お知らせ
お知らせ
CLOSE

プチ鹿島の「朝からタブロイド」(全9記事)

「胸を張って帰ってこい」とアスリートに言うメディアの、気持ち悪さの正体 新種目の選手たちが壊した「国のために戦う」というオリンピック観 [2/2]

メダル報道が生む「必要以上の興奮」と、アスリートへの中傷問題

鹿島:そうすると、やっぱり国と国との対決というよりも、個人がどれだけベストを尽くして、せこく点は狙わないけど、観客を魅了するパフォーマンスを見せたいんだという新種目が登場したことによって、オリンピックの価値観が変わってきたよねというのを、5年前僕は読みながら気づいたんですよね。

ところが今、まだともすれば、まあ2年前のパリ、夏のオリンピックもそうだったんですけど、国別メダルランキング数とか、やっぱ大手紙に載っちゃったりするんですよね。

武田:いまだにでもね、まあテレビ番組もそうだし、新聞社もこの国別メダルランキングってのはずっとスポーツ欄にも載ってるってことありますもんね。

鹿島:まあもちろん、そりゃ日本はどれだけ持ってるんだというのは気にする、そういう項目、それこそ選挙の速報と同じで「あそこはどうなってるんだ」という興味に対して「こうなっています」というのは必要だと思うんですが。

ただ一面トップで「こんなにメダル獲得したぞ」というのは、もうちょっと5年前の新しい種目にベテラン記者が価値観を壊されたという記事も出ている以上、ちょっと違うのかなと思いましたよね。

さらに東京オリンピックでスポットライトを浴びたのが、やっぱり選手たちも声を上げ始めたということなんですね、社会的な問題について。

あとSNSでアスリートへの誹謗中傷が相次いで、その延長線上にアスリートのメンタルヘルス問題もある。もっと言うと、メディアがガンガン国別でやるから、アスリートにも自分本来以上のプレッシャーがかかるんじゃないかというのが、もう問題視されていて。

じゃあこのオーストラリア。東京大会からメダル目標数を掲げることはやめたって言うんですよね。そう各国が考え始めているんです。

そう考えるとやっぱり、もう国別云々で一面トップで騒ぐというよりは、新しい種目の国家間の競争というよりベストを尽くして、ライバルともなんかつながって称え合うというほうにシフトしていったほうがいいんじゃないかな。

じゃないと、必要以上に興奮しちゃう人というのを、メディアも後押ししちゃうことにならない? というのは僕は本当に思ったんですよね。

武田:僕はよく気になるのは、このオリンピック報道とか、それこそワイドショーとかでいろいろと喋ってる時に、キャスターとかが、なかなかこう芳しい成績を収められなかった人に対して、なんか「それでも胸を張って帰ってきていい」みたいな。

鹿島:そうそうそう。

武田:「誰なんだお前は」っていう。

鹿島:まあ「胸を張って帰ってこい」の前提には、「どうしたんだお前」っていうのが。

武田:それが一応前にあって、「でも胸張って帰ってきていいぞ」っていう。誰様なんだと思ったりますよね。

鹿島:「メダルは取れなかったけれども」っていう、そこからの視線が入ってますよね。

西村: メダル至上主義みたいなのが、もう現れていますよね。

鹿島:もちろん取ってうれしいという選手はいいじゃないですか。でも「国として」みたいなのは、ちょっともう違うのかなと思って。

信濃毎日が「東京五輪中止」を書けた、長野五輪での“後悔”という原点

鹿島:あといい機会なんで、オリンピックとオヤジジャーナルの読み比べで、僕が一番なるほどなと思ったのが、やっぱり東京オリンピックのその開催に関してなんですよね。

というのは、あの時やっぱりコロナ禍とかあったじゃないですか。これ開催どうするんだという話で。ところがやっぱり一般紙がすごくモヤっとした感じで、奥歯に物が挟まったような感じで、なかなか是非を言わなかったんですよね。というのも、スポンサーに入ってるから。

で、朝日新聞が2021年5月26日に「東京五輪、やっぱり中止したほうがいいんじゃないか」という社説を掲載したんです。

で、その前からオピニオン欄には、社説でちゃんと朝日は立場を明確にしたほうがいいんじゃないか。別に中止なら中止という立場でもいいし、中止しなくてもこういうやり方をしたほうがいいんじゃないかというのに対して、全部口をつぐんでいたと。是非を明らかにせよっていうのがあって、じゃあ朝日どう書くのかなと思っていたら。

実は26日に社説を掲載する3日前に、いわゆる地元紙、地方紙から声が上がったんですよね。信濃毎日新聞が5月23日に「政府は中止を決断せよ」と書いて、西日本新聞もその2日後「理解が得られるなら中止を」と書いたんです。

その後に朝日が社説で中止を求めるものを書いたんですけど、やっぱり地方紙より遅れて書いたんですよね。だから、地元紙が書いたから慌てて朝日も書いたように見えるし、もしくは何日も何ヶ月も議論をしているうちに、その決断を先に越されたのかなと思ったし。

まあ一応ここで言っておくと、その「中止しろ」という社説を書いたから偉いというんじゃなくて、自分たちの意見をいち早く地方紙は表明してるじゃないかと。それに対して、朝日は遅れてるよねというのが僕は気になったんですよね。

その信濃毎日新聞で見ると、やっぱすごいんですよ、この東京オリンピックの時は。開会式当日の社説は「虚構の舞台に成功はない」。すごいですよね。閉会式の翌日は「もう腐食はごまかせない」。だから経費をどこに使ったのか情報開示を徹底せよ、というのを書いていて。

ただですね、実はこれも長年新聞を読んでいると味わい深いなと思っていて、その長野の信濃毎日新聞にも、実は過去があったんですよね。それが1998年の長野冬季オリンピック。

