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【スペシャル対談】 麻生太郎元総理×三橋貴明氏(全4記事)

「日本は破綻する」と叫ぶ評論家が、報酬を日本円でもらっている件について--麻生氏×三橋氏

民主党政権下の2012年6月にニコニコ生放送で放送された自民党のネット配信番組「Cafe Sta」を書き起こし。出演した麻生太郎氏と三橋貴明氏は、声高に叫ばれる日本の借金(国債)問題について「日本はギリシャにならない」と断言。民主党、財務省、また自民党の一部にも、問題を正しく理解していない人がたくさんいると嘆いた。

GDPが増加すれば増税は必要ない?

三橋:難しいもんじゃないんですよ。お金を発行して、それを誰かが借りて、そして雇用になるように使う。これだけですよね、やることって。なんでたかだかこれだけのことができないのかなって。

ただ、『コレキヨの恋文』じゃないですが、1930年代もまったく同じことを日本はやってたんですよね。問題の間違いということで。バブル崩壊後のデフレ期に緊縮財政をバリバリやって、あのときは物価上昇率がマイナス13%とかになったので。ところが、それでも政治家の一部は考えを変えない。なんでこうなっちゃうんですかね?

麻生:不思議だね。共和党と民主党に似たようなところもあるのかもしれんけども、なんとなく意地とかメンツとか、これまでのあれ(経緯)があるから急に変えられねえとか、いろんなこと言うんだと思うけど、やっぱり間違ってると思うね。どう考えても、20年間間違えたんだから。

たまたま民主党に3年間(政権がある)ということになったんで、これでちゃんと御破算に願いましては、「おたくもわかったでしょ」という話をして、次の内閣は誰がやるにしてもまずは財政出動して、少なくとも景気が浮揚する、経済が成長するために、民間の事業・個人の消費・雇用が起きるようなものに政府のお金を出しますと。

いわゆる財政出動は単なるばら撒きじゃなくて、事業が起きるようなものにちゃんとお金を出して、さっき言われたように、自民党は国土強靭化で10年間で200兆円、1年間で20兆円出しましたけど、あれをやって日本銀行もそれに見合うお金を出してきて、そのお金でこっち(民間)も仕事が出てきて初めて回りはじめるという。

難しい話でもなんでもないって三橋先生が言われたけどそのとおりで、それでバーっと循環しはじめて、1~2年して「おお、間違いなく良くなったじゃないか」といえば、設備投資が増えるんですよ。

民間の設備投資が増えたら不況から好況になってきたしるしだから、その段階で初めて消費税って話が……法人税・所得税・事業税といろいろ入ってきて、まだ医療・福祉・介護に足りないなら「すいません、これ(消費税増税)を」と、そこで初めてしていいんだと僕は思うんですけどね。

角谷:相当順番が違いますけども(笑)。

三橋:自民党の中でさえ、政府の税収が国民の所得に比例してるっていうのを知らない人が結構いるんじゃないかな。そんなことはないと信じたいんですが。税収の出どころって所得しかないでしょ? 所得が大きくなっていけば税収が勝手に増えるっていうのはどんな時代でもそうで、要はデフレ期に増税すると減収になっちゃうっていうのは、所得が小さくなっちゃうからなんです。

ということは、(元)総理のおっしゃったような政策をして所得、GDPが大きくなっていけば、消費税を増税しなくてもいいんじゃないですか。可能性はあります。

麻生:高橋是清のときは一回も増税してないもんね。

三橋:一回も増税してませんね。勝手に政府の税収が増えるので、それで結局財政をまかなえるようになった。

「日本破綻論」は馬鹿げている

角谷:じゃあ伺いますけれども、ここ3年間民主党は、マニフェストであれだけ掲げて「八ッ場ダムはやりません」って言ったのに、今回「八ッ場ダムはやります」って言い出した。これは、ある意味では公共事業を長年やるための予算付けなのかもしれないけれども、一方で財務大臣も総理も「ギリシャになっちゃいますよ」って脅かされてるんですけど、ギリシャになっちゃうんですか?

麻生:それね……(苦笑して手を振る)。

三橋:馬鹿げた話ですよ。そういうこと言う人は、経済をまったくわかってない。

麻生:何が一番違うかというのは、少なくとも「ギリシャと同じになります」と馬鹿げたことを言っちゃった元総理の人はいましたが……あ、まだいると思いますけれども。

三橋:前の人です。

麻生:その方の話を聞いて、全然わかってないんだなと思った。僕はしょうがないからしゃべろうと思って、それまで絶対テレビに出ることはしなかったんですが、あれから出るようになった。

何がってね、ギリシャと日本でまったく違うのはいくつもありますが、日本の場合は自分の国の通貨で国債を出している。そして日本人が94%買っている。ギリシャの場合はユーロという共通通貨で発行し、ギリシャ人が買ってるのは3割以下。こっち(日本)は、金利は今0.8%。1%切ったわけですよ。向こうはどんどん上がって、今日(2012年6月28日)いくらになったか知らないけれども……。

三橋:26%くらいですね。

麻生:26%まで上がってる。まったく違うでしょう。1%と26%だよ。片一方は外人が買って、もう一方は自国民が買って自国の通貨でやって。まったく違うのを「ギリシャみたいになります」なんてのは、俺に言わせりゃ嘘なんですよ。しかも、自国の通貨だけで国債を出すことができるのは、日本・アメリカ・イギリス・スイス、ドイツもある意味ではできるけど、世界でその5ヶ国くらいですよ。

