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起業家という人生 教育を変革し、世界を変える(全6記事)

無関心な人を動かす2つの方法 「意識の高い人以外」を集めるには

学生や若手ビジネスパーソンを対象に行われた起業家育成プログラム「IVS SEEEDS 2015 Summer」。セッション3には「教育を変革し、世界を変える」をテーマに、教育業界で急成長を遂げたスタートアップ3社の代表取締役が出席。本パートでは、各登壇者が自分自身の体験を振り返りながら、日本の教育の問題点を深く掘り下げていきます。また、「無関心な人を引き込んでムーブメントを起こすにはどうしたらいいのか」といった参加者からの質問に安部氏が回答。そもそも「なぜ彼らは無関心なんだ」と思うところに間違いがあると指摘し、無関心を打破する2つの方法について解説しました。

環境によって人は大きく変わる

池谷大吾氏(以下、池谷):水野さんは、原体験とかどうですか? なぜこの業界をやろうと思ったかっていう。

水野雄介氏(以下、水野):(東大は)1年で受かったの?

安部敏樹氏(以下、安部):僕は仮面浪人しましたね。

水野:そうなんだ。でもすごいね、そこから……。僕の場合はですね、皆と同じようにすごいレールの上。皆と同じようにっていうか、皆はわからないけど(笑)、僕はすごいレールの上。本当に親も保守的だったから、「私立行って、とりあえずいい大学行って公務員になりなさい」みたいな感じだったので。

野球やってて素直だったから、とりあえず言われた通りやってて。理系のほうが得意だったから理系行って、皆が東大とか京大受けるからそっち行って受けて、まあでも落ちたから慶応行って。

その中で、「この先生、数学しか教えられないんじゃないか?」みたいな先生っているじゃん? そういう先生見てて、絶対自分だったらもっといい先生になれるなっていうのが、まずあった。

教員免許を取って、たまたま大学院と開成で2年間教える機会が持てて、それがすごいよくて。開成って、ガリ勉みたいなイメージがあると思うんですけど、全然そんなことなくて本当に自立している子たちが育ってるんですよ。それって自分の学校にはないもので、やっぱり環境とか、そもそもの仕組みがすごいんだよね。上が下を教える仕組みとか、すごいいろいろあるんだけど。

ちょうど僕がやってたとき……、この間『弱くても勝てます』っていうドラマやってたじゃないですか? あれって開成の話なんですけど、野球部、週1回しか練習できないんですよ。普通の学校って1日7時間、週7でやってるんですよ。けど、夏の大会で、そういう修徳とかに勝つんですよね。

ベスト8までいったときの年で、その子たちの練習方法を見ていると、すごい自分で考えて、どうやったら弱くても勝てるのかって。その学校だとおもしろいのは、野球って9回のスポーツだから、9回やったら絶対練習してる奴らに勝てないと。勝てるとしたら5回だ、と。5回で勝つには、相手に泡食わせて、5回コールドで勝つしかないというので。

普通4番がすごいんだけど、1番にすごい人を置くのよ。打率が多く回るように、みたいなことを考えてやっているのね。野球の話、ちょっとわかんないかもしれないけど(笑)。そういうところを見て、環境によって人ってすごく変わるんだなと。

その中でやっぱり、ITが好きな子たちを伸ばす場所がないんだなっていうのを感じたので、それをサービスっていう形で変えていくのが一番。キッザニアがすごい好きだったので、サービスから変えるのが早いんじゃないかなと思って起業したという感じですかね。

日本の教育の問題点

池谷:先生をやるとか教育をやるっていうと、皆さん「自分が受けてきた教育」って感じるんで、何かすごく難しいものだと思うかもしれないんですけど、残念ながら僕たちが受けてきた教育の結果、日本ってこんな感じになってしまったわけですよ。起業するのも二の足を踏んでしまうであるとか、なかなか行動できなくなってしまうっていう。

この中でも、少なからずとも起業しようとか大企業行こうとか決め切ってる人って、ごく一部しかいなくって、やっぱり迷いがちみたいな。長谷川さんも多分説明してくれると思うんですけど、やっぱり日本の教育って、本当に一対多で。先生が教壇の上から皆にシャワーのごとく「覚えろ、やれ」って言ってきた結果、あまり考えることって期待しなかったんですよね。

