2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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佐々木大輔氏(以下、佐々木):鈴木さんは、実はもっと前からニュースアプリの構想を持っていらっしゃったと聞いたんですけれども、そこからの学びというのもあるんでしょうか?
鈴木健氏(以下、鈴木):ニュースアプリというか、当時はWebだったんですけれども、僕が最初にニュースリーダーをつくったのは2004年なんです。だから、11年くらい前ですね。
当時2004年というとFacebookとか、日本国内でいうとミクシー、グリーが創業されたのが2004年です。
そういうソーシャルネットワークの流れを受けて、僕もインスピレーションを持って、そのインスピレーションというのは2000年頃のP2P(Peer to Peer)ブームに遡るんですが。
そういうノードがコミュニケーションしていく世界観から、何かできないかなって思って、それで考えたのがソーシャルトラストネットワークというサービスだったんですね。
こちらはβ版の、数百人が使うようなサービスにしかいかなかったんですけれども。いわゆるソーシャルネットワーク上を情報が自動的に伝搬していくというサービスだったんですね。
これはどういうコンセプトでつくられたかというと、世界中の人たちが世界の裏側の情報……例えば、地球温暖化が起きているとか、ヨーロッパで難民の問題が起きているとか。
こういう問題に対して、世界中の人たちが国連の職員の人たちと同じぐらいのアテンションを向けるというのは無理ですよね。
多くの人たちは、非常にローカルな、自分の近くにあるようなニュースや情報を知りたがっているわけですよね。
一方で、グローバル化が進んでいって、中間にあるような情報、例えば、国レベル、地域レベルの情報、国を超えるような情報、国でカテゴライズするのがおかしいような情報がたくさん出てきているわけですよね。
例えば経済とか、本当に国の国境を超えた情報の流出が起きていますし。そういういろんなレイヤーを一元化して扱えるようなものをつくりたいと思ったんですね。
要するに、ニュースというのは、どういうニュースが良いニュースなのかっていうのを、そのニュース単体だけで議論できなくて、全体の栄養バランスを考えなきゃいけないと思うんですよ。
一方では「自分の身近なニュースしか知らなくて、地球の裏側のニュースは知らない」という人もいるし、逆に「地球の裏側のことにばかり興味があって、自分の目の前のことに興味がない」という人たちも結構いるんですね。
このバランスの悪さを良くしていきたいなって思っていて。すべてのレイヤーの情報を、バランスよく取得できるような……食べ物でいうと、「タンパク質も必要だし、ビタミンも必要だし、炭水化物も必要ですよね」という話と同じで、すごい真面目なニュースも必要だし、カジュアルなニュースも必要だし、生活のための情報も必要だと。
そのバランスを最適にマッチングできるような、そういうニュースをつくりたいと思ったんですね。
鈴木:そのときにソーシャル・ネットワークを使えば、国境を超えて、自分の1ブロック先の「自分の身の周りの情報」を取れるし、その延長線で6ブロック先の地球の裏側の情報も取れる、その間の2ブロック先、3ブロック先の情報も取れると。そういうものをつくりたいと思ったんですね。
ちょっと早すぎたのは、それって結局TwitterのRTを自動化しているようなものなんですよ。
TwitterってRTするじゃないですか。RTすると、それがソーシャルグラフ上を広がってゆくわけですよね。
Twitterは2007年に創業して、手動の方法でイノベーションを起こしていったんですけれども、最初にそれを「自動化」しようとしちゃったというのが、ちょっと早すぎたのかなと思っています。
Crowsnestもある程度近いコンセプトでやっていたんですけれども、パーソナライズをメインコンセプトに持ってくるというのは、まだ早すぎると。
僕らとしては、パーソナライズされたニュースというものと、一般的なみんなが知らなきゃいけないニュースのバランスがどうなったら一番最適なのかということをすごい真剣に考えていています。
最初の入り口としては、やっぱりジェネラルニュースから入るんだと。それを入り口として、その人にとって最適なニュースというのをそこに配合してゆくと。そのバランスを見つけてゆくということを、これからやっていこうと思います。
佐々木:なるほど、そのパーソナライズされた要素が今後入っていくと。
鈴木:はい。入れていきたいですね。
佐々木:楽しみですね。
佐々木:あと先ほどのお話で、「誇りに思っていることは、最後の辛いときに創業者と頑張れたことだ」と。
それってすごい良いストーリーだと思っていて。そういう体験ができるCo-Founder(共同経営者)を持てるかどうかって、すごい大事だと思うんですけれども。Co-Founderの選び方で、何かご意見いただけますか?
