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Platinum Session1 儲かる地方のつくりかた(全3記事)

「○○のシリコンバレー」という発想がダメ--地方におけるITビジネスはどうあるべきか

新経連サミット2015において、「儲かる地方のつくりかた」をテーマに意見をテーマに交わしたトークセッション。本パートでは、エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏をはじめとする地方創生に尽力する人物が、地域への人と金の流れの作り方や、IT活用が地方成長にもたらす役割について語りました。

富山県南砺市の「エコビレッジ構想」

佐々木大輔氏(以下、佐々木):田中市長はいかがですか? 具体的にどんなビジネスモデルをやっていくことで、お金が回る仕組みをつくれるとお考えですか?

田中幹夫氏(以下、田中):先程からワクワクっていう言葉、いいですね。キーワード、ワクワク。本当にワクワクした地域を作っていこうというふうに思っています。実を言いますと今、15年くらい前に起業したアニメ制作会社が10年ほど前になんと、田舎に引っ越してきたんですね。

そのときは公共施設から間借りして、そこでちゃんと起業したんですね。これが起業して15年経ったんで、自分の社屋を作りたいと。小さな溜め池の周辺に、本当に辺ぴなところに今、建てようとしてます。

そこにクリエイターを集めようよっていうので、新しいプロジェクトを立ち上げて、6人くらいで始めたのが15年で、今は60人くらいのアニメーターが集まって、そこに住んでいます。空き家を借りて住んでいますし、アパートをつくって住んでますけども。

そういう場所ができてきたので、そこに改めて映像コンテンツだとか、さまざまなクリエイターが入れるような場所をつくりたいというふうに思ってます。そしてそこに入った人が単にそこに入るんではなくてですね。

そこに住みながら半農、もしくは半林っていうんですかね? 荒廃した林業をしたり、耕作をして農業も若干やったり、空き家を使ったり。その地域にある資源をフルに活かして、こういう暮らしを提案できるだろうというのを、もう事前に我々も見せられるようにしてですね、これエコビレッジ構想と言ってるんですけど。

そういう暮らしの中で、例えば木質ペレットをつくる小さな工場があるので、そこに住むと燃料は全部大丈夫です、農作物も大丈夫ですっていうようなところをちゃんとベースに入れて、そしてクリエイティブな仕事ができるような場所をつくろうと思っています。

今、大分進んではきているんですが、これもさっき言ったように、はっきりまだ言えないところがあるもんですから、来週あたり言おうかなあと思ってるんですけども(笑)。

(会場笑)

そういう形で今、大体200人ぐらいのクリエイターに、そこへ住んで頂こうというふうなプロジェクトをスタートさせています。

佐々木:なるほど。やはりこう、いかに人を集めるか、お金を集めるか。そしてそこに地域ならではの、何か味つけっていうんですかね? そういったものをどう加えていくのか? その辺りがやはりビジネスモデル、これでいうとカギになってくるのかなとは思います。

IT活用で東京と地方の利益格差が埋まる

佐々木:その一方で、次のトピックとしてですね、IT。こういったIT活用っていうのは、地方支援に役に立つものなのか? このIT自体で地方が儲かる仕組みをつくっていく上で、どのような役割を果たしうるのか、といったところを話せればなと思うんですけれども。まずは木下さんから、どう思われますか?

木下斉氏(以下、木下):はい。極めて重要で、1個はやはりマーケットに対して、どこにいてもアプローチできるってのはすごい重要で、我々がさっき言った、改修した店舗に入ってこられた方っていうのは、東京からUターンで戻られる方が結構いらっしゃる。

そういう方は元々東京でも、結構一等地でお店をやられていて、でも売上の半分は元々ネットって方が結構いらっしゃるんですよ。

そしてお子さんが生まれたとか、そういう契機でご実家がある地元に帰ってきてやったときに、半分は実店舗で回して、人件費と高い家賃を払って東京でやってたんですけど、それがもう地方に行くと急激に安くなる。

さらには在庫のストレージポストがすごい安くなるんですよね。倉庫が安く借りれたりするので、そういうネット側の売上でやっていくと、実は利益ベースでは東京活性地域とあまり変わらない。

あとは地方と海外の買い付けとかをされる方とかだと、地方、島根には半年いて、もう半年間はアメリカにいるとか、そういう人が結構今おられる地域が増えてきていまして。

まずエンドにアプローチがどこにいてもできるっていう意味では、東京にいなきゃ東京の証券が握れないとか、どっかにいなきゃどこの証券にアプローチできないっていう、物理的制約を越えてるっていうのが、すごい大きいなと。

