【3行要約】
・野党共闘の必要性は広く語られるが、中道改革連合は歴史的惨敗を喫し刷新が急務です。
・ 政治学者の中島岳志氏は「リスクの社会化×リベラル」という軸の欠如と野党間の選挙協力不全が敗因だと指摘します。
・ 新しいリベラル多数派を取り込むには、現役世代への社会的投資と批判・連帯を両立する胆力が問われます。
中道改革連合に可能性はあるか、惨敗の構造的原因を読む
西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラー、火曜日は中島岳志さんのコラム『中島岳志と解く』です。今日はどんなお話でしょうか。
中島岳志氏(以下、中島): 「中道改革連合には可能性がある」という、なかなか聞かないタイトルかもしれません。
武田砂鉄氏(以下、武田):なかなかこのタイトルを聞いて、「ある!」と後ろにビックリマークを付けられる人は、あまりいないと思いますけどね。
中島:そうですね。批判の多い野党ということになるんですけど。先の衆議院選挙でも、歴史的な惨敗をしました。この政党は、参議院では立憲民主党と公明党が続いています。
来年、2027年に統一地方選挙があるんですけど。地方は、また立憲民主党とか公明党のままで選挙をやる方向性が語られたりしています。いったい、この中道改革連合はどうなるのか。「なくてもいいじゃないか」とおっしゃる方もいると思うんですけど。そういうわけにはいかないと思うんですね。
なんで負けたのか、総括をちゃんと今やっておかないと、この政党には未来がないと思うんです。1つ負けた最大の理由は、野党が選挙協力をやれなかったこと。これがどう見ても最大の理由なんですね。
日本は衆議院で、小選挙区比例代表並立制をやっています。小選挙区制をやっているのではない点がポイントなんですね。
小選挙区制は、二大政党制に導く「デュヴェルジェの法則」と政治学では言うんですけど。そういう機能があると考えられてきました。当然そうですよね、1人しか当選しませんから。1つの選挙区で1対1の構造が生まれやすくなる。二大政党制を生み出しやすくなるのが、小選挙区制の特質なんです。
日本の衆議院選挙は、これと比例代表を並立しているんですね。比例代表制は真逆の制度で、多党制を導く選挙制度と考えられているんです。特に小政党でも、議席が取れるんですね。オランダなどは、全部比例代表だけで選挙をやっているんですけど。無数の政党による連立政権になっています。
つまり、二大政党にしたいのか多党制にしたいのか、よくわからない。「遠心力」と「求心力」を、両方かけているような。よくわからない選挙制度がこれなんです。
結果、この制度ではどうなっていくのか。2ブロック制という言い方をするんですけど、2つのブロックができる。そこに中核政党があって、プラス小政党の連立という形態が生まれていくんですね。1996年にこの制度を導入してから、ずっと連立政権をやっているんですけど。
野党共闘の失敗と、有権者に届かなかった「もう一つの日本」
中島:こういう連立政権が生まれてくるということは、選挙で協力しなければいけないんですね。比例代表ですから、いろいろな政党が通る。その上で小選挙区を戦わなければいけないから、小選挙区で選挙協力をやらなければいけない。
与党は、自民党が公明党とずっとうまくやってきたわけです。けど野党側がこれをやれなくて、バラバラでした。結果的に与党を利する状態がずっと続いてきました。今回の選挙も実はそうだったんですね。
こういう考え方があるから「1つにならなければいけない」と。立憲と公明が結びついて、1つの政党を作ろう、となりました。
一方で国民民主党とか共産党、れいわもですね。別々にそれぞれ候補者を立てたりしているので、遠心力が働いてしまっているんですね。結果的に自民党が圧勝するのが、小選挙区で起きた現象でした。
これをちゃんと整理しなければいけないですよ、と。野党側で大きな塊を作りながら、大きなビジョンを共有して。個別の政策はバラバラでもいいんですけど、選挙を協力していく。そういう体制を作れないと絶対に勝てない。これが今回もできなかったということだと思うんです。
もう1つは、中道改革連合が「何をやりたい政党なのか」が分からなかったんだと思います。高市政権に対して、「こういう日本じゃなくて、もう1つの可能性があるんじゃないですか」と。こちらの可能性を追求したほうが、日本は良くなるんじゃないですか。
今、どんどん日本の船は沈んでいますよね。「こちらの船に乗り換えませんか」というもう1隻の船を出さないと、やっぱり「おっ」とならない。この「おっ」となる仕掛けがぜんぜんできなかった。
