもしれないけど、エレメンタリーからあって、それはユニバーシティでいきなりガンと来るのか、子どもの頃なのか、どう思います?

大学が特別な存在なの? それとも、子どもの頃の教育がそういうふうになってるの?

小学校の頃からプレゼンを学ぶ

Meg:たぶん最初からじゃないですかね。アメリカだと掛け算を覚える、漢字を覚えるというのはないんですよね。

あくまでも自分の意見を書いて、それを出すというような、試験ももっとエッセイ化されている感じですかね。

宮田:なるほど。僕も今、9歳と11歳の男の子が地元の小学校に行っていて、学校の教育がものすごく違っていて、驚くことがあります。

上の子が小学校1年生で、日本の小学校に行かずにはじめてアメリカで行って、小1で与えられた課題があまりにもショッキングで、今でも人によく話をするんですけど……。

彼はまだ6歳でした。日本のイメージだと、「みんなで福沢諭吉を調べましょう」って言って調べて、それをみんなで発表するイメージなんですけど。

自分が好きな人を1人選んで、それを調べて、6歳の子がプレゼンをする。それがものすごくおもしろくて、“I am great, because ……”という感じで、一人称で話して、僕の息子は発明家になりたいので、エジソンがなんですごいか、すばらしいかというのを、エジソンの格好をしてプレゼンをする。

さっき麻生大臣が言っていたように、ゴールはないし、まさに答えはないんだけれども、自分でつくり出すということを6歳からやっているというのはものすごい違いで、あまりにも自分の受けた教育と違ってすごくショックを受けたことがあります。

そういう意味では吉川さんのほうがアメリカ長いのでお子さんを4人育てられていて、ご自身は日本で教育を受けられたと思うんですけど、今のシリコンバレーのいろんなディスカッションしましたけど、どういう要素が違っていて、あと政治家の方もいらっしゃるので、僕らはどういうふうに変えていけばいいと思いますか?

シリコンバレーの学校は人種のるつぼ

吉川欣也氏(以下、吉川):一番小さい子は今5歳、それから10歳、16歳、大学生なんですけど、見ていておもしろいのは、クパティーノの学校、ロスアルトス、ヒルズボロと、市によっても学校の雰囲気が全然違うんですが、今いるヒルズボロのところなんですけれども、中国大陸からどんどんお金持ちが来てるんですね。

中国の大連で工場を持っているとか、奥さん全然英語話せませんとか、でもお金はすごくあって大きな家に住んでいると。そういうのが混ざるので、いろんな人種(がいて)、中国の人たちが来るので、シリコンバレーの家の価格は全然下がらない。

同じように子どもたちが来ると、中国で大成功してる人も来る、シリコンバレーで大成功してる人もいる。そういう環境の中でどう競争していくのか、僕自身がどう教育するのかなと。人間力しかないんですよね。

インドからも来る、中国からも来る、東南アジアだけじゃなくて、中近東からも来るんですね。イラン、イラク、そういう人たちもいます。ニュースに出てる人種がもう学校の中にいるんですね。

学校の中に国旗があるんですけど、今度写真を撮ってシェアしたい……日本の国旗があって、韓国が手前にあったりすると悔しかったりするわけですね(笑)。

そういう国旗を見ながら、あのお父さんはサウジアラビアからきている、あのお父さんはイラクから、というようなことを説明できる環境というのがシリコンバレーは良くて。

私も中国によく行くんですが、中国に行けば中国人だけ。日本に帰ってくると、日本人。シリコンバレーって競争が好きなところなので、子どもたちに対しても「競争」。

そうするとパワポとかじゃなくて1対1で、いい意味での口論とかケンカとかプレッシャーというのを、親がどうサポートするかという教育の仕方に僕自身変わってきてます。

どう対処するのか。宗教も違う、家で食べる食べ物も違う、お泊まりしたときの服装とか(も違う)。

そういうのを自分が勉強しなきゃならないということは、自分がその国に行かなきゃならない。

自分が行かないとその中で説明しにくくて、学校の先生も説明しきれないということで、自分がどんどん世界に行かなきゃならないなということを子どもたちから勉強させてもらっている状況です。

宮田:なるほど。僕も非常にアグリーなんですけど、たぶんシリコンバレーは特殊な場所だと思いますが、Megは大学はプリンストンで東だったと思うんですけど、やっぱりアメリカ全体のカルチャーなの? 

