2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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藤田功博氏(以下、藤田):こんにちは。今回は「IVSスタッフから世界No.1のベンチャーキャピタリストへ」というテーマで、ANRIジェネラル・パートナーの佐俣アンリさんにお越しいただきました。
佐俣アンリ氏(以下、佐俣):よろしくお願いします。
藤田:まず簡単に自己紹介をお願いいたします。
佐俣:ANRIというベンチャーキャピタルファンドを運営している佐俣アンリと申します。2012年に独立をしまして、今日本のファンドで累計20億円ほどを運用しております。よろしくお願いします。
藤田:よろしくお願いします。
実際スタッフに参加されるのは今回で5年目、10回目ということなんですけども、一番最初に参加されたタイミングっていうのは、ベンチャーキャピタルを立ち上げる前になるんですか?
佐俣:そうですね。自分で(IVSスタッフを)5年、10回やらせていただいているって気がついてなくてびっくりしたんですけど(笑)。
5年前が2010年なので、自分のファンドを立ち上げる前、私がEastVenturesのアソシエイトをやらせていただいているときですね。
藤田:参加してみようと思ったきっかけというのは?
佐俣:もともと大学のときからIVSっていうイベントは知っていたんですけど、EastVenturesというファンドで働いているときにパートナーの松山太河さんが、「アンリもこういうイベントに入れると良いね」と。
「スタッフとかできるといいんじゃないの」みたいな話をしたときに、小林雅さんにお会いして、いろいろ話したときに「スタッフしてみる?」とお誘いいただいたっていうのがスタートでした。
藤田:以来あっという間に5年経ち、ご自身の環境も変わる中で、IVSのスタッフをして自分自身変わったなとか、こういうものを学んだなということはありますか?
佐俣:一番学んだのは何ですかねぇ……。IVSスタッフって、経験した人じゃないとわからないんですが、ひとつのスタートアップみたいになっていて。
僕がやらせていただいた時は15人ぐらいのメンバーから始まって……今って何人くらいですか?
藤田:今はもう70人とか。
佐俣:(笑)。なので、どんどん成長しているスタートアップ。5年で15人が70人なので。
スタートアップと同じような成長を見てきて、組織が大きくなるってどういうことかとか、どういう仕事の人がどういうふうに成長していって、何をするともっと成長できるのかとか、そういうのを考える場所をいただけたかなと。
僕自身は投資家という立場なので、自分でスタートアップを立ち上げることはないので、スタートアップの一員のような感覚で見させていただいたってのが一番IVSで学べた観点かと思ってます。
藤田:実際にスタッフという側面もあると思うんですけども、このIVSに参加したことで発見があったこととか、何か新しく得たことっていうのはありますか?
佐俣:そうですね。ちょっと変な話かもしれないですけど、「経営者って人間なんだな」っていうのをすごく思っていて。
例えば、ジャニーズとかテレビで観るじゃないですか。なんか人間じゃないように見えるじゃないですか。
それと同じで、僕にとってネットの経営者って雑誌とかテレビで観る人だったのが、みんな普通に参加していて、人間としゃべっているというのが一番おもしろい。
経営者っていうのは全員人間で、その場で考えてその場で話してるんだなっていう……当たり前のことなんですけど。意外と感覚的に持てなかったことが得られたのが大きかったかなと思ってます。
藤田:IVSスタッフだけじゃなくて、日頃の仕事を通じて本当にたくさんの経営者、あるいは経営者の卵と会う中で、「この人は伸びるな」とか「この人は、普通だな」とか、普通って言ったら変ですけど。その差はどこにあると感じますか?