むしろ自民党と言っていることがあまり変わりません。「政権になっても大丈夫ですよ」ばかり言ってしまうと、魅力はぜんぜんないですよね。「こちらで行きましょうよ」と言えなければいけないのに、それが見えなかったのが大きいと思いますね。
武田:ある程度、長く政治を見ている人でも、野党が多党でバラバラだという状態に慣れてしまっています。今回のように中道改革連合が「立憲と公明がくっつくんだ」となった時。まず何を思うかというと、そこの違いをどうやって埋めるのかを見るわけですよ。
そこで合わさった時に「どうするんですか」と問いかけても。野田さんにしろ、斉藤さんにしろ、ごにょごにょと言うんですよね。
それがかなり目立ってしまって。私も『ゴールデンラジオ』なり他の放送局で聞くことがありましたけど。そこはちゃんと答えを用意しておいてくれよという場所でさえ、あまり明確な答えが用意できていなかった場面が目立ちましたもんね。
中島:大きな政治の構造から迫っていってほしいと、ずっと僕は言っているんです。
政治は、国内面においては2つの仕事をしています。1つはお金の出し入れなんですね。今も予算委員会を国会でやっていますけど。国民から税金でお金を預かって、それをどこに使うか。配分を国会とか政治家が決めているわけです。これは、すごく大きな力です。
もう1つは価値観の問題にも触れているんですね。例えば選択的夫婦別姓の是か非か、LGBTQの人たちの婚姻の問題。靖国神社の公式参拝をどう考えるか。お金の問題に還元できない価値観の問題ですよね。この2つを政治は扱っています。
私はお金の問題は、「リスクの個人化」と「リスクの社会化」に分けられると思っているんです。
「リスクの社会化」と「リベラル」が野党の目指すべき座標
中島:リスクの個人化は、生きているといろいろなリスクがありますよね。突然会社が倒産して職がなくなった、難病になって仕事ができなくなった。こういうリスクに対して、「個人で対応してくださいね」と。
「保険に入っていなかったんですか」と言われてしまう、自己責任社会ですね。政府は規模が小さい。税金は安いかもしれないけど、行政サービスも小さいですというのがリスクの個人化。
リスクの社会化は、そういうリスクはみんなにあるんだから、みんなでこれに対応しましょうよ。税金は少し高くなるかもしれないけど、何かあった時にはみんなでバックアップする。社会的にみんなで支え合う社会ですね。これが対立軸でのお金の問題であると。
もう1つ価値観の問題で、「リベラル」と「パターナル」と言っているんです。リベラルは個人の自由を尊重しましょう。パターナルは、強い力を持っている人間が価値観の問題に介入します。
選択的夫婦別姓の問題についても、リベラルは「それぞれパートナーの自由に任せましょう」と言います。パターナルは「日本人だったら同姓が家族の規範だ」として介入していく。
これをすると、4つのゾーンができるんですよ。高市政権とか自公がずっとやってきたのは、「リスクを個人化する」考え方と、「パターナル」という組み合わせなんですね。安倍内閣以降ずっとやってきて、これを切り替えようとしたのが石破さんだったけど、無理だった。高市内閣はここの色を非常に強めています。
だとしたら野党はこれの逆なんですよ。「リスクを社会化していく」、そして「リベラル」です。これは高市内閣がやっている船とはぜんぜん違う、もう1つの日本のあり方じゃないですか。そういう訴えから政策をやっていってほしいんですね。
こういう構造が見えないと、中道改革連合へは支持が集まらないし。逆に言うと、そこは支持があるゾーンなんです。ここをちゃんと言語化してほしいなと、いつも思いますね。
武田:中道改革連合がなぜ出来上がったかといえば、公明党がもう自民党と一緒にやっていられないと。その主たる原因が、政治とカネの問題。自民党とカネの問題を、公明党の支持者なり支持母体が。謝り続けながら選挙戦をやらなければいけなかった。「もうそんなことやっていられませんよ」ということで分かれて。
それで中道改革連合が出来上がり、選挙でも「政治とカネの問題をしっかりやってもらわないと困る」と。でも実際選挙をやってみたら。
私は政治とカネの問題、引き続き追うべきテーマだと思っていますけど。なかなか有権者側が、それをファーストプライオリティに持っていっていなかったことも。今回の結果につながってしまっている部分もあるわけですもんね。
中島:ですから公明党という政党がどういう政党なのか、ちゃんと考え直さなければいけないんですけど。まず公明党が自民党と、特に安倍内閣とかと一緒にやってきたこと自体が野合だったんですね。
公明党はさっきの分類で言うと、リスクの社会化とリベラルという考え方のゾーンにいるはずの政党なんです。