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佐々木裕子氏トークセッション(全2記事)

2050年、全世帯の4割が"独り身"に! 日銀出身のキャリアウーマンが語る、働く女性の生き方

リクルートが主催する「IT×女性」をテーマに、これからの働き方、生き方を模索するイベント「キャリアデザインCafe」。企業の変革デザイナーとして活躍するチェンジウェ―ブ・佐々木裕子氏が、仕事・結婚・子育てなどそれぞれのライフステージで悩む女性たちに向け、キャリアの積み上げ方を語ります。前半パートでは、2050年の日本が抱えるであろう問題を紹介し、広い視野で自身のキャリアを見つめ直す必要性を説きました。

日銀マンから「変革」デザイナーへ

佐々木裕子氏:私が何か講義をする、というのはあまりにも恐縮ではばかられるのですが、折角お時間を頂いたので、少し私が考えたプロセスのお話をさせていただければと思っています。今、机に私がちょっと前に書いた本を置いてありますので、もしよかったらお手に取っていただければと思います。

大したものではないんですが、私自身が半年前くらい前に自分の人生や、キャリアを振り返って、娘は今2歳なので彼女が生きていく世界のキャリアとか人生ってどうなるのかを想像しながら、未来を見据えられるような事実をなるべく集めて。今何が起きているのかというのを纏めてみました。そのうえで私自身こういう仕事してますので、色んな方に接点があるものですから、そういうのを拝見していて思ったことを書きました。

もうこちらは持ち帰って暇な時に読んでいただければ良いと思いますけども、今日、この本のダイジェストを振り返りながら、皆さんと「キャリアって何なんだろうか?」や、「何を考えていかなきゃいけないのか?」というのを少しディスカッションできればな、というふうに思っています。

何で私が2050年のことを考えたのかというと、少し中長期で物事をみてみたいと思ったんです。

自分もサラリーマンからキャリアを始めていました。そのときを振り返るとキャリアのことなんてすごい短期間、2~3年とか来年とか、そういう時間軸で考えていて。

最初は日銀マンから始まって、銀行の不良債権の査定をする「黒崎検査官」のような仕事をしていたのに、なぜか今は企業の「変革」デザイナーをやってるんですが、振り返ってみると、キャリアを短期的に考えてた時って、自分はとても生きにくかったなと。

世の中なんか変わらないし変えられないと思っていて、会社はたぶんこういう状況で、先輩はこういう人で上司はこういう人で、だから私はこの中で頑張って生きなきゃいけないのか、と思っている。そこにあまり自由な選択肢はない、という風に思っているので、結構生きにくいんですよね。

でも実は、中長期で見てみるとけっこう物事は変わるものであるとか、その実かなり変えられるものであるという前提で考えるとものすごく生きやすいんです。

今やってることが未来にどう繋がっていくかも感じることができるし、自分の選択肢はものすごく広がってくる。中長期を見据えながら自分の人生を組み立てていくと、すごく生きやすくなったっていうのが私自身の体感でもあって。

近くを見ると船酔いするけど、すごく遠くを見てると船酔いしないっていうのと同じで、1度意識を飛ばしてみて色んな枠を外してみると、自分自身の選択っていうのに迷いがなくなるのではないかというふうに思ったので、思いっきり飛ばしてみたというのが、この本を書いた理由です。

10年前にはYouTubeもiPhoneもなかった

なので、まず2050年というちょっと先の未来を皆さんと旅をしてみたいと思います。今から35年後なんですけども、皆さん何歳ですか? ひょっとしたら皆さん、ご自身のお父さんお母さんくらいの年齢でしょうかね、はい。

じゃあその時の世の中はどうなっていると思いますか? どんな人生? どんな働き方をしている? なんとなくタイムトリップするような感じでやっていってみたいと思います。

ちなみに皆さんIT業界におられる方なので約10年前になかったものを挙げますと、ウィキペディア。もちろんFacebookはないですね。Googleマップもないです。なので事前に紙の地図を手元に準備して。使ってましたね。YouTubeもないですし、iPhoneもございません。

20年前になかったもの。何がなかったかわかりますか? そもそもインターネットのブラウザなんかなかったですね。楽天、eコマースも有りませんでした。

30年前になかったもの。カメラは銀塩カメラでした。CDがようやく出てきた。今CDさえもなくなろうとしている時代ですけども、早いですね。携帯電話会社さえも無かった時代なので、35年先っていうと、そういうスピード感とかそういう時間軸っていうふうにちょっと考えていただきたいなと思っています。

ちなみに皆さんは仕事をしているつもりですか? それともリタイヤしたいなと思っていますか? じゃあその時の世の中を見てみたいと思います。まずは世界から。マクロの世界が好きなので。