バーチャルな人手の活用で、プロジェクトの推進速度が上がる

木下:もう1つはやっぱり最初、地方のプロジェクトについて我々は、スタートアップは本当3人とか5人ぐらいからスタートしていくんですけど。少人数でいろんなことを効率的にやる意味においてはすごい大切で。

いろんな書類をいちいち紙で残してたりとか、書いてあるのにいちいち集まんなきゃいけないとかってやっていたら……例えば、どこかの地域でやるときに、他の地域にいるこういう専門の人たちに、声をかけて一緒にプロジェクトをやろうってできなくなっちゃうんですけど、それができる。

そうすると従来みたいなフルタイムでずーっとこのオフィスにいてもらわないと業務ができない状態から、細切れのですね「奥田さん、ちょっと1週間に20分だけ時間ください」ってことができるわけです。

それで協力をしてもらう人たちが増えてくると、最初3人から5人ぐらいの少数でスタートしていって、ある程度お金が回ってきたら、ちゃんと雇用をそこにつけていくみたいなことができるようになってるっていう意味では、初期段階でもすごい効率的ですよね。

まさに数字を扱うような記録を残していったりとか、申請常務とかっていうのもどんどん簡略化されると、地方でより人手がなくても、1人が2人分3人分、地域外にいる人の力も借りれるようになるっていうので、すごい活用させてもらってる、っていうのはあります。

佐々木:バーチャルな人手が増えるっていうことですか?

木下:そうですね。だから定住でもない、移動でもない、さっきの交流人口でもない、中間ですね。時々来てみたりとか、ネットでコネクトされてる方々の人口数がすごい増えるっていうのは、我々のやってるプロジェクトでのメリットはめちゃくちゃあります。

佐々木:そうすると地方創生に重要なことっていうのは、都会と地方の差をなくしてしまおうと。それにおいて、電子化っていうのは、1番大きな役割を果たせるんじゃないかなっていう。

木下:それはすごい重要で、めちゃくちゃ優秀な方をフルで地方に1年持ってこようっていうのはハードルが高いので、まずはさっきの細かな時間とかで関わってもらうだけでも、すごいプロジェクトが前にいくっていう。

佐々木:そのためには、すべてが電子化されていって、現実的に何かしなきゃいけない、物理的に生まなきゃいけないことをどれだけ減らせるかっていうのは、1つカギになってくるんじゃないかな、と。

ITが地方の特性とマッチして生まれるイノベーション

佐々木:一方で神山町の経験からいって、大南さんのITから地方支援にはどう貢献できるのか、どのようなお考えですか?

大南信也氏(以下、大南):そうですね。神山は2005年ぐらいから、全町圏に光ファイバーなんかも全部敷いているわけですので、インフラは整っとるわけですよね。ところが、インフラが整っとるから、いろんなことが起こるか言うたらそうでもなくて。

僕自身がITの皆様に1個期待することは、やっぱりITの皆さんが持っておる異質の目やと思います。先程平副大臣が仰られていましたけれども、例えば神山にできておるWebのデザイナー、大阪からきておるわけですけども、その人は杉を使ってタンブラーをつくったわけですよね。

普通神山の木材を知っとる人間だったら、「杉は柔らかいからタンブラー、薄く削れば壊れるよ」っていう固定観念を持ってるわけですよね。ところがその人は特殊なウレタン加工をすることによって、非常に強固なグラスを、グラスっていうかタンブラーつくりました。

それとか例えば、神山でビストロを運営しとる人がおるんだけども、その人の元職はAppleです。そしてその人のところに、Airbnbをやっとるわけですけれども、去年の12月の末にAmazonの本社、シアトルから泊まりにきたっていうようなことがあるわけですよね。

だからそういうように、ITを使いきるような人材が、地方に入ってくるとか。だから、そういうような使い方を教えてくれるっていうのが、今地方にとっては1番助かるんではないかなというような気がしています。

佐々木:IT人材がITに入ってくる仕組みをつくる。そんな魅力をつくっていって、そうすると、地方特有の課題とマッチしてイノベーションが生まれる、こういった流れが起こっているんですかね?

地方の価値を再発見する「自治体特選ストア」とは

佐々木:田中市長、ITの活用についてはいかが思われますか?

