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木村草太の「今朝の一手」(全6記事)

「共同親権=子どものため」と思っている人が知らない現実 憲法学者・木村草太が語る、4月施行制度の致命的な問題点 [2/2]

掲示板に溢れる実害、フランスで性虐待後も共同親権が続いた実態

木村:また、海外の父母が集まる掲示板などを見ると、別居している親が子どもの状況をよくわかっていないのに、医療や教育の決定に反対してくることがあります。ワクチンの接種に反対したり、子どもが特別支援学級に行く必要があるのに、状況がわからず同意してくれなかったりする書き込みも見かけます。

日常的に同居親の子育てのリソースを、別居親との調整に使わなければならない事態が起きているのです。

特にフランスでは、共同親権が原則になっているため、特別な手続きを踏まないと単独親権に移行できません。そのため、DVや虐待をする親が親権を持っていることがよくあります。

最近ようやく「子どもに性虐待をした人からは親権を自動的に剥奪する」という法律ができたそうですが、逆に言えば、それまでは性虐待があっても共同親権のままだったということです。子どもを守るために離婚しても、立証ができないと親権が続いてしまう問題が起きていました。

こういったことは、法律の条文だけを見てもわかりません。フランスやドイツを見ても、離婚していても、あるいは結婚していなくても「父母が共に子どもに責任を持つ」というのは、一見すると男女平等でもっともらしい法律に見えます。

しかし、中身を見ていくと、実は多くの問題が起きています。単独親権であっても、父母の仲が良ければ何の問題もないのですから。海外で「共同親権がうまくいっている」というケースを見ても、それは単独親権であっても問題がない父母のケースばかりなのです。

賛成派2000件の分析が示す偏見と、日本の婚姻事情が持つ特殊性

武田:共同親権を導入してほしいと賛成している方々というのは、どういった主張が軸になっていたのですか?

木村:今回の法案改正の際に行われたパブリックコメントのうち、賛成コメント2,000件を分析したことがあります。非常に現在の同居親に対して攻撃的な人が多い印象でした。

「連れ去られた」「浮気をされて子どもを連れ去られたまま親権を失った」「家事は自分が全部やっていたのに」という不満が多く、自分の反省をしているコメントはほとんどありませんでした。

また「一人で子育てしているシングル家庭は何かが足りない」といった差別的なコメントもかなりありました。賛成派のコメントを見ると、本当にこの法律を作っていいのかと心配になる状況でした。

日本ではあまり知られていませんが、日本の場合、子どもが生まれた瞬間に父母の9割以上は結婚しています。フランスなどは婚外子が過半数ですから、生まれた瞬間にお父さんとお母さんが結婚していないのが日常茶飯事です。仲良く子育てしている父母が結婚していないだけ、というパターンが多いのです。

そのため、海外では「結婚していなくても共同親権」という制度に需要があるのですが、日本の場合はそもそも婚姻によって出生時の共同親権率が9割を超えています。それなのに離婚するということは、何らかの問題があって別れているケースが多いのです。

海外の制度をそのまま持ってきて適用できる話ではありません。そういった事情もすべてすっ飛ばして議論されていました。

武田:木村さんの先ほどの説明の中で、改正の際に非常に強い批判があったため、DV虐待がある場合は加害者を外して単独親権にする、という話がありました。婚姻を解消する場合、仲良しこよしで離婚というケースはなかなかないわけですが、この単独親権でいきたいという方はたくさんいらっしゃいますよね。

木村:そうですね。離婚後に父母の対立が非常に激しい場合、専門家の指摘によれば、立証できないだけでDVや虐待が隠れているケースが非常に多いです。

家庭裁判所の運用が鍵、反対派が勝ち取った条文と4月以降の課題

木村:イギリスの専門家が言っていることですが、加害者ほど前向きでポジティブで、後ろ向きな思考をせず「未来のこと」しか語りません。なぜ離婚に至るまでにこれほど仲が悪くなったのかという原因を無視する傾向があるそうです。

裁判所がそのような態度を取ってしまうと、加害から目を瞑って「子どものことを考えましょう」と言い出すことになり、非常に問題があります。仲が悪いケースでは「なぜこれほどこじれてしまったのか」をまず認定してから話を進めることが重要です。

また「DV虐待の場合は外す」というのは、実は海外では大変なことです。海外では「DVをやっていても悪いパパとは限らない、悪いママとは限らない」といった議論で、原則共同親権にしていました。

そういった議論を遮断して「いや、そうではないでしょう」と、常識に見える条文も反対派が粘り強く入れさせたのが今の状況です。

武田:子どもの利益にならない共同親権は命じてはならないとのことですが、その「子どもの利益」というのは誰がどう確定するのですか?

木村:裁判所ですが、ここで重要なのは、海外では「子どもの利益」ではなく「父母の平等」のために共同親権という言葉を使っていた面もあることです。

親権はあくまで子どもを保護するための制度であって、父母の権利や利益のためのものではないと明示させました。これも反対派が入れさせた原理原則です。

武田:4月から適用される中での、木村さんの最大の懸念は何でしょうか。

木村:「合意がなくても、父母が共同親権にすることが理想だ」という抽象的な理想論でどんどん運用されていくことが懸念されます。父母がきちんと共同親権を行使できる関係にあるのかを、家庭裁判所がしっかりと見るプロセスが重要です。

国民のみなさんもぜひ関心を持っていただき、問題があればさらなる法改正も必要ですし、国民の批判を家庭裁判所に届けていくことも大切だと思います。

西村:このコーナーは「PodcastQR」でも配信しています。ラジマガコラム『木村草太の「今朝の一手」』でした。

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