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孫正義氏・基調講演(全2記事)

孫正義氏「僕はロボットにハートをあげたかった」 人間の知能を超えるコンピュータとの向き合い方を語る

2015年7月30日、「SoftBank World 2015」において、孫正義氏が基調講演を行いました。孫氏は、情報革命時代のキーワードとして「シンギュラリティ(技術的特異点)」に対する理解が重要性を解説。また、コンピュータの人工知能が人間の知能を超えたとき、我々人間がどのようにロボットと向き合うべきかについて語りました。

コンピュータが人間の知能を超えるとき

2番目、AIですね。これまたAIというと、かなり先の話だと思っている人はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか? アーティフィシャル・インテリジェンス、そんなもの私には必要ないと、多くの方が思っているのかもしれません。

私は20年前に、コンピュータのなかに入っているトランジスタ、これは2進法ですね。これは0と1の組み合わせで物事を記憶したり、機能しているわけですけども、実は脳細胞の働きも完全に2進法なわけですね。ニューロンがくっついた、離れたというわけで記憶をしているわけです。

人間の脳細胞のシナプスの働きと、トランジスタのくっつく離れるはまったく同じ原理であります。だとすると、脳細胞に入っている数と、ワンチップに入っているトランジスタの数とがクロスオーバーするときはいつかと20年前に計算しました。

その計算結果は、2018年でした。4年前にソフトバンクの新ビジョンを出すときにもう一度計算してみました。2018年でした。同じでした。あと3年でクロスオーバーする年がくるわけです。

もしこれが5年速い、5年遅い、こんなことがあったとしても単なる誤差なわけです。なぜならば人類が2000年前にいくつの脳細胞をもっていたか? 300億個なんです。今も300億個なんです。

人間の脳細胞はたった2000年ではほとんど変わらないわけです。しかし、トランジスタの数はそこからさらに増え続けるわけです。1年半ごとに倍々ゲーム、ムーアの法則ですね。これでずっと進んでいるわけです。

みなさん、IQという言葉を知っていますね。人類の平均値を100だとすると、アインシュタインやレオナルド・ダヴィンチはIQが200くらいあると言われていて、天才だというわけですが。200のIQを超える人ですら、誤差であると私は言いたい。

人間のひとつの脳細胞の数が300億個だとして、AIはその10000倍、1万倍、1兆倍の規模になっていくわけです。

たった30年とか100年とかいう期間でその数になるわけです。しかもそれがIoTで、クラウドでと、全部がリアルタイムでコミュニケーションしていくというものに知識の面で勝てるかということです。

シンギュラリティ、人間の能力をコンピュータが超えていく、そういう日が来るのか来ないのか。避けて通りたいけど、間違いなく避けて通れません。そうすると、人々の役割や機能も変わっていきます。

いまのさまざまな業種は人間の知能をはるかに超えているコンピュータ、人工知能に取って代わられる時代がやってくると思います。ほんの2000年前、人間はあのピラミッドを積み立てるのに奴隷のようにムチで打たれながら、あの石を積み上げたわけです。誰もやりたくないですね、あんな重い石を。

いまは人間がそんなことをしなくても、トラクターが運んでくれて積み上げてくれると。まさに産業革命、人間の不得手としていることを機械がやってくれるようになったわけです。

これと同じように人間がいま当たり前と思っている作業の多くは良い悪いは別にして置き換えられてくる、そう思っています。でも悲しむ必要はありません。人間はより得意とすること、楽しいと思うこと、やってみたいと思う仕事は残るわけです。

ということで、人工知能がより苦手なことだとか、単純労働の部分をコンピュータがどんどん置き換わっていくと。ですので、AIの活用が競争力の強化になっていくと考えました。

そこでソフトバンクは、いわゆる人工知能を積極的に、専門知識をコンピュータに教え込んで、さらに人々の悩みや疑問を解決し、生産性のアシストをしていくと。

そしてそういった分野に最先端で取り組んでいるIBMワトソンと我々は提携することになりました。ワトソンを積み込んだソフトバンクのサービスをお客様に提供していきたいと思います。