鈴木:僕は今、SmartNewsの経営をしていますけれども、それ以前はベンチャーキャピタルをしていたんですね。
投資サイドにいたんですけれども、やっぱり自分自身が何回か起業している経験から……1人で起業するってすごい辛いんですよね。
やっぱりCo-Founderって、一緒に悩みながら進んでいけるというのがすごい大事だなって思っています。
僕のところに「会社をつくりたい」とアントレプレナーの方々が相談しに来るわけですよね。そのときに必ず最初に言うのが、「共同創業者を見つけよう」という話をします。
あとから、Yコンビネータも「共同創業者がいること」というのがルールになっているというのを知ったんですけれども。やっぱり共同創業者がいるっていうのはすごい大事。
じゃあ、どういう共同創業者を選べばいいのかっていうのは、たぶん正解は無いんですけれども、唯一言えることは「コミットメント」なんですね。絶対逃げないということです。
これからものすごい大変な体験をしていくわけなので、絶対逃げないというのと、あとは一緒に飲んで楽しいかっていう(笑)。
それぞれのコンビによっていろいろな関係があると思うんですけれども、楽しく飲めるとか、馬鹿馬鹿しく飲めるとか、そういうのすごい大事ですよね。
そこがないとやっぱり、辛くなるというか。仕事だけの関係で、1日20時間とか一緒にいられないじゃないですか。
やっぱり辛くなっちゃうんで、一緒に楽しくやっていけるのかっていうのがすごく大事です。そういうケミカルなところが大事だなと。
賛否両論分かれるところは、たぶん技術系のパートナーに対して、ビジネス系の人を組み合わせてやるとか。
それはそれで正しいとは思うんですけれども、技術系だけで、2人でやりますとか3人でやりますとかも全然良いと思うし、いろんなパターンがあると思うんですよね。
とにかくCo-Founderを選ぶとか一緒にやるって決めるときに大事なことは、本当に情熱を持ってそれにコミットメント、100パーセントじゃなくて120パーセントコミットできるかっていうことと、一緒にいて楽しいかどうか、その2つだと思います。
佐々木:なるほど。そういう意味では、わりと一緒に飲みにいったりとかっていうのは多い感じなんですか?
鈴木:そうですね。コーヒー飲んだりとか、お酒呑んだりとかしながら、いろんなことを喋ったりはしますね。
佐々木:仕事以外のことでも?
鈴木:そうですね。彼は変人なんですよ。僕も人のこと言えないんですけれど。そこを突っついたりするとすごいおもしろいんですよ(笑)。吉野家が大好きだったりとかしてて。
SmartNewsのほとんどの開発は漫画喫茶で行っていて、そういう狭いスペースでコーディングするのが好きみたいです。今でも土日に行くと、地方のビジネスホテルとかに行ってコーディングしてるらしいんですけれど(笑)。
佐々木:おもしろいですね。邪魔すると怒ったり?(笑)
鈴木:いや、怒んないですよ(笑)。
佐々木:そうやって、いざリリースしてみたら大成功という形になったと思うんですけれども。今度はリリースした後に、何か大きなチャレンジはあったんでしょうか?