対外の純資産も世界一持ち、個人金融資産だって1480兆円だか1490兆円だか持ち、しかもそのうち現預金が800兆円とか、おそろしい力があるのを上手く活用することを考えたらいいんであって、60年国債で借りて「返します」というのをやればいい。高橋是清だって、この人は1905年に終わった日露戦争のときに借りたお金をイギリスやらクーン・ローブ商会に返し終わったのは60年後ですよ。

三橋:1985年くらいですかね。

麻生:どう考えても、今は遮二無二10年もの国債だけに絞ってみたり、なんとなく嘘っぽいね。

三橋:こういうことだと思うんですよ。日本円の通貨って、実は日本銀行の負債なんですね。借用証書なんですよ、現金紙幣って。国債は政府の借用証書ですよね。その二つって、実は金利が付く・付かない以外にほとんど変わりはないんです。

というわけで、日本銀行に政府の国債を買い取らせれば、通貨が増えると。何か問題が……まあインフレになるっていうのはありますよ。でもそういうことができるのが中央政府なんです。そういう国家観とか、「国家とは何か」「通貨とは何か」っていうのを日本人は忘れちゃったんじゃないかな。そこに根本的な問題があるんじゃないかな。

麻生:お札の裏に「日本銀行券」って書いてあって、硬貨は「日本国」しか書いてないからね。「日本銀行券」「日本国」でやってることは同じことですよ。そういった意味で、落ち着いて考えてもらったら、ちょっとはわかりそうなもんだけどなあ。

三橋:面白いのは、経済評論家って「日本が破綻する、崩壊する」とか大好きじゃないですか。私は書かないけど。ああいう人たちだって、報酬は日本円でもらってるんですよ。私が本当に破綻すると思ったら、絶対日本円でもらいません。

結局、日本銀行に国債を買い取らせるとハイパーインフレになるとか馬鹿げたこと言う人がいるんですけど、ちょっと待ってと。日本銀行は国債を買い取って通貨を発行するのが仕事ですよ。すでに80兆円くらい買い取ってますよ。それをやるなってことは、日本銀行いらないじゃんってことになる。もうね、本当に馬鹿げてるんですよ、破綻論って。

財務省、政治部記者、新聞の読者、誰も実態をわかっていない

麻生:ハイパーインフレーションってね、前年度比10,000%くらい……。

三橋:13,000%。

麻生:そこまで行かないと、ハイパーって定義しないんですよ。戦後の一番激しかった昭和21年のインフレとかあの辺でも350~360%でしょ。全然違うんだから。

角谷:いろいろと民主党政権が経済がわかってなかったことはよくわかりました。一方で、彼らも含めて国民は今誰にだまされてるんですか? こんなことで煽られて。

三橋:(元)総理は言いにくいでしょうから私が言いますけど、財務省ですよ。

麻生:財務省ってところはね、あれは複式簿記がないから。

三橋:(笑)。

麻生:あそこは単式簿記しかない。台帳しかないんですよ。したがって複式簿記の貸方・借方っていう……そこらの商店街のおかみさんでも知ってる基本的な知識ですよ。お金を借りてるのは日本じゃありません。借りてるのは政府。必ず反対側には貸してる人がいる。貸してるのは誰かっていうと、これは国民が貸してるんですよ。

皆さん方は「私は国債持ってない」なんて言うけど、必ず銀行に預金なり郵便局に貯金してる。そのお金は間違いなく銀行に対する債券です。銀行にしてみりゃそれは借入金だから債務ですよ。銀行はそのお金を貸すところがないから、国債を買ってるわけでしょ。皆さん方は間違いなく、銀行を通じて政府の「債権者」(になってる)。「債務者」じゃないんだから。

それを、いかにも「債務者だ、日本の借金です」って言われると、また不勉強で帳簿なんて全然わからない政治部の記者が、それを書くわけですよ。

三橋・角谷:(笑)。

麻生:言ってるやつがわかってなくて、書いてるやつがわかんなくて、読んでる人がわかってなかったら、いよいよわかんなくなっちゃって今日に至ると。

角谷:なるほど。

3年前に語っていた、消費税の増税時期の見通し

角谷:麻生内閣のときにはヨーロッパの経済危機を抱えていて、麻生さんはすぐ決断した。国内でもいろんな議論があったかもしれないけど、もしあれがなかったらと考えれば、相当早く手を打ったことになったと思うんですよ。その一方で財務省は、麻生さんには「間接税の値上げってのはどうですかね。消費税上げないと」と言えなかったんですかね?

麻生:僕のときには、解散する前に「今回の不況は全治3年かかります。3年いただいたらやります。それでも、景気が回復しても税収が足りないとなったときは、上げさせていただきます」という付帯条項104条をくっつけて、それで解散しましたから。ちゃんと間接税、消費税上げますということを前提にして、やった。

民主党は、マニフェストで「4年間は絶対上げません」と言ってた。俺が「その金どうするんですか」って言ったら、仕分けと何とかで16兆8000億円出しますって言ってたかな? どこにそんなの出てくんのかなと思ったら、案の定出なかった。

そのような話になってるんで、やっぱり「きちんとやります」ということを言って、いつやるかについてはさっき言った(三党合意の付随第)18条で日にちを決めようとしてるので。今回は少なくとも三党で合意したんだから、合意した以上はきっちりそれを守って、そのときまでになるべく景気を良くするように補正(予算)を組むなりなんなりして上げて、その上で……間に合うとは思えんけど。「本当かよ」とみんな思うからね。

「(選挙に)勝った、一斉に行こう」というふうになってくれればいいですけど、そうはいかないでしょうから。そうすると少しタイムラグ、時間差が出てくるんだと思いますが。そういうことを考えてやっていくんで、僕は今回(三党)合意ができたって意義は大きかったと思いますね。

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