2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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宮田拓弥氏(以下、宮田):早速始めたいと思います。シリコンバレーなんですけど……日本なので、僕はジャケットで(笑)。
(会場笑)
今日はシリコンバレーに住んでビジネスをしている方を3人お招きしています。吉川さんは日本でもアメリカでも起業されて、さらに今はハードベンチャーをされているというご経験豊富な方です。
Megはもともとアメリカ生まれアメリカ育ちで、日本よりもアメリカのことをよく知っている立場です。
みなさんもよく知っているY Combinatorに入って卒業後、今はスタートアップをやっているというアメリカのことを語れる立場の方。
青柳さんは日本ですでに成功された会社なのに、さらにアメリカに行ってイチから大きな組織、そしてビジネスをつくった方です。
今日のテーマである「シリコンバレーで今何が起きているか」という話と、あとはテーマが日本だと思うので、実際に(日本と世界との)違いから「日本のどこが良くてどこが悪いのか、何を変えていけばいいのか」そんな話ができればと思っております。
私もG1ベンチャーでモデレーターをやるの初めてなんですが、インタラクティブにやれということなので、手を挙げていただければ適宜ディスカッションというか、巻き込みながらできればと思っております。
一番経験の長い吉川さんからお話を伺いたいんですけれども。日本からシリコンバレーに行かれて、もう15年くらいだと思うんですが、シリコンバレーで15年見てきて、さっきのAIの話であるとかDARPAの話であるとかいろいろありましたけども。
今起きているトレンドみたいなことを、(吉川さんの)お立場から少しお話しいただければと思います。
吉川欣也氏(以下、吉川):今日は茂木さん、松尾さんの話を聞いていて、おもしろいなと思いました。シリコンバレーはどちらかというとテクノロジーの話がガンと来るんですけれども。テクノロジーの裏側にはもちろんお金の話もあります。
今日DARPAの話、人工知能の話、最近話題になったドローンの話とありましたが、うちのかみさんも元々Googleで弁護士をやっていたので、家に帰ってくるとそういう話になって、そういうときに「弁護士的に見てあれってどうなの?」という話が出るわけですね。
Googleマップの担当をやったりしていたので、Googleマップってそもそもどうできたかとか。
自動運転が出てきたとき、そのときはまだうちのかみさんもGoogleにいたので「自動運転ってどこがおもしろいの?」という話になったときに、まず法律的に僕が自動運伝できる車を買ったとして「あれって保険はどうするの?」という話をすると、すぐスタンフォードなんか準備してくるんですね。「俺にやらせろ」と。
「あの法律は俺にやらせろ」と、Googleあたりの法律家たちがすぐに研究を始める。プラス保険会社も「俺にやらせろ」と。
うちのかみさんとその話をしていて、もし自分が買った自動運転(できる車)で人をはねちゃったとき、日本のどこの保険会社が「それをやります」と言うか、「それって上限はいくらになるの?」というような話。「どこの弁護士の先生・大学が手を挙げるんだろう?」「どこの保険会社がやらせろと言うんだろうか?」と。
同じようにドローンの話。最近ニュースになっていますが、(例えば)ドローンが落ちてきたと。もしAmazonが俺の頭に落としたときに、どこの保険会社、どこのドローン会社がやるんだろうと。
そういう話は、実はテクノロジーとかビジネスの裏側に「俺にやらせろ」と言う人たちがいろんなところにいると。それはシリコンバレーに来ていろいろ勉強になります。
その意見を聞きながら「おぉ、そう動くのか」と。大学はどう動くのか、Googleはどう動くのか、Appleはどう動くのか、そういう会話を、実は会社じゃなくて家の中でみんなやっているんですね。
特に土日のパーティーでやるんですね。そこに来るいろんな会社の旦那さん、奥さん、若者たちが、「おぉ、そう見てるのか」と。それが、シリコンバレーの一番おもしろいところだと思います。
そういうおもしろい話は会社じゃなくて、土日の家の中で行われているというのが、15年間で学んだことですね。すみません、ちょっと長くなってしまって。
宮田:非常におもしろいと思います。政治家の方もいらっしゃるんですが、日本だと規制が先に出て、ルールがなければそもそもドローンを飛ばせないとか、自動運転車なんてテストもできないと思うんですけど。
家でいろいろお話があるという話があったんですが、それ以外にさっきの保険会社と大学と会社は、基本的には遠いじゃないですか。
たまたま近所に保険会社の方がいたから家で話をしているというのもあるのかもしれないですけど。
そういう人たちがどういう時間軸、どういう経緯で、最終的にGoogleが車を走らせるときに、どういうコミュニケーションをされていると思いますか? もしご存知であれば、可能な範囲で。