佐俣:とにかくエネルギーがある人はおもしろいなと思っていて。参加するスタートアップの方でもスタッフでも「よくわかんないけどこいつは何かやりそう」「今やってなくても何かやりそう」っていう人は、3年後に気が付いたら起業してましたとか、すごいサービス出しましたという人は結構多いなと思います。
そういう何か得体の知れないエネルギーがあふれている人っていうのがいて、それは1つポイントかなっていう気がします。
藤田:実際に過去を振り返ると、IVSのスタッフとして参加していた人の中でも、投資してみようとか、一緒に仕事してみようっていうパートナーが見つかったケースもあるんですよね。
佐俣:そうですね。IVSのスタッフとして一緒に活動する中で、「この人の仕事の姿勢はすばらしいな」とか。
今一緒に仕事させてただスタッフの佐々木さんはプライマルキャピタルというベンチャーキャピタルを立ち上げていますけど、一緒にスタッフ仕事をする中で、この人と一緒に仕事をしてみたいとかで、一緒に投資の仕事をさせてもらったりとか。
やっぱり一緒に仕事するってすごいわかりやすいので、スタッフってひとつの目標についての取り組み方って、それぞれ差が出るので。ここで一緒に仕事させてもらったことが、結構増えてきましたね。
藤田:少し話をさかのぼると、もともとこういうベンチャーの世界に入る前は、大学を卒業してすぐにリクルートに入ったんですよね。そこで2年半いて、どういうきっかけでスタートアップの世界、特にベンチャーの世界に入ったんでしょうか?
佐俣:正確に言いますと、リクルートにいてベンチャーに行ったというよりは、学生の頃からベンチャーの世界にどっぷり浸かっていて、その後にリクルートにいったん入って、元に戻ったという感じですね。どちらかというと留学みたいな。
リクルートというすばらしい会社に留学させてもらった感じで、「帰る場所に帰ろう」みたいな感じが一番大きいですね。
藤田:大企業に入ってからの2年半で知ったこと、発見したことっていうのはありましたか?
佐俣:リクルートっていう会社が一般的な大企業と合ってるのかよくわからないですけど、とにかくすばらしい組織なんですね。
従業員3万人以上、時価総額2兆円の企業がどうやって動いているのかって、やっぱり中に入ってみないとわかんないんですね。そこで得られたことはすごく大きくて。
今でも真剣に、ほとんどのベンチャーよりリクルートのほうがすばらしい組織だなって心から思ってますし、ああいう会社をつくれたら、ベンチャーキャピタルとしても、1人の人間としてもすばらしい経験だと思います。
言ってしまうと、模範みたいなものを勉強させてもらったなという気がします。
藤田:今の言葉の中に少し出てきた「こういう会社をつくりあげたい」。それはベンチャーキャピタルという立場から、こういう会社をつくりあげたいっていうイメージがあるんですか?
佐俣:そうですね。例えば「ゲームで」とか「広告で」とかいうのはあんまりないんですけど、やっぱりリクルートという会社がすばらしいなと思ったのは、自分たち自身が自分の会社をすごく好きなんですよね。
自分の会社が実現できる可能性をすごく信じているし、それを一緒にやれる仲間を信じているみたいな。こういう組織をつくりたいなっていう。
特定産業で何かっていうよりも、こういう産業をどんどん良くしていきたいという集団をつくれたら幸せだろうなと。
極端なことを言うと、インターネット産業のリクルートとか……僕はサイバーエージェントさんをすごい尊敬しているんですけど、リクルートに近い形を持っていると思うんですね。そういうものをいろんなところでつくれたら幸せだなと思ったりします。
藤田:そういうビジョンで、ベンチャーキャピタルとして、それぞれの投資先や他のベンチャー企業に対して普段どういうふうに接しているんですか?
佐俣:「とにかく大きいことを見よう」と。「小さいことをやってるんだったら、普通に就職したりするほうが社会的にもいいかもしれないから、大きくて難しいことを真面目にチャレンジしよう」っていうのは繰り返し言いますね。
普通にやっても普通になるから。僕らは「どうせなら大成功するか大失敗しよう」という話はよくします。
藤田:それは結構中に入り込んでいって、メッセージとして発信するんですか?
佐俣:そうですね。中に入り込むというのはすごい難しい言葉だなと思ってまして。投資家というのは、同じメンバーにはなれないので。
投資家という立場から一緒に夢を見て、その夢が違うなと思ったらその場でスパッと止めて、「いやいや、違う違う」みたいな。
「お前たちとディスカッションを500時間やったわけじゃないけど、このままいってもこれぐらいにしかなんないから、こういうのはどうだろう」みたいな。
気持ち的には中に入ってますけど、オペレーション上、一緒に中に入るっていうわけではないですね。
藤田:今、ベンチャー起業家ではなくて、ベンチャーキャピタルになりたいと考える人がちょっとずつ増えてきてるかなと思うんですけれど、アンリさんはどうやって、そこの知識とか学びを得たんですか?