アメリカという国で定義してるのか、それともシリコンバレーというのが特殊な街で、このあとに少し議論したいのが、そもそも日本にシリコンバレーはつくれるのかみたいな議論ってよくあるけれども、今みたいな話というのは、シリコンバレーだけなのか。アメリカ全体がそういうのが底流にある?

Meg:難しいですね(笑)。教育は全体だと思う。シリコンバレーみたいなところが他にあるかってなると、ニューヨークは頑張ってそれをしようとしている。

シリコンバレーは歴史があるから、みんなができるという感じで、ニューヨークでもいろんな会社が立ち上がってますけど、他のシカゴとかコロラドとかがどういうふうになっていくのかは、ちょっと難しいですね。

宮田:青柳さんにまとめ的に聞きたいんですけど、よくある質問で僕なんかはシリコンバレーに行っているのは、吉川さんがおっしゃられるような世界が好きで、ダイバーシティの中で勝負したいという気持ちがすごくあるわけですけど。

アメリカの中でも結局シリコンバレーだけが特殊な場所ではあるんですけど、実際そういうダイバースな社員をたくさんマネジメントした経験から見ていて、この10年で日本は起業環境がとても良くなっているじゃないですか。人も増えているし、サポートも含めて、こういうイベント(があること)もですし。

これから10年、20年経ったときに、こういう特殊なシリコンバレーみたいなものが、日本もしくはアジアなのかもしれないですけど、可能なんですかね? できるとしたら、どうやったらいいのか?

日本とアジアの起業環境

青柳直樹氏(以下、青柳):可能だなと思っています。ただ、1つ決定的に違うと思っているのが「移民」です。

いわゆる産官学モデルとか、スタンフォードがあるからシリコンバレーは……みたいな話って昔の話。もう「スタンフォードがあるからシリコンバレーだ」なんて感じません。

それはシリコンのビジネスをやってきたときの話で、今ほとんどソフトウェアになっている中で、「ステークホルダーの一部としてスタンフォードのプロフェッサーがいるとか」「エックススタンフォードの人が……」とか言いますけど、それはシリコンバレーにおけるごく一部でしかなくなっているというのが僕の感覚です。

今、シリコンバレーにおいてビジネスを動かしているマジョリティーのリーダーたち、グリーはアメリカで約350人社員がいるんですけど、その内の原動力のマジョリティーの人たちは、国を捨ててきた移民の人たちです。

自分の父親は日本人とアメリカ人で、戦争で両親と別れちゃってよくわかんないみたいな人とか、インドで教育受けてきたけどインドは貧しすぎるから捨ててきて移民してきてここで生きるしかないんだという人たちのパワーが相当すごいんですね。その人たちが来たら、すごく稼げるんですよ。

僕は次、特にアジアからだと思うんですけど、シリコンバレーから給与の安い日本には来ないので、日本好きの外国人だけでもしょうがないし、よりアジアの、インドとか中国の人たちにどうやって働いてもらえるか、その人たちが起業しやすい環境をつくるか。

さっきの麻生大臣が言っていた人口の話とか変えられないし、この人たちのようなハングリーな奴が横にいて、成功したらそれ以上に悔しいものはないじゃないですか!

自分の友達がIPOしたら、すごく自分にむかつくじゃないですか(笑)。そういう感覚が山のようにあったほうがいいなと思って、それが起爆剤かなと思います。

エンジニアの人材不足

宮田:なるほど。シリコンバレーがつくれるかという議論の話なんですが、さっきコードキャンプの話があったじゃないですか。

今まさにトレンドとして、僕も子どもを抱えていて、MBAのルートとか昔はキラキラだったのが、僕自身はエンジニア以外もう選択肢がないんじゃないかというくらいに思っているんです。

明らかに数字としてエンジニアが足りない。エンジニアがいれば、さっきのシンギュラリティのような究極の課題はさて置き、明らかにおもしろいことができるわけだから、そこにドンドン突っ込ませてあげたいという気持ちが親としてもあるし、みんなそうなっていると。

みんながコードを勉強しているという状況って、実際雇う側からして、ここ2年くらいでどんどん量産されている感じなのか、引き続きエンジニア問題は解決されていなくて文系・理系でいうと理系が足りないなみたいな感じなのか、どうですか?