吉川:なかなか難しくて、中のそういうニュースが出始める前から、今日のお話だとGoogle Xなんかそうですけど、誰が行っているかでみんなピンと来てるんですね。
例えば「Appleになんであいつが就職したの? 今のタイミングで」というので、みんなピンと来るので、遠回しにみんな聞き始めるんですね。
特にIoT(Internet of Things)の話が日本でも出ていますと。実はアメリカでシリコンバレーを見たときに、IoTのプラットフォームの話なんです。どちらかというと。
アンディ・ルービンが新しい会社を立ち上げました。うちの会社からも、辞めてあそこのデザイン担当のVPになっています。そういうときに「なんで今デザインなの?」という話とかにピントをめぐらせるじゃないですか。
人が動き始めたときに自分も動かなきゃならないというのがシリコンバレーですね。あいつが動いたと。
逆に、ニュースになる前の1ヵ月前、2ヵ月前くらいから動き始めないとなかなか……。
それで1人が動いた瞬間に、特にシリコンバレーから見たときにGoogle、Apple、Facebook、アマゾン、Microsoftみたいのがあって、その周りにどういう人間たちが動き始め、どういう人間を採り始めるのかというのは、実は経営者にとってすごく重要。
東京でも同じような話だと思うんですけど、人が動いた瞬間に2週間くらいでニュースが出てくるので、2週間前にリクルーティングが始まってくると。その辺でみんなパーティーに行って、「どうやってるの?」と。だから2〜3週間の時間軸で動いていると思います。
宮田:そういう意味で言うと、今みたいないわゆるオープンな話と、一方で、今回もApple Watchが出るときに……僕の投資先でも3社くらいApple Watchの開発をしていて、基本的にはAppleの中に1人だけ行って中で開発させてもらうという世界で、とてもクローズドじゃないですか。
ジョブズ亡きあとは若干それが崩れているという話もありますけど。Appleのようにすごくクローズドな会社もありますけど、その辺はどう両立しているんですか?
オープンなコミュニティーの中で、じわじわ情報が伝達していくという部分と、一方でああいう超秘密主義の会社みたいなものは、Appleだけがすごくユニークなのか、それともそれが共存しているんですかね?
吉川:やっぱり人なので、僕の友人がiPadの担当だと。私は子どもが4人いるので、その子ども4人×クラスとその先生、親をみると結構な数になるんですね。そうしたときに、やっぱり絶対言わないです!
社内情報はみんな絶対漏らさないので、AppleでもGoogleでも。ただヒントはくれます。そのヒントを、100あるピースの3つくらいで動き始めるというような感じですね。ヒントは絶対くれます。当然、もろには言わない。
あと、家とかにプロトタイプがどんどんあります。なぜかというと、これもシリコンバレーは日本と違って、自分の部下の意見よりも友達の意見を信用するんですね。これはシリコンバレーで学んだことなんですけど、部下はやっぱり上司に文句を言いにくいんですよ。
でも友達であれば、利害関係が多少あったりなかったりするんですけど、みんな意見を言ってくれると。
プラスそこに参加する奥さんとかの意見。奥さんもみんなセンスが良かったりするので「これダメじゃないの?」とかいうのははっきり言うと。お前ちょっとはっきり言うなよ、とかいうときはあるんですけど(笑)。
家にあるプロトタイプを見て、これダメだなと。逆にこれ言っとかないと、あいつ大コケするなとか。そういう製品もいっぱい見ているので、そういうこともけっこう重要で。
日本だと外に持ち出すなと、逆にシリコンバレーには家の中にいっぱい新しいこれから出てくるプロトタイプとか部品が転がっています。
宮田:吉川さんは今ハードもいろいろやられているので、もっといろいろ聞きたいこともあるんですけど、ちょっとMegに話を振って。
みなさんも本を読まれたことがある方がけっこういらっしゃると思うんですが、Y Combinatorの去年の卒業生で、教育もアメリカで受けて、自分でいろいろとビジネスをして、YCに入ってみて今はCEOとしてビジネスをしている。
今の話からYCの中とか、そういうところのシリコンバレーらしさみたいなものを少し教えてもらえればと思います。
Meg Nakamura氏(以下、Meg):プロトタイプの話ですと、シリコンバレー、アメリカだと、何かアイデアが浮かべばすぐモノをつくりたいんですよね。つくってからみなさんに見せる。私もカードを発行しているんですけど、カードを発行してみんなに使ってもらって、その話をするほうがやっぱりインパクトがある。
「こういうカードをつくりたいんですけど」という話をしても、話があまり進まない。やっぱり実物があると全然違うというというのが大きいですね。
宮田:なるほど。Megのバッチって70社くらいいた? 80社?
