2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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安部敏樹氏(以下、安部):そろそろ質疑応答に入りましょうか。
津田大介氏(以下、津田):じゃあ、質問ある方、挙手いただけますか?
質問者:こんにちは。村上さんにお聞きしたいのですが、最近、採用における変化で社会貢献をしている人が採用において得をする仕組みっていうのは実際に作れるのでしょうか?
津田:それって例えば学生時代に社会貢献をできる場所である程度働いていた学生が就職しやすくなるという話とは少し違うんですか?
質問者:少し似ているのですが、NPO、学生団体、インターンなどで働いてきたような社会貢献できるマインドを持っている人が何かしら評価されたり、採用において得をしたりというようなものはできるのでしょうか?
村上太一氏(以下、村上):そういった仕組みは、ルールで決めるというよりはそういった企業が増えていくかが大事だと思います。やはり利他的な精神でモチベーションをもってやっている人って、事業を作る時にも非常に強いエネルギーを持つんですよね。そういったモチベーションの人は自然と採用したり、評価したりしたくなると思いますけどね。
安部:僕のようなソーシャルセクター側から言うと、基本的にそれが採用に繋がらないのは、今そういった人材が超甘ちゃんだから。それがすでに問題で、社会の保守・点検していくっていう仕事だったら20%成長でいいですよねと。例えば、テナントチェーンにおむつ売りますって話になった時に、おむつの売り上げを20%上げたって言ったらすごいじゃないですか。で、それが当たり前にできるのが社会の保守・点検するところに求められる人間のレベルです。
でも、社会を変えていきたいとか、社会をよりよくしようってなった場合は今ある社会を塗り替えていく仕事になってきて、1000%とか2000%のレベルのスピード感を持たなければいけない。
じゃあ、そのレベルの人が社会貢献のマインドを持っている人の中にどれだけ出てくるかという話であって、僕はどちらかというと社会貢献をしている人が就職有利になるんじゃなくて、就職に強いやつが勝手に社会貢献の方に流れてくると思っています。その結果、業界が動いていくんじゃないかな。
津田:もしかしたら失敗してもいいから自分で起業とかすることで1000%とか2000%の成長を自分で実現したり、そのための体力がついたりするのかもしれないですよね。
安部:力があってかつ社会貢献のマインドを持った人が最強なわけですよね。社会貢献のマインドだけ持っていて力のないやつが非常に厄介で、マインドと能力のバランスをちゃんと取るのが非常に重要です。
津田:はい、じゃあ他の方。
質問者:御三方に質問ですが、社会を変えるためのHOWにおいて何が重要だと考えていらっしゃいますか?
津田:まず僕から答えると、とりあえずやるって決めることが大事というか、「これは自分がやるべき仕事」だと思うことですかね。それと、「世の中にこれがあった方がいいのに」と思ったら自分でやってみる。
実際にやるときにはマネタイズなどのお金のことはきちんと考える。僕らジャーナリズムの業界でよくないのが、消費者がすごく僕らに清貧を求めるんですよね。これNPOにも言えると思います。
要するに、政治家もそうかもしれないですけれど、ジャーナリストとかNPOとかは稼いじゃいけないんだとどこかで一般の消費者や有権者が思っているところがあって。これって政治家と金の問題とすごく表裏一体だと思っていて。彼らも稼げばいいんですよ。汚くないやり方で稼いでそれをどう使うかが大事なわけですから。でも、稼ぐことが目的化しちゃうと多分道を誤ってしまうのでそこはちょっと気を付けなくちゃいけない。
村上:個別の部分でずれてくることはあるので、一概には言えないのですが。私自身が思ったのは、メッセージを心から「これを伝えたい」って思ってなければやっぱり伝わらないんですよね。だから最終的に何が大事かって言ったら、どれだけそのことに熱意を持っているのかとか、死ぬ気になれているのかというところだと思います。
その想いが強かったら自然と色んな人にぶつけたくなるし、こういう場でもどんどん語りたくなるし、隣の人にも自分の想いを伝えたくなっちゃう。想いがどれだけ強いかだけかなと思っています。
で、HOWはその時その時で変わってくるので、やってみて、だめだったらじゃあ違うことやろうというように改善を繰り返すだけ。どれだけ想いをもてているか、それを賭けていいって思うくらいに自分の心の中を整理して、迷いがない状態を作るというのは大事かなと思います。
安部:僕は多分まだWHYをちゃんと突き詰めていないというのがあると思うんですよ。僕のところに「今、地域やばいから地域をなんとかしたいんですよ」と相談に来る人がよくいるわけですね。僕はこの人を見て、「うーん、こいつは馬鹿なんだな」とまず思うわけですよ。
(会場笑)
なんでそう思うかというと、まず地域がやべえんだなっていう話ってもっと突き詰められるじゃないですか。突き詰めない限りは当然HOWが出てくるはずがない。いったいどこが問題なのか、っていうのはまだまだ突き詰められる。HOWが出てこない一番の原因は課題設定が甘いことだと僕は思っています。
