2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐々木大輔氏(以下、佐々木):みなさん、こんにちは。どうもfreeeの佐々木です。今日は失敗から成功ということをテーマに、スマートニュースの鈴木さんにお話を伺えればと思います。
軽く自己紹介すると、僕はクラウド会計ソフトの「freee」というものを提供する会社をやっていて、小さなビジネスに携わる全ての人々の創造的な活動にフォーカスできる、そんな社会をつくりたいなと思って、クラウド業界でビジネスを展開しています。
ちなみに「SmartNews」を知ってる方、どれぐらいいらっしゃいますか? ほとんどですかね。じゃあ、使っている方? このくらいと。
鈴木健氏(以下、鈴木):ありがとうございます。
佐々木:ちなみにfreeeって使ってらっしゃる方? ああ、少ないですね(笑)。
じゃあ、ほとんど方は知ってらっしゃると思うんですけれども、まず簡単にSmartNewsがどんなものかというのと、これまでのSmartNewsの成果というのを伺えればと思います。
鈴木:SmartNewsというのはですね、おもしろいニュースを発見できるという、スマートフォン向けのアプリで、日本国内だったらよく「ニュースキュレーションアプリ」と言われて、カテゴリー化されているものです。
スマートフォンがこれだけ普及する中で、例えば、毎日電車に乗っている時の隙間時間の中で、本当におもしろいニュースだけを読めるようにしたアプリです。
今、全世界で1300万ダウンロードを突破したところで、世界中で500万以上の人たちが、毎月SmartNewsを使っているという感じです。
佐々木:なんと500万人、すばらしいですね。現状、これまでの成果は、鈴木さんの中では何点くらいですか?
鈴木:まだ逆に、点数をつけられるところまでいっていないかな、という感じではあるんですよね。
というのは、世界中でスマートフォンが普及している台数が大体20億台くらいなんですね。20億人くらいがスマートフォンを使っていて、近い将来には、30億人、40億人の人たちがスマートフォンを使うようになるわけです。
世界人口が70億人ちょっとですから、世界中の半分以上の人たちがスマートフォンを使うようになるんですよね。
例えば「Facebook」なんかも14億人ですとか、「WhatsApp」が9億人って(いう数字が)最近ありました。
そういう中で、僕らとしてはまだ点数をつけられる状況ではなくて……500万人とかそういう規模でやっているわけですから。まだまだこれからという感じです。
佐々木:なるほど。これまでの成果の中で一番誇りに思っていることって何ですか?
鈴木:いい質問ですね。
まず、SmartNewsが最初にリリースしたときなんですけれども、2012年の12月なんですね。このリリースした瞬間、当日のダウンロード数がすごく爆発的で、「イノベーションを起こすとこれだけたくさんの人たちが使ってくれるようになるんだな」ということを本当に体感したんですね。
遡ること数年前、つまり2010年くらいからSmartNewsの元になる「Crowsnest」というサービスの開発を始めました。
Crowsnestというのは、烏の巣で「見張り台」という意味なんですね。見通しよく情報を集めてくれるというサービスとつくろうとしたんですね。
それは、「Twitterのデータをスクロールしていって、タイムラインの中からその人にとっておもしろいニュースを探してあげる」というサービスをつくったんですね。
それ自体は非常に良くできたサービスで、僕もずっと使っていたんですけれども、リリースしてから半年ぐらいで、数万人のユーザーしか獲得できなかったんです。
一緒にやってくれている、共同創業者の浜本階生さんという方がいて、彼がCrowsnewstもSmartNewsもプログラミングを1人で書いていますけれども。
僕はどちらかというと、アドバイザーとして応援する立場として最初は関わっていました。お金も尽きてきて、最後のほうは、2人とも個人の資産を切り崩しながらプロジェクトを進めていくような感じだったんですね。
最後のほう、なぜか投資する形で「South by Southwest」に行こう。今考えると、絶対間違った判断だったんですけれども。
