【3行要約】
・石川県知事選で現職・馳浩が敗北し、地元メディアと権力の癒着構造があらためて注目されています。
・ プチ鹿島氏は40年来の観察眼から、北國新聞が権力者視点で馳氏を擁護し、批判機能を失っていた実態を指摘します。
・ 有権者は「よりマシな候補」を選ぶしかない現実に直面しており、地方政治とメディアの関係を見直す必要があります。
石川県知事選で現職・馳浩が敗北、40年来のプロレスファンが現地へ
西村志野氏(以下、西村): ここからは前半レギュラーのラジマガコラム。木曜日はプチ鹿島さんの『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』です。今日はどんなお話でしょうか。
プチ鹿島氏(以下、鹿島): 今日のテーマはですね、「私と馳浩:思い出のアルバム」という、ちょっとしっとりと、なぜか過去を振り返るモードになってしまったのですが。
武田砂鉄氏(以下、武田):しっとりとね。
鹿島:先日の日曜日、3月8日にですね、石川県知事選挙が投開票されましたよね。結果を申し上げると、現職の馳浩さん、これは自民と維新の推薦です。がですね、自民出身の元金沢市長の山野之義さんに敗れました。現職が敗れるという。
県内の19市町で馳氏は16勝3敗だったんですが、有権者の4割が住む金沢市で大敗を喫したということなんですね。
僕はですね、馳浩さんをなんだかんだ言って、もう40年近く見ているんですかね。10代の頃からですから。というのは、プロレスラーでもあられるので。もうデビュー戦から見ているんですよ。そういう人が政治家になったという、その分岐点も見ているんです。
なので、今回の知事選挙も、やっぱりちょっと見に行かなければいけないなと。呼ばれていないんですが(笑)。序盤戦と終盤戦に駆けつけました。なので、今回は3つの項目があります。
1つ目がですね、「馳浩は昔から政治家だった」。2つ目、「地元・北國新聞(ほっこくしんぶん)というメディアについて」。3つ目、「今回の選挙戦の構図」。
まず、「馳浩は昔から政治家だった」というのは、これ、ずっと見ているからこそならではだと思うのですが。例えば、最近の話題でいうとですね、今から3年前、2023年の正月以降ですね。ちょいちょい馳浩さんが全国でも話題になったんですね。こういうニュースがあったからです。
「馳浩知事、石川テレビにプロレス映像提供拒否。同社の映画を巡り不満」。これ、どういうことかと言いますと。石川県の馳知事が定例会見で、自身が元日に出場したプロレスの興行を巡り、馳氏自身の意向で、石川テレビに試合の映像を提供しなかった。他には提供していたんですが。
なんだか意地悪ですよね。
武田:そうですね。
鹿島:じゃあこれどういうことかと言いますと、馳さんはもともとプロレスラーだったんですね。で、95年の参院選に出馬して当選し、それ以降は政治家の活動が主だったんですが、この時点でもたまにプロレスの興行に出ていたんですよ。
2023年元日、日本武道館で開かれたプロレスリング・ノアという団体があるんですが、そこの興行にサプライズの「X」として登場した。いろいろタッグマッチというのがあって複数あったんですが、一人だけ、もう「X」、誰が出てくるかわからない。プロレスファンから見ると、そこはだいたい知名度のある人なんですよ。だってあんまり驚かない人が出てきても「X」じゃないじゃないですか。
武田:そうね。
鹿島:誰なのかなと思ったら馳浩さんのテーマ曲が鳴ったんで。あ、僕現場で見ていたんですが、元日から。あ、これ馳浩なんだ、というので見ていたんですよ。この時の映像を後日、石川テレビには貸さないと言っていたんですね。
ドキュメンタリー映画と映像提供拒否、馳知事の「メディアコントロール」
鹿島:その理由というのが、石川テレビ制作のドキュメンタリー映画『裸のムラ』というのがあるんです。五百旗頭幸男(いおきべ・ゆきお)さんという方が監督したのですが。
この中で、馳さんや県職員の映像が無断で使用されていたとして、肖像権の取り扱いについてちょっと納得ができない。じゃあ、もう石川テレビの社長は出てこいよ、という投げかけをして。
僕はですね、この理由を読んで、本当に笑ってしまったんですね。なぜかというと、『裸のムラ』という映画は、権力を持ったおじさんの振る舞いとか、それに対する忖度(そんたく)とか同調圧力を五百旗頭監督は描いていたからなんです。
だから、五百旗頭監督は当時、何と言ったかと言えば、森喜朗(もり・よしろう)さんを絡めて描くことで、結局、石川県の政治は茶番劇が繰り返されてきたことを示すのにマッチしていたと。馳さんは昔から「新時代」と強調していましたが、何も変わっていないじゃないかというテーマもある。
だから、この時の「じゃあ、もうこの映画が肖像権が云々」という理由を立てつけて、自分のプロレスの映像を貸さないよというのは、なんだかもう映画のテーマそのものをなぞって証明してくれた感じで、僕はすごくおもしろかったんですね。この「おもしろかった」というのは、括弧付きですよ。
武田:ええ。