じゃあ、課題設定を突き詰めた後にどのようにHOWをやりますかという時に、ひとつは、他のところは無視していいからここだけは自分たちが絶対押さえなきゃいけないってところを先に押さえつくすのはすごく大事ですね。もう1個、レバレッジの掛け方はすごく重要だと僕は思っています、特にソーシャルベンチャー系は。
一般的に企業はみなさんお金がまず大事だと。お金がないと付き合うことはできないし、人からお金を取らなくちゃ飯食っていけないねってなります。お金の面でみれば非常にヤバいリディラバがなんで5年間潰れなかったのかというと、リディラバはレバレッジをお金じゃなくて、人で買ってきたから。
つまり色々な人に関わってもらって、人々が多く動いてきた。別にお金を得たとしてもそれを何に使うっていえば人件費に使うわけですよ。でも別にお金を介せずに、そのまま人が動いてくれるモデルってありえるかもしれないなと思って、そこを突き詰めた結果が、誰でもツアーを作れる仕組みだった。そしたらボランティアの人が作ってくれたツアーの質を高めていけばいいだけですよね。
なので、まず課題設定が甘くて、課題設定した後にHOWを突き詰めるという意味では、ボトルネックの部分を先に押さえて、さらにお金だけじゃなくて、人でも、情報でも、何かのレバレッジ利くところがあるはずなので、そこをしっかり見極めて攻めていくことかなと思います。
質問者:ありがとうございます。
津田:ラスト一問、女性の方。
質問者:こんにちは。個人が人・モノ・金を集める手段として、今クラウドファンディングが出てきていますが、日本では資金調達を含めて支援されるのが難しいと感じています。みなさん、クラウドファンディングについてはどのように思われていますか?
津田:僕も実際にクラウドファンディングを利用していまして、600万円を集めてチェルノブイリに取材に行ったりしているのですごく可能性を感じています。けれども、乱立してしまっているので、クラウドファンディングを中身のきちんとした評価も含めてまとめて使えるメディアを作る必要があると思います。それで、全体にクラウドファンディングに参加して支援をする層を増やさなければいけない。そして増やすためにはペイメントですよと。
なんで「Kickstarter」とかがうまくいったかといえば「Amazonペイメント」を使えるからですよね。Amazonのアカウントを使えばそれで事業ができる。今だと全てのサイトに行っていちいちクレジットカードを登録してみたいな作業をしなければいけなくて、そこでみんな辞めてしまうので。そこを共通化する、日本だったら「Yahoo!ペイメント」だと思うんですけど、そういうアプローチが重要だなと僕は思っています。
村上:私は間違いなくクラウドファンディングは来るなと思っています。でも、きっと世の中の人に「クラウドファンディングを知っていますか?」と聞いても、知らない人が98%くらいになるような肌感で、今までに無い感じがわかりにくいところがある。例えば「Kickstarter」でみんなで一緒に何かものを作りましょうっていえば結構わかりやすいんですけれど、今はサービスのような無形だったり見えにくいものだったりが多くてわかりにくい。
その辺がどんなイノベーションを受ければより広まるかはまだ答えを持てていないのですが。誰かを支援するとか、みんなで応援するとかは日本人みんなが持っている想いとしてあるので、何かしらのブレークスルーは広まっていくだろうなと思います。
安部:今までの話を聞いていて、クラウドファンディングがブレークスルーしてないポイントは2つあると思っています。1つ目が、今は何を応援するかではなく、誰を応援するかが重要視されていることです。
津田さんに600万払うっていうのは、「そんな間違った使い方はしないだろう」っていう安心感があるじゃないですか。でも、クラウドファンディングと呼ばれるためには本当は誰かじゃなくて何を応援するかに変わらなきゃいけない。
何を応援するかにならないのは、クラウドファンディングをやっている各種プラットフォームのキュレーション能力がきわめて低い、つまり、出したい人がそのまま出しているだけで、出されたもの自体は大したものじゃないから。
バッグ作っていますとか、手編みのマフラー編んでいますといったようなあんまり感動できるものじゃなくて。するとお金を出す方としてはすごく不安になるわけですね。だから、安心して出せる人に支援が集まるし、ある程度誰がやっているかがすごく大事になっちゃう。
もう1つのボトルネックは、非常に関係の継続性が薄いことだと思っています。リディラバのプラットフォームである「Travel the Problem」や「TRAPRO」の中でもNPOに対してツアーだけじゃなくて、クラウドファンディングの機能を付けてもいいなって検討していますが、その理由は、NPOと継続関係が生じるツアーを作る際に、ツアーを終えたりした後でも継続して働く機能をもっと強化できると思ったんですね。
でも、今のクラウドファンディングはそれが出来ていない。お金払ったら1回で終わりじゃないですか。そういうものにお金を払いたいかといわれると、そういう人はやっぱり多くはないだろうなと。
津田:だから本当はNPOとしては継続課金にするか正規会員になってもらった方がいいんですよね。