最後のお金の数十万円をかけて、「South by Southwest」に行きました。「アメリカに行ったら何か起こる」みたいに思ってですね。
行きの飛行機の中で「本当にお金がないから、これが最後だね」という話をして、これがダメだったらやめようというような話をしたんですね。
そこで実際に何が起きたかっていうと、向こうのオースティンの「South by Southwest」で、向こうの人たちとも触れ合ってデモしたんですけれど、まあまあイケてるんだけれども、突き抜けてない。やっぱり、突き抜けてないとダメじゃないですか。
行きの飛行機で、階生さん、本当にもう泣きそうなくらいの勢いだったんですけれども、「とにかく勝負だから、今は頑張ってやろう」と言って頑張ったんですけれども、成果が出なかったんですよね。
帰りの飛行機の中でも、当然これがダメだったらやめようという話になるだろうと思って、2人でがっかりしながら飛行機に乗っていたんですけれども。
階生さんが「お金も無いし、何も無いんだけれども、僕は続けたいんだ」というふうに言ったんですよね。それで僕は「これはもう、一緒にやろう」という気持ちになったんですね。
鈴木:そこから9ヵ月経って、SmartNewsも本当に2人だけでやってきて、リリースを迎えたんですね。
何のPRもしてないのに、ものすごい数のブロガーの人たちが殺到して、その日のうちに4万ダウンロード、Crowsnestが1年で達成した数値をわずか1日で達成したんですね。
これは、僕らが目標にしていた数値の10倍くらいのペースで成長を始めたんですよね。「あ、こういうことが起きるんだ」と。
僕がSmartNewsを通じて一番誇りに思っていることというのは、やっぱり共同創業者の階生さんが「これをやろう」と決めたその覚悟です。これは本当に誇りに思っています。
佐々木:そこで、「続けるんだ」と決めたからこそ、プロダクトの力だけで1日で1年の成果を上げたと。
それは本当に使ってみた人が「これは本当に良いね」っていうレビューだけで広まっていったんですか?
鈴木:厳密に言うと、最初にCNETかな、TechCrunchの岩本(有平)さんがCNETで記事を書いてくれたんですね。
その記事のタイトルがなかなかイケていて、「日本語組版にこだわったニュースアプリ」っていう……今考えるとよくわからないんですけれども(笑)。実際こだわっていて、「日本語組版にこだわった、なんか改行位置とかすごくこだわってます」みたいなそういう記事が1本だけ出たんですね。
岩本さんは元々すごいCrowsnestのファンだったので、記事を書いていただいたんですけれども、それ以外は一切メディアリリースとかなくてですね。
本当に実質的には、Twitter上で、僕らが「出しました!」っていうふうにやったら、それがきっかけになってたくさんの人たちが使ってくれて。
それから、信じられないくらいの数のブロガーの方が「このニュースアプリはすばらしい」と言って広めてくれたんです。
鈴木:今でこそたくさんのアプリが ニュースアプリとしてリリースされてますし、ご存知の通りYahooさんもアプリはニュースが中心に展開するようになってきているんですけれども。
SmartNewsが出た当時というのは、AppStoreニュースカテゴリーのトップというのは、全体のランキングでだいたい200〜300位くらいだったんですね。つまり、「ニュースのアプリなんか出しても、流行らないんじゃないか」ってみんな思っていたんですよ。
当時、SmartNewsを出す前に、いろんなネット業界で有名な人たちに会いに行って、意見を聞いたんですけど。
すごい有名なスタートアップのブロガーさんの人とかにリリースの前日に会いに行ったら、「大丈夫? こんなの出してどうするの?」みたいな感じのリアクションだったんですね。
それくらいニュースアプリというのは、当時SmartNewsが出る前はまったく注目されていなくて、出してもニュースなんか誰もスマートフォンで読まないだろうと思われていたんです。
そういう中で、本当に気持ちだけで進めていって、最終的にどんっとブレークすることになったわけですけれども。今、日本でニュースアプリというカテゴリーがだいぶできているわけですけれども、確実に言えることはSmartNewsが最初のスタンダードをつくったというか、イノベーションを起こして、市場をつくったんだって言えると思います。
