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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全8記事)

「高市鬱」に共感する人が知らない、脳内で起きていること 政権を叱り続けると“ドーパミンが出る”、臨床心理士が明かす処罰欲求の正体 [2/2]

「市場が唯一の野党になる」、政治が国民の生活から目を背ける時

勅使川原:高市さんはじめ、希望の話をするのは、財源がいらないので簡単なんですよ。だけどやっぱり問題は目の前の絶望だと思います。目の前の絶望は私たち国民の生活です。

政治家でぶっちゃけ困窮している人いますか?生存者バイアスもかなり強いものがあると思います。「今の俺たち私たちがいるのは自分の努力と才能のおかげだ」とおおよそ思っていらっしゃるんじゃないでしょうか。

だけどそれは社会のほんの一部ですよね。生活に絶望している人もいらっしゃいます。それでも施政方針演説でも生活に関する言及は、本当に乏しかったですよね。

武田:うん。

勅使川原:なので今リベラルも「新旧」言われていますけども、新旧リベラルも怒りとか説教、叱る以外の形で生活をどう変えうるのかにフォーカスして、議論を淡々と発信すべきなんじゃないかなと思います。

特にこれからは春闘がありますし、賃金の話であるとか、ちょうど先週も扱いました裁量労働制の話、このあたりは生活に直結しますので、よきテーマになると思います。しっかり議論してほしいなと思います。

武田:うん。これだけの圧勝をする。でも当然その圧勝した側というのは、自分に対して賛同しているわけではない人たちの生活というのも当然考えなくちゃいけない。これはもう政治の原理原則なわけですけれども。どうもそういう感じがないわけですよね、今始まっているところを見ると。

それに対しては本当に怒る、叱るということではなくて、「なぜそうなっているんですか」ということを淡々と指摘していくことが非常に重要で。

高市政権になる前の、いろいろと自民党と金の問題というのも宙ぶらりんになっているわけなので、そこを指摘していくことは、怒るとか怒鳴り散らすとかということではないやり方というのは、たくさんあると思いますけどもね。

勅使川原:本当にそうですね。だから「高市鬱」なんて言ってしまうと、どう考えても突っ込まれやすくなるわけだから、「それひどい」ってなるので、そういう不用意なことはあまり言わなくていいのかななんて思います。

そういうことを思ったきっかけのもう一つとして、私、朝日新聞の「悩みのるつぼ」が好きなんですよね。

大御所が多いですけども、美輪明宏さんとか上野千鶴子さんとか回答者にいらっしゃいますが、友人の文筆家の清田隆之さんの回答って、もちろん大御所感がぜんぜんなく、思慮深く書いていらっしゃるので、すごく勉強になるんですよね。

ちょうど先週の金曜だったかな。30代女性からのお悩みで、結婚されているパートナーとそのご家族、義理のお母さんが「変なんです」という訴えのお便りだったんですよ。

武田:ええ。

「悩みのるつぼ」が映す、相手を矯正しようとする思考の限界

勅使川原:ちょっと大事なので一部読みます。

「普通に幸せな家庭で育った私には、彼のお金や母親に対する考え方、義母の思考は理解不能なことばかりで、とても苦しい日々を過ごしています。彼の思考の歪みは異常と感じます。家庭環境もとても悪かったようです。彼はアダルトチルドレンだったのではないかとの考えに至りました。彼は今後も仲良く暮らしたいと言っていますが、私は彼が歪んだ思考を認識し、改善するためにカウンセリングを受けるなどしてくれないと、一緒に暮らせないと思っています」と。

切実なお悩みなんだなというのはすごくわかるんですけども。これに対して清田隆之さんは、こういうふうに一部回答されていました。

「簡単には理解できないはずの人のいろんな考え、それらを『歪んだ思考』と片付けてしまうのは、やや暴力的な発想だと感じます。アダルトチルドレン的な傾向は改善すべき欠点ではなく、彼という人間を形作ってきた諸要素の一部です。またそれらは個人の性格や資質というより、関係性の中で引き出されるものでもある。もしカウンセリングに通うなら夫婦で受けるべきだろうし、相談者さんも自分を『普通』というポジションに置かず、同じ地平に立って相互理解を深めていく姿勢が求められる」と。

うーん、これなんか考えさせられました。

武田:なるほどね。

勅使川原:今回は夫婦とか家族という話でしたけども、政治もあながち同じ回路に乗っているんじゃないのかなという気がしたんですよ。

「まともなのはどっちか」「私が普通で相手がおかしいんだ、変だ」とやっていても、やっぱり現実は動かないですよね、家庭問題にしても。相談者さんのおつらいお気持ちというのはお察ししますけども、相手だけを矯正しようという話ではなくて、関係性を実は調整しなきゃいけないんですよね、こういうときは。

今、政治にも熟議が必要って言いますけども、熟議って何ですかね? 何だと思います?