(会場笑)

2050年、世界の人口

世界の人口は増えますか、減りますか? 増えます。どれくらい増えるでしょう? 96億人位ですね。これってどういう規模かわかると思うんですけど、インドと中国が地球にもう1個できるくらいのインパクト。

けっこうなスピードで増えていっていますね。これは増え方のスピードが見えるグラフ。増え始めているのは1950年なんですけど、新興国が急ピッチで増えています。これから100年でそれまでの100年の10倍になるというんですね。

これは乳幼児の死亡率が下がっていくということであり、貧困国が減っていくということなのでよい進化といえます。特にインドとアフリカの人口がものすごく増えていきます。2050年になると地球上の4人に1人がアフリカ人ともいわれてますよね。

という世界なんですが、日本はどうでしょうか? 日本の人口は減る? 減っていきますね。今1.2億人位ですけど、どれくらいでしょう? 今の予測だと2050年の日本の人口は、9700万人といわれています。

特殊出生率をどう予測するかで変わるんですけども、女性が生涯に産む子どもの数は今、1.3人くらいなんですね。この数字によっても変わりますがこのままいくと35年後には9700万人。数字で見ると、その減るスピードをなかなか体感できないので、グラフで見てみましょう。

だいたい人口は鎌倉幕府時代からずっと1000~3000万人位になだらかに増えてきた。でも明治維新から急に増えるんですね。世界の人口の急増というのは先ほど申し上げたように1950年ごろから始まってるんですけど、日本は100年前に始まっているんです。

なので、世界は人口急増の21世紀なのですが、日本の場合は人口減少の21世紀です。このままでいくと2100年には3700万人くらい。明治維新ぐらいの人口になるだろうといわれてます。世界は22世紀に人口減少のフェーズが訪れますので、日本はまさに世界の最先端を行っているわけです。

日本は2050年にベトナムより人口の小さい国になる

これは残念ながら既に起こった未来。皆さんや皆さんのお子さん方が例えば1人で3人の子どもを生んだとしてもそんなにすぐには止められない流れではあるというふうにいわれています。

結局、世界がものすごく成長するのでその中で日本がすごく減少するわけですから、相対的に日本がすごく小さい国になっていくということですね。

なので、2050年になるとベトナムよりも人口の小さい国になるんじゃないかという予測もされています。いろんな予測があるので、もちろん予測しているデータによっても多少誤差はありますが、恐らく人口トップ10の国の多くがアフリカ諸国になっていくような時代になっていく。

もう少しその未来を具体的に考えてみましょう。日本は今よりも人がいなくなるということですね。それを実感できるのがこの図です。この青い点は今からあるパーセント以上人口が減るエリアを指しています。みなさんは何パーセント以上減るエリアだと思いますか?

はい、この分析は国土交通省から出てるんですけど、実は「50%以上の人口減少地域」を指しています。

皆さんがお父さんお母さんの年代になる頃、皆さんのお子さんが30代になる頃、これだけの日本のエリアで人口が半分以上減るということですね。半分以上ってどういうイメージかっていうと、東日本大震災の時に津波にやられてしまった海岸部がありますよね。

すべてなくなって更地になって、多くの避難された方々は結果的に他の地域に移住されたり。そのエリアで震災から、去年くらいまでの間にどれくらいの人口が減ってるかというと、だいたい2~3割くらいです。

だからそれに掛けることの倍くらい。もちろん35年かかってますから全然違うんですけども、それくらいのインパクトで日本の姿が変わって行くということ。

だからこそ今は地方再生とか、創生とかいわれてるわけですね。国策でこの人口減少問題にどう取り組んでいくのかが問われているのです。

2050年には人口の4割が65歳以上

人口が減るだけじゃなくて、もちろん高齢化といわれているわけなので、中身も変わっていきます。アメリカは移民の国なので割とベンチマークになりえるのでお示しすると、2050年の平均年齢は40歳。

いわゆる中年が40歳だと思っていただければと思います。日本の場合は2050年の平均年齢どれくらになるかわかりますか? 53歳です。なので皆さんが還暦になったら中年です。ほぼ真ん中辺りですからね。

男性はだいたい81歳くらいまで生きる。皆さん何歳くらいまで生きたいですか?女性は平均で89歳になるといわれています。これは平均なので、それ以上長く生きられる方がたくさんいるということです。