例えば、幼稚園児とかって「考えろ」って言うと、全然考えられるんですよ。うちの幼稚園の子たちって、1年間やるとプレゼンテーションできるようになるんです。これはやっぱり大人が期待せずに、これやっとけとか、このお遊戯やれとか、この絵を描けとか……。

絵なんてみんな同じ絵を描いちゃって、先生に「これ統制ですか?」って聞くと「いや、芸術だ」って。芸術ってもっと自由なものだろう、みたいな。でも、日本って美術とか音楽も全部測ってきて、本当は「描くもの、演奏するもの」なのにも関わらず、「見るもの、聞くもの」になってしまったっていうのは、すごく問題だと思っていて。

なので、別に難しいとかそういう概念ではなくって、勉強ってそもそも根本のところを変えていくと、皆で先生になれたりするんじゃないかなって思っているんで。

池谷:そういう視点で、長谷川さん、起業の経緯とか原点の部分であるとか。社長をスイッチされてるんで、そういうところも含めてお話いただきたいなと思うんですけど。

長谷川敦弥氏(以下、長谷川):僕らの場合は、うちの会社ってどちらかというと、ビジョンベースというかミッションベースでやっているので。僕自身の人生というよりは、うちの会社の「障害のない社会を作る」っていうビジョンを実現するために、教育を変えなきゃいけないと至ったのが一番大きくあるんですけど。

自分自身の原体験というところで言うと、やっぱり僕はADHD傾向が強いんですね。ADHDってわかります? 注意欠陥・多動性障害っていって、じっとするのが苦手とか、注意散漫でいろいろ気が散っちゃうとか。こういう大人数の場はちょっと苦手ですとか、あとは衝動性が強いみたいな。

これいいかも、と思ったらすぐに行動したくなっちゃうというような特性を持った人って、ADHD傾向ってだいたい言われるんですね。(隣を指して)この安部さんとかまさにそんな感じなんですけど。さっきから落ち着きがなくて落ち着きがなくて、「よく動くな、こいつ」みたいな(笑)。

安部:流れ弾が僕に当たって……、そういうのやめてくださいよ(笑)。

通知表に「思いやりがない」と書かれ続けた

長谷川:わかりやすく言うと、こんな感じだったんですね(笑)。ただ僕の場合、すごい田舎で公立の学校だったので、小学校の1年生から6年生まで、通知表に「思いやりがない」って書かれ続けていたんですね。「協調性がない」「思いやりがない」って書かれ続けて、結構これショックですよね。

親にインタビューして、どんな子になってほしいかって、第1位は「思いやりがある子ども」ですからね(笑)。それが一番欠如していると。僕は協調とか、皆と同じように一緒に行動するとかできなかったんですね。

だいたい自分が、「あれ、気になる」と思ったらすぐ動きたくなるし、教室はもう脱走するし、あと過集中だったんで集中しだしたら5時間くらいぶっ続けでやったりするんですね。そういう感じだったんで、あまり学校にフィットできなくて。

なんとなく学校って、皆同じであることがすばらしいっていう空気感も強いから、友達からも結構よくない扱いを受けたり。学校の先生から見ると計画性がないとか、衝動性が強すぎて皆に迷惑かけてるとか、「敦弥くんがいると迷惑だ」とか、いろいろ言われていたんですね。

そういう経験もあって、でも当時は言葉にできなかったことがあって。僕、皆と違うっていう認識がすごい強かったんですよ。感覚的には、「敦弥くん、なんでお座りできないの?」みたいな。「敦弥くん、なんでお手ができないの?」「敦弥くん、待てって言ったら待てしなさい」みたいな。

「俺は犬じゃないんだ」と、思ってたんですね。僕は犬にはなれない、でも空を飛べるよみたいな。高いところからいろいろ見れるんだけど、犬にはなれないからお手とかできないっていう感覚で当時は思ってて。

