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日本からグローバルに通用する製品・企業を創る(全5記事)

「文系だから」は逃げ文句 起業家らがプログラミングを絶対的に勧める理由

2015年6月27日に、「IVS SEEDS 2015 Summer」が慶應義塾大学日吉キャンパスで開催されました。テーマは「日本からグローバルに通用する製品・企業を創る」。モデレーターをインフィニティ・ベンチャーズLLP・小野裕史氏が務め、コロプラ・千葉功太郎氏、スマートニュース ・浜本階生氏、ソラコム・玉川憲氏が、今後日本企業がグローバル社会で生き抜く術を語り合いました。日本発のスタートアップが資金調達をして、海外に出ていく中で、今後企業で求められるのはどんな人材か? 必要とされるマインドセットから具体的に身につけておくべきスキルまで、経営者たちが語り合いました。

海外展開する覚悟と資金力がなければならない

小野裕史氏(以下、小野):貴重なお話ありがとうございました。非常に印象的だったのが、千葉さんのところは6年ぐらい経ってようやく海外展開ですよね。浜本さんのところは1年半で遅いぐらいだったと。これ、結構象徴的だなと思って。

みなさん、メルカリってアプリ知ってる方どれくらいいますか? 結構多いですね。メルカリさんもほぼ同じようなタイミングでアメリカに行ってますよね。彼らも立ち上げ1年間くらい。

浜本階生氏(以下、浜本):実はサンフランシスコの同じコワーキングスペースで仕事してたこともあります。

小野:これすごく大事なことで、なぜ彼らができたかというと、単純な話、昔じゃ考えられなかったくらい多額な資金集めができたというのが背景にあると僕は見ています。

さっき千葉さんがおっしゃっていた体力の話もまさにそうですし、日本で稼いでいるエース級の人を向こうに行かせるというのは体力以上にかなりリスクを取るわけですよね。

そこまでの覚悟や資金力がないと。アメリカのさらにもっとでかい金額を普通に集めている人たちと戦わなければいけない。この現実感というのは、みなさん結構「グローバル」というと憧れみたいな、「やりたい」「やるだろ、グローバル」と簡単に言うんですけど、そんな簡単なものじゃない。

世界の人たちと戦うというのは、資金力も含めてそれだけの準備、体力、覚悟も必要だというところは、そこだけ学んでいただきたいなと思います。聞くと簡単なように聞こえるんですけど、とんでもないリスクを背負ってやっているなと印象的に感じました。

日本のスタートアップに広がるチャンス

千葉功太郎氏(以下、千葉):今総括されて思ったんですけど、スマートニュースさんやメルカリさんと我々はやっぱり時代が違いますね。

小野:それも大きいですよね。

千葉:そう思いました。さっき自分の写真を出して思ったんですけど、サーバーつくってましたからね。アキバでパーツ買ってきて、普通に組み立てて。夜中、社長がやって管理していて。データセンターにそれを移行したとき「やった!」ぐらいの、そういう古い時代で。

とにかくハードウェアに縛られていたし、資金調達も全然できなかったんですね。2008年2009年、リーマンショックが終わったあと非常に冷え込んでいたので、資金調達もできず。なので、とにかく自分たちで体力をつける。お金を集める。

一方で今、インフラは整ってワンボタンで世界中にいくし、かつ単価が安いですよね。ちょうど水曜日うちの経営会議でインフラのレポートを受けているときに、何十何百テラバイトのトラフィックがすごく安い価格で提供されているのを数字で見たときに、考えられないと。

6年前だったらそれが年間何億もインフラコストだけで払わなくちゃいけないものが、1000万円以下で実現してしまっていて。こんな恐ろしい時代で、かつ日本でも資金調達が非常にしやすくなっていると。スタートアップ恐ろしいなって経営会議で言いました。それぐらい今良い時代なんですよね。

