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カフェスタ189@女性局~児童虐待問題を考える第5回(全2記事)

養護施設や家庭内の「児童虐待の負のループ」とは

自民党女性局がカフェスタからお届けする生放送番組「カフェスタ 189@女性局」。最終回となる第5回目は、司会進行を務める女性局長・三原じゅん子氏と女性局長代理・宮川典子氏の2人がこれまでの4回の放送を通じた「児童虐待問題」の総括を行います。本パートでは、重要な課題として挙げられた「児童虐待が起こる前にどうやって手を差し伸べるか」や「虐待が起こった後の親と子どもの心のケア」について、具体的な事例を紹介しながら意見を交わしました。

児童虐待のニュースは後を絶たない

三原じゅん子氏(以下、三原):今日のゲストは宮川典子先生です。よろしくお願いします。

宮川典子氏(以下、宮川):よろしくお願いします。

三原:本当に私がいつもお世話になっている、相棒と呼ばせていただいている先生でございますけれども。

このカフェスタ189はですね、189という全国共通ダイヤルができました。このことを一人でも多くの方に知っていただきたいということで始めた番組で、今日で最終回、5回目でございます。

1回目が馳浩先生、そして2回目がいま国会議員で子育て真っ最中の大沼みずほ先生。そして3回目が元埼玉県教育委員会教育委員長の松居和先生。そして、4回目に山田不二子先生。そして、最終回は我らが宮川典子先生と。

宮川:ありがとうございます。

三原:ということで、今日は教育現場をしっかり見てきた宮川典子先生に児童虐待について伺ってみたいと思いますので、よろしくお願いします。

宮川:よろしくお願いします。

三原:この189できましたけど、どんどん皆さんかけて下さいって言ってるんですけど、まあいろんなご意見があります。山田先生からすると、「なかなか1分くらい繋がりにくいのよ」とか、いろんなご助言をいただいたりとかですね。

宮川:それ、聞きますね。

三原:松井和先生には、「日本もとうとうここまで来てしまったか!」というようなこともあったり。ただ、やはり子供たちが「もしかしたら」ということがあったときにですね、いち早く連絡をして通報していただきたいという私たちの願いが少しでも進んだのかなと思っておりますけど。どうですか? 今日もまた悲しい事件が起こったそうです。

宮川:お父さんが、生後間もない子の揺さ振り死ですかね。それで逮捕されたなんてのが出てましたけど。後を絶たないですね。

三原:後を絶ちませんねえ。

宮川:この189ができて、いわゆる年配のお孫さんがいらっしゃる世代の人たちの反応は今までも強かったんですけど、意外と若い方の反応がすごく多いですね。

三原:そうですか。

宮川:これから子育てするだろうとか、結婚するだろうとか、そういう適齢期……適齢期っていうとどうかと思いますけれども、そういう方たちの反応、すごく多いですね。こういうのができて、自分たちもかける場所がよくわかったという方がすごくいらっしゃいますね。

三原:確かに、今までのあの10桁の番号ではちょっと覚えるのもなかなか難しいですし。同時に「こういうのがあったんだ」と、どこにかければ良いのかわからなかった方も多いと思いますので、ぜひとも広げていただくことは大事だと思います。

宮川:とっても重要だと思います。

家庭内の心理的虐待で失語症になった兄弟

三原:4回通じて、いろんなお話を皆さんから伺ってきたんですけれども。どうやったら虐待になる前に手を差し伸べて防ぐことができるか、ということが一番大事だと思います。

宮川:そうですね。

三原:ただ、悲しいかな。虐待が行われてしまったというときに、じゃあどうすればいいのか? それから児童相談所、あるいは養護施設に行った後も、お父さんお母さんのケアも必要だし、お子さんのケアも必要だし、18歳を越えてからのお子さんのケアも必要だなと。

いろんなお話がありましたけれども、本当に教育現場で、個人情報的なものもあるでしょうけれども、いろんな現場を見てきたと思うんですけれども、いかがですか?

