国家権力の暴走に歯止めをかけるのは国民の義務
三輪:再審請求については、今言ったとおり、捜査、起訴、判決、これを全部国家権力がやっていることなんですけど、国家権力が何でこれをしているかというと、私たちが権力を付与しているからなんですよね。
でもそれって万能じゃないから、その暴走に歯止めをかけなきゃいけない。この暴走に歯止めをかけるのも、私たち国民のある種の義務でもあると思うんです。だからその歯止めをかける法律を制定してくださいよとみんなが声を上げないと、なかなか変わらない。
再審請求ってやっぱり数としてはとても少ないので、賛同もなかなか得られないことではあるんだけれども、こういうことを起こしたくないと思う人が一人でもまず増えてほしいし。
そうであるならば、やっぱり議員立法でやってくださいよという声が上がると、政治家も世論の声ってめっちゃ気にしていますから、やっぱりそうなのかなとなると思うんですよね。今、自民党の中でも稲田朋美さんなんかはすごく再審法改正について詳しいし、きちんとした議論をされていますし。
武田:こないだの国会でも、おっしゃられていましたもんね。
三輪:そうなんですよ。なので、そういう方向でやってほしいなと思うんです。
再審法の改正についてお話ししたんですけれども、この冤罪の救済というのは、本当はですよ、そもそも逮捕してしまったとしても、「この人はやっぱり違うな」ってなったら、起訴しなきゃいいんですよ。起訴・不起訴の権限は検察が持っているわけだから、検察が本当は起訴しなきゃよかった。
でも、じゃあ検察が起訴してしまいました。でも「本当に違う」ってことを裁判所がちゃんと見抜ければよかったわけじゃないですか。でも見抜けなかった。
見抜けなくて再審請求しているという事件も、それは神様じゃないからわかんないですよ、誰も本当のことなんて。だけどやっぱり人間がやる手続きの中でどうしてもミスというものがあるから、それをどうやって手当てするかということを考えていかなきゃいけない。
一部の弁護士の「手弁当」に任せていいのか 国が設立すべき検証機関
三輪:冤罪救済のための仕組みとして、この冤罪事件に関しても、かなり弁護士が手弁当でやっているんですよ。私も知人の弁護士が、例えば袴田事件に深く関わっている知人もいますし、鴨志田祐美弁護士という方は、大崎事件という鹿児島の事件なんですけど、あちらはなかなか再審が認められないという事件で、本当に奔走している人もいる。
それをそういう一部の、熱意のある弁護士だけに任せているような、今のあり方のままでいいんですかということはあるし。じゃあ何が必要かというと、そもそも冤罪が生じる原因って何だろうってことを検証するべきなんですよ。
その検証機関を国が設立したっていいわけですよね。そもそも捜査、起訴、判決という中で生じている過誤なわけですから、それを検証するということも同時に国がやっていくべきなんじゃないか、と思うんですよね。
さらに、最近は袴田事件、福井の前川さんの事件、今回の日野町事件ということで、再審にかなり注目されるようになったから、だいぶ違うなと思うんですけど、それでもこの社会的な認知というのが足りないんじゃないかと思います。
大川原化工機の事件もありましたけれども、やっぱり冤罪というのは、どうしても起こり得るもの、ゼロにはできない。ゼロにできないけれども、検証をする、手当てをするということを、もっと国が本気になるように、世論がもっと大きくなったら良いなと思って、今日お話をさせてもらいました。
武田:袴田事件はね、非常に大きく注目されて、多くの人が「なんでこんなに時間がかかったの」「人の人生丸ごと奪ってるじゃないか」ということで、かなり批判的に見られましたけれど。
なんであれだけ長くなったかと言えば、それはやっぱり検察側の不服申立てということができてしまうからこそ、あれだけ長くなってしまったということにもなるわけですからね。
三輪:あとは証拠開示ですね。証拠も、絶対全部すぐ出さなきゃいけないよっていうルールだったら、やっぱりもうちょっと展開は違ったのかなと思うんですよね。
武田:例えばの話、僕は誰かを殺めたという罪で逮捕されたとする。被疑者の段階で、「いや自分はそんなことやってませんよ」と言う時には、もう「やってませんよ」って言うことしかできないということになるわけですよね?
そちらがどういう証拠を掴んでるかっていうのを「見せてくださいよ、それは別に違いますから」って言うことさえできないということになるわけですかね。
三輪:ましてやこの日野町事件では、脅しというか、どういうふうに脅されたかという音声も出てますよね。捜査段階で、例えば全部録画すれば、そういうことって多分できないですよね。その末の自白だったら、そんな自白は信用できないよねって誰でもわかりますよね。
だからその誰でもわかることを誰でもわかる状態にするということも、大事ですよね。そういうことが実現できていない。どこに手当をするべきかというと、手当すべきところはかなり多いと思いますし。
「ごく一部」だから危険 「ひとつの方向」に進まない仕組みを
三輪:こういう話をすると、「冤罪事件って本当にごく一部だし、ほとんどは実際にやった人の弁護だろう」みたいなことを言う人がいるんですけど。
でも全部同じように「本当か?」っていう目で誰かが見ないと、全部がひとつの方向に進むっていうことはとっても危険だから、ひとつの方向だけに進まない仕組みをちゃんと作るっていうことは、とても大事だと思いますけどね。
武田:僕も以前編集者だった頃に、布川事件というね、これもまた冤罪事件ですけれども、この布川事件の杉山(卓男)さんという方の本の編集を担当したことがあって。その方の話を聞いてたら、杉山さんと桜井(昌司)さんという方が二人とも逮捕されてしまった。
で、杉山さんが取り調べ受けてる時に、「いやもう桜井はなんか自白してるよ」みたいなことを刑事から言われて、「お前早く自白したらすぐ出られるから」ってことを言われて、「いややってないけどまあすぐ出られるんだったら」っていうふうに言って、もう何十年と(刑務所に)ってことになってしまったってことがありましたからね。
三輪:ありました。だからそういうのも、やっぱり自白しないと出られない、それもまた人質司法の問題ですよね。
だからいろんなところに問題点があるから、そこにも全部手当はしていかなきゃいけないんですけど、本当、手当をしなきゃいけないところは多すぎる課題ではあると思いますし、警察とか検察の信頼を維持していくためにも必要だと思いますね。
武田:そうですよね。
三輪:だってもし、「ミスばっかりするぞ」ってなった時に信用なくなっちゃうわけで、「じゃあもう自力救済か」みたいな。それこそ力の支配の世の中になるのは、やっぱり危険ですよね。
武田:そうですよね。だからこういった冤罪事件が起きると、「二度と起こさないために、実はこういうふうになってました、ああいうふうになってました」ってことをきちっとつまびらかに出してもらわないと。
むしろそこでシャットアウトすると、疑いっていうのは逆に他にあるんじゃないですか、どうなんですかってことになるわけですからね。
三輪:そうなんです。だからやっぱり、警察、検察、まあ裁判所もですよね。ちゃんと検証をして、同じことが起こらないようにしていくっていうことを見せてほしいですね。
武田:今んところ出てるね、この再審法、検察の不服申立てがまだ残っていると。
三輪:このままだと残る懸念があるっていう感じですね。
武田:袴田事件のね、お姉さんの袴田秀子さんもね、「これだったらもうやらないほうがマシですよ」っていうぐらいのこと言わせてしまっているってことですからね。
三輪:そうなんです。
西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム『記子の気になる日本のほぉ~』でした。