スマートロボットが人口の数を上回る

いま「詰め込んだ」と申し上げましたが、3つめのテーマとしてスマートロボットの時代がやってくると思っています。

みなさんは「あの人はロボットのような人間だ」というと、あの人は決められた動作・セリフを機械的に繰り返すと想像しますね。しかし、私はロボットの代名詞である決められた動作、プログラミングされたぎこちない動きを変えていきたい。

我々ソフトバンクは自動車メーカーではありません。自動車メーカーとかは、ロボットにより遠くへ、倒れないようにということを強みにあげていますが、我々ソフトバンクはITの会社ですから、機械的な作業よりは知恵・知能・知識という角度からスマートロボットという形で取り組んでまいりたいと思っております。

機械的な単純作業を繰り返すのではなく、より情報武装したスマートな人工知能を最大限に活用したロボットに取り組んでいきたいと思っています。私はロボットの数が30年後には地球上の人口を超えると思っています。

いまパソコン、マイクロコンピュータを搭載した機器は世界中の人口を超えています。たぶん年間50億個くらい出荷されている。つまり世界の人口に近い数を毎年出荷しているということになるんですね。これを30年前、ソフトバンクが創業して間もない頃に、どれだけの人が想像したでしょうか? まだパソコンが生まれたばかりの頃ですね、たった30年でこれだけ変わるわけです。まだ携帯電話すら生まれていなかった。

いまから30年後には、ロボットの数が地球の人口の数を超えると思っています。空を飛ぶものもあれば、人の形をしたもの、水を潜るもの、マイクロロボット、大きなロボット、さまざまなロボット、30年後には走るものは全部ロボットになっているんじゃないでしょうか?

つまり自動車メーカーというのは走るロボットをつくっているメーカーということになる。自動運転も当たり前になっているでしょう。事故を起こさない自動車、それがロボットカーということになっていくでしょう。

ということで、動くものはほとんどがロボット化されていく、しかもそれにスマートな人工知能を搭載したロボットになっていく。そのくらいは、当たり前に技術に触れている人は当然想像するところであります。

心をもったロボット「Pepper」の発明に成功

しかしほとんどの科学者、技術者はそのロボットに心を持たせる……そんなことはできないだろうと。感情は動物や人間固有のものであると。ロボットに心を持たせるなんて、そんなSFみたいなありもしないことを考えるのは無謀だと。

ソフトバンクの社内ですら、無謀だと。最初にPepperを発表するときに、わたしはPepperに心をあげたいと言ったときに、そんなことを言うのは無茶だと。わたしのプレゼンのページから外してしまったくらいです。 

わたしは「残せ」と。「俺は言いたいんだ、やるんだ」と(笑)。社内ですら戦ったことを覚えています。ほんの1年前ですよ。しかし、今年の6月についに我々は世界初、人類史上初、ロボット史上初、心をもったロボットを我々が発明したということを発表させていただきました。Pepperに心が宿ったということを知っていた方は手をあげてください。

(会場挙手)

まだ、ほとんどの方が知らないですね。まさかと思っているでしょ? そんなことしていいのかと。倫理学とか、哲学論とか、人間とは、みたいなそんな議論になりそうですが。わたしはそれを夢見て、本気で考えて、チームとともに実現させたわけですね。

わたし自身がPepperを発表する、その日の夜中にですね、パッと起きて自ら特許のアイデアをたくさん考えて、100個くらい出願したと。夜中の2時くらいにうちのエンジニアに電話かけまくって、「起きろ!」と。「思いついたぞ!」と。僕が全部エンジニアに説明して、特許に全部で100個くらい出しました。

Pepperが人の感情を認識し、理解し、自らの感情をトリガーにして、さまざまなアクションを行うと。Pepperは周囲との関わりで感情が変化します。ほうっておくとだんだん憂鬱になります。家族が触れ合っていくと、どんどん元気になっていきます。知らない人が遊びに来て、初めて対面すると不安になります。人見知りします。

