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2015年9月15日 平和安全特別委員会 中央公聴会(全1記事)

SEALDs奥田氏「憲法の無視は国民の無視と同じ」

2015年9月15日、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会の中央公聴会に学生団体SEALDs・奥田愛基氏が出席しました。奥田氏は、安保法制の成立を目指す自民党に対して最後の訴えを行いました。

学生団体SEALDsの活動

議長:奥田公述人。

奥田愛基氏(以下、奥田):ご紹介にあずかりました、大学生の奥田愛基といいます。SEALDsという学生団体で活動をしております。

すいません、こんなこと言うのは非常に申しわけないんですが、先ほどから寝ている方がたくさんおられるので、もしよろしければお話を聞いていただければと思います。

僕も2日間ぐらい緊張して寝られなかったので、僕も帰って早く寝たいと思っているので、よろしくお願いします。

はじめにSEALDsとは「Students Emergency Action for Liberal Democracys」日本語で言うと、自由と民主主義のための学生緊急行動です。

私たちは特定の支持政党を持っていません。無党派の集まりで、保守、革新、改憲、護憲の垣根を越えてつながっています。最初はたった数十人で、立憲主義の危機や民主主義の問題を真剣に考え、5月に活動を開始しました。

その後、デモや勉強会、街宣活動などの行動を通じて、私たちが考える国のあるべき姿、未来について日本社会に問いかけてきたつもりです。こうした活動を通して、今日、貴重な機会をいただきました。

安保法制に感じる大きな危機感

奥田:今日、私が話したいことは3つあります。1つは今、全国各地でどのようなことが起こっているか。人々がこの安保法制に対して、どのように声を上げているか。

2つ目は、この安保法制に関して、現在の国会はまともな議論の運営をしているとは言いがたく、あまりにも説明不足だということです。端的に言って、このままでは私たちは、この法案に対して到底納得することができません。

3つ目は、政治家の方々への私からのお願いです。

まず第1にお伝えしたいのは、私たち国民が感じている安保法制に対する大きな危機感です。この安保法制に対する疑問や反対の声は、現在でも日本中でやみません。つい先日も国会前では10万人を超える人が集まりました。

しかし、この行動は何も東京の、しかも国会前で行われているわけではありません。私たちが独自にインターネットや新聞などで調査した結果、日本全国2,000ヵ所以上、数千回を超える抗議が行われております。累計して130万人以上の人が、路上に出て声を上げています。

この、私たちが調査したものや、メディアに流れているもの以外にも、たくさんの集会があの町でも、この町でも行われています。

まさに全国各地で声が上がり、人々が立ち上がっているのです。また、声上げずとも疑問に思っている人は、その数十倍もいるでしょう。

若い世代が声を上げ始めたことの意味

奥田:強調しておきたいことがあります。それは私たちを含め、これまで政治的無関心と言われてきた若い世代が動き始めているということです。

これは誰かに言われたからとか、どこかの政治団体に所属しているからとか、いわゆる動員的な発想ではありません。

私たちは、この国の民主主義のあり方について、この国の未来について、主体的に一人ひとり個人として考え立ち上がっていったものです。

SEALDsとして行動を始めてから、誹謗中傷に近いものを含む、さまざまな批判の言葉を投げかけられました。

例えば「騒ぎたいだけだ」とか、「若気の至り」だとか、そういった声があります。ほかにも「一般市民のくせして、お前は何を一生懸命になっているのか」というものもあります。

つまり、「お前は専門家でもなく学生なのに、もしくは主婦なのに、お前はサラリーマンなのに、フリーターなのに、なぜ声を上げるのか」ということです。

しかし先ほどもご説明させていただきましたように、私たちは一人ひとり個人として声を上げています。

不断の努力なくして、この国の憲法や民主主義、それらが機能しないことを自覚しているからです。

「政治のことは、選挙で選ばれた政治家に任せておけばいい」。この国には、どこかそのような空気感があったように思います。

それに対し私たちこそが、この国の当事者、つまり主権者であること。私たちが政治について考え、声を上げることは当たり前なんだということ、そう考えています。その当たり前のことを当たり前にするために、これまでも声を上げてきました。

そして2015年9月現在、今やデモなんてものは珍しいものではありません。路上に出た人々が、この社会の空気を変えていったのです。デモや、至る所で行われた集会こそが不断の努力です。

