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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全11記事)

「自分を大事にする=怠ける」と思っている人が見落としていること 消耗しない働き方を阻む、非人間的な制度設計の問題 [1/2]

【3行要約】
・「怠ける」ことで自分を守るZ世代の働き方が注目されているが、「怠け」という言葉の使用に違和感を持つビジネスパーソンも増えています。
・ 組織開発の専門家・勅使川原真衣氏は、長時間労働や均質な体力を前提とした非人間的な制度設計こそが問題の本質だと指摘します。
・ 個人が「全力か怠けるか」の二択に縛られず、小さな関係性の変革と選択的な降り方で、自分を守りながら働く道を模索すべきです。

「自分を大事にする」は「怠ける」と同義なのか

西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーの「ラジマガコラム」。水曜日は、勅使川原真衣さんの『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』。今日はどんなお話でしょうか?

勅使川原真衣氏(以下、勅使川原):はい。今日は「『自分を大事にする』イコール『怠ける』になっちゃうの?」ということを考えてみたいと思います。

きっかけになったのは、3月8日の国際女性デー関連で、昨今の女性を取り巻く事情のニュースがいろいろと出たように思います。

日経新聞を読んでいてもおもしろいコラムが出ていました。令和な言葉「レイジーガールジョブ」。仕事以外が人生、という記事があったんですね。レイジーガールジョブを直訳すると「怠け者女子の仕事」となると思います。

アメリカのZ世代の女性の間で、仕事に心や体を削られない働き方を選んでいこうよという文脈が1つの潮流になっているらしいんですね。日経新聞のコラムなんですけども、けっこう挑戦していました。最後、締めくくり方が「怠けて怠けて怠けて怠けて怠けて参りましょう」で終わっていました。

武田砂鉄氏(以下、武田):5回繰り返すのも全体的にやめようよって(笑)。

勅使川原:そうなんです(笑)。言いたくなっちゃうんですけどね。ただ事情としては出世や収入よりも、心をすり減らさずに働くことを大事にしたいよねは確かにわかります。すごく疲れた方が多いです。

ただ、なんか引っかかってしまいました。自分を大事にするって、怠けるしかないのかなは、一考に値するんじゃないかと思います。結論を先取りしますと、私はイコールだとは思っていません。怠ける以外の自分を大事にしながら働く方法はあると思っているので、今日はその話をしたいと思っています。

ちなみに、「女性の話か」と思われる方もいらっしゃると思います。女性の話は女性だけの話ではないんですよね。女性なり何なり、マイノリティのあり方を枠付けているのはマジョリティ側です。みなさんに、どこかしら関係する話だと思っていただけるとうれしいなと思います。

もともとレイジーガールジョブという言葉はあまり聞きなじみがないですよね。ある現象の揺り戻しが発端のようです。カリフォルニア出身のライターの竹田ダニエルさんが「@DIME(アットダイム)」に…。

武田:竹田ダニエルさんですね。私、武田砂鉄は竹田ダニエルさんとご一緒したこともあって。いろいろ発信されていますものね。

勅使川原:そうなんです。おもしろい寄稿をたくさんされています。「@DIME(アットダイム)」のWebメディアに寄稿されている記事がおもしろいなと思って読ませていただきました。

「LEAN IN」から始まった「ガールボス」への反動

勅使川原:2013年、思い起こせば大ヒットした本がシェリル・サンドバーグさんの『LEAN IN(リーン・イン)』です。覚えていらっしゃるでしょうか。

武田:ベストセラーになりましたね。

勅使川原:本当に流行りましたよね。中で出てくる「ガールボス」の言葉。ガラスの天井を私たちもポジティブにがんばれば破っていけるよという強いメッセージだったわけです。これに対するカウンターや反発として生まれているのがレイジーガールジョブの概念だと解説していらっしゃいました。

ガールボス・ムーブメントは、シェリル・サンドバーグさんもすごく力強いですし、きれいでキラキラしていらっしゃるんですよね。

だけど、背後に潜む大前提として、資本主義社会を否定していない点にアメリカのZ世代の女性たちは少し敏感です。「もう古いかもな」とか「強すぎるな」という印象がおありのようです。ちなみに、日本ではどうでしょうか。レイジーガールジョブ。私は聞きなじみがなかったんですけど。