武田:うん。まあ熟議というのは、相手がこういうふうに言っている、自分はこういうふうに考えている、どっちかがバトルみたいにして「どっちが勝ちます」ということではなくて、間に集まりながらどこをどうしていくか、どっかを譲り合いながら意見を形成していくという行為ですよね。

今は何かこう、「どっちの刀が鋭いか」みたいなことになって、そういう勝負みたいになってしまっているから、それはまた熟議とは非常に遠ざかることですよね。

勅使川原:おっしゃるとおりですよね。熟議を一部「わかり合う」、完全に意見が統一されるみたいなイメージで思っていらっしゃる方もいるような気がするんですけども、そうじゃないですよね。

どこまでいっても多分私たちはすべからく違う人間なので、「わかり合う、完全に」というのは難しいと思います。ただ「わかり合えない」ことを前提にして、どうやって違いを認めたまま方針としてまとめていくかということが、政治上の熟議だと思うんですよね。

「熟議」とは、わかり合うことではなく違いを認めたまま方針をまとめること

武田:ただ注意しなくてはいけないのは、高市さんのこの間の施政方針演説なんかを見ていると、「私たちはいろいろな党の意見を聞いていきます」と。まさにその「熟議をする」というふうというか、そういう体裁みたいのだけは整えて、実際その蓋を開けてみると、かなり自分たちの意見をそのまま突き通そうとしている。

その民主主義のこれまでの仕組みを生かしながら、どうも中身は、やり方を変えていくんじゃないかみたいな、そこはやっぱり見ていかなくちゃいけない。そこには多分非常に強い批判も必要だろうし、厳しくチェックしていく必要というのは今すごく問われていると思います。

さっきのニュースであったようなギフト券配ってました、カタログ配布してましたみたいなところを、かなり「いやそんなことどうでもいいじゃないか」というふうに小さく見るという動きも、かなり出てくるのでしょうけども。

武田:でもそれってやっぱり、まさに今、勅使川原さんの言ったような、きちっと議論するとか対話をするとか、透明性を高めるとか、そういったところにもすごくつながってくる問題だと思うんですよね。

勅使川原:おっしゃるとおりですね。あの「国民会議」も謎じゃないですか。あれってどういうことなのと思う一方で、有識者とかを入れてと言っていますけども、熟議にあたってはこの有識者というのが自分寄りの人ばっかりを入れてたら意味ないわけですよね。

有識者ないしはいろんな関係者を集めて会議したいんであれば、違いのある人を入れないとこれは民主主義にならないので。有識者会議と聞くと「誰が本当に出ているのかな」と、いつも見るようにしているんですけども、これも注視したいなと思っています。

武田:「高市鬱」というこの表現自体がどうだったのかというのはありますけれども、この高市政権、ここまで圧勝することによって、これまで例えば自分たちが訴えてきたこと、例えば選択的夫婦別姓「もういよいよ導入してくださいよ」というようなことを訴えてきた人たちが、「いやこれもうなしよ」みたいなことになってしまう。

「これまで自分たちが言ってきたことは何だったんだろうか、考えてきたことは何だったんだろうか」というのが塞がれてしまったというふうに思われる方たちの、その鬱というよりも鬱々とした気持ちというのがいろいろなところで生じているというのは確かだと思いますけどもね。

本来であれば、先ほども言ったようにどんな政治体制であっても、そういったいろいろな人たちの声を拾っていくというのが政治の前提、基準になるわけなので。それをしようとしない政治体制であるとしたらば、その鬱々とした気持ちというのが膨らんでしまうというのは、わからんでもないですけどもね。

勅使川原:そうですね。ただ暴挙に暴挙で応酬してても始まらないって部分もあるので、議論の仕方、工夫が必要かなと思います。私たちも注視したいと思います。

西村:このコーナーはポッドキャスト「PodcastQR」でも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム、『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』でした。

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