2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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安部敏樹氏(以下、安部):社会課題って、可視化することで課題が増える部分もあるんですよね。
例えば、部落の問題とかがあったときに、その問題に僕らは光を当てるべきか。当てることが次の差別を生んだりということもあったりとか、その見せ方を雑にして、マーケットに近づければ近づけるほど、情報としてはいろんなものが削ぎ落とされていく。
そうすると、それは当事者を傷つけることになりますので、そういう側面ってあるんですね。それは事実としてあると。
一方で、そこのマーケットを遠ざけていいのかみたいな。当事者たちというのは、多分あまり努力をしてこなかったのです。自分たちは当事者を守ることがまず第一なので、その多くの人々に関心を持ってもらう。
知ってもらおうということに対しての技法であったりとか、わかりやすさというのに対しては、ちょっと怠慢をしてきたというところがあって、僕らもできるだけ見せ方を工夫したいと思うのだけれども、一方でも今言ったように……。
奥田浩美氏(以下、奥田):一方では、見られたくないというところとの闘い。
安部:闘いですよ。そこはもう。
水野雄介氏(以下、水野):見られたくないものはいいんじゃない? 見せなくて。
安部:当事者はそうですけどね。例えば施設とかで、見せたいと思ってくれる施設、ただ、児童養護施設というふうに言っても、たくさんの児童養護施設があるわけですよ。本当はそれを一概に語っちゃいけなくて、複数の現場を見た結果としてその問題を判断するのが正しいと僕は思っているんです。
本当に劣悪な環境、施設があったとして、その施設が僕らを受け入れるかどうかというのは結構大変なんですよ。なので、そこは本当に現場のスタッフがしっかりコミュニケーションとって信頼してもらって進めていると。
やっぱりそこは過去5年間、想い先行でボランタリースタッフでずっと回してきたので、そういう話をしたりとか、将来どういうふうになるべきかということをしっかり話して、できるだけ対立じゃなくて、同じ方向を見ましょうよというのを、現場のスタッフ、当事者にしっかり説得をして、それでも見せたくないものは無理しないでいいですという話は(しています)。
奥田:「ともに」というような仕組みがすごく見える会社だなという。ただ教えるというよりも、学生さんとともに、切れ目がないんですよね。どこからが教える側で、どこからが学ぶ側みたいな(切れ目がない)、そういうことをすごく感じます。
安部:新しいコミュニティーを作っているんです。
奥田:確かにそうですよね。
安部:だから、一方的な上下関係じゃないのは確かです。
奥田:作ったコミュニティーから、新しいものを作ってということを考えているのかなというふうに(思うのですが)。
安部:コミュニティーを村化させないということが難しいんですけどね。
水野:村化っていうのは?
安部:今いるコミュニティーが横が強くなると、外から新しいことが入ってくると拒むわけです。
水野:コミュニティー側がね。
安部:だんだん村社会になってきて、そうするとおもしろくないじゃないですか。
水野:それはあるよね。例えば、30人でキャンプやっているほうが、バッと仲良くなって、それが300人でキャンプやるとなると、何かちょっと周りと違うよね? みたいな。簡単にいうとそんな感じだよね。
安部:懐古厨というのが出てくるんです。「昔はよかった」みたいな。でも進化しないと死ぬんだぞみたいな。
奥田:でも、この会だってそうだと思うのね。
安部:IVSはまさにそうですね。
奥田:IVSのすばらしいところというのは、やっぱりどんどん変わっていって、でも「昔はよかったね」という人も常に現れるなかをどんどん新しい仕組みにしているから、ずっと続いているなというのもあるし。私は特に、地方でコミュニティー作ることが多いと、もうまさに。
安部:もう村でしょうね。
水野:確かにね。
奥田:私はだから「混ざれども溶け込まず」というのがうちの会社の行動指針なんだけれども、つまり溶け込んじゃったら、私たちがやりたいことを見せる可視化もできなくて、もういないに等しくなっちゃうので。
