アメリカの制裁が招く存亡の危機 平和大国・日本が果たすべき役割
三輪:だからもっと平和のために発信する材料を持っている国なんだということを、まず多くの人に知ってほしいです。そして世論が後押しすれば、安全保障というのは武器や基地ということだけではなくて、国際機関で活躍する日本の人を応援するかたちでも、国際貢献や平和構築に資することができると私は思います。ぜひ赤根さんの存在をまずは知ってほしいなと思うんですよね。
法の支配がすごく言われていると思うんですけれども、トランプやネタニヤフ、プーチンは法の支配をめちゃくちゃ無視している人たちなわけです、私に言わせると。彼らは力こそすべてであったりとか、司法手続についてある意味コスパが悪いと考えているのかなと感じるんですよね。
司法手続や適正手続で、きっちりと法の世界で処罰をしていくことは、確かにコスパは悪いと思うんですよ。すごく時間もかかりますし。だけどそのコスパの悪さをみんなで引き受けることが、平和につながるということなんですよね。
平和的じゃないことをしている人に対して世界が何ができるかということで、今無力感を覚えている人も多いんじゃないかなって、私自身も無力感を覚えるから思っているんですけれども。
そういう時に国際刑事裁判所という独立した機関があるし、今存亡の危機にある中でがんばれと応援することも平和につながるんだということを、ぜひ知っていただきたいなと思うんですよね。
法の支配って何だろうと考えた時に、法の支配だよねとトートロジーになっちゃうんですけど。法の支配の反対の言葉は人の支配や力の支配だと思うんですけれども、当然人の支配や力の支配が何を追い詰めるかというと、力を持たない弱い人が割を食ってしまうということなんですよね。
芦部先生の憲法の本に書かれていることなんですけれども、法の支配のところを少し読ませてもらいますと、「法の支配の原理は、中世の法優位の思想から生まれ、英米法の根幹として発展してきた基本原理である。それは、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である。」と。
ジェームズ1世の暴政を批判してエドワード・コックが引用した言葉があります。「国王は何人の下にもあるべきではない、しかし神と法の下にあるべきである」という言葉が、法の支配の本質を表していると言われています。
「法の支配」の本質 コスパが悪くても守り続けなければならない理由
三輪:この芦部先生の本によると、法の支配の内容として重要なものは「憲法の最高法規性の観念、権力によって犯されない個人の人権、法の内容手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重」というふうに考えられてるんですけど。
これは日本の憲法の話なんですけれども、ただ国際刑事裁判所は、国際的に権力の恣意的な行使を許さずに法の力でちゃんとコントロールします。政治権力とは関係なく法の下に法を適用して、戦争犯罪人をちゃんと追及していこうという機関なんですよね。
こういった機関の所長を日本の人がされているのは大変名誉なことですし、所長になるには裁判所の互選によるんですよね。だから国際刑事裁判所のほかの裁判官からもすごく信頼されている方だと言えると思います。こういう機関が、アメリカの制裁によってかなり存亡の危機に立たされている。
そして今アメリカが何をやっているかというと、イランに対する侵攻ですよね。やはり世界は本当につながっているし、本当に無力感を覚えるけれども、解決策はあるはずだし、解決策は暴力的であってはならないんじゃないかと思うんですよね。
コスパはもしかしたら悪いかもしれないけれども、コスパが悪くてもきちんと悪いことをした人が処罰される世界のほうが、私は納得感が得られるんじゃないかと思います。ぜひみなさんにも知っていただきたいなと思ってご紹介しました。
武田:今年の年始に自民党の議員を中心とした国会議員たちがネタニヤフのところに会いに行って、小野寺五典議員らがネタニヤフとがっちり握手をした写真がありましたけれども。
問題視する時にまさに国際刑事裁判所の言葉が出てきて、国際刑事裁判所からネタニヤフに逮捕状が出ている存在なんですよと言われました。
でも議員の人たちは特に問題はないという言い方をしていたのは、今の三輪さんの話を聞くと、まさに国際刑事裁判所の判断、組織、そしてトップである赤根さんの判断をかなり軽視していることにもなるわけですよね。
三輪:おっしゃるとおりです。なんでこんな判断を軽視できるのかと考えた時に、やはりまだまだ国際刑事裁判所の認知度が低いからです。有権者にはそんなに問題視されないんじゃないかと軽んじる部分があったのかなと思うんですよね。
世論が政治を動かす ICCを守り抜くことへの期待と日本の責務
三輪:選挙もあったじゃないですか。だからもしこれが、やはりそれ大問題でしょと世論が動けば、そんなこと本当にしたのかなと思っていて。私自身は国際刑事裁判所について特に詳しいわけではなくて、最近勉強している状態ですから、人に偉そうなことを言える立場ではぜんぜんありません。
ただ少しでも知ると、あるいは赤根さんの話を聞くことで、やはりもっといろんな人に知られなきゃいけないと思ったので、知らないながらも今日少しお話しさせてもらいました。
世論が変わり得るということだと思うんですよ。国会議員は絶対有権者のことを気にしているはずだから、ネタニヤフとがっちり握手することがどういうことか知られれば、対応も変わっていくんじゃないかなと感じています。
武田:アメリカ、中国、ロシアが現在締約国に入っていないということですが、締約国から抜けるとか抜けざるを得ない状況が起きてきた時に、国際刑事裁判所があまり大きな国が入ってないから意味ないよと言われないようにしないといけないということですね。
三輪:本当にそうで、1回もし存亡の危機で本当になくなってしまうことがあったら、もう一回この規模のものを作るのは至難の業というか、ほぼ不可能なんじゃないかなと思うので。
1回できた国際刑事裁判所を、国際社会は本当に真剣に守り抜かなきゃいけないし、日本政府には国際刑事裁判所を守り抜く側の一員であってほしいなと思っています。
武田:赤根さんのご本、『
戦争犯罪と闘う』の帯に「世界を力による支配へ逆戻りさせないために」と書かれていますけれども、力による支配を望んでいる人はいないと思うんですけれどもね。
三輪:いないと思います本当に。だってイランもウクライナもガザも、本当に大変なことになっているわけじゃないですか。やはりそういう世界になっちゃいけないということを、今あらためて強く思いますね。
武田:赤根さんのご本、『戦争犯罪と闘う』、サブタイトルが『国際刑事裁判所は屈しない』というご本、ぜひ読んでみたいですね。はい。
西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム『記子の気になる日本のほぉ~』でした。