宮川:今、三原局長がおっしゃったように、教育の現場でももちろんそうですし、児童相談所にも少しアルバイトでいたこともありますし、養護施設で半年くらい子供たちと一緒に生活したことがあるんですね。

だから、いろんな子を見てますけど。現場で言えば、どこの学校でって話ではないですけど、失語症になっちゃった子がいるんですね。中学生なのに、言葉が一切しゃべれなくなってしまった。筆談でないと話ができない子がいるんですよ。

「これ、なぜかな?」って思って、お家に行ってみたんですね。そうすると、家でほとんど会話がない。ご飯は出してくれるんだけれども「今日、学校どうだった?」とか「おはよう」とか「おやすみ」とか言葉掛けが一切ないんですよ。

三原:家庭の中で?

宮川:家庭の中で。会話を一切しないんですね。実はそこ、兄弟で失語症になっちゃったんですよ。

三原:ええ!?

宮川:そこはお父様がとっても厳格な方で、お母さんがそれに対して口をきけない。だから家庭の中がどんどん会話がなくなってしまって、使わなくなったことによって、どうやって声を出したら良いかわからなくなっちゃった。

三原:……かわいそうに。

宮川:これも、ご飯が食べられないとかお風呂に入れないとかそういうことはないんですね。毎日、学校には来てるんです。でも、自分の言葉が発せられなくなってしまったというのはやっぱりネグレクトだったり、心理的虐待って言っていいんでしょうか。やっぱりそういうもののひとつだなって思いましたね。

児童養護施設に行くと「負のループ」って私たちはよく言いますけど、あの負のサイクルがどうしても止まらないんですね。やっぱり何年か前までうちの施設にいた子が、また子供を連れて来るっていう。そういう場面にも何度も出くわしましたよね。

三原:そうですか……。

性的虐待が少女にあたえる影響

宮川:心理的虐待や身体的虐待、ネグレクトというのはテレビでもよくやりますけど、性的虐待の実態ってあんまりよくご存知じゃないと思うんですが。不思議なことに、例えば男性から性的虐待を受けた女の子っていうのは、男性の職員さんにものすごく近づいていくんですよ。

男性に(性的虐待を)されると、大人の男性が怖くていなくなるとか、逃げちゃうって私たちは考えてるんだけど、そうじゃないんですよね。

三原:逆!?

宮川:逆にものすごく張り付いていくんです。甘えていくんです。それはなぜかって言ったら、その性的虐待を受けたんだけれども、その後可愛がってもらった記憶があると。

例えば、厳しい父親から性的虐待を受けたんだけど、そのいわゆる行為が終わった後に何日間か非常に可愛がってもらえるんですって。そのときに記憶があって、男性職員にものすごく近づいていくとか。

これを見たときに、(性的虐待の)根の複雑さと深さっていうのはもうどうにもならない。だからその行為を忘れて、先にある優しさを求めていくっていうか……。

三原:まさに、上書きして忘れようとする。お子さんの本能なんですかね……。

宮川:そうですね……。やはり、それを見ると子供の心の傷つき方っていうのは私たちが「こうやって傷つくんです」「ああやって傷つくんです」なんてこと言えないくらいに、ものすごく複雑にヒビが心の中に入っていくんだなと思いますね。

三原:そうですね。私たちでさえ、虐待を受けたわけではないのに子供のときに叱られたことをすごく覚えていたり、ちょっとした傷つく言葉を言われて覚えていたり、そういうのってありますから。それを思うと、本当にいろんな経験を背負っている子供さんの心のケアをもう少し専門家にしっかり守ってもらわなきゃいけないのかなと思いますよね。

親や教師に相談できない子どもをどうするか

宮川:そうですね。今、安倍政権の中でといいますか、自民党の教育実行再生本部でも「チーム学校」っていうのを提言しているんですね。それは学校の先生だけじゃなくて、スクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーとか。早くいじめとか虐待の問題を見つけようってことで「そういう体制をつくりましょう」と言ってるんですけども。

その中で、スクールソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーの専門家の方たちが、親じゃないし教師じゃない大人としてどういう役割を果たしているかってとても重要だと思うんですね。昔を思い出すとそうですけど、学校の先生に相談できないことってないですか?