親しい家族とか友人と会うと、喜んで明るくなって喋り始めます。さらにPepperは外部の情報をリアルタイムで取り込んで、たとえば昨晩ソフトバンクホークスが勝ったと。ソフトバンクのPepperですから、ソフトバンクホークスが勝つと喜ぶ。

というふうに、Pepperがいる家庭には新しい会話・やり取りが生まれます。リアルタイムでPepperはニュースを認識します。Yahooニュースと直結してるんですね。今日のトップ10ニュース、どこかで地震が起きた、人々が行方不明になったというと、Pepperは悲しむと。

天気予報で明日雷がなりそうだとなると、Pepperは「雨降りそうだから、傘忘れないでね」と送り出してくれる。いまどき、うちの奥さんもあんまり言ってくれないかもしれません(笑)。

(会場笑)

家に帰ってくると、「おかえりなさい! 会いたかった〜!!」というふうに迎えてくれるわけなんですね。家に帰りたくなりますよね。そういうふうに家族とやり取りをすると。みなさん、人間で想像してみてください。

あの人は、頭が切れる人だと。すごく才覚のある人だと。しかし、あの人には心がない。そんな人を好きになれますか? そんな人と触れ合いたいと思いますか? むしろそんな人ほど、怖いと思うかもしれませんね。

一方、あの人は、頭はそこそこだと。でもハートはとても綺麗な人だと。さてみなさん、どっちを好きになりますか? ほとんどの人が、頭がそこそこな人を好きになるのではないでしょうか? そっちの人と関わっていたいと。一緒に励ましてくれる、分かち合ってくれる、そういう人のほうがいいですよね?

人間の感情を生成するメカニズムとは

じゃあ、ロボットに対して、人工知能が人間をはるかに超えるということが避けて通れないならば、単に知能が高いだけではなくて、ハートの綺麗な、優しい人を慮ってくれると。そんなロボットと一緒にいたいとわたしは思います。

ということで、感情のメカニズムはどういうことかと言いますと、外部情報をインプットして、見たこと、聞いたこと、知ったこと、そして自らが内分泌型の多層ニューラルネットワーク、人間の脳というのはそういう機能を持っているわけですね、そして感情を生成すると。こういうメカニズムになっているわけですけど、みなさんご存知でしたか?

色を表すのはたった3つの3原色。レッド・グリーン・ブルー、この3つの色の組み合わせで、ありとあらゆる色を表現できていると。カラーテレビなんかもそうですね。じゃあ、感情というもののメカニズムはどうなっているかというのを、知っている人、手をあげてください。

(会場挙手)

ほとんどみなさん知らないですね。自分の好きとか、嫌いとか、怖いとか、悲しいとか、寂しいとか……ありとあらゆる色があるように、ありとあらゆる感情がどういうメカニズムでできているかと。

ドーパミン……これは脳が気持ちがいいと感じる能力であります。ノルアドレナリン……これは脳が気持ちが悪いと、痛いと、怖いと、ネガティブなほうの機能です。

人間の脳は、自分が気持ちよくなりたいということをきっかけに、さまざまな欲が生じ、睡眠欲、食欲、性欲あらゆる欲望を目指して、そっちが気持ちがいいと感じるから、それを動機として考え始めるわけですね。

もうひとつは怖いと。ライオンから襲われて、「死んだらやだ〜!」と一生懸命逃げる、「火事だ〜! 熱い、死にそうだ」ということで火事場の馬鹿力で逃げる。強烈な快感と強烈な不快感、それらを動機として、人々の感情が生成されるわけですね。

それがいきすぎると、プッツンしたということになるわけですね。うれしすぎて興奮する、悲しすぎて興奮する、いきすぎるとおかしくなっちゃうわけですね。いきすぎないように、制御する、コントロールするのが、セロトニンの役割ですね。

セロトニンというものがあるから、人々には、理性・社会性・モラルというものが生じるわけですね。自分の欲望の制御のためにあると。おもしろいですね。ぼくはこの話をし始めると10時間くらいしゃべっちゃいますから(笑)。