そうした行動の積み重ねが基本的な人権の尊重、平和主義、国民主権といった、この国の憲法の理念を体現するものだと私は信じています。

私は、私たち一人ひとりが思考し、何が正しいのかを判断し、声を上げることは間違っていないと確信しています。また、それこそが民主主義だと考えています。

奥田:安保法制に賛成している議員の方々も含め、戦争を好んでしたい人など誰もいないはずです。

私は先日、予科練で特攻隊の通信兵だった方と会ってきました。70年前の夏、あの終戦の日、20歳だった方々は、今では90歳です。

ちょうど今の私やSEALDsのメンバーの年齢で戦争を経験し、そしてその後の混乱を生きてきた方々です。

そうした世代の方々も、この安保法制に対し強い危惧を抱かれています。私は、その声をしっかりと受け止めたいと思います。そして議員の方々もどうか、そうした危惧や不安をしっかり受け止めてほしいと思います。

今、これだけ不安や反対の声が広がり、説明不足が叫ばれる中での採決は、そうした思いを軽んじるものではないでしょうか。70年の不戦の誓いを裏切るものではないでしょうか。

今の反対のうねりは世代を超えたものです。70年間、この国の平和主義の歩みを、先の大戦で犠牲になった方々の思いを引き継ぎ守りたい、その思いが私たちをつなげています。

私は今日、そのうちのたった1人として、ここで話をしています。つまり、国会前の巨大な群像の中の1人として国会に来ています。

政府は法的安定性の説明を放棄している

奥田:第2に、この法案の審議に関してです。各世論調査の平均値を見たとき、初めから過半数近い人々は反対していました。そして月を追うごと、反対世論は拡大しています。

理解してもらうために、きちんと説明していくと現政府の方はおっしゃられておりました。しかし説明した結果、内閣支持率は落ち、反対世論は盛り上がり、この法案への賛成の意見は減りました。

選挙のときに集団的自衛権に関して、すでに説明したとおっしゃる方々もいます。しかしながら自民党が出している重要政策集では、アベノミクスに関しては26ページ中8ページ近く説明されていましたが、それに対して安全保障関連法案に関しては、たった数行でしか書かれていません。

昨年の選挙でも菅(義偉)官房長官は、集団的自衛権は争点ではないと言っています。さらに言えば選挙のときに、国民投票もせず解釈で改憲するような、違憲で法的安定性もない、そして国会の答弁をきちんとできないような法案をつくるなど、私たちは聞かされていません。

私には政府は法的安定性の説明をすることを、途中から放棄してしまったようにも思えます。憲法とは国民の権利であり、それを無視することは国民を無視するのと同義です。

また本当に与党の方々は、この法律が通ったらどのようなことが起こるのか理解しているのでしょうか。想定しているのでしょうか。

先日言っていた答弁とは全く違う説明を、翌日に平然とし、野党からの質問に対しても国会の審議は何度も何度も速記が止まるような状況です。このような状況で、一体どうやって国民は納得したらいいのでしょうか。

SEALDsは確かに注目を集めていますが、現在の安保法制に対して、その国民的な世論を私たちがつくり出したのではありません。もしそう考えていられるのでしたら、それは残念ながら過大評価だと思います。

私の考えでは、この状況をつくっているのは紛れもなく現在の与党の皆さんです。つまり安保法制に関する国会答弁を見て、首相のテレビでの理解しがたい例え話を見て不安に感じた人が国会前に足を運び、また全国各地で声を上げ始めたのです。

ある金沢の主婦の方がFacebookに書いた国会答弁の文字起こしは、瞬く間に1万人もの人にシェアされました。ただの国会答弁です。

ふだんなら見ないようなその書き起こしを、みんなが読みたがりました。なぜなら不安だったからです。

今年の夏までに武力行使の拡大や集団的自衛権の行使容認を、なぜしなければならなかったのか。それは人の生き死に関わる法案で、これまで70年間、日本が行ってこなかったことでもあります。

一体なぜ11個の法案を2つにまとめて審議したか、その理由もよくわかりません。1つひとつ審議しては、だめだったのでしょうか。全く納得がいきません。

結局説明をした結果、しかも国会の審議としては異例の9月末まで延ばした結果、国民の理解を得られなかったのですから、もうこの議論の結論は出ています。今国会での可決は無理です。廃案にするしかありません。