田中:はい。地方、過疎、離島も含めて、そこにこそICTが必要なんだと思いますし、そこでだからこそ使わなきゃならないんだと思っています。

わたくしも実例で少し説明しますが、わたくしのところでは伝統工芸として井波の彫刻っていうのがありまして。木彫りの彫刻があったり、五箇山の和紙があったり、城端のですね、まあ岡山には世界遺産がありますんで、和紙なんかあったんですけれど、それと城端の絹織物。

こういうものを我々が見ていると、元々紙じゃないか? とかしか分からないんですけども、やっぱり東京からきた人たちがいろんな使い方をやるんですね。紙で帽子をつくったりですね、(名刺入れを手に取り)この名刺入れなんかも結構染めを入れて、デザイン的にも非常に素晴らしいことをしたり、いろんなものが生まれ始めています。

そこで全国の15自治体でですね、自治体特選ストアっていうのを店だけネット上でつくって、そこへどんどんそういう新しい商品を並べてもらって、それを売っていくっていうのを今、実践的にやってます。

3年前からはじめたんですけど、24年度が100万、95万くらい。25年度が500万くらい。26年度近々の3月で切ったら、大体770万ぐらい売り上げてるんですね。来年の27年度、今年度ですね、1000万くらいこういうものを並べて売り出そうかなと思って。

これは多分、そういうことでビジネスが生まれてくるだろうし、新しいアイデアをそういうことで関連してくる人たちが、また新しいものをつくっていくっていうものに今、繋がってます。

いろんな意味で福祉とか子育てとかにもICT、地方だからこそ必要なんです。平先生にも医療でも福祉でも、これからどしどし使いやすいように、ぜひこの場をお借りしまして、お願いしてよろしいでしょうか?

技術だけでなく、それを使いこなす人材の確保が重要

佐々木:では平副大臣、いかがですか?

平将明氏(以下、平):いくつか視点があると思うんですがまずIT活用で、政府へのビッグデータを自治体に開放します。これは人の流れもわかるし、そのエリアのどの地点に、何時にはどれだけ人がいたか? っていうのをメッシュで分析ができるようになっています。

その地域経済の中核企業は、いわゆるお金の流れを見える化しているので、じゃあその地域を支えてる本当の中核企業はどこだ? 実は商工会議所の回答のところじゃありませんでした、っていうことはよくあるんですね。

ですからそういう分析ができるようにビッグデータを開放しますんで、ぜひそれを使って成長モデルをつくってもらいたい。

2つめはですね、やっぱり人材ってすごい大事で「ITで生産性ちょっと向上します」みたいな話じゃないんですね。ITを使いこなしていてその環境の変化で新たなプランを立てられる人、そうするとイメージですけれども、例えばIPAがやってる「未踏プロジェクト」っていうのがあって。

その未踏人材っていうのは、結構外資系に持ってかれちゃうわけですよ。それはもったいないんで、こういう人たちに新たにつくるファンドか何かで、お金を渡して地方に入れる、と。

先程言ったように、地方は一次産業の輸出産業化だとかインバウンドだとか、ビジネスチャンスが溢れていますので、そういう人材にいろんな起業をしてもらったり、新たな需要を生んでもらうっていうのがあると思います。

イノベーションの先回りをして規制緩和する

:それと今もう1つはですね、そういうのが当たり前になってくると何が問題かっていうと、既存の規制が全部問題になってくるんですね。今私のところで近未来技術実証特区っていう特区の制度を使って、近未来技術を入れたら何が障壁になるかっていう検討会をやってるんです。

例えば離島なんかでお医者さんがテレビで診察をします。これも規制緩和しなければいけないけど、その離島でテレビで診察をして、「じゃあおばあちゃんお薬出しとくよ」って、ドローンがお薬を運びますよね。でも今の規制でいくと、薬剤師さんは直接患者さんに薬を渡さなければいけないという規制があります。

近未来技術とかITとかでイノベーションが起きると、すべての規制が邪魔をするので、これを先回りしてまず特区で実証実験をして、規制緩和をしましょうというのをやっていきますので。そしてこの近未来技術実証特区はドローンとか自動運転とか、遠隔医療とか遠隔教育とかいろいろやってます。広くアイデアを自治体とか企業とか大学とか募集して。

皆さんで規制省庁と交渉するの大変ですよね。とりあえず「できません」って言われるんで、代わりに私と小泉進次郎さんが皆さんの代わりに規制省庁と交渉します。しかもフィーはいりませんみたいな夢のような話になってますので、ぜひご活用頂ければというふうに思います(笑)。

(会場笑)

佐々木:何かアイデアがあれば、ぜひ平先生に(笑)。

「○○のシリコンバレー」はもう古い

佐々木:奥田さんはいかがですか?