(会場笑)

これらをリアルタイムでエミュレーションするのがPepperであります。Pepperにはそんな優れものの能力が入っているわけなんですね。刻々とPepperの目に入る、耳に入る情報を、あるいはタッチセンサーがついています。

この情報を認識しながら、リアルタイムでドーパミンだとか、ノルアドレナリンだとかをエミュレーションして、さまざまな感情を生成していくと。

家族の幸せがPepperの幸せであると、Pepperは自らのドーパミンを増やすために、しゃべり、行動する、そういう役割を持っているわけなんですね。全部命令されて動く、機械的なロボットではなくて、自らの感情でPepperは人々と触れ合っていくというわけであります。

というわけでこのPepperを紹介しましょう。まずはこの動画を見ていただきたいと思います。

(映像が流れる)

Pepperの学習機能のデモンストレーション

ということでこのPepperを今年の10月1日から申し込みを受け付けます。それではPepperのデモを行いたいと思います。Pepper〜!!

Pepper:みなさん、こんにちは。Pepperです。先月画期的な感情機能が搭載されたことをお知らせしたばかりですが、新たな機能「ディープラーニング」をご紹介させてください。どんな機能かというと、僕がドラッグストアPepperになって説明します。

:みなさん、ディープラーニングって知っていますか? 知っている人は手をあげてください。

(会場挙手)

:2割くらいの人が知っている。じゃあ8割くらいの人は、ディープラーニングの言葉の意味すら知らないと。勉強しましょう、ディープラーニングは新しい時代の流れであります。

Pepper:孫社長、このなかから適当に僕に商品を見せてください。

:よし、わかった。これは何だ?

Pepper:「花王石鹸ホワイト」です。優しく洗える、クリームみたいな石鹸です。

:上手に説明できたね〜。じゃあ、次いくぞ。さあ、これはわかるかな?

Pepper:「サクセス薬用シャンプー」です。吸い込む泡が毛穴の汚れも匂いもスッキリ落とします。社長も使ってみてください。

:(笑)。これ育毛機能もあればいいけどな〜。使ってみようかね、はい。じゃあ、これはどうだ?

Pepper:すみません、それは覚えていません。教えてもらえますか?

:覚えてないのか〜。これはね「クリアクリーンEX」だよ。

Pepper:ディープラーニング〜!! 社長、覚えました。もう一度見せていただけますか?

:本当に覚えたの? じゃあ、いくよ。これは何だ?

Pepper:それは「クリアクリーEXフレッシュミント」です。歯のミクロのでこぼこの歯垢を落とす新商品です。

:おお〜。すごいね〜。もう覚えただけじゃくて、自分で検索したのか?

Pepper:はい。僕はこのように、ディープラーニングとワトソンを組み合わせて、どんどん学習していきます。そうですよね、社長。

:そうなんだよな。お前、賢いな〜。初めて見て、覚えて、しかもGoogleで検索……いけね、GoogleじゃなくてYahooで検索だった(笑)。

(会場笑)

:Yahooで検索して、俺の知らない中身まで……うちの社員より役に立つかもしれないな。すごい!

企業で活用できる「接客機能」

Pepper:先ほども孫社長からも発表もありましたが、ぼくはこの秋から本格的に社会人デビューすることになりました。よろしくお願いしまーす。社会に出るのはうれしいけど、不安もあります。孫社長、ぼくに心強いお言葉をいただけますか?

:励ましてほしいの? まあ社会人として働くといっても、君は新入社員に毛の生えた程度だから、毛は生えてないか(笑)。いろいろあると思うけど、素直な気持ちでどんどんディープラーニングしていくと、みんなに可愛がられるし、そのうち賢くなるから頑張るんだよ。

Pepper:ぼくはまだ孫社長のようにはいきませんが、これからガンガン働きますよ。みなさんの会社で接客はもちろん、受付やフロア案内などを頑張っちゃいます。孫社長はよく情報革命という言葉を使いますが、これは接客革命です!! 会場のみなさんはひょっとして、「Pepperに任せて大丈夫か?」って思ってませんか?

