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記子の気になる日本のほぉ~(全6記事)

「もう妊娠したくない」と医師に伝えても、日本では手術を断られる 母体保護法が原則禁止、「私の体は母体じゃない」訴訟の第1審判決を読む [1/2]

【3行要約】
・自分の体に関する決定権は自分にあるはずですが、日本では不妊手術が母体保護法により原則禁止されています。
・ 弁護士の三輪記子氏は、2025年3月の第1審判決を受け、優生保護法から続く国家による身体管理の歴史を背景に、現在も女性の身体的自己決定権が制限されている問題を指摘しています。
・ 「避妊の自由」と「不妊手術を受ける権利」の境界線をどう考えるべきか、個人と国家の関係をあらためて問い直す必要があります。

「私の体は母体じゃない」訴訟と身体性への問いかけ

西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーのラジマガコラム、月曜日は三輪記子さんの『記子の気になる日本のほぉ~』です。今日はどんなお話でしょうか。

三輪記子氏(以下、三輪):今日のテーマは「私の体は母体じゃない」訴訟です。第1審判決が先週3月17日に出たので、この判決について今日はお話ししたいと思います。

武田砂鉄氏(以下、武田):はい。

三輪:この言葉はすごいキャッチーだなと思っています。「私の体は母体じゃない」。もう強く言っているのです。

まず、この判決を見ていくのは少し難しいです。お二人にも、リスナーの方にもイメージを持っていただきたいので 3つほど、質問を持ってきました。まず1問目ですが、私の体はどこからどこまでだと思いますか。

私の体はどこからどこまででしょうか。

西村:全部。

武田:全部ではないでしょうか。頭のてっぺんから足の先まで。

三輪:例えば爪とか髪とか髪の色。では、2つ目の質問になります。髪型、髪の色、眼鏡、武田さんのTシャツ、靴、カバン、キャリーケース。何を身につけるか。これは私の体に含まれるかどうか、どう思いますか。

武田:僕は今、Tシャツとジーパンで来ています。それは朝起きて「これを着よう、これを履こう」と思って着ているので、 非常に私の身体性が強いものだと思います。例えば、どこどこで働いていて、この制服を着るということが決まっていたとします。働くから着るけれど、それが私のものかというと、そうではないわけです。

三輪:そこで、その制服について私の身体性が弱まるのは、なぜだと思いますか。

武田:それは自分の選択が、自分で選んでいるものではないからだと思います。

三輪:そうですよね。強制性が介入するから、やはり私の身体性は弱まります。一方で眼鏡はどうですか。

武田:今つけている眼鏡は眼鏡屋に行って買っています。あまたある眼鏡から「じゃあこれにするか」と選んだ記憶があります。だからこそ、自分の眼鏡だと思うわけです。

文化放送に来て「武田さん今日はこの眼鏡でお願いします」と言われた場合。「はいわかりました」と。文化放送でラジオをやる限りはこの眼鏡なのですね、と。もし、そうやられたとするならば、これは自分の眼鏡ではないと思うでしょう。

三輪:ですよね。あと、その眼鏡がないと根本的に文字とか見えにくくなります。そういう意味でも身体性が高いものだと思うのです。

自分の意思だけで不妊手術を受ける権利を求めた原告たち

三輪:では、3つ目の質問です。私の体に関する決定権は誰が持っていますか。

武田:これはもちろん「私」と即答はしたいとは思いますが、やはり、時と場合によって、何かがそこを揺さぶられてしまう場面もあります。

三輪:そうなのです。私の体は、実は自分で思っている以上に曖昧です。強制性が介入するポイントは、実はたくさんあるのです。ということを前提としつつ、ここから裁判の話をしていきます。この裁判は、ラジオマガジンで中島さんが、リベラルとパターナルの話をずっとされています。

武田:されていましたね。

三輪:この裁判は、原告がリベラルで、被告である「国」はパターナルです。被告はどういうふうに言っているかというと、不妊手術を受けたいという人が、簡単に受けられるようにしてくださいという裁判なのですが。

国は「いやいや、後悔するかもしれないから、あなたのため、みなさんのためにこの法律があるのです」と、まさにパターナルな規制をしているわけです。まさに、これはリベラル対パターナルの話でした。

ここから3つ、お話ししていきたいと思います。まず、原告が求めた請求が何だったか。どういう法律の規定が問題となったか。判決の構造、ポイントということでお話ししていきます。

まず1つ目のポイントは、原告が求めたことです。原告の女性4名が、罰則を受けることなく、自らの意思のみに基づいて、医師または指定医による不妊手術を受けることができる地位を確認することを求めました。これは他にも予備的請求や国家賠償請求もしました。

ポイントは、罰則を受けることなく、自分の意思だけに基づいて、不妊手術、妊娠できないようにする手術を受けさせてください、というのが原告が求めたことです。

武田:はい。

三輪:ここでまず、この原告が求めたことを指摘するだけで「え、罰則があるの?」と思われるのではないかなと思うのです。妊娠しないようにする手術を受けられない、罰則があるから。私は、この訴訟を初めて知った時にそう思いました。

例えば豊胸手術とか、逆に胸を小さくする手術は受けることができます。胸を小さくする手術はスポーツ選手などが競技に邪魔だからということで受けていたりします。これはニュースになっていたりもします。そもそも豊胸手術だったりすると、いろいろな広告もあったりするわけです。それで罰則があるという話はありません。

だけど、妊娠しないようにする手術は、女性の場合には卵管の手術をしたりするわけです。この手術はかなり制限されています。というか、原則禁止なのです。実は「母体保護法」という法律が、それを原則禁止にしています。

母体保護法が定める不妊手術の厳格な要件と罰則

三輪:2つ目のポイントですが、その母体保護法の規定について見ていきたいと思います。

法律を確認する時に、とっても大事なのは「目的」というところです。なぜその法律を規定しているのか。この目的は、だいたい1条に書いてあります。母体保護法も1条に目的が書いてあります。

母体保護法1条は「不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする」としています。この法律の名前と目的は、とっても大事なので頭の片隅に置いておいてほしいです。

では、この母体保護法で不妊手術をどういうふうに規定しているか。ドクター、医師がこの手術を行うわけですから、医師が不妊手術を行うための要件が、この法律に定められています。その要件というのは、だいたい、大きく4つになっています。

まず本人の同意。これは当然ですよね。そして次に、配偶者がいる時は配偶者の同意です。女性なのですが、配偶者の同意もこの手術には必要だとなっているのです。そして、未成年ではないこと。

もう一つ、次のいずれかの要件を満たさなければいけません。まず1つ目、妊娠または分娩が母体の生命に危険を及ぼす恐れのあるもの。または、現に数人の子があり、分娩ごとに母体の健康度を著しく低下させる恐れがあること。これを満たさないと、不妊手術ができないのです。

原則として、これらすべてを満たさないと不妊手術ができません。なので、不妊手術ができる場合というのはかなり制限されているからこそ原則禁止なのです。これが母体保護法の28条なのですが。

この禁止に違反して不妊手術を行った人は、1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金。ということを定めて、罰則をつけてまで、ほとんどの場合に日本では不妊手術ができないようになっているのです。

こういう規定があるから、自分はもう絶対妊娠しません。妊娠もしたくないし、だから1発で手術をして、妊娠しない体にしたいです。ということが実現できないから、国を相手に訴えたというのが本件訴訟なのです。

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