鈴木:基本的にチャレンジづくりで、すごい大ヒットして浮かれていたら、炎上事件というのが起きるんですよね。「著作権的にどうなんだ?」みたいな議論が。
その中で、僕らは本当に良いコンテンツを出してゆくことによって、メディアとかコンテンツをつくっている人たちが繁栄してゆくような世界をつくりたいという信念を持ってやっていました。でも実際には、その気持ちってなかなか伝わっていかないんですよね。
最初にちょっとした炎上事件が起きて、それが波及して大きくなったのは、Yahoo!トピックスってあるじゃないですか? そこに(著作権問題が)ドンといきなり事件として載ってしまったんですね。それで大きな問題になってしまったんです。
鈴木:そのときに、本当に孤立無援の中で、藤村(厚夫)さんという方がスマートニュースにジョインしてくださるんですよね。
藤村さんという方は、元々アスキーの月刊NTの編集長を努めていた方で、その後ロータスのマーケティングコンポジションをやった後に、@ITの創業をしたんですね。
その@ITが後にソフトバンク傘下のソフトバンク・アイティメディアと合併して、アイティ・メディアという会社になって、藤村さんはそこの会長として上場まで持っていくんですけれども。
本当にメディアのことをすごく考えている方で、最初に出会ったきっかけが「藤村さんが僕らにインタビューをしたい。何でこういうアプリをつくったのか取材したい」というのをあるメディアを経由してくるわけですね。
当時は炎上しすぎていて、「ちょっと取材出られる状態じゃありません」みたいな感じだったんで。「インタビューはともかく、とりあえずランチだけしましょう」という感じで会ったんですね。
当時テーブルに僕含めて4人くらいいたんで、藤村さんと話したのは本当に5分くらいだったんですけれども、5分話しただけで、「この人ちょっと只者じゃないな」って思って、それで僕のほうから「呑みに行きましょうよ」って誘ったんですよ。
藤村さんが何でSmartNewsに興味を持ったのかというと、藤村さんという方はまさに紙の世界でアスキーで編集長を務めていて、その後2000年くらいに「@IT」という本当に日本でほぼ初めてのオンライン・メディアを経営して、アイティ・メディアというメディアカンパニーを上場まで持っていった方なんですよね。
その藤村さんが「もうPCのメディアじゃない。これからはスマートフォン」というのはわかっていた。そういう中で藤村さんがやろうとしていたことというのは、メディア業界のコネクションをちゃんと使いながら、イノベーションを起こしたいと思って、アイティ・メディアを辞めて、新しいことをやろうとしていたんですね。
ところがSmartNewsが、メディア業界のコネクションとかを無視して、非常に乱暴なやり方で、テクノロジーの力で非情にドンと始めてしまったと。彼としてはこれにすごくショックを受けたと。
「こんなやり方があるんだ」「このほうがイノベーションを起こせるんじゃないか」って。
彼は「中からイノベーションを起こそうと思ったんだけど、こういうやり方で外からイノベーションを起こしたほうがいいんじゃないかと思った」という話を聞いたんですね。
「だったら協力して一緒にやりましょう」という話になったんですけれども、そのときも話した内容というのは「メディア業界どうするか」っていう話ではなくて、彼はすごい文芸批評とか哲学が好きで、若い頃、思い余って吉本隆明の家に行ったことがあると。
吉本隆明の家に行ったら、小さい女の子がお茶を出していたと。アポを取ってから行ったわけじゃなくて、アポ無しで突撃したんですね。
吉本隆明ってすごく有名な文芸評論家の方なんですけれども、突然家の前に行って「会いたい」と言うわけですよ。
それでなんか上がらせてくれたと。話を伺おうと思って待っていたら、小さな女の子がお茶を出してくれたと。「今思うと、『吉本ばなな』なんだよな」という話をしたりとかですね。
当時は、吉本隆明とか柄谷行人とか思想家の話を一緒にずっと話してたんですね。話している内に、「僕も一緒にやりましょう」みたいな話をして、結局ほとんどメディアの話とかしていないんですけれども、ジョインしてくれるようになったのはそういう感じなんですね。
佐々木:なるほど。ジョインされたら(炎上事件が)解決したと。
鈴木:そうだそうだ。話が進まなくてすみません。
結局、藤村さんがメディア業界に大変大きなコネクションを持っていて「SmartNewsはこういうことを目指しています」ということを、メディアの方々に1on1で話をしていって下さったんですね。
僕らが話をしに行っても「この若造、何なの?」みたいな。僕も決して若くはないんですが、そういう形だったんですけれども。
藤村さんが本当に「日本のメディア業界で知らない人はいない」「知らない人はもぐり」みたいな存在だったんで、あっという間にドアが開いていって、信頼を獲得していって、次々とパートナーシップをつくっていただいたという感じですね。
佐々木:なるほど。すごいおもしろい話で話も尽きないんですけれども、ちょっと時間になってしまったので。
お話を伺ってると、人との出会いとか繋がりで辛いところを乗り越えてきたりとか。
あとは藤村さんの話もそうだし、Crowsnestの話もそうだし、それまでこっちなんじゃないかって思い込んでいたところが、違う角度から攻めてみるっていうのが、ブレークスルーを産んだんじゃないかなと思って。自分のビジネスにも当てはまるんですが、非常におもしろいなと思いました。
こういった所で、お時間にしていただければと思います。本日はご静聴ありがとうございました。
鈴木:ありがとうございました。
(会場拍手)
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