地元紙・北國新聞と権力の蜜月関係、候補者の「挨拶来訪」を記事にする異常
鹿島:逆に石川県で本当に大きいシェアを誇る「北國新聞」というのがあるんですが、この問題では知らん顔をしていたんですよ。で、北國新聞というのは、馳さんの後見人である森喜朗さんと近いと言われている。
ただ、森喜朗さんと近いだけではなくて、当時の雑誌にはいろいろ書いてあるんですが。例えば、「県政と地元メディアの癒着体質として、石川県政に圧倒的な影響力を持ち、一時期を除き中西・谷本と蜜月関係を維持していたのが北國新聞」と書かれている。
というのは、中西・谷本さんというのは、馳さん以前の知事たちのことで。中西知事というのは、昭和38年から始まっていますので。
武田:昭和38年。
鹿島:よく知事でありがちじゃないですか。多選で。そういった人たちが続いて、そことずっと蜜月だという、地元メディアがね。それだけ長い間蜜月。要は、新聞なんだけど自分も権力側なんですよ。というのが地元では大権力。
これ、ちゃんと言っておくと、だいたい地元紙というのはシェアが多いじゃないですか。そこに、あわよくば新聞の下にテレビとかラジオも持っているので、そもそも地元紙って大権力を持つグループだったりするんですよ。これは全国どこでもそうです。
だからこそ権力の使い方は抑制的でなければいけないし、ましてや自分の一族から誰か政治家になったら、フェアに報道しなければいけないんですが。それをやらないところもたまにあるんですよ。
で、今回の知事選挙について、じゃあ地元の北國新聞がいかに権力的かとわかる新聞があるんですが。去年の10月、山野さんという今回当選した人が、自分のところに挨拶に来たというのを記事にしているんですよ。
武田:ほう。
鹿島:記事を読みます。「来年3月8日投開票が有力視される石川県知事選挙で」、これ去年の10月の記事ですから。「山野之義前金沢市長が出馬の意向を固めたことが14日わかった。北國新聞社を訪れた山野氏が、飛田(ひだ)名誉会長に明らかにした」。これを記事にしているわけですよ。
武田:はい。
鹿島:つまり、「自分のところの名誉会長に挨拶に来たよ。で、聞いたらどうやら知事選挙に出るらしいぞ。よろしくお願いしますと挨拶に来たぞ」というのを記事にしている。これ、すごいでしょ?
武田:顔を出したぞというね。
鹿島:そうです、そうです。だから、先ほどのドキュメンタリー監督であり石川テレビの五百旗頭さんは、その記事を昨年から引用して、「こうした書き方の記事に驚く人がほとんどいないのが石川県です」と。
五百旗頭さんはむしろもうアウトサイダーとして、めちゃくちゃ距離を置いてがんばっているわけです。このメディアの構図というのを覚えておいてほしいんですよ。
武田:それがずっと続いてきたわけですものね。
鹿島:そうなんです。例えば、馳浩さん、この4年間でもいろいろやらかして。機密費でオリンピックのアルバムをIOC(国際オリンピック委員会)に配ったよ、とペラペラ喋った件があったじゃないですか。
武田:思い出のアルバムね。言っていました。
鹿島:思い出のアルバム。要は、東京五輪を招致するために自分はこんなに尽力したんだ、なんなら機密費を使っていいからなと安倍さんに言われたみたいな、聞かれてもいないのにペラペラしゃべる。
機密費発言への叱責方法、権力者目線で「余計なことをしゃべるな」と諭す地元紙
鹿島:すると、これはすごいですよ。当然メディアは批判しますよね。地元の北國新聞はどう書いたか。これ、政治部長のコラムというのがありまして。僕、ずっと永久スクラップなんですが、こんなことを書いたんです。
「当時の安倍派会長として馳氏の初当選のため尽力した安倍氏への恩を、仇で返すことにならないか」という政治部長が、新聞で書いているんです。居酒屋で言っているのではなくて。
武田:すごいです、それね。
鹿島:これ、叱る角度が違いませんか。
武田:ビックリしましたね。その角度あるのかっていう。
鹿島:もうね。さらに、政治部長のコラムだけではないんです。北國新聞の1面コラムにも驚いたんです。やはり馳発言を取り上げていたんですが。
「機密を口にしたら身も蓋もない。触れない方がいいことには触れない。伏せておくことは喋らない。それで世の中成り立つ」って、これ本当に新聞なのだろうかという。すごい、もう権力側になっている。お前余計なことしゃべるなよ、と。
武田:わかっているだろうな、お前と。
鹿島:叱り方が違うんです。こういう新聞なんです。だから、まさに地元の権力者視点そのものなんですよね。だから、その中で、ああいうドキュメンタリー映画を作っている人もいるよ、というのをみなさんは頭に入れておいてほしいんですよ。
武田:この鹿島さんの少し前のコラムにも書いていますけれど、この馳さんの『
ほんとにもう ひとこと多い この男』という本。これも僕も手に入れましたけれど。なんだかやたらと判型が大きくてね。
