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記子の気になる日本のほぉ~(全5記事)

「冤罪はごく一部の話」だからこそ、実は全員が危ない 日野町事件・再審開始決定で見えた、今すぐ変えるべき再審法の2つの欠陥 [1/2]

【3行要約】
・冤罪事件は袴田事件などで広く知られるようになったが、再審制度の不備により救済が長期化する問題が深刻です。
・ 弁護士・三輪記子氏は、再審請求の長期化の主因として証拠開示の義務化がないことと検察の不服申立てを挙げています。
・ 議員立法による再審法の抜本改正を実現するため、国民が積極的に声を上げ世論を動かすことが求められます。

日野町事件とは何か 弁護士・三輪記子が読み解く

三輪記子氏(以下、三輪):はい。あ、すいません間違った。ラジオコラム『記子の気になる日本のほぉ~』。

西村志野氏(以下、西村):生放送ですね(笑)。

三輪:すいません、本当にすいません。

武田砂鉄氏(以下、武田):毎回毎回撮り下ろしで、ちゃんと生で言っているんだってことがわかってよかったんじゃないですかね(笑)。

三輪:すいません本当に。

西村:ここからは前半レギュラーのラジマガコラム、月曜日は三輪記子さんの『記子の気になる日本のほぉ~』です。今日はどんなお話でしょうか。

三輪:日野町事件再審開始決定から考える、冤罪被害者の救済についてです。

西村:まずは私から、日弁連(日本弁護士連合会)のホームページから、この日野町事件について概要をお伝えします。

1984年、昭和59年12月29日朝、滋賀県蒲生郡日野町内の酒店店主の女性が行方不明になりました。自宅兼酒店の内部に争った形跡はなく、被害者と同居していた親族の女性も異変に気づくこともなく、「被害者が、わしを置いて出て行った」などと述べていました。

翌1985年1月18日、日野町内の造成地で被害者の遺体が発見され、1985年4月28日、日野町内の山林内で被害者所有の手提げ金庫が発見されました。これが日野町事件について間違いなくわかっていることのすべてです。

遺体の状況から被害者が殺害されたことは明らかでしたが、犯人が誰であるかという以前に、いつどこで殺害行為が行われたのかまったくわからない状況でした。警察は酒店の常連客であった阪原弘(さかはら ・ひろむ)さんに任意同行を求めました。しかしこの時は阪原さんは関与を否認します。

ところが警察は再度阪原さんを呼び出して、強圧的な取り調べを続けて自白させ、阪原さんを逮捕しました。これが概要なんですけれども、経過と問題点についても少しお伝えします。

阪原さんは第一回公判からは一貫して無実を訴えたんですが、第一審大津地方裁判所は有罪、無期懲役の判決を言い渡しました。裁判所は、自白以外の証拠から認められる間接事実を根拠として、阪原さんが犯人であると認めることができるとしたのです。

控訴審大阪高等裁判所も控訴を棄却し、有罪の結論を維持しましたが、有罪とする根拠は第一審判決とはまったく異なりました。

第一審判決は「自白は有罪の根拠とできないが、間接事実だけで有罪と判断できる」。控訴審判決は「間接事実だけでは有罪と判断することはできないが、基本的根幹部分は信用できる自白と合わせれば有罪と判断できる」として、根拠の評価がまったく逆となっていることが日野町事件の大きな特徴であり、有罪判断の根拠の薄さを示しています。

控訴審判決に対して阪原さんは上告しましたが、最高裁判所は2000年9月27日に上告棄却の決定をし、有罪判決は確定しました。日弁連のホームページから紹介しました。

一審と控訴審で真逆になった「有罪の根拠」

三輪:ご紹介いただいたとおりで、報道もたくさんされているんですけど、日野町事件そのものの問題点があまり指摘されていないなと思ったので、西村さんに読んでいただきました。