鹿島:だから、ちょっと滑稽だなと。ただ、こうした圧力は、地元ではさぞかし効果があるのだろうなと思ったんですよね。だから、そういうのは当時、ラジオでもコラムでも書いていました。
ここであらためて馳浩さんをおさらいしてみると、当時、僕が見ていた猪木さんとか長州さんとかの新日本プロレスというのは、すごく、一言で言えば暗かったんですね。情念が濃くて。だから、逆にすごく集中して見られたんですが。馳さんというのは、すごく明るかったんです。
武田:うーん。
鹿島:だから、もう「この明るさは新日本の伝統に合わないのではないかな」という感じで、ちょっと苦手で、なんなら「新日本の伝統を壊しているのではないかな」みたいに、一人で憤っていたんですが。
一方で、やっぱりプロレスの技術はすごくて。いわゆる受け身がすごかったんですね。だから、1990年代の新日本プロレスの象徴の一人だと思うようになったんですよ。これはこれで認めなければいけないなと思ったんですよね。
僕なりに良いところがあれば、なんだかあまり良く思っていなくても認めなければいけないという態度を、僕は馳さんに教わったと思っていて。そういう意味でも、自分を大人にしてくれた存在でもあったんですね。
でも、一方で、そんな馳さんは、やっぱりレスラー時代から卒がなくてやり手で。最初から政治家みたいな印象だったんですよ。「なんだかすごく政治家みたいだな」と思ったら、本当に政治家になったという。
で、国会議員時代も長くて、2022年に石川県知事選挙に立候補したんですよ。当時の現職の知事は、森喜朗さんの天敵とも言われていて、仲が悪かった。なので、森喜朗さんは自分に近い馳さんを出した。だから、もう万全の態勢ですよね。森喜朗さんのバックアップを受けて。
デビュー戦のブーイングと4年前の知事選、エリートコースに向けられた反感
鹿島:ところが、今から4年前の選挙で何が起きたかと言えば、地元では馳さんがいち早く手を挙げて、当時の現職の谷本さんを引きずり下ろしたように見えた。で、タブロイド紙も僕は全部チェックしたんですが。
やっぱり万全すぎて反感を買うという。それがですね、盤石すぎてブーイングが飛んだというのが、馳さんのプロレスのデビュー戦も本当にそっくりだったんですよ。
武田:ほう。
鹿島:というのは、長州力さんという大学の先輩でもあったんですが、そこにスカウトされて、入門してからすぐに海外武者修行へ行って。
で、エリートとして帰国後第1戦。1987年12月だったんですが、両国大会ですよ。大きなビッグマッチですよ。そこで、なんと帰国後第1戦でいきなりチャンピオンになったんですよ。もうエリート中のエリート。
ところが、じゃあ、これでスター誕生かと言えば、プロレスファンってやっぱりどこか屈折したところがあって。やっぱり何というか、逆境から這い上がった人が好きだったりする。あまりにもエリートコースを敷かれた人は反発するんですよ。だからブーイングが出たんです。
それが今回というか、4年前の選挙で、盤石の態勢で早く手を挙げてエリートコースを敷かれたのが、地元で反感を買っていたというのが、馳さんは同じことをやっているのではないかと僕は思ったんですよね。
で、ただやっぱり使い勝手は、プロレス時代から良かった。興味深いのは、前回の知事選挙で馳さんの応援で石川県入りした橋本聖子さんが、応援で何を言ったかと言えば、「こんなに使い勝手が良い人はいませんよ」と。
だから、まさしくリンクしているんですよ。僕が見ていた30年くらい前の馳さんと。やっぱり似ているなと。完全にレスラー時代の評価と同じだった。
武田:普通怒りますけどね、そんなことを言われたら。使い勝手が良いと言われたら。
鹿島:そうでしょう。で、苦戦はしたんですが、石川県知事となったんですね。かなり僅差ですよね。知事になったことは変わりない。これを馳さんが総括して、「政治家・馳とは何か」ということです。
じゃあ、2番目。「地元・北國新聞というメディアについて」。僕は石川テレビに映像を貸さないと言った現場、プロレス興行を見ていたんですよ。で、確かに激務の中でコンディションを整えてリングに上がっていたのはわかります。
ただ、正直言って、もったいぶって映像を貸さないというほどの試合ではありませんでした。正直に言うと。
武田:正直にね。
鹿島:はい。ただ、やっぱり、石川テレビへの文句というのは無理筋かと思いますが。こういう政治家が公然とメディアコントロールを仕掛けているというのは良くないなと思って、当時から僕は言っていたんですが。
ただ、気になるのは、じゃあ馳さんが「貸さない」と言った時に、例えば新聞労連や民放労連からなる「日本マスコミ文化情報労組会議」というところが、馳知事の行為に対して声明文を発表したんです。それをよく見ると、「メディア側の対応も十分とは言えない」と書いてあるんですよ。
どういうことかと言えば、「新聞も精力的に取材・報道する媒体は一部に留まる」、この件、会見拒否についてね。どういうことかと言えば、ここで精力的に取材する一部の新聞というのは、地元の北陸中日新聞と、朝日新聞の北陸版なんですよ。