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テーマ「長期金利0.4%割れ」について(全1記事)

「日本はまたデフレ化に向かっている」 三橋貴明氏が長期金利0.4%割れの要因を語る

8月4日、債券相場はアメリカの好調を受け上昇し、資金の貸し借りの取引期間が1年以上のいわゆる長期金利は約2ヵ月ぶりに0.4パーセント割れとなった。このニュースを受け、経世論研究所所長の三橋貴明氏は「日本はまたデフレに向かっている」と指摘し、長期金利が低下した要因について解説しました。(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)

「長期金利0.4%割れ」について

堀潤氏(以下、堀):このコーナーは専門分野に長けた論客の皆様に独自の視点で今、知るべきニュースを角度持って思う存分お話いただきます。

脊山麻理子氏(以下、脊山):改めてゲストをご紹介します。経世論研究所所長の三橋貴明さんです。お願いします。

三橋貴明氏(以下、三橋):よろしくお願いします。

:さぁ、三橋さん、テーマの発表お願いします。

三橋:私はこれです。

(テーマ「長期金利0.4%割れ」について)

脊山:国債や地方債などの債券が取引されている債券相場は4日(8月4日)アメリカの好調を受け上昇。また、資金の貸し借りの取引期間が1年以上のいわゆる長期金利は約2ヵ月ぶりに0.4パーセント割れとなりました。

:どうしても株価とか為替のほうの数字にいきがちですけど。この国債の値動きっていうのは重要なんですよね。

長期金利の指標は10年物国債。現在、日本の代表的な指標金利として10年物国債(国が期間10年の借金をする時に発行する債券)の流通利回りがあり、長期金融市場の動向を知る上で非常に重要となっている。

長期金利が1パーセントを割り込んだのは日本が世界で初めて

:その長期金利ですが。

三橋:いまだに「日本は財政破綻する!」とかですね、頭の弱い人たちが言っているんですけど。実は、日本の国債金利って、世界最低水準だって知っていただきたいんです。ついでに、なんでこんなことになったのかを知っていただきたい。

青い棒グラフが、日本政府の長期債務残高なんですよ。もともとは、200兆円くらいだったの。1986年の時は。2014年にめでたく1,000兆円を突破しました。いわゆる国の借金が5倍になったって話なんだけど。政府の借金ね、厳密に言うと。

ところが、金利。バブルの頃は6パーセント超えていたのが、グワーっと下がっていきまして。

人類の歴史は長いんですが、長期金利が1パーセント割り込んじゃったのは、ここですね。

これ、人類史上、日本が初めてなんです。なぜ、「財政破綻、財政破綻」って言われている国の、政府がお金を借りる時の金利が下がっていくのでしょうか? これ、ちゃんと考えてほしい。

:例えば、ギリシャの話とか、スペインとか、国債の金利上がっちゃうから返せなくなって財政破綻って話なんだけど、日本の場合は、ここが非常に低い水準で位置している。

三橋:ギリシャは最終的に10パーセントを超えた、この前。

:いやぁ、すごかったですよ。

三橋:「財政破綻しますか?」って言ったら、するわけないの、日本は。「金利が世界最低水準でしょと。ついでに、自国通貨建ての国債しか発行してなくて、日本円発行できる政府がどうやって財政破綻するの?」って話なんだけど、実はこれ、全然いい話ではありません。

長期金利の低下はデフレの証

:いい話じゃない? そうなんですか?

三橋:なぜ金利がこんなに下がっちゃったのか、想像してみてください。皆さんは、銀行預金を愛してらっしゃいますよね。多分。

:銀行、今の普通の行動は、銀行に預けるっていうのが。

三橋:「家族の次に銀行預金が大好きだ」って人ばっかりでしょ。銀行にとって、皆さんの預金っていうのは、借入金なんです。銀行は皆さんから預金を借りて、企業とかに貸し出して、金利差を稼ぐのが商売なんです。

ところが、バブル崩壊、そして、橋本政権の緊縮財政以降、日本はデフレ化しまして、民間企業とか民間の家計が金を借りなくなっていったんですよ。

:なるほど。

三橋:だって、儲からないんだもん、借りたって。

でも、銀行にはガンガン預金がくるから、だから銀行は国債を買う。つまり、政府にお金を貸し出して金利を稼ごうとした。結果、こんなことになったんですよね。

:お金がちゃんと回ってないっていう。

三橋:その通り! 借りられてないんですよ。だから、政府に貸し出さざるを得なくて、金利が下がってたから、実は、赤い折れ線グラフ。金利の劇的な低下っていうのは、これは全然いい話ではなくて、デフレ深刻化の証なんです。

日本はまたデフレ化に向かっている

三橋:日本を下回る金利水準の国が、世界にひとつだけあります。スイスです。スイスは、2009年に長期金利が1パーセントを下回って、それで、日本に続いて2番目だったんだけどね。今、日本より下になっちゃってんの。金利が。これなんでか。

:どうしたんですか?

三橋:デフレだからですよ、もちろん! 同じなんですよ。ヨーロッパも、ドイツとかフランスの金利がグワーっと下がってきまして、日本に接近しました。一時ドイツは抜いたのかな。これはなんでかというと、もちろんデフレだからなんで。

要は、みんな金を借りないから、金利が下がってるっていうことで、あまりいい話じゃないんだけど。財政破綻云々とは全然別ですね。

今、設備投資をやろうとすると、信じられないような金利を銀行から提示されます。0.75パーセントとか。1年間に。それでも、投資しないんですよ。そのぐらい、今、デフレが深刻化してるのが日本です。

というわけで、この金利の低下っていうのは、財政破綻っていう意味だと「完全にしません!」っていうことは言えるんだけど、全くいい話じゃありませんよと。

:金が回っていませんよと。

三橋:みんな借りないでしょと。逆に、デフレ脱却したら、多少上がっていくでしょう。ということで、今日のニュースで、0.4パーセント久々に切ったっていうのは、完全に日本はまたデフレ化に向かっている。全然いい話じゃないです。

現段階のアベノミクスへの評価

:逆に、この金利って、どのくらいの値が適正なものなんですか?

三橋:普通の国は、3パーセントくらい。

:この辺りってことですか。

三橋:3パーセントくらいが当たり前。

:皆さん、これからニュース見る時に、金利の上げ下げ、この辺りの3パーセントあたりを目指してどう動いているのか。

三橋:そうです。「3パーセントに金利が上がったら、国債の金利払えなくなった、破綻する!」とか、また頭の弱い人が言い出すんだけどね。ちょっと落ち着けと。そんだけ金利が上がるってことは、めちゃめちゃ好景気、日本は。

ということは、GDPがガンガン増えていって、税収が増えるから、国債なんか発行する必要ないんですよね。プライマリーバランス黒字化してると思う。その時は。という形で、時間軸でちゃんと見て、日本の解決策を考えてほしい。

:となると、アベノミクスの評価っていうのが、来年……。

三橋:今のところ、全然ダメ。

:さらに明確に。

三橋:金利が上がるようなところまで持ってかないと、デフレ脱却とはとても言えないと思います。

:はい、ありがとうございました。

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