玉川憲氏(以下、玉川):今の話は本当にそうで。今までグローバルという話をすると、「結構すごいことになってる」とか「こっちからいかないと向こうから来られちゃう」とかホラーストーリーに聞こえるんですけど、実はホラーストーリーというよりかは、ものすごいチャンスが転がっていて。今まででは考えられないくらい物事が変わっていて、チャンスが出てきている。

今みなさん学生で、ここの場にいて。僕からすると、すごく恵まれているなと。本当に大チャンスにいて。日本にいて、こんなにお金も技術もあるような状況で……というのは素晴らしいことだと思うので、「おお、ラッキー」と思って帰ってほしいなと思うんですよ。

千葉:ここ(千葉氏)とここ(浜本氏)でもそれだけ差があるんだから、ここ(浜本氏)とみなさん(参加者)の間にも差があるわけじゃないですか。

玉川:私なんか製品出してないけど、お金調達できるわけですよ。

千葉:(笑)。

小野:すごいですよね。

玉川:もちろん別にさぼっているわけじゃないですけど(笑)。

小野:プロダクトを出さない時点で7億円集めるとか、今までだとあまりなかったですよね。そういうことが可能になっているという、資金面のインフラも今すごくハッピーな状況に。

玉川:まさにシリコンバレー的になってきているというか。シリコンバレーだと普通ですよね。製品出してなくても、コンセプトとチームをつくったらお金が集まる。日本はそれまでなかったけど、最近出てきはじめたということですよね。

エンジニアが圧倒的に足りない!

千葉:そうなると、足りないのはやはりエンジニアリングですよね。

玉川:そうですね。

千葉:この中でエンジニアの方ってどれぐらいいらっしゃいます? やっぱり少ないですね。だめですよみなさん、ありえない。

玉川:手を挙げた人は私にメッセージをください。

千葉:僕にも(笑)。本当にありえないです、みなさん。こんな大チャンスがあるのに、エンジニアリングを勉強せずにどうするんだよという。逆にそれだけあれば、あと全部あるんですよ。

小野:グローバルセッションにいながら、「今英語しゃべれる人どのくらい?」というイメージですよね。英語をしゃべれないのにグローバルにいこうとしているのと同じように、ITの業界にいこうとしているのに、エンジニアリングのある程度の勉強をしていないというのは、それぐらいの危機感を持っていただいたほうがいいかなと。僕も元エンジニアとして(笑)。

千葉:「文系だから」というのは完全に逃げ文句なので。そんなの関係ないですよね。

浜本:うちの共同創業者の鈴木が言ってる話なんですけど、数百年前は、強い人というのは武器を持っている人だったと。なんだけど、活版印刷の技術が出てからはペンを持つ人が一番強い人になった。これがずっと続いてきたんだけども、ここ数十年くらいでコードを書く人が一番強い力を持てるようになってきたと。こういう変化が起きているみたいなんですよね。

だから、非常に強い武器を持てるという意味では、ぜひ技術に触れてみていただきたいというのは強く思います。

玉川:「読み書きソロバン」と言ってたんですけど、現代で言うと、英語の読み書きとプログラミングなんですよね。

千葉:あと金融知識かな。僕の子どもにはその3つを教えたいなと思っていて。

小野:もちろんそういうのを知っている人たちとチームを組むというところも含めて組織をつくっていけるのかなと思います。

小野:あと10分ほどなんですけど、もう少し目線を変えて、場合によっては、これから当たり前のように外からも労働力がクラウドベースで入ってきたり、実際に人も来るかもしれないとか、逆に我々も出ていかないと日本ではサバイブできないという状況になっていく中で、スキルセットという話でプログラミングとか言語という話が出たんですけれども、今後どういう行動を意識していけばサバイブできるのか。

逆にいうと、みなさん新メンバーとして、グローバル人材という意味ではどういう人を採りたいか。そのあたり、ぜひ学生がこれから具体的に何を努力していけばいいか、ヒントになるような話を教えていただければと思います。