武田:あんまり浸透はしていないと思いますけどもね。

勅使川原:そうですよね。

西村:あんまり聞いたことないですよね。

勅使川原:このままぜひ流行らないでほしいなと思っています。「レイジー」だなんて言わないでほしいと実は思っているんですね。覚えているでしょうか。私の子どもの頃なんかは女性の主に事務職の方を「OLさん」と呼んでいた時代がありましたよね。

武田:ずっと長らくね。

勅使川原:長らく、はい。「オフィスレディー」ですよね。もっとさかのぼると、1920年代頃は「職業婦人」の考え方で、女性の就労、社会進出を言ってきたわけです。

OLに、コピーを取るとか資料をまとめる、お茶を出す仕事をさせてきたのは誰なのかという話もあります。腰掛けだとか、結婚までのどうせつなぎでしょうとか、いつ寿退社するの、とよく言われましたけども。やっぱり女性が決めたことじゃないんですよね。マジョリティ側が押し込めていった構造があります。

今、従属的に誰かの圧力に従っているように見えている人も、本人が決めた結果ではない可能性がすごく高いんですね。なんで、ましてや「怠惰」だとか「怠け」は簡単には言えないんじゃないかなと思います。マイノリティの労働と「怠け」の言葉は、遠く離しておきたいなと思います。

こう言ってしまうと、「じゃあ働きすぎ社会、どうするの?」という思いはあると思います。確かにもっとゆるく働かないと、という感覚は、私もわかるんですね。組織開発の仕事をしてきて、多くの方が仕事で消耗されているのを見てきました。私も疲れてきました。ボロボロになってきたこともあります。

なんですけども、だからこそ問うべきなのは、「じゃあどう怠けようか」の話ではないはずなんです、当人たちは。どうすれば人間が壊れなくても働き続けられるか、設計が問題なんではないでしょうか。

問うべきは「どう怠けるか」ではなく働き方の設計

勅使川原:長い間、日本の働き方は強い人を前提に作られてきていると思います。長時間働ける人、いつでも呼び出したら来てくれる人。予定が組めなくなると困るので、ケア労働のない人を選んできたこともあったはずです。

ただ、今はどうでしょうか。強い人でないとまっとうな仕事ができないなんて、非現実的と言わざるを得ませんよね。怠ける、怠けないの前に、制度がいかに非人間的であったかを考える時がいよいよ来ていると感じます。

人間が怠けて自分を守ろうの前に、非人間的制度や組織構造こそ変わるべきではないでしょうか。

ここで1つおもしろい現象を参照して考えてみたいんですけども。最近「虚弱」ってけっこう聞きませんか。虚弱ブーム。

武田:虚弱ブーム。

勅使川原:ないかな? 本も話題になっている一冊がありますよね。『虚弱に生きる』。「絶対に終電を逃さない女」さんの。これすごくヒットしていると思います。「虚弱体質」と自称する著者の日常的なエッセイですけども。

武田:「絶対に終電を逃さない女」は書き手の名前ですからね。

勅使川原:「女」さんと言ったわけじゃなくて、そうなんです。SNSでもすごく共感の声が届いていると思います。自分も体力がなくて、体力がないだけだったのに就労が難しかったお話もあると思います。

この本が問いかける大事な内容として、これがあるんですね。「社会が体力がある人を前提に作られすぎていませんか」と。これ、本当にそのとおりじゃないかなと思うんですよね。

以前、コラムでも「休みニクイヨネ」論をお話ししたと思うんですけど、私からするとやっぱりメンバーシップ型雇用や人材マネジメントは、職務の中身の議論をするインセンティブが働かないお話しをしたと思います。

そうすると、個人側に柔軟や臨機応変という言葉で、個人でなんとかしてくださいという対応が求められてきたわけなんですよね。そこを評価されたいのであれば、長時間職場に張り付くなり、目立って貢献をアピールしなきゃいけないことが必然的に生まれてくる。

だけど、人間の体ってそんなに均質でしたっけ、ということが今問われていることなんだと思うんです。体力のある人もいれば、虚弱な体質の人ももちろんいますし、慢性的な不調を抱えているとか、ケア労働があって自分のことを後回しにせざるを得ない方もいらっしゃると思います。

体質とか言わないまでも、状態の話に近いのかなと思っていて、いつも元気な人でもちょっと調子が悪い時ってありますよね。逆もまた然りなんじゃないかと思います。

なので、ここで起きている問題は「怠けるか怠けないか」ではないんですよね。人間の多様性を無視した働き方が、一律に要請されすぎていませんか。これ、ちょっと声を大にして問うていきたいなと思います。

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