大人になってみて自分なりに理解できたのは、おもしろい仮説があってね。このADHD傾向の人っていうのは、狩猟民族の生き残りであるという仮説があるんですね。これね、結構おもしろくて。生き残りというか、狩猟民族の時代には活躍できたんじゃないかっていう仮説なんですね。

ADHDの人って視覚優位なんですよ。目で物事を追うんです。同時複数に物事を追うことができる。こいつだって獲物を定めたら、衝動的に行動ができるんですね。それってADHDの傾向に当てはまって、そういう傾向の人って狩猟民族の時代は活躍できたんです。

ただ暗黒の時代がやってきて、農耕・牧畜民族の時代ですね。この時代にまったく逆転するんですね。

池谷:(笑)。

農業と狩猟民族では成功のルールが違う

長谷川:かなりつらい、暗黒の時代がそこからしばらく流れていって。農業と狩猟民族の勝ちのルールは違うんですね。成功のルールが全然違うんですよ。農業はやっぱり衝動的に作物を植えちゃいけないですね。じっとできるまで待たなきゃいけないんですよ。優先順位をつけて、「この作物だ!」って、やっちゃいけないんですね。バランスよく水をあげなきゃいけないですね。忍耐しなきゃいけないですよ。

だから農業で活躍できる人の要件と、狩猟民族として活躍できる要件っていうのはまったく違ってて。仕事としても、狩猟民族でハンター、ADHDの人っていうのは、例えば営業の仕事とかジャーナリストとか、カメラマンとか起業家とか、新規事業開発とか、そういう行動力が求められることに、すっごい向いてるんですね。

今の教育をよく考えたときに、もう完全にファーマー養成学校ですよ。皆、ファーマー養成所。僕が提案したいのは、ハンタースクールを作りたい、と。もう、ハンターにはハンター、ファーマーにはファーマーに合った学校があるんじゃないかなと思うんですね。

結果的に、これは僕が大人になって気づいたことではあるんですけど、やっぱり子供ってもっともっといろんな個性があるし、将来の活躍の仕方の幅が広いし。そういうのに合わせた多様な教育のラインナップを、生態系として作っていくっていうのがすごく大事なんじゃないかな、というふうに思ってます。

安部:だから僕はマグロ捕るのうまいんですね。

長谷川:そうそう、漁師とかもそうなんですね(笑)。

池谷:すごいですね、完全に狩猟派ですよね(笑)。

長谷川:起業家ってだいたいそうですよ。

水野:皆言われたことあるっていう、ADHD(傾向)。

長谷川:はい。

池谷:皆さん、皆さん心の中で自分が農耕派か狩猟派か、大丈夫ですか? 今からアンケート取りますよ。農耕派だと思う人? 本当に?(笑) 狩猟派?

水野:多いね。

池谷:結構いますね、ありがとうございます。さっき話した通り、僕も子供が学校行くようになってからすごい驚くことがあって。病名が多いんですよ、いわゆる農耕派じゃない人にレッテルを貼るみたいな。

例えば、僕、幼稚園のときに、ちょっと言葉があれですけど、多分発達障害って言われてたはずなんですよね。ちゃんと座れてなかったですし、困らせちゃってたわけですよ。今でも普通にそういう子っているんで。

僕は幼稚園行って、暴れだす子とか騒ぐ子って全然不思議じゃないんだけども、そういう子って全員、発達障害とか名前がついてるんです。これがマイナスなんですよ。これは農耕派という言い方はあれだけども、理屈が欲しいんですよ。何なんだこの子はっていう。

本当は世の中って多様なものであって、ダイバーシティで生きてるはずにも関わらず、非常に均質的な言うこと聞く奴らをメインで、他は病名つけていってるのを見るとすっごい問題だと思っていて。

親も心配なんですよ、だから病名がほしいんですよね。「先生、何なんですか、これは?」って。なので、どんどん名前が増えていくんで、僕からすると、昔と変わってないじゃないかって思ってて。そこから考えていくと、今の話は結構ピンとくるかなって思いますよね。