ジェフ・ベゾスをはじめとするAmazonの優れたリーダーたち

玉川:私から。メンターみたいな人はすごく大事だなと思っていて。私はAmazonにいたのでジェフ・ベゾスがいたんですけど、僧侶みたいな人で。地に足がついているというか。世の中の常識に左右されることなく、自分が考えた真理というものをきちっとやる。

Amazonの場合だと、赤字赤字と言われていても、次に投資する場所をあの人はわかっていて、それを続けている。それが評価されているという感じですね。ジェフ・ベゾスはメンターというよりも尊敬する人で、何度か食事を一緒にさせていただいたくらいです。

そのすぐ下の右腕のアンディ・ジャシーというAWSのトップが非常に親しくて。彼を見ていると本当にグローバルのリーダーだなと思うんですよね。ビジネスアスリートというか。経験も気質もリーダーシップも兼ね備えていて。1つシェアしたいエピソードがあるんですけど。

私がAWSの日本のデータセンターをオープンしたのが2011年3月3日だったんですね。ご存知の通り、3月11日に東日本大震災があって、オープンを喜んでいた1週間後に地震がきてしまって、ビジネスもままならない、そんな状況になったんですけど。

歩いて家に帰ったときにニュースを観ていたら、津波が来てしまってサーバーが全部持っていかれたんですよね。

東北地方の市町村のホームページはことごとく落ちて。避難情報を伝えたくても伝えられないという状況になってしまったので、ふと微力ながらクラウドを無償で解放したら助けになるんじゃないかと思ったんですね。思いついて、これはやるべきだと思って、すぐアンディにメールを送った。

アンディは1週間前に日本オープンのために来ていたので、メールを送ったんですよ。さすがに今クラウドのリソースを全部無償で提供するというのは結構大きなビジネスジャッジメントがいるので、返事は1日くらいかかるだろうと思っていたら、5分以内に返事が来て、「もちろんOKだ」と。「ただ、2つ条件がある」と。

「1つは、1週間とはいえ既存のお客様がいるだろう。そのお客様に迷惑をかけない範囲でやれ。もう1つは、それをやるのはいいんだけど絶対にマーケティングに使うな」と。

その2個の条件が5分以内でパーンと返ってくるんですよ。「なんてすごい男だろう」と。このような状況の中で、正しい判断をすごいスピードできるんだろうかと思ったんですよね。

それって日本人とかアメリカ人とか関係なくて、素晴らしいリーダーはそういうものを持っていて。英語で言うと「Are Right, A Lot」って言うんですけど。「いつもあの人、多くの場合正しいよね」っていう。何か判断に迷うとか、何かやるときに「あの人だったらどう考えるんだろう?」というようなお手本になるような人が心の中にいるというのはすごくいいことで。

僕はグローバルに出ていくのが怖いんですけど、なんで怖いかというと、反対側から見たときに、僕は日本側にいてアンディみたいな人が来ていろいろ指南してくれたんですよね。僕はそれができるかと。同じように反対側になってできるかという意味だと、まだまだ足りないなと思っているので研鑽していきたいなと思っています。

小野:ありがとうございます。浜本さん。

ベンチャーはカジュアルな選択肢の1つ

浜本:僕は起業しようと思ったときに、自分の貯金が大した額あるわけでもなく、かといってお金を出してくれる人がいるわけでもなく、非常に不安な気持ちで自宅サーバーを買い集めて1人でもくもくやるみたいな、そういうところからのスタートだったんですけれど、それが2010年とか2011年の頃で。

そのときに比べると、やっぱり今の環境は資金調達のしやすさもあって、とても良くなってきていると思うんですね。その結果、起業したいなと思っている方がいるとして、その人が悲壮な決意をする必要はもはやなくなってきており、今すでにかなりの勢いで成長し続けているようなスタートアップも日本に数が増えてきていると。

かつてはネットベンチャーと言えば、寝袋を持ち込んで徹夜で仕事をするのが当たり前ということがあったのかもしれないですけど、今はたぶんそういうことってすごくなくなってきていると思うし、ものすごくおもしろいチャレンジができる場所が会社の中で用意されていると思うんですよね。