Meg:80社。
宮田:80社。今どんどん大きくなって、最新は110社くらい1バッチであるYCなんですけど。
その中というのは、シリコンバレー全体のエコシステムのYCという中で、コミュニケーションとかプロダクトの相談とかってどのレベルで、例えばYCの会社同士もしくは、そこからサム・アルトマンとかポール・グレアムみたいな人と、どういう感じでデイリーでコミュニケーションするんですか?
Meg:FinTechの会社をやっていて、正直YCはそんなにFinTechのexpertiseはないんですね。でも「Stripe」みたいな会社もあるし、やっぱり一番バリューがあるのは、YCのネットワークですね。
Eメールひとつで、YCのファウンダーにすぐにつながるというのはすごいパワーです。簡単に相談に行けるというのは、非常にバリューがありますね。
宮田:補足をしておくと、私もY Combinatorの会社にたくさん投資しているんですけど、非常におもしろくてバリューだなと思うのが、基本的にはパートナーは今10人くらいいるんですが。
みんなほとんど僕より若くて全員起業家で、起業をしてイグジットした人たちなので、ビジネスのアドバイスというよりも、プロダクトづくりとかコミュニティーをどうマネジメントするかとか。
最近の流行り本でいうと、ベン・ホロウィッツの本(『HARD THINGS』)をけっこう読んでいる方もいらっしゃるかと思うんですが、実際会社を立ち上げた経験を共有しながらアドバイスしてもらえるので、すごく3カ月という短い期間だけれども、出てきたときの会社のレベルがすごく高いなと個人的に思っています。
宮田:青柳さんには違う角度で質問したいんですが、青柳さんは事業家でありつつ、投資家もやられていると思うんですけど、日本や東南アジアでベンチャーキャピタルをやられていて、そういう立場で両方の起業家を見ていると思うんですけど。
さっきMegが言ったように、モノをつくるというのをシリコンバレーはすごく大事にするよという話だったんですが、日本の起業家とシリコンバレーの起業家を見ていて、ここ違うなというのがもしあれば教えて欲しいです。
青柳直樹氏(以下、青柳氏):年齢層。シリコンバレーのほうが偏ってないですね。幅広いと思います。
ベテランの50代で起業するのも、あんまりみんな躊躇ない感じだし、20代の人にとってもより起業しやすい環境というのがあるなと思いましたね。
お話をお伺いしながら考えていたんですけど、吉川さんがおっしゃるネットワークとかコミュニティーに入っていって、パッと得られるサポートの量、特に実務的なサポートが圧倒的にそろっているなと思いました。
お金は日本も流れ始めたので、その面においては大差がなくなってきたと思うんですが、パッと何かを立ち上げたときの、「俺知らないけど、あいつ紹介して」「こいつ第一人者だぜ」みたいな人たちが集まるスピードとか。
日本だとお金を集めた経営者の人たちって、「ハイアリングどうすんだ」「マネジメントどうすんだ」「俺、会社経営したことないんすけど(25歳)」みたいな。
そのスピードが圧倒的に早くて、そういう意味でのインフラとか、ノウハウの蓄積というのがけっこう違っている。特に最初のところのスピードに決定的に影響を与えていたり、起業したあとの立ち上げやすさに影響を与えてると思います。ちょっと感覚的なんですけど。
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