大成功に終わったようには見えるんですけども、実はこの長野オリンピックでも開催の意義や費用について問われていて、招致委員会の会計帳簿っていうのがあるんですけど、これが焼却されていた。

武田:焼却ですもんね。すごいですよね。燃やして、もう読めないようにしたと。

鹿島:そう。で、その時やっぱり信濃毎日新聞はなかなか突っ込めなかったっていうのが、僕はあったんじゃないかなとずっと思っていたんです。だからこそ東京オリンピックに関してはちゃんと突っ込もうと思ったんじゃないかなっていう、まあ僕の見立てだったんですが。

実は、東京オリンピックの後、2、3ヶ月後に『ジャーナリズム』っていう雑誌があったんですけども、そこで信濃毎日新聞の論説主幹が寄稿していて、じゃあなぜ私たちは東京オリンピック中止を求める社説を掲載したのかっていう、ちゃんと自分たちの意見を書いてたんです。

するとこんなことを書いているんです。「私たちは長野五輪の影を県民に十分に伝えられたのか、今でも忸怩(じくじ)たる思いを引きずっている」。

つまり招致段階で、IOC委員らへの接待疑惑ですよね。招致委員会の帳簿が焼却される隠蔽があっても、追及しきれず検証できなかった。だからそれを自分はずっとこう思っていて。

じゃあ今回の東京オリンピックに関しては、やっぱり大手紙がスポンサーになることに言論機関としての躊躇いはなかったのか。言わなければならないことが言えなくなるのではというのを、ずっと今度は突っ込み側に回ったんです。

だからこれ、ただ突っ込んでいるだけじゃなくて、今風の言葉であえて言うと、じゃあ昨日より今日変わろうよっていう、アップデートみたいなのを、おじさん新聞の中でもしているところもあるんだなと、僕は思ったんですよね。

それはやっぱりみんなに必要なんじゃないっていうのは。新聞だけじゃなくてね。やっぱり今日生きるおじさん、おばさん、じゃあ昨日までそうだったんだからいいじゃねえかってごまかすよりは、でも今日ぐらいから変わっていったほうがいいんじゃないかなって。向き合うっていう。

だからあの信濃毎日新聞は、東京オリンピックでは舌鋒するどい「これどうしたんだ」「スポンサーが入っていて言えること言えないんじゃないか」っていうのを全国紙、一般紙に突きつけていたっていう、そういう時系列があるんですよね。

「お家芸」と喜ぶ報道側、ピンとこない選手側のズレが示すもの

武田:まあ今回ミラノオリンピックでメダル冬季最多24個ということでいろんな盛り上がりを見せてる中、また橋本聖子さんが札幌オリンピック招致に対して、ちょっと前のめりになってるっていうところがね。一度、もう見送ったわけですけど。

まあ、橋本聖子さんにとってみたら、東京オリンピックが無観客になったから、あれは完全な形ではなかったから、「まだやるの?」っていうね。

鹿島:もう1回。でもそういう気運ってまた醸成されてくる可能性もありますよね。

武田:あります。それはでもね、東京オリンピックってやっぱりね、こう候補地としてもなかなかどこでもここでもできるっていうものでもないから。

鹿島:もう環境的な問題で、雪も少なくなるし。まず立候補する都市自体がやっぱりお金もかかるし、住民の反対もあるからっていうので、手を挙げるところが少なくなってきているっていうのもあるんですよね。

武田:まあでも今回やっぱりスノーボードの選手もそうだし、フィギュアスケートもそうだけれども、まあ選手たちがなんかその別に国を背負ってやるということではない感じっていうのが滲み出てるのが良かったですよね、選手たちにね。

鹿島:そう。だから最初は若者受けのためにこういう新種目を競技に入れるんだろう、まあ実際そういう狙いもあったらしいんですよ、IOCには。

ただ期せずして入れてみたら、むしろ従来からのオリンピック観を若者の競技が率先して変えてくれるっていう、まあこれはいい効果なんだろうなと僕は思うんですよね。

武田:なんかこう国を背負ってね、あんまり成績が出なかった時に「申し訳ありませんでした」みたいなことを、そんなに別に言う必要もないんだけど。言う選手もいなかったっていう感じは良かったですよね。

鹿島:ただ、新聞報道によっては、スノボが新しいお家芸になりましたよみなさん、って張り切って書いているところもあるという。勝手に。

武田:勝手に「お家芸」っていう言葉もすごいよね。

鹿島:彼ら彼女はピンとこないと思うんですけどね。「お家芸?」「私たち?」みたいな。

武田:そうね。まあそこは本当に実際のプレーヤーと、それを伝える側の「差」というのが、またどこかに残るんでしょうかね。

鹿島:もちろん新聞の中には、気づいている新聞もあるっていう。 ああ、なんか「価値観壊されたな」っていうね。 

西村:勝手に背負わされちゃうっていうのが大変ですよね、アスリートのみなさんもね。

鹿島:ね。「メダルとっておめでとう」はいいじゃないですか。うん。

武田:そうね。でも、とりわけこのウィンタースポーツってなかなか、それこそスポンサーがつきにくかったりとか、どういうふうに自分たちを継続させていくかってことを考えた時に、やっぱりこの波を活かすっていうのは当然、選手たちにとっては大事なことなんでしょうけど。 

それが、いわゆるナショナリズム的なところと一緒にならないようにはしてほしいなと思いますけどね。

鹿島:それを報道がやっちゃうと、興奮しすぎた人がSNSでアスリートを中傷するとか、その延長線上にもあるっていうことは、やっぱりメディアは考えた方がいいと思いますよね。

西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ラジマガコラム『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』でした。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!