人生90年の時代が当たり前のようにやってきているので、2050年の皆さんは還暦かもしれませんが、あと30年は人生が残っている。

つまり、人口の4割が65歳以上って、よく新聞に出てくる時代が現実に2050年にはやってきます。これは他の国と比べると圧倒的に高齢化が進んでいる状況で、日本は世界の中でも、人口急減の先進国なだけでなく、超高齢化社会先進国でもあるのです。もちろん、アメリカとか中国とかももちろんこれから高齢化が進んでいくわけですが、日本が圧倒的に1番早いということです。

高齢化が進むということは、人が長生きをして、長生きをするということは死ななくなっていくということなので、今は少ない85歳とか95歳の人口が急激に増えていくということを意味しています。皆さんのお父さんお母さん方もご健在である可能性が結構高いっていうことですね、

はい。一方で子どもの数は減り続けているわけですから、皆さん新聞などでよくご存知の通り、労働人口がどんどん減っていくということになるのです。

子育てと介護の両立が当たり前になる!?

これは皆さんのお父さんお母さんの時代の人口ピラミッドです。1960年というと、ちょうど「所得倍増計画」という政策を打ち出し、欧米に追いつけ追い越せじゃないですけど、潜在的な労働力が増えどんどん「仕事」を与え雇用を創出しようっていう時代です。

これが実は日本の20世紀型の雇用と働き方を生んでるわけです。企業が沢山できて、サラリーマンがたくさん生まれて、生涯雇用のもとで労働経験を積んでいくっていう、そういう時代です。

三丁目の夕日のように、地方からいろんな人が上京してきて、都市部で雇用されるっていう、そういう時代。

実際みてみると、このころの日本の人口構造は綺麗なピラミッドなんですね。この時はこの分厚い、増え続ける生産人口層があったのに、それに見合うだけの生産性の高い「仕事」の量が無かった。まさにその雇用を作り、持続的に生産をさせ、所得を倍増させる、という高度成長時時代の土台を作ったのです。

一方、今の私たちが生きている時代はこういう人口構造の時代です。さっきと比べてピラミッドではなく、すでに「湯呑を下にしておいたような形」になっていますね。でも団塊の世代と、団塊ジュニア世代の人口が多いお蔭で、真ん中の青い部分が横に大きく広がっている。

これが2050年になるとこういう時代になってきます。形でみると、団塊ジュニア世代を最後に尻すぼみになっているので、「駒」の形のようになっている。前のと比較していただくとまず横幅が違う。幅が人口の数ですから青い生産人口世代がずいぶん減っていることは視覚的にわかります。それから構成が違いますね。赤色とオレンジがものすごく多い。

こうなってくると、大変なことになる可能性はありますよね、働くっていうこと自体が。今は「仕事と子どもの両立」はどうするか、という議論がされていますが、それも当たり前、それと介護も同時にやるというのが当たり前、という時代になるのかもしれません。

人口の4割が単身世帯になる

そういった中で家族ってどうなっていくかっていうことなんですけど。普通「家族」っていうと夫婦と子どもで構成されていると思いますよね? そういった家族は2050年には全世帯の何パーセントになると思いますか?

17%位になっていきます。一方で、高齢者世帯を含める単身世帯が4割になるといわれています。高齢者夫婦の死別や離別もあると思いますし、そもそも生涯独身で高齢者になっていくかたも増えていくということだと思います。

高齢者単身世帯、青い所ですね。1980年イケイケドンドンの時代にはほとんど無かったんですけど、これからものすごく増えていくと想定されている訳です。

一方で夫婦と子、これ紫の所ですね。イケイケドンドンの時代には全世帯の半分くらいだったんですが、子どもがいない家庭も普通になり、離婚することも普通になり、結婚しない事も普通になっていくので、単身が増えていきますので、どんどん世帯の形が多様化していくわけです。

なので、単身世帯が増えていくということは、家族が重要な「人とのつながり」「コミュニティ」の土台を作っていた時代から、「個」が自ら積極的に繋がっていかなければならない時代になるいうことですね。

ちなみに、高齢者で単身でっていうと、皆さん田舎に住んでいるイメージがあるかもしれないんですけど、実は2050年の75歳以上の人口増減状況をみると、都市圏が急増するのです。

今よりも高齢者が3倍に増える地域を赤で示していますが、赤い所を見ていただくと東京圏とか愛知県とか大阪とか、都市圏に高齢者がものすごく増えていくという時代にこれからはなっていく。

要するに都市圏でバリバリ働いて今の日本を作ってる人たちは、そのままそこで老いていく可能性が高い。私も恐らく、このままだと赤いところに貢献するわけですね。

地域コミュニティが必ずしも強くない都市圏に、一人で住む高齢者がすごくたくさんいる、という時代。どういう風に人と人は繋がっていくべきなのか、が問われていく時代になっていくと思います。

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