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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全8記事)

「高市鬱」に共感する人が知らない、脳内で起きていること 政権を叱り続けると“ドーパミンが出る”、臨床心理士が明かす処罰欲求の正体 [1/2]

【3行要約】
・高市政権の圧勝後、「高市鬱」という言葉が広まる一方、嫌悪の言葉による応酬が続いています。
・ 臨床心理士・村中直人氏によれば、叱る行為はドーパミンを分泌し依存・エスカレートを招くため、政治への怒りも同様の回路に乗っている可能性があります。
・ リベラル側は怒りや断罪ではなく、賃金・生活問題など具体的な議論を淡々と発信し、熟議の姿勢で政治をチェックすべきです。

「高市鬱」という言葉がネット上を飛び交っている

西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーの「ラジマガコラム」。水曜日は、勅使川原真衣さんの『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』。今日はどんなお話でしょうか?

勅使川原真衣氏(以下、勅使川原):今日は「あの人、変なんです」みたいなことって、日常的にあるじゃないですか。これとどう向き合ったらいいかというお話をしたいと思います。

武田砂鉄氏(以下、武田):はい。

勅使川原:いきなり思い立ったわけではありません。元ネタがあります。2月18日付の東京新聞「本音のコラム」というところに、「選挙後の症状」と題された文芸評論家の斎藤美奈子さんの記事があって、話題になっていました。

武田:はい。

勅使川原:ちょっと読ませていただきます。

「選挙後、『高市鬱』という言葉がネット上を飛び交っている。『あ、それ私』と思った人もいるのではないだろうか。仕事にも家事にも身が入らない。ニュースを見たくない。体調が悪い。ため息が出る。何をしてても気が滅入る。周辺に『いいよね、高市さん』とか言う人がいるともう最悪である。どこがいいの? だってなんかやってくれそうじゃん。なんかて何よ? そりゃわかんないけど。わかんないのに支持するんかい。非支持者には地獄。メンタルもやられます」というふうな記事がありました。

武田:はい。

勅使川原:記事の後半では冷静にデータを見ながらですね、有権者全体に対する絶対得票率で言えば、自民でも小選挙区で27%程度だったと。

「支持率で見ると7割とか6割後半とか聞くと、みんなそうなのって感じするけど違うよ」という話だったり、最新の朝日新聞の世論調査を受けて、自民党が3分の2を超える議席を得たというのは「多すぎるよね」と思うと回答した人の割合が、62%だったということも書いてあるんですね。

武田:うん。

勅使川原:「言わんこっちゃないけど圧勝したし、どうこの心を保ったらいいの」という気持ちはわからんでもないです。それを「鬱」と言いたくなるのもわかります。ただ今日は、もう一歩踏み込んで考えたいなと思っているんですね。

武田:はい。

勅使川原:斎藤さんはコラムの最後にこう書いていました。「あなたが変なわけではないってことだ」と。我々が変じゃないのよと言ったとき、「じゃあ誰が変なの?」という感じに暗になりますじゃないですか。

武田:あー、ね。

勅使川原:今やるべきことは「変なのはどっちなのか」とか、「誰がまともなのか」という言い争いなのかなというのは少し疑問に思いました。

一党独裁にけっこう近づいちゃっていますので、この国の民主主義をどう取り戻すのか。それを考えると「高市鬱」ということは、あまり得策じゃないのかなというふうに思っています。

「変なのはあっちだ」という言い争いを、今やるべきなのか

勅使川原:すでに「高市鬱」という言葉に対して批判はないわけじゃない、ありますよね。「精神疾患への差別だ」みたいな声もありますけども、それはちょっと的を射てない部分もあるのかなと思っていて。

これって誰かに対して「あなた高市鬱でしょ」と言っているわけではないんですよね。本人が自称している。自分の落ち込みを比喩化しているということなので、そこが悩ましいんですけども。

ただやっぱり高市鬱に問題があるとすると、私が思うのはですね、こないだの選挙戦って「気持ち悪い」とか「あの人嫌い」とか「グロい」とか「頭おかしい」とか「頭悪い」とか言っても仕方ないよということを学んだんじゃなかったでしたっけ、という気がするんです。

武田:なるほどね。

勅使川原:もちろんおかしなことは起きているんですけど、それを嫌悪の言葉に回収させても世論を動かせなかったというのが学びなので、どうしましょうね、というのを今日考えたいんですね。