鹿島:あれ、北國新聞で連載しているんです。これもだから北國新聞社から出ているわけだから。本当に一言二言多いんですよ。
さあ、じゃあ今回の選挙戦の構図。じゃあそういう4年間をおさらいしてみると。他にもいろいろあるけれど、この定例会見拒否問題とか、あと能登半島の地震の対応が、実際どうだったのかとか、あるわけですよね。それが問われたと思うんです。だから苦戦も必至なのだろうなと。
で、僕、たまたま去年の12月に金沢で仕事があって。地元の人に、「来年3月の知事選挙って馳さん出るんですかね。出るとしたら勝てるんですかね」と聞いたんです。そしたら、やっぱり地元の情勢調査というのが早々に行われていて。
12月の時点では、馳さんは今回(当選した)山野さんでしょうね、対立候補とされる人に、ダブルスコアをつけられて負けていると。12月の時点では。ああ、じゃあこれ馳さん苦戦するんだなと思って。
ところがですね、知事選挙が始まって序盤、2月の末ですね、僕、序盤戦に行きました。そしたらやっぱり地元の情勢調査というのを聞いたりすると、むしろ馳さんがちょっと勝っている。接戦には違いないのだけれど。
これすごくないですか? じゃあこの3ヶ月の間に何があったのかと言えば、まあ大きな要因は「高市人気」。衆院選もありましたでしょう。で、馳陣営のビラとかチラシにも高市さんを載せたりとか。広告も出したりとか、それこそ北國新聞に。
それでやっぱり追い風が吹いていて、いかに仲が良いかという説明もされていて。それでどうやら、接戦に持ち込んだというんですよ。
馳の実績と山野の問題点、「よりマシな候補」を選ぶしかない有権者の現実
鹿島:じゃあ、これどうなるかという、今後2週間で情勢が変わるかというので、僕は注目していたんですよね。
で、ここで馳さんの実績もちゃんと言っておきたいんですが。やっぱり調べてみるとね。地元の人の話も聞いてみると。これまでの知事とは違って、馳さんって多様な政策に積極的に取り組んできた部分はある。
例えば昨年4月に、北陸初の公式の夜間中学を金沢市で開校させています。だから、何というのだろう。今まで光を当てられなかったマイノリティに対する政策というのは、馳さんは理解がある人だ、今までの知事に比べるとね、という評価も聞きました。
あと今回勝った、山野之義さんという方。前金沢市長なので、金沢が強いという。じゃあそれ馳さんに勝つだろう、しかもやり手だろうと思うんですが。これもやっぱり調べたり地元で聞いてみたりすると。
過去の金沢市長時代に、いわゆる歴史修正主義と言われていた教科書を採用した人だったり。で、他には、その場外車券売り場、これ競輪でしょうね、の誘致を巡って、特定の業者に便宜を図ろうとした疑いで辞任して、出直し選挙で1回勝っています。
そして今回、これは自分の目で見ましたが、地元の参政党の議員が応援していました。で、その参政党の議員の応援演説を目の前で聞いたんですが。
「外国人政策を推進する馳知事に対して我々は反対しています。外国人が来ると、増えると治安が悪くなります」とはっきり言っていました。
これ、例えば全国知事会の提言というのを、みなさん良かったら調べてほしいんですが。全国知事会というのは、いかに外国人と共生していくかというのを訴えているんですよね。だからこれ、馳さんが先進的というよりは、もう地元、地方では、外国人と共生していかないともう回らないよと。
だから僕は外国人問題があるとしたら、安い労働力としか見られていないのではないか。例えばさっきの参政党の議員の演説にもあったのだけれど、もう労働力としか見ていないんですよね。
じゃあむしろ本当に問題があるとしたら、だって仕事が終わって地元で生活する時間というのもあるじゃないですか。その時本当に困っていないかとか、何か変な扱いを受けていないかとか、問題があるとしたらそこだったんですが。これと真逆のことをやっぱり応援演説で言っていたんですね。
こういう構図があるわけで。だから、なかなかこれ、馳さんも馳さんだし、山野さんも山野さんで。よく選挙というのは、「じゃあもうよりマシな人だと自分が判断した人を選ぶ」。もちろん事実上の一騎打ちと言われていたから、他にも共産党の候補の方もいるんですが。
例えば今回だって6000票差ですよね。接戦ですよね。その中で、じゃあ事実上の一騎打ちで二人から選んで自分が影響力を行使したいというのであれば、じゃあどっちがよりマシだなと思った方を入れるしかないというのも、地元で複数聞いた話だし。選挙って難しいなと思った。
武田:その構図で決まった新しい知事、またちょっと見ていかないとという感じですよね。
鹿島:本当にそうなんですね。
西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ラジマガコラム『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』でした。