池谷:今、一方的に僕が質問してきたんですけど、ぜひ皆さんからの質問を。他のセッション聞いても、一番それが実りがあるなと思っているんで、伺いたいなと思うんですけど。各会社さんについての質問でもいいですし、教育に対する疑問「何でこうだったんだ」みたいな、そういうことも含めて質問いただきたいなって思うんですけど、いかがですか? 結構いらっしゃいますね、前の方から。

無関心を打破する2つの方法

質問者:今僕がやってることにも繋がるんですけど、安部さんに質問です。COP(Conference of the Parties)ってあるじゃないですか? 今度パリでやるCOP21、その模擬COPを日本で開催しようってことで東大のゼミに通ってて、そのゼミに降りてきた話なんですけど、その代表をやらせてもらってて。

そこで議論として挙がっているのが、ムーブメントを起こそうって考えてるので、無関心な人たちをいかにそこに引き込むか。環境の話とか、意識の高い人しか集まらないじゃないですか? そこに、いかに無関心な人たちを集めるかっていうところで、さっきのスライドで無関心な人たちを引き込んでいくってことを書いていたので、そこでどうやって引き込むんだろうなっていうことを。

安部:なるほど。人間の関心っていうのは、そもそもグラデーションがあるじゃないですか? 本当に関心がない奴は、もう強制的に連れていくしかないですね。僕は、だから教育をやってるんですよ。

僕は公教育に入りたい人間なんですね。学校教育っていうの、本当は何のためにあるかっていうと、子どもの個性を伸ばすためだけじゃないんですよ。でも今の教育って、基本的には皆偏差値伸ばして、いい大学に行かせるためにあるんですけど、それって本当は塾でやればいいじゃないですか?

もともとはフーコーとか監獄の仕組みから来ているわけで、その学校の中で、社会の構成員としてこれは知っておいたほうがいいよねっていうことを教えることが教育なんですね。なので、強制力ってすごく大事ですよねっていうのが1個。

後は、なんでこいつらは知ってくれないんだ、無関心なんだって、ちょっと思ってるんだろうけど、それ、正しくない。それは多分、君がおもしろくないから。おもしろいと知ろうとするじゃん? だから結局、「本当に超魅力的なもの」を作る。そして彼らに関心を持ちたいと思わせるか、強制的に連れていくかどっちかです。以上!

質問者:ありがとうございます。

カリスマに頼ることの危うさ

水野:新宿で、男優の人が来てくれてみたいな話が。具体例があったほうがおもしろいかなと。

安部:この仕事を始めるときに、なんとか無関心の打破をしたいと思ったんですね。最初にやったのが、テーマを2つ決めたんですよ。ダムのツアーをやったのと、性教育のイベントをやったんですね。

性教育のイベントは加藤鷹っていう素敵な俳優さんがいるんですけど(笑)。その鷹さんと、それから紅音ほたるさんっていうすごい美しい女性の方がいるわけです。あと政治家の川田龍平さんていう参議院議員と、そういうおもしろい人を集めて、性教育を学ばせるっていうイベントをやったんですね。

やってみて思ったのは、700人くらい集まって、すごい成功したんですよ。うまくいったんだけど、でもそれってカリスマがいないと成り立たないんですね。加藤鷹さん、話もおもしろいと。でも、じゃあ農業の問題とか貧困の問題に加藤鷹みたいなカリスマがいるのかっていうと、いないわけですよ。

それはカリスマ頼りだと仕事にもならないし、本当に世界中を変えるような仕組みにもならないじゃないですか? 変えるためにはやっぱりフォーマットにして、誰でもスケールアウトできるような形にしないといけなくて。

その中で僕らは、ツアー、旅行っていうのがいいよねってなって、今の仕事にしてるんですね。なので、そういう工夫はすごいしたほうがいいかなとは思います。(水野さんに向けて)ナイスアシストです、ありがとうございます。

池谷:安部さんほどのバイタリティとキャラでやっていくのって難しいので、とはいえ自分がそこに情熱があるんだったら、さっき言った資金調達もできますし、仲間を増やすこともできるはずなんで。どうやって巻き込むのかっていういろんな方法、選択肢はもっとある気がしますよね。全然可能性あると思います。

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