事実じゃもちろんないんですけども、「リベラルは悪口ばかり」という話を先週のコラムでもお届けしました。「批判、悪口と呼ぶ社会、いよいよやばいよ」というのも先週お伝えしていて、私も危機感はあります。

危機感はあるけど、私たちが高市政権の暴力性に嫌悪の言葉で応酬し続けること、これでいいのかというのは、ちょっと皆さんに問いたいなと思うんですね。

武田:うん。

勅使川原:いや、それか、もしかしたらなんですけども、もうそんなことは薄々リベラルの皆さんもわかっていて、もしかしてやめられなくなっているのかな。依存という話もあるのかなと思い始めたんですね。

そのきっかけが、実は先週の金曜日に私のほうでありました。『叱る依存が止まらない』ほか、著書がたくさんある臨床心理士で公認心理師の村中直人さんと対談をしました。

武田:はいはい。

勅使川原:村中さんの著書でも対談の場でもおっしゃっていましたが、「叱る」、つまり怒りを相手にぶつけて相手をコントロールしようとする行為、これは叱っている側の報酬系を刺激するんだと。叱ると脳内で我々の中でドーパミンが出るんですよね。

武田:うん。

叱るとドーパミンが出る、臨床心理士が明かす「処罰欲求」の正体

勅使川原:なので自分が優位に立ったような感覚だったり、「自分が正しい側にいるんだ」という安心感だったり。村中先生がおっしゃっていたのは「処罰欲求」という言葉でおっしゃっていて。

これなんか一部の悪人だけがあるわけじゃなくて、私たち人間の性(さが)として、何か違うことをやっている人を見つけると、笛をピピッと吹きたくなるような処罰の欲求というのは誰でもあるんですって。なので、叱っているうちに「正義の執行者」に自分がなれた感じがして快感なんだと。

「だからやめられない」というお話をされているのを聞いて、「あれ、これ、もちろん村中先生は親子関係とか学校の先生と生徒のお話をされていたと思うんですけども、これ政治への怒りもちょっと近しい回路に乗っているんじゃないかな」という気がしたんですよね。

武田:うん。

勅使川原:間違っても「怒りを持つな」とは私も申し上げません。私も怒っています。ただ知っておきたいのは、これも村中さんがおっしゃっていたことなんですけども、叱るというのはやめられないばかりか、エスカレートしていくという性質があると。

刺激に対して私たちには「馴化(じゅんか)」という機能がありますので、慣れる化ですね。慣れちゃう。そうするとより強い刺激を与えないと懲らしめないといけないとなるわけですよね。

そうするとより鋭い言葉であったりとか、より痛烈な断罪をしてみたり、反論を一切許さない断定的な物言い、そういう強い言葉に頼りすぎてしまうきらいがある、ということをお話しされていたんですね。

武田:うん。

勅使川原:政治も私たちも批判したいことがいっぱいあるし、事実としておかしなことがいっぱい起きているので、それはすごくわかるんですけども、ここでやっぱり考えたいのは有権者の余力、国民の余力なのかなと思っています。

先々週だったと思いますけども、私、「一億総疲労困憊社会なんじゃないか」というのを選挙戦の結果と絡めてお話ししました。

もう「あれがだめ、これもだめ、どうなっているんだ」と指摘するのはもっともなんですけども、もう皆さん本当にお疲れなので、意思決定コストをかけずに勝ち馬に乗ることをよしとする「チョイパ社会」になりましたね。

武田:チョイパか。

勅使川原:そう、ちょいとパーマじゃないほうですね、チョイスパフォーマンスでございますね。

チョイパ社会では、結局「責任ある積極財政」とか言って、訳わかんないんですけど、作り笑いしておいたら勝っちゃったわけですよね。そこに持ち込まれてしまったという事実、もういい加減に懲りないといけないんじゃないかなという気がします。

だってそうこうしている間に、2月10日付の日経新聞の記事にもありましたけども、「市場が唯一の野党になる」という指摘がありました。

武田:市場が唯一の野党になる。

勅使川原:そうなんです。もう冒頭のニュースじゃないですけど、議論とか討論、はっきり言ってしていないので。何を言っても「コメントは控える」とか「答弁控える」とかになっちゃっているので、民主主義、議論が弱まっていると。

そうなるともう生活の調整弁、例えば物価高とか実質賃金の話とか、これもう市場に委ねられちゃっていますよね。怒りが込み上げるのは、それに対しても無理はないんですけども、怒っている間にも生活は揺れ続けているということ、これ大事なんじゃないかなと思います。

武田:うん。

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