佐々木:そうして、1年間鳴かず飛ばずの期間があって、それで諦めようかな、いやもう一度頑張ろうって思って進んでいったわけなんですけれども。
それまでの経験を通して、何を変えて、これだったらいけるんじゃないかって思ったポイントいうのはあったんですか? これをこう変えればいけるんじゃないかって。
鈴木:いくつか要素があって、1つがSmartNewsの特徴の1つであるスマートモードというオフラインモードがあるんですね。
これは電波が届かないところでも、記事を読むことができるという機能で、大変好評な機能です。
これは僕が地下鉄に乗っていたときに、「何でみんなスマートフォンでニュースを読まないのかな?」って思ったんです。
僕はずっとそれをつくってるじゃないですか。みんなに読んで欲しいなと思ったんだけど、さっき話したように、AppStoreで200位とか300位みたいなニュースって誰もスマートフォンで読まなかったんですね。
「なんでかな?」と思って周りを見ていたら、隣の人がすごいゲームで遊んでいたんですね。こっちの人もみたらゲームで遊んでいて、僕も自分のスマホでゲームを遊んでいて、よく見たらみんなゲームをやってるなと。
「そうか、僕も読んでないじゃないか」「何で読んでないのかな」って思ったら、そもそも読めないんですよ。電波がないから、読もうと思っても読めないんです。だから、電波がなくても遊べるゲームで遊んでいたんですね。
そこで、電波がなくても読める機能を追加すれば、ヒットするんじゃないかっていうことは考えていました。
でも、それ自身をつくってる途中っていうのは、すごい確信があったというよりかは、「出してみないとわからないよね」という気持ちでやっていて。実際出してみたら爆発的なヒットになったので「ああ、こんなこともあるんだな」と。そういう感じですね。
佐々木:じゃあ、思考錯誤する中で、ニュースアプリがそれ以上成長しない課題に気づいたような感じなんですか?
鈴木:そうですね。やっぱりずっとプロダクトのことを考えているから、視野狭窄になりがちなんですね。どうしても、自分が使おうとするものをつくるじゃないですか。
もちろん僕も地下鉄とかも乗りますけれども、パソコンの目の前で仕事している時間が長いですよね。どうしても仕事と関係するような、ニッチなニュースを読みたくなったりするわけじゃないですか。
やっぱり、そういうものをつくってしまうんですけれども、多くの人に使ってもらうということを考えたときには、それだけじゃダメで。
多くの人たちがいったいどういう問題を抱えているのかっていうことを考えていく必要があるんですね。
多くの人といっても、結局その中の1人が自分なわけですから、自分が困っている問題というのを解決するわけだけれども、1日10時間とか15時間もニュースのことを考えているわけじゃないですか。
どうしても視野が狭くなってしまうんですね。意図的にそういうのを崩していくということをやらないと、プロダクトデザインはできないなというふうには思います。
佐々木:なるほど。僕達の会計ソフトの業界でいうと、freeeっていうものが出る前って、みんな手で会計帳簿をつけるというのをやってたんですね。そうすると、その業界の人たちに聞けば、もっと早く入力できるものが欲しいって言うんですね。
でも、僕たちは「入力しなくてもいい会計ソフトをつくりたい」って言ってたんですけれども。業界の人にとっては「何言ってんだろう、この人?」みたいなアイデアになっちゃうんですね。
なので、やっぱり1歩引いて考えるみたいなところから、新しいイノベーションというのは出てくるのかもしれないですね。
鈴木:両方必要なんでしょうね。だから、そこを敷き詰めて考えていくということと、ニュースのこと考えてる人って、世の中にたくさんいて、メディア業界の方々もニュース論に詳しい人とかたくさんいるんですけれども、全日本人の中でみたらすごい少ない。
そういうふうな視点と、ニュースのことなんか1日でほぼ考えたことがないっていう人たちの両方の視点、脳の中に矛盾する思考を共同させないといけないと思うんですよね。
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