なので、そういうところにまず飛び込んでみて、そこでベストを尽くしていけるところまでいって、それから次のことを考えるなんていうことも、カジュアルに選択肢の1つとして入ってきているんじゃないかなと。

あまり肩に力を入れずに、自分のやりたいようなことがやれる環境を見つけて、そこで頑張るということをしていただければいいんじゃないかなと思いますね。

小野:ありがとうございます。千葉さん。

ネットワーキングだけ頑張る人は薄っぺらい

千葉:グローバル人材で、どういう人と働きたいかという話なんですが、昨日もセッションでお話しましたが、せっかくみなさん今日ここに来ているので、この場をとにかく活用する。

さっきのメンターという話はその通りで、今みなさんいろんなものに恵まれているんですが、その中のさらにもう1つ、経営者が気軽にみなさんと話を聞いてくれたりする環境があります。

僕も含めて、今日登壇した方はダイレクトにFacebookでメッセージを送って、「僕こんなこと考えているんですけど、30分時間いただけませんか?」って言ったらたぶん断る人いないと思うんですね。

これはやっぱり、日本でも5年前10年前はなかった話で。今、我々もずっと10何年この業界でがんばってきて、いろんな人たちがインターネット業界でも1つまた知見が増えて、それでみなさんがいて。

「みなさんの世代に何か教えてあげたい」って素直に思ってるんです。だから、今日も全員無給で休みの日を潰して来ているんですね。この思いを受け取って、つまり何だと言うと、ここでただ聞いてウンウンと言って帰ったら何の意味もないんですよ。楽しかった思い出にしかならないんです。つまり、動かなかったらゼロなんです。みなさんの今日の価値は。

動くというのは、ここにいる人たちを捕まえるなり、Facebookで連絡を送るなり。Twitterは結構みんな使っていないので、Facebookがいいと思うんですけど。とにかく自分とリレーションをつくり、メンターになっていただけるような経営者に、「グローバルとは何ですか?」みたいなのを、今日は時間がないのでそんなに深く議論できないですが、とにかく聞くと。

それで、動く。一歩を踏み出す。そういうことができる人がやっぱりいいと思います。そういう人たちはたぶん情報感度も高いし、申し訳ないけれど、学生の低いレベルの目線よりもずっと高いレベルで視座と視点をいろんな人から吸収することができるので、人よりも早く成長できると思います。

ポイントはそれを全体の2割ぐらいでやっていただいて、残り8割くらいはしっかり引きこもって技術の勉強をしてほしいですね。モノづくりをしてほしいです。なので、普段は引きこもり。でも時々こういう場に飛び込んできて、Facebookメッセージなりなんなりで、とにかくネットワーク上でメンターをつくっていくというぐらいのバランス。

逆に、とにかくネットワークだけつくって100パーセント頑張っている人はあまりうまくいかないと思います。薄っぺらいですね。いろいろ物は知っていて、友達も多くても、何か薄っぺらいです。

やっぱり今の時代、手に職じゃないけれど、モノづくりする力は絶対に必要だと思います。そのためにプログラミングは自分がエンジニアになるならない関係なく絶対にやっておくべきですね。仲間を見つけるのにも必要だと思っています。

小野:ありがとうございます。「動く」ということは本当に大事ですね。プロダクトをつくるということも1つの具体的なアクションですよね。

ちょうど質疑応答にいこうかと思ったんですが、きれいにお三方からメッセージが出たところで、あと残り1分はあるんですけれども、このセッションを終了したいと思います。

さっきも第1セッションで手を挙げて質問したそうな人がいたんですけど、今あったじゃないですか。Facebookメッセージで送ってみればいい。このあと掴まえて声かければいいじゃないですか。ということで、ここからまた試されている。みなさんのアクションを期待しております。最後にお三方に大きな拍手で締めたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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