安部:そう。NPOの正規会員になってくれるのが一番良いんだけれど、そうならないからクラウドファンディングでやっていて、結局プロジェクションしてもあまりお金は集まっていない。
津田:本当はPayPalを日本人全員が使えるようになるのがいいんだけど、日本は資金決済法とかの壁がすごく強くて、PayPalもそのせいで日本で全然展開できなかった。そこの規制を緩めることもすごく大事ですね。
安部:規制はあらゆる分野ですごく強い。
津田:日本は基本「銀行以外はお金を扱っちゃいけないぞ」なんですよね。
安部:供託金って制度があってですね、津田さんのおっしゃる選挙の供託金というのがあります。我々も旅行業で、何千万も供託金がかかるわけですよ。
津田:選挙に出るために300万円出す必要があるんですよ。で、当選しなかったら300万払う。イギリスは8万円とかじゃないですか、アメリカとかドイツとか無いですからね。そんなの政治に参加するわけがない。そういうところも含めて変えていかなきゃいけない。
津田:最後にまとめとして、リブセンスとリディラバが今後5年後10年後、こんな風になっていきたいということと、世の中のこの価値観をこう変えたいという2つを伺いたいなと。村上さんから教えてください。
村上:リブセンスもそうですが、資本市場において企業が目先の利益だけで評価されるのではなく、必要性で評価されるようになる。世の中全体の評価軸は変わっていく。社内の会議で言ったんですけれど、たとえば太陽がなくなるといったらみんないくらでもお金を出すじゃないですか。この場合は世の中に必要かどうかが評価基準ですよね。しっかり世の中全体を変えられればというのがあります。
世の中の価値観で一番変えたいところといえば、安部さんとも議論していますが、人ってわかりやすい価値観に逃げちゃうと思っていて、でも社会貢献を頑張っていますって指標としてわかりにくいんですよね。なので、お金のようなわかりやすいものに逃げてしまう。新たな価値観の指標や軸をもう少しわかりやすく見えるようにするのがやりたいテーマですね。
ですからゲームのルール自体を変えるというか、仕組み自体を変えるようなのをやりたい。でも、ディスカッション6回くらいやってますがまだ見えていない。そんな感じですかね。
安部:僕の場合は「社会の無関心の打破」というリディラバの理念がそのまま僕の人生を賭けている名目なので、今生いっぱいを使ってリディラバの事業をもっと世界に広げていきたいと思っています。
特に世界中の社会問題や個人の問題意識のプラットフォームをもっと拡大できたらなと。誰かの問題意識を知って、その問題をデリバリーしに行って、その解決に自分が従事したり、仕事として選んだりするというところをまるごとプラットフォーム化して世界中取っていきたいと思っています。
おそらくあらゆる社会問題の現場っていうのは、昔でいうところのけもの道の先にある集落みたいなんですね。けもの道の先の集落には富っていうのが行かないんですよ。なぜかといえば通るのが大変だから。そこに道路が通ると、その道路を色んな人やトラックとかが通ったり、モノが輸送されたりして、交易が起こる。すると初めて新しい富が出来たり、課題が解決したりする。
僕らがやりたいのは、色々な社会問題がどんどん生まれてくるところに常に道路が敷いてある状態を作ること。その道路の上を走っていくのは僕らじゃなくて別の人々でいいんですけれど、その道路が整備されている状態を作ることが5年後、10年後にちゃんと成し遂げていたいことのひとつです。
あとは津田さんや村上さんと一緒にやりたいのは、社会的な投資とか、社会の価値観を変えうる事業ルールの策定、あるいは本当にみんながベットしたいもの、描きたいものを実現できる業界を大きく作っていって、みんながリスクをあまり取らずに、業界がリスクを取ることで社会課題の解決が進んでいく形を作っていければいいと思う。
それは多分ひとつはビジネスサイクルとしての話としてあるだろうし、もうひとつは政治的なアクションがあるかもしれないですけども、一緒にやっていけば日本も含めて世界の社会的事業がしっかり回っていくし、それに対する投資やリスクマネーはちゃんと流れていくだろうし、優秀な人たちもやってくると思う。
津田:安部さんが政治家にならなくても、ツアーに参加した人たちがどんどん社会意識に目覚めて政治家になっていくことは、実はそれはなによりもいいことですよね。安部さん、そしてリブセンスの村上さん、本当にありがとうございました。
<img src="https://images.logmi.jp/wp-content/uploads/2015/01/ridilover.png" alt="ridilover" width="200" height="60" class="alignright size-full wp-image-30390" / Align="left">
リディラバは、「社会の無関心を打破する」をテーマに、社会問題をスタディツアーにして発信するプラットフォームです。
ひとりひとりがもっと気軽に社会問題の現場を訪れ、理解し、解決の方法まで考えられるようにすることを目指します。
社会をよりよいものにしたいと願う皆さんの“思い”を“カタチ”にするお手伝いをします。
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