私は地方にすごく向いているのかなと思うのは、女帝が神輿に乗って現れるみたいな。破壊者に扮して現れて。だけれども、私が持っているコミュニティーが下からこつこつ目指すのは、「あの人が言っていることなんだけど、実際はあんな高尚なこと言ってたって簡単じゃないですよね」と言いながらコミュニティーと一緒にやっているというイメージでやっています。
安部:地域に入るときって、絶対その地域側になっちゃいけないと。まさにそのとおり。俺100以上回っているんだけど、うまくいく地域はオープンな中で、しかし地域に混ざらない外部者みたいなやつがいるんです。
水野:新しいものをしっかり取り入れて、こっち側のやりたいこととか、こういうようになったらいいよというものを伝えていく。
安部:IVSで言ったら小林(雅)さんみたいな話で。要は、部分最適はみんなできるのです。日本人、部分最適は超得意なんで。何か枠組みを作ったらその中でできるだけ部分最適しましょうというのはすごいうまいんです。
でも例えば、あるコミュニティーを作って、30人のコミュニティーの中の、その30人のコミュニティーを最適なもの、すばらしいものにしましょうというのがうまいんだけれども、その30人のうちの15人を削って、その後から500人出てきて、新しいの作りましょうという決断は誰もしないんです。
それをするのは外部者、もしくは外部者の視点を持った相当勇気のある権力者みたいなのが必要になって、どちらかにならないと地域って変わらないんです。
奥田:私もそう思って、何百ヵ所って回っているんですけど。
奥田:それぞれ事業を立ち上げたときって、今はいろんなストーリーができて、こんなことやっていますって語れることがいっぱいあると思うのですけど、最初の一歩というのは、どういうことで始めて、どういうところにアプローチして、これがビジネスになるぞというふうにきたかというのをお聞かせください。
水野:僕、ITできないんですよ。
安部:IT教えているのに。
水野:だから始めたときは、Facebookもやっていないし、iPhone持ってないし、Gmailも知らないみたいな。ブラウザっていう言葉も知らない。
安部:それは結構きてますね。
水野:インターネットエクスプローラーがインターネットだというぐらい知らない人だったんですけど、でも子供たちがやりたいと思っているから、その環境をつくろうと思ってスタートしているんです。
僕はキッザニアをずっと見ていて、キッザニアってメキシコから持ってきているんですけど、やっぱり日本人って保守的だから。だから、まず向こう(海外)からいいものを持ってきたほうが早いんじゃないかというので、このITが一番伸ばせる環境を(つくろう)というので、スタンフォードでやっているキャンプがあって、それを見に行ったところからスタートしているんです。
大学でやるのいいよねとか、少人数制でやるのいいよねとか、最先端のものを教える可能性というのすごい感じたんです。
そこから最初、東大とか慶応でスタートするんですけど、何のツテもないので。僕の場合は、東大の馬場(章)先生と和田(洋一)会長が対談しているWebの記事があって、「言っていること俺らと似てね?」みたいな感じで。「ちょっと15分だけ時間ください」って研究室に電話をして。
奥田:電話番号も調べて。
水野:企画書を持っていって「これお願いします」みたいな感じで。馬場先生は、本質をすごく見てくださっていて「じゃあ一緒にやってあげるよ」みたいな感じで。それでも1年ぐらいかかるんですけど、最初に東大と慶応で。慶応も村井(純)先生のところでやらせていただいて。
僕そのときお金なかったので、早稲田高校で週3回教えながらやっていたんです。でも、iPhoneのアプリ作ってみようといっても、どういうカリキュラムがいいのかわかんないから、教えている子供たちに実際来てもらって。日曜日とかにワークショップを何度もやって。
奥田:最初は何人ぐらい。
水野:最初7人です。慶応のちょっとした場所を借りて、早稲田の子が慶応に来て作ってみるみたいなところからスタートして。1回目のキャンプが2011年になるんですけど、その前に「IT教育を考える会」みたいなのをやって、そこにカヤックの柳澤(大輔)さんとか孫泰蔵さんとか(が来て)。
奥田:最初から有料だったんですか? それとも最初は無料でやって有料化していった?