佐俣:まず初めに、ベンチャーキャピタルになりたいっていう人が増えてるのはすごくうれしいです。僕はやっぱり「そういう世の中になって欲しいな」と思っていて、ベンチャーキャピタルがすばらしい仕事だと思っているので。
佐俣:僕自身がベンチャーキャピタルという仕事を知って興味を持ったきっかけというのは、すごい話ではなくて、リクナビで見つけたっていう(笑)。
いまだに何度言ってもあまりカッコいい話ではないのですけれども、リクナビで偶然ポチッと押したらあった。そして受けたら内定したっていうのがきっかけです(笑)。
内定しておもしろそうだったので、行こうと。そうなったからにはたくさん勉強しようと思ったら、すばらしい先輩方にお会いして。それこそ小林雅さんもその1人ですね。そんな人たちになりたいなと思って、どんどんハマっていった。
藤田:そうやって偉大な先輩のベンチャーキャピタリストを見る中で、こういうことが大事なんだろうなと思ったことって何かあるんですか。
佐俣:未来に対して、ポジティブであることってすばらしいなと思ってます。ベンチャーキャピタリストはそれぞれ個性があって、受け持つステージも違うので。ただ全員共通してるのは、未来に対してすごいポジティブなんですよね。
「世界はこれからテクノロジーですばらしいことになるだろう」とか、「日本はこういう魅力が出せるだろう」という、根本的なポジティブさは全員変わらないですよね。
これが共通してて、「こういうことなのかな?」っていうのが最近やっとわかってきた気がします(笑)。
藤田:投資先も増えてくる中で、今実質的には1人で活動されていて……これに対してはどういう考えなのでしょうか?
できるところまではまだしばらく1人でやろう、今度は組織として広げていこう、あるいは別の考えがあるのか。
今後のANRIファンドのベンチャーキャピタルとしての組織はどういうふうに設計しておられるんでしょうか。
佐俣:鋭い質問だと思って、どう答えようかなと思ってるんですけど(笑)。正直、模索してるっていうところが大きいです。
極論、大手のジャフコさんみたいに100人のチームをつくるとかもカッコいいなと思いますし、WiLさんみたいにプロフェッショナルファームとして、パートナー3人でメンバー10人ぐらいで100億円ぐらいのファンドをつくるみたいなのもすばらしいと思うんですよね。
僕の中で最高の答えってまだ見つかっていなくて、ずっと模索してる最中。自分のファンドを立ち上げて今4年目ですけど、初めて人を1人雇いました。
ずっと1人でやってきて。ただもっと人増やしてもいいのかもなと思って、まずは1人と思って雇ってみました。
藤田:でも目指すのは世界No.1なんですよね。
佐俣:そうですね。世界で一番のベンチャーキャピタル的なものをつくりたいって言ってますけど。
藤田:ベンチャーキャピタル的なもの?
佐俣:ベンチャーキャピタルって、僕が「ベンチャーキャピタル超格好いい!」と思った2006〜2007年ぐらいから、この8年9年で激変していて。
当時トップだったって言われてるファンドが全然トップじゃなくなったりとか、当時全くなかったファンドがトップになったりするんですよね。ベンチャーキャピタルっていう仕事の定義自体が結構変わってきているんです。
今まで求められたものじゃない機能になってきていて、もしかしたら僕がもっと頑張って、あと5年で目指すところには、ベンチャーキャピタルという名前ではなくなっているかもしれないと思っています。
ただ根本として流れるのは、未来に対してポジティブで、起業家と一緒に新しい産業をつくろうとか、この作業もう1回リブートしようとかという思想。
この中で一緒に何かを目指せるもの。これが僕が言っている「ベンチャーキャピタル的なもの」なんですね。これの中で一番になっていたい。
その時にはベンチャーキャピタルとプライベートエクイティファンドと、個人のエンジェルと、もしかしたら国とか政治家とかが同じ輪っかになって戦ってるかもしれないです。その中で一番になりたいと思っています。
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