奥田浩美氏(以下、奥田):はい。ITでどこでも仕事ができるっていうのは、それはもう当たり前の時代になっていて。私は先程から皆さんの話の中で、ITっていったときに、AirbnbとかAmazonとかAppleっていう言葉が次々と出てきたところにヒントがあると思っていまして。

つまり最先端のITっていうのは、私が知る限り22歳から40歳くらいの男性が、最先端のものを開発していて。もうずっと私も最先端のマーケティングをしてきたのでわかるんですけれども。

つまりそこと勝負をするっていうよりは、そこで開発できないものをちゃんとITでくっつけることにビジネスが生まれるんじゃないかと思っているので、22歳から40歳までの男性がいないところのニーズを汲み取るっていうのが、今回のその自分がやってる「たからのやま」の課題だと思っていて。

ITが地方を儲けさせるか? っていうときに、何とかのシリコンバレーっていうのはもう古いと思ってるんですよ。何とかのシリコンバレーじゃなくって、そのシリコンバレーのその特性がないところで、ITを活用するっていうのが、私が今考えている地方を儲けさせる方法だと思っています。

佐々木:なるほど。では時間も迫ってきたので、何か言い残したことはありますか? 大丈夫ですか?

奥田:じゃあ1つだけ。

佐々木:1つだけ。

奥田:先程未踏のお話が出たんで、私、実は未踏の審査員をやっているんですけれども、なぜやっているかというと、最先端の開発ができる日本の人材をやっぱりその地方と結びつけたいということで、おそらくこれ、国が投資してファンドって仰ってましたけれども、私はもう最初、国が動く前に、その人たちを、人の流れをつくればいいんじゃないかと思って。まさに大南さんが仰ってたような、人が流れて、情報が流れていけば、お金が流れるっていうふうに思って、今活動をしています。なので、そこに対して、国がさらに支援があるっていうのは、とっても楽しみにしております。ぜひやらせてください(笑)。

地方は「お金の出し方」を知らない

佐々木:はい。それでは会場から最後に1つだけ質問を取れればと思うんですけれども、質問のある方はいらっしゃいますか? そちらの方どうぞ。

質問者:ありがとうございました。私も地方都市で起業をして、会社を運営してきたんですけれども、その中で思うことがありまして。今のこのICTを使っていろんなその周辺のサービスとかをアウトソーシングしたりだとか、部分的な時間をお借りして、仕事を進めていくことは、比較的上手くいっていて。

ただコアメンバーを集める段階になってくると、市や自治体や大学らと組みながら、いろんな人を集めようと思うんですが、なぜか本社を都内に移してくださいみたいなことを求人サイトの会社に言われるんですね。

そういった本当にマネージメントができるような人材、コアなメンバーを地方に集めるために、どういう取り組みをこれからしていけばいいのかってことをかなり悩んでおりまして。そこに関して何かアドバイスを頂けたらと思います。

佐々木:奥田さんいかがですか?

奥田:私ですか? 地方に何かを集めるとか、地方VS都会っていう時代じゃなくって、実は私よくFacebookにも「奥田は4人いる」って書いてるんですけども、つまり、頭脳も人もエネルギーも全部分散して、どこにあるか分からないようにさせるのがITなんだけれども、まだやっぱりお金の流れだけがどうしても……。

ここはモデレーターだけれども佐々木さんに伺いたいとこなんですが、やっぱりお金の出し方みたいな、育てる環境っていうのが地方に本当にないので、私はそれを持っていこうという活動をしています。なので、その東京に出てこいっていうのはすごいわかるんですよね。出てきたほうが教えやすいから。

ってことは、教える側をどんどん地方に回さなきゃいけないって思うんですけど、なかなかこの場にいらっしゃる方々って、地方の実情を知らずに「地方頑張れ、地方頑張れ」って、こう言ってるイメージがあるんですけれど、佐々木さん自体どうですか? 逆に返しちゃいますけど(笑)。

佐々木:いや、でも情報自体っていうのは、実は僕は会社からあんまり外に出ることってすごく少なくてですね、社内にずっといる人間なんですけれども、まあそれを考えると、地理的な制約ってほとんどないのかなと。

いろんなことはもうそれこそFacebookのメッセージなり、いろいろチャットのツールを使って外部とのコミュニケーションをするし、もう東京都内の人と話すにもビデオ会議を使って効率的に進めるっていうことをやっているので。

実はそんなに地理的なことっていうのは関係なくて、じゃあそれをどれだけバーチャルでもいいので、他の人達と密に繋がれるかっていうことだと思います。ちょっと答えにはなってないかも知れないんですけど(笑)。

だから、今回のこのディスカッションを通して、やはりその人をどうするのか、お金をどうするのか。そしてそこに対してどうやってリスクを取っていくのかっていう、本当に起業活動と同じことっていうのが、地方創生の中で今後重要になってくるのかなというふうに思いました。

今回こんな形で短い話をやらせて頂いたんですけれども、ご静聴ありがとうありがとうございました。

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