要するに、コーディングスクールみたいなのが増えてきたから、シリコンバレーでも意外と供給は増えているっていう感じですか?

青柳:増えていると思うんですけど、圧倒的に供給が追いついていないんですよ。なので、みんなこの状況が5年くらいは変わらないと信じていますね。

シリコンバレーにいて、そういうところのドアをノックして、そこで耐えれば、給与は確実に上がり続けると。

Google、Facebookとかは儲かってしょうがないので、人を採りまくってるんですね。とにかく「まず採っておこう。人がいたらまたトレンドが来るでしょう」みたいな感覚でやっていて。

その人たちがガーッとやって、スタートアップにもお金をいれて、その人たちの給与も上げて、またガーッと採ってるので、たぶん変わらないと思います。

リーマンショック級のことが起きても変わらないんじゃないかな。リーマンショックが起きてもシリコンバレーだけは守られる感じがするんですよ。関係ないって(笑)。

宮田:なるほど。今の文脈で少し吉川さんに聞きたいのが、元々の質問の(日本とアメリカの)両方で起業されて、起業環境も昔とは変わっていると思うんですけど。

両方見られる中で、今やられていることって流れとしては、バックエンドのシステムから、今はトレンドのハードをやられていて、ご自身の状況も含めてシリコンバレーって、もう1回日本でつくることってできると思いますか?

吉川:さっきの青柳さんの話でいうと、私が99年にIP Infusionという会社をつくったときというのは、データーベース屋さん、ネットワーク屋さん、ソフト屋さん、ハード屋さん、とかあったんですけど。

今Googleが欲しい人材、Facebookが欲しい人材、ウチみたいな会社が欲しい人材は同じなんですよね。

だからこそ、本当にビジョンやミッションをぶつけていかないと、採れないんですね。

宮田:どういうエンジニアだったら欲しいですか? どういうエンジニアが一番取り合いになってるんですか?

吉川:さっきのジーニーの話もそうですけど、もうハードウエアとかIoT、あとVRとか人工知能はみんな同じなんですよね。

それを絡めないとビジネスにならないので、同じところを目指す。ある程度同じエンジニアが欲しい。

Googleが欲しい人材とうちが欲しい人材がかぶるんです。そんなことって15年前には考えつかなかったんですけど、これがますます起こってくる。

日本でシリコンバレーはつくれるか

吉川:「日本でシリコンバレーみたいなのができないか」という昔からある質問なんですが、いつも東京に持って来ちゃうんですよね。

僕は実は地方という考えがあって、うちの子どもたちのブックフェアをやったんですが、ボストンの話があるんですよね。

実はアメリカのテクノロジーって、シリコンバレーじゃなくてボストンなんですよ。歴史的にずっと。それっておもしろいなと。でも2004年で年表が終わっちゃってるんですよね。

ヘッドホンのBOSEはボストンだし、最初に女性のエンジニアを採ったのもMIT、今まではボストンでいろんな革命が起こってきた。そして、シリコンバレーに移っている。

何が言いたいかというと、日本で、東京じゃなくて福岡なのか浜松なのか、シリコンバレーと地方を直結するハブになる人たちが積極的になるとおもしろいことが起きる。

ブルーボトル(コーヒー)の1店舗目が東京じゃなくても別にいいはずなんですよね。

宮田:一応外れにつくったけど。

吉川:Uberが最初に走るのが、東京じゃなくてもいいと。「自動運転を100台くらい走らせたのは日本でここだった」とか。

そういうのをこれから10年くらい積み重ねていくと、シリコンバレーから見ても世界から見ても、「最近日本は東京じゃなくてあそこらしいよ」と。

それって誰か、大学なのかハブになる人なのかがやっていくと、10年後、20年後、50年後に日本でのシリコンバレーができているかもしれない。

それが中国から見ても、中近東から見ても、東京じゃないらしいと。でもそれは、誰かがやらないと始まらないかもしれないですね。

宮田:福岡ボストン説が出まして、市長が僕の目に留まりました。Uberの話も出て、実際東京じゃない立場から見ていて、いろいろと規制改革とか進んでない部分もあると思うんですが。

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