そもそもの当初の捜査段階から相当無理がある事件だったんですよね。いろんな冤罪事件というのは、当初の捜査段階からだいぶ問題があるというパターンがけっこう多いです。

よく指摘されているのが、再審請求になってから開示された証拠を見ると、当時の最初の裁判の時に用いられた証拠が、例えば現場検証の時の写真の順番を入れ替えられたりしていたことが後からわかったりする。

そういうこともあって、今回再審請求が認められるに至ったという流れはあるんですけど、やっぱり冤罪事件というのは何で起こるのかというと、そもそもの捜査に無理があることと、起訴された後の証拠開示の問題なんです。

さっきの当番弁護士の時の延長ではあるんですけど、勾留されてから起訴されるまでの被疑者段階は、国選弁護人が、今は着きます。この被疑者段階というのは弁護活動はできるんですけど、証拠は一切見られません。

ということは、弁護活動は本当にどんな証拠があるかもわからない中で弁護活動をするんですよ。起訴以降は証拠を見ることができます。しかしそれは、検察が出してきた証拠しか見られないんですよ。全部の証拠は見られない。

とすると、その出された証拠に対する弁護活動ということになってしまうんです。でも実は他にも証拠があることが多い。ここでまず一点、その警察・検察が集めた証拠って誰のものだと思いますか?

武田:ねえ。

三輪:警察も検察も税金で仕事している人たちなんですよ。ということは、つまりその人たちが集めた証拠というのは、もちろんその事件のためのものではあるけど、広く公益のためにやっているわけですから、私たちの(国民の)ものでもあるという考え方は十分成り立つんですよ。

なんだけど、警察・検察はその証拠を、まるで自分たちが恣意的に出し入れしたりとか、あるものを「ない」と言ってしまったりとか、そういうことが続いてきたから、冤罪がなかなか救済もされないという現実があったわけですよね。

だからこそ、今回再審請求が認められた事件で、例えば袴田事件もそうなんですけど、その再審請求の中で、裁判所、裁判官の裁量で「証拠出しなさいよ」と検察に言ってくれて、やっと証拠が出てきている。

でもそれは法律的な根拠がないから、再審請求に当たったその裁判体によるんです。これが「再審格差」と呼ばれているものです。

証拠は「国民のもの」 開示を拒む警察・検察の問題

三輪:どの裁判体に当たるかによって、再審請求の中身がまるで違ったものになってしまう。時間的な制限もないから、ズルズルと長くやってしまったりもする。検察も法律の根拠がないから出しませんよ、みたいな話になっちゃうわけですよ。

さらに、裁判所が良い訴訟指揮をして再審請求が認められたとしても、検察官がその再審開始決定に対して不服申立てをする。そうするとその不服申立てに対して審査をすることになるから、再審開始決定に時間がかかってしまう。大きな要因は、証拠の開示が義務化されていないことと、検察官の不服申立てが認められているということなんですよね。

だとすると、再審の課題点として今すぐ解決しなきゃいけないのは、証拠開示の義務化と、検察官の不服申立てをなしにするということなんですよ。

なんでかというと、検察官は再審開始決定が出た後の、再審の裁判の時に反論すればいいわけで、再審の開始決定について不服申立ては認めなくてもいいんじゃないかという議論は十分成り立つんですよね。誰のための制度かということもありますからね。

そして再審請求をやったとしても必ず認められるわけでもないですよね。それを認めるか認めないか決めるのは裁判所だから。

そういう制度を変えていかなきゃいけない中で、今、法制審議会の答申案というのが出ているんですけど、そこは証拠開示も限定的だし、検察官の不服申立てというのも残っているんですよね。

だけど、超党派の議員立法によると、そこはちゃんと手当てがされているんです。だから私はやっぱり議員立法のほうで進められるべきだと思います。そうしないと、同じことがまだ続くよってことなんですよ。

私たちは一昨年、袴田事件の無罪が確定して、昨年は福井の前川さんの事件、これも無罪が確定しましたね。で、今年この日野町事件があるんですよ。これは目に見えている範囲だけで、今も再審請求している事件というのはたくさんあるんですよね。

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