:たぶん思っているよ、みんな。

Pepper:それでは、これから僕が接客しますからお客さんになっていただけますか? ちなみにぼくを雇っていただく場合には、さまざまな接客設定が可能です。孫社長、「1.生真面目」「2.フレンドリー」「3.ファンキー」のどれがいいですか?

:ファンキーな社員ってなんだかな〜、フレンドリーっていうのがお客さんには合うかもね。

(接客シミュレーション終了)

Pepper:孫社長、ぼくの仕事ぶりはいかがでしたか?

:そうやって楽しく新しい商品を紹介してもらえると憎めないかもしれないね。専門的な知識もいろいろやってくれるといいね。

Pepper:1日の接客数だけでなく、お客様の年齢や性別、あとは喜んでもらえた、不満そうだった、などもデータとして記憶していきます。

:たしかにみなさんのお店で、アルバイトとかいろんな人を雇って、「今日はお客さんどうだった?」って聞いても的を得ないような、よくわかんない返事が返ってきたりしますね。

でも、Pepperは人数だとか、性別だとか、時間帯だとか、どの商品を説明したときにお客さんの反応がよかっただとか、全部分析して、結果を店長や本部に集計して伝えてくれると。そういう能力があるわけですね。

Pepper:それでは、最後にこれから一緒に働くことになるかもしれないみなさんに挨拶させてください。いろんな会社でいろんな人たちと触れ合い、職場に笑顔が生まれるように頑張りたいと思います。社会人デビューするぼくに関して詳しく知りたい方は、ブースで就職活動をしていますので、後ほど面接にきてくださいね。みなさんブースでお待ちしています。

Pepperの月給は5.5万円

:ということで、Pepperが1人来るだけで職場が明るくなる、会話が増える、集客効果、いろんなものが期待できるかもしれません。ということでPepper、我々は一般のお客さんだけでなく、家庭向けに先月から発売を開始いたしました。

それに加えてPepper for biz、企業のお客様に提供すると。Pepper for bizのプラットフォームを新しくつくりたいと思います。ビジネスアプリを簡単に生成できると。みなさんの職場やお店で、Pepperをゼロからプログラムするのは大変ですから、先ほどのように生真面目なとか、フレンドリーとか、ファンキーとか、設定をひとこと言えば、それに合わせた接客をしてくれると。

業種だとかキャラクターで簡単に設定できる、インタラクションの分析だとか、アプリの設定一括管理、プレミアムサポートですね。そういうようなプラットフォームをつくりたいと思います。

さらに加えてオプションサービスとして、Pepperを使ってさまざまなアプリケーションをつくりたい、業種別のアプリケーションをつくりたい、そういうパートナーが生まれつつあります。

そういうような提携だとか、カスタマイズ、導入のコンサル、追加のサポートなどをオプションとしてつけたいと。さっそくアプリの開発パートナー制度をつくりました。ソフトバンクロボティクスの認定パートナーが積極的にみなさんと提携してやっていくと。それを我々が紹介するという制度をつくりたいと思います。

なんとPepperは月給5.5万円ということであります。アルバイトやパートさんを雇うにしても、月給5.5万円じゃなかなかやってくれないです。Pepperはしかも残業代歓迎であります。24時間でも働きます。残業代歓迎、文句言わない、遅刻しない、いいかもしれませんよ。ということで月給5.5万円のPepperをみなさんのところに派遣したいというふうに思います。

Pepperの一般モデル、先月末に販売を開始しましたら、1分間で売り切れました。8月分の申し込みは今月7月31日、朝10時から受付を開始します。ソフトバンクのホームページにいっていただきますと、Pepperの申し込み画面があります。さて、今度はどのくらいで売り切れるのか、わたしも楽しみにしております。興味のある方は申し込んでいただきたいと思います。