三原:基本私はしなかったですねえ。……すみません。

宮川:そうですよね。最近、山田麗子みたいな……この前、素直にサロンから電話をしているシーンを見ましたけどね、『卒業』の。これ、金八先生の話です(笑)。

三原:すみません、すみません(笑)。

宮川:そういう、素直になっていく山田麗子を見てたわけですけどね。ああいうのは、なかなかできないと思うんですよ。基本的には親にも言えない、教師にも言えない。

守秘義務をもった専門家の役割

宮川:親と教師はだいたい対で子供たちを見ていますから、どっちかに話せばどっちかにツーツーになると思っていれば言えないわけですよね。

ですから、守秘義務を持った大人が学校と身近にどうやっていくか。また、その存在を子供たちが頼ってくれるのかっていうのが大変重要なポイントだと思うんですよ。

虐待だと、望まぬ妊娠もあるでしょうし。リベンジポルノも法案通しましたけれども、若年層にどんどん広がってますから。「ネットにこんな写真が載ってるんですけどどうしたらいいですか?」ってときに、弁護士さん……例えばスクールロイヤーですね。

実は今、スクール弁護士をつくろうと思ってるんですけど、訴えられる先生方を守るだけじゃなくて、何か法的措置をしなきゃいけなくなったときに、子供たちを守るための弁護士さんも必要じゃないかと。そういうちょっと過剰のような話もありますけれども。そういうことを相談できる専門家っていうのは、やっぱり必要だと思いますよね。

三原:本当ですね。自分たちが子供のとき、例えば家庭の中で虐待を受けてたりしたときに「誰に相談しただろうな?」って思うと……。

宮川:誰ですかねえ?

三原:本来だったら一番(相談)しやすいお母さんに虐待を受けていたら、当然相談できない。当然、お父さんにもできない。兄弟にもできない。学校の先生にもできない。友達にもできないだろうなあ。うーん……やっぱり必要ですね。

宮川:だから、やっぱり自分の秘密を守ってくれて、上手いタイミングでお父さんやお母さん、学校の先生に話してくれる。そういう守秘義務みたいなものを守ってくれる大人の存在というのは重要だと思いますけれども。

三原:そうですね。やっぱり189なのかな。

宮川:そうですね。だからその189の取り扱いを学校現場でどうするかがとても重要だと思うんですね。

学校や教師は家庭の中までは介入できない

宮川:ある意味、学校っていうところは民事不介入ですから。家庭の中で、ドアの向こう側で起こっていることに対して「何も言えません」っていうのは、学校の常なんですよね。

三原:そう?

宮川:そうなんですよ。だから児童虐待を「虐待を受けてます」って言える子はまだ良いんですけれど。(虐待を)確実に受けてるだろうなと、親もそういう様子が見えるけれども、お互いが認めてない場合は私たちは家に突っ込んでいけないんですよね。いわゆる、ドアを蹴破って入っていくってことはできないですよね。

三原:でも、アメリカだと逆じゃないですか? 医師とか、そういった方々が見逃したら罰則があったりとかというのもあるので。児相の方に相談するしか先生の道はないってことですか? 先生が行くってことはできない?

宮川:家庭訪問はもちろんできますけど、無理矢理に入って行って「様子を見せて下さい」ってわけにはいかない。

三原:それはそうですよね。たぶん、児相の問題もそうですし、警察も結局は児童裁判所の許可がなければいけないということで。だから、そこもスピーディーにできるような体制にしようという動きもありますけれども。

かと言って、やはりそこの中で一番難しいのがお母さんたちの人権っていうんですかね? そういうところも考えていかなければならないし。

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