安保法制が強行採決されたらどうなるか

奥田:私は毎週国会前に立ち、この安保法制に対して抗議活動を行ってきました。そして、たくさんの人々に出会ってきました。

その中には自分のおじいちゃんやおばあちゃん世代の人や親世代の人、そして最近では自分の妹や弟のような人たちもいます。

確かに、若者は政治的に無関心だと言われています。しかしながら現在の政治状況に対して、どうやって彼らが希望を持つことができるというのでしょうか。関心が持てるというのでしょうか。

私や彼らがこれから生きていく世界は、相対的貧困が5人に1人といわれる超格差社会です。親の世代のような経済成長も、これからは期待できないでしょう。今こそ政治の力が必要なのです。

どうかこれ以上、政治に対して絶望してしまうような仕方で議会を運営するのはやめてください。

何も賛成から、すべて反対に回れというのではありません。私たちも安全保障上の議論は非常に大切なことを理解しています。その点について異論はありません。

しかし指摘されたこともまともに答えることができない、その態度に強い不信感を抱いているのです。政治生命をかけた争いだとおっしゃいますが、政治生命と国民一人ひとりの生命を比べてはなりません。

与野党の皆さん、どうか若者に希望を与えるような政治家でいてください。国民の声に耳を傾けてください。まさに、義を見てせざるは勇無きなりです。

政治のことをまともに考えることが、馬鹿らしいことだと思わせないでください。現在の国会の状況を冷静に把握し、今国会での成立を断念することはできないでしょうか。

世論の過半数を超える意見は、明確にこの法案に対し、今国会中の成立に反対しているのです。自由と民主主義のために、この国の未来のために、どうかもう一度、考え直してはいただけないでしょうか。

私は単なる学生であり政治家の先生方に比べ、このような所で話すような立派な人間ではありません。もっと正直に言うと、この場でスピーチすることも昨日から寝られないぐらい緊張して来ました。

政治家の先生方は毎回このようなプレッシャーに立ち向かっているのだと思うと、本当に頭が下がる思いです。

1票1票から国民の思いを受け、それを代表し、この国会という場所で毎回答弁をし、最後には投票により法案を審議する。本当に本当に大事なことであり、誰にでもできることではありません。それは、あなたたちにしかできないことなのです。

では、なぜ私はここで話しているのか。どうしても勇気を振り絞り、ここに来なくてはならないと思ったのか、それには理由があります。参考人として、ここに来てもいい人材かわかりませんが参考にしてほしいことがあります。

1つ、仮にこの法案が強行に採決されるようなことになれば、全国各地でこれまで以上に声が上がるでしょう。連日、国会前は人であふれかえるでしょう。

次の選挙にも、もちろん影響を与えるでしょう。当然、この法案に関する野党の方々の態度も見ています。本当にできることはすべてやったのでしょうか。

私たちは決して今の政治家の方の発言や態度を忘れません。「3連休を挟めば忘れる」だなんて、国民を馬鹿にしないでください。むしろ、そこからまた始まっていくのです。

新しい時代は、もう始まっています。もう止まらない。すでに私たちの日常の一部になっているのです。私たちは学び、働き、食べて、寝て、そしてまた路上で声を上げます。できる範囲で、できることを日常の中で。

私にとって政治のことを考えるのは仕事ではありません。この国に生きる個人としての、ふだんの、そして当たり前の努力です。私はこの困難な4ヵ月の中で、そのことを実感することができました。それが私にとっての希望です。

最後に、私からのお願いです。SEALDsの一員ではなく、個人としての、1人の人間としてのお願いです。

どうかどうか、政治家の先生たちも個人でいてください。政治家である前に、派閥に属する前に、グループに属する前に、たった1人の個であってください。

自分の信じる正しさに向かい、勇気を出して孤独に思考し判断し、行動してください。皆さんには一人ひとり考える力があります。権利があります。

政治家になった動機は、人それぞれさまざまあるでしょうが、どうか政治家とはどうあるべきなのかを考え、この国の民の意見を聞いてください。

勇気を振り絞り、ある種賭けかもしれない、あなたにしかできない、その尊い行動を取ってください。日本国憲法はそれを保障し、何より日本国に生きる民一人ひとり、そして私はそのことを支持します。

困難な時代にこそ希望があることを信じて、私は民主的な自由で、民主的な社会を望み、この安全保障関連法案に反対します。

2015年9月15日奥田愛基、ありがとうございました。

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