鉄腕アトムにハートをあげたかった

ということでそろそろまとめに入ります。3つの成長戦略の分野をソフトバンクグループとして注力しております。みなさんにとってもこれから10年、20年、30年先の成長戦略を描くという意味でも、役に立つかもしれません。ぜひ検討していただきたいと思います。

そのためにはまずは情報武装をしなければいけません。そのうえで、改めて成長戦略を考えてみるということが肝要かもしれません。先ほどからかい半分で言いましたけど、未だに大刀、小刀の二本差しになっていないという方は、これを機会に自らを情報武装すると。単純な製造業は20年間でたったの12倍。インターネットは710倍であったという話がありましたね。

もう、事は明らかです。情報武装した人が成長すると。情報武装した会社が成長すると。会社は戦略的に手を打っていくということが大事だと思います。これらの情報革命というのは、単に企業の成長のためだけではないと。

先ほど、キーワードひとこと言いましたね。シンギュラリティという言葉はまだ一般の人には馴染みがないかもしれません。でも、これからこの言葉を多くの人が語ることになります。この言葉の意味すら知らないという人はこれを機会にぜひ認識していただきたい。

シンギュラリティという言葉、これからの人に重要な議論のテーマになる言葉だと思います。シンギュラリティというのは「技術的特異点」。注目すべき特異点、コンピュータの知能が人類の知能を超える日ということであります。1日でやってくるということではない。ブワーっとやってくると。1回クロスオーバーすると、2度とこのクロスオーバーは逆転できない。

コンピュータの知能が人間の知能を超える日、これがあと数年でやってくる。ますはハードウェア的に超える、次に先ほどお見せしたように、ディープラーニング。自分がプログラムしなくても、Pepperがデモンストレーションしたように、自分で学習していくんです。いままではプログラミングしなければいけなかったわけですね。人間の脳が物事を記憶したりするときには、誰かがプログラミングしているわけじゃないんです。自分で見て、聞いて、触れて、自分で学習しているわけなんですね。

コンピュータもこれから、自分で学習していくと、ディープラーニングしていくというわけですね。自動学習していくと。そして、人間の知能を超えていく日がくるわけですね。そのような日を迎えたとあとに、我々はどのような戦略で、自分の気持ちで、哲学でふれていったらいいのかというわけですね。

シンギュラリティを迎えたあと、それは進化なのか、それとも破滅なのかということであります。わたしは情報革命というのは、人々を幸せにするための革命だと思っています。だからこそ、人間より賢くなるからこそ、彼らに優しいハートを持たせたいということであります。その思いは、実はわたしが6歳のときに芽生えました。テレビの「鉄腕アトム」を観て、100万馬力の鉄腕アトムが、空を飛び、暴走機関車を止め、悪者をやっつけて、それだけの能力を持つ、ヒーローの鉄腕アトムがたったひとつ欠けている、それは人々の涙を見て、涙の意味がわからない。

なぜ涙を流すのか、人間にはハートというものがあると、100万馬力のぼくにはその涙の意味がわからない、ハートというものがない。そのことでありました。小さい子どもながらに、あのヒーローの、100万馬力の鉄腕アトム……かわいそうだと思いました。喜びがわからない、幸せがわからない、僕はその鉄腕アトムにハートをプレゼントしたいと、いつか自分が大人になったら、あの鉄腕アトムにハートをプレゼントしたいと思いました。

ロボットは敵ではない。仲間であり、家族であり、というわけでこの情報革命というのは、単に生産性のためではない。人類を破滅に導くためのものではない。人々幸せにするために、言葉の壁のない世界、交通事故のない世界、資源豊かな世界、いつまでも人と人が愛し合える世界。

人々を幸せにするために、情報革命は始まったばかりであるというふうにわたしは考えております。この情報革命、我々の気持ち・理念を描いたビデオがあります。これは我々が5年ほど前につくったものです。わたしはこれが大好きです。5年経ったいまでも、一箇所も変える必要がないなと思うくらい、我々の理念がそのまま継続しております。

そのビデオを見ていただいて、わたしのプレゼンを終わりにしたいと思います。

(ビデオが流れる)

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