水野:有料です。キャンプの3日間とか5日間のものは有料。ただその前に、1日体験プログラムというのは無料なので、今まで累計1万人来ているんですけど、5,000人は体験プログラムを無料でやっているんです。その体験プログラムは全部無料でやっていたので、ちゃんと価値あるものを作って提供するという形で始まりました。
奥田:ここでパッと広がったなみたいな、何かポイントってありましたか。
水野:やっぱり結果ですね。1つ広がったのは、女子中学生がお弁当アプリを作ったというのがYahoo!ニュースに出たんです。夏キャンプで女子中学生3人のチームが、結構いいお弁当のアプリを作ったんですけど。それがヒットして、次来たいという子たちがガーッと集まったというのがやっぱり大きかったですね。
奥田:あと見せ方も素敵ですよね。カラフルなTシャツといい。
水野:その辺はやっぱりさっきの(IT系は)地味みたいなところってあると思うんですけど。最初感じてたのは、パソコン・ITオタクみたいな子たちがすごく来るかなと思ってたのが、全然そうじゃなくて……バレー部とか、バスケ部とか、音楽やっているとか、そういう普通の子がめちゃめちゃ来るんです。
奥田:何かライフイズテックってカラフルなイメージがある。
安部:女子ウケしそうな冊子によく出てきますよね。
水野:その辺はうまくいっている。
奥田:逆に今までビジネスで困ったこととか、(壁に)ぶち当たったことというのは。
水野:やっぱりお金の問題。例えば、何か受託やろうとか、コンサルやろうとか思えば、もちろん暮らすことはできるけど、それってやっぱりやりたいことじゃない。僕らってやっぱりミッションベースでスタートしているので、ほかのことをやり出しちゃうとリソースがそっちに割かれちゃうから。
奥田:すっごくありますね。
水野:それって本当にやりたかったことじゃないよね。だから絶対やらないようにしている。そうすると、やっぱりお金の問題っていうのはすごくあって。だからもう預金残高5万円みたいな(状態が)、毎月続くというか。とりあえず僕がキャッシングして、バイト代払って、何とか集金を早くして、カード代が払えるようにするみたいな(状態が)結構続いていましたね。
奥田:お金の問題大きいですよね。私は今「ウィズグループ」という会社と「たからのやま」という会社を2つやっていて、今どっちに集中するかという話にいつも悩むんですけど。
最近考えているのは、1社の中でお金をもうける仕組みが完結しなくてもいいんじゃないかと思っていて、何社かでちゃんとお金が回っているよみたいなのが、次の時代の価値になってもいいかなって。
安部:それは新しいですね。
奥田:だから「たからのやま」って1社は、ハッキリ言って儲かっていないんです。けれども、私が母親で、グループの中の赤ちゃんとか末っ子って思いでいるので、一番末っ子が儲かっていなくても、みんなで支えればいいんじゃないかみたいに思って。
安部:今のNPOがそういう仕組みですよね。営利事業と非営利事業があって、営利事業で出た利益分を非営利事業に持っていくと、税制的に有利になると。
奥田:安部さんのところも、社団法人と株式会社という……それどういう位置づけ?
安部:ほぼ一緒ですね。一応分けているんですけど。もともとずっとボランティアでやっていて、法人格も持っていなかったんですけど。あるときJTBさんかどこかと組むときに「法人格くれ」って言われて社団法人作ったんです。
その後、僕が一時期ビジコンをめちゃくちゃ荒らしてた時期があって。さっき資金がないという話があったじゃないですか? まず僕らはビジコンの賞金で組織回してたんですよね。いや本当に金ないんで、かといって何か金儲けあんま関心なかったもんで。でも世の中というのは、何か金がなきゃダメらしいと。僕正直、いまだにそれよくわかっていないんですけど。
奥田:お金がなきゃいけない理由が。
安部:結局、金をどこかから持ってくるじゃないですか、それで持ってきた金、人件費に使うわけですよ。要は人間が動くたびに金が必要なわけですね。別に金媒介せずに、人間動いているならそれでいいじゃないですか。
奥田:同じこといつも言っている。
安部:そう思っていて、だから僕らスタートから約600人ボランティアがいてずっと動いていたんですね。機能もしているからこれでいいだろうと思っていたんですけど、ただやっぱり、少し大きくなっていったときに、スタッフとかが自分の人生を賭けれるかというときに金が要るなと思って。
それで、ビジコン荒らしていたんですね。東京都で優勝しているんですけど、東京都のほうから「法人格登記しなさい」みたいな。「社団でしましたよ」と(言ったら)、「会社じゃなきゃだめだ」と後から言われたから、しょうがなくて作ったのが会社なんです。
だから全然理由とかないです。一応旅行業も登録しているので、旅行業の登録のときに会社があったほうが便利だったので、そういうメリットがあるだけで、外部資本も入れていないし、本当にもう一般社団とか2つある意味ないなみたいな。税金だけかかってすごい嫌だなという。
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