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木村草太の「今朝の一手」(全5記事)

トランプが指名した保守派判事2名も「違法」と認定した関税判決 「最高裁が憲法への忠誠を捨てた」と激怒する大統領と三権分立の行方 [1/2]

【3行要約】
・藤井棋王の豪快な「5五玉」が将棋界を驚かせたが、ルールを守る重要性も問われています。
・ 憲法学者の木村草太氏は、トランプ大統領の関税政策を米連邦最高裁が6対3で違憲・違法と判断したと解説しています。
・ 三権分立を守るのは法律家だけでなく世論も重要であり、市民一人ひとりが司法を支える意識を持つべきです。

将棋ファン驚愕の「5五玉」 王将がど真ん中へ飛び出した

西村志野氏(以下、西村): ここからは前半レギュラーのラジマガコラム。火曜日は木村草太さんの『木村草太の「今朝の一手」』です。今日はどんなお話でしょうか。

木村草太氏(以下、木村):今朝の一手は、藤井棋王対増田康宏選手の第51期棋王戦、2月21日の第2局から。将棋ファンの間では「もうこの手だろう」と決まっていた一手だと思いますが、88手目「5五玉」でございます。

武田砂鉄氏(以下、武田):はい。

木村:思わず見た瞬間「そんな馬鹿な」と声が出てしまう一手ですが、将棋のわかる方はわかると思います。そもそも「5五玉」という棋譜が出てくること自体、非常に稀なんですね。将棋のフィールドは9×9の81マスで、5五はそのど真ん中に王将が飛び出す手です。

他のスポーツで例えますと、サッカーで言えばゴールキーパーがフィールドのど真ん中に飛び出す。野球で言うと、キャッチャーがセカンドフライを取りに走るといった、そんな手であります。

武田:これはなかなか危ないですね。

木村:危ないです。この対局では藤井棋王の王将が自ら戦場のど真ん中に切り込みまして、バッタバッタと相手の兵士を斬り伏せて、最後はお城に戻っていくという、まるで暴れん坊将軍のような展開となりました。

武田:じゃあ、ちゃんと無事に戻れたんですか?

木村:無事に戻りました。

武田:なかなかキーパーが真ん中にコーナーキックで出て行って戻れずに失点するという、ちょっと珍奇な場面がありますけど、気持ちはわかるんですけどね。

木村:ちゃんと読みに読んで、「これはこうしないと勝てない」、逆に言えば「きちんと受けられる」ということで、中央まで突破してまたお城に戻っていく展開でした。

西村:豪快ですね。

木村:豪快でした。藤井棋王は今年に入ってタイトル戦ではやや不調と言われていたんですが、2つ3つ負けたところで不調と言われるのもいかがなものかと思いますけど、タイトル戦では苦戦が続いていました。しかし、すばらしい一局で王者の力を見せつけました。

暴れん坊将軍から最高裁へ 「関税は違法・違憲」の衝撃判決

木村:最終防衛ラインを守る選手がど真ん中まで切り込んだと言えば、アメリカ三権分立の最終防衛ライン、連邦最高裁判所がトランプ大統領のむちゃくちゃな関税政策を違法・違憲とした2月20日の判決を紹介したいと思います。

武田:ここにつながってくるわけですね。

木村:アメリカには連邦法と州法がありまして、連邦法の最高裁をやっているのが連邦最高裁という裁判所になります。

よく言われますように、アメリカ連邦最高裁判事というのは、共和党大統領に指名された保守派判事、それから民主党大統領に指名されたリベラル派判事がいます。現在は保守6、リベラル3で、かなりトランプ大統領有利の土俵になっていると言われています。

今回の判決は、トランプ大統領自身に指名された2名の判事も、関税を違法・違憲とする判断に加わりまして、6対3で違憲・違法という判断が出ました。

判決のポイントは2つあります。まず第1に、判決は関税のような重要問題は連邦議会できちんと話し合って決めるべきだ、という連邦憲法の原則を確認します。

それに続き、第2点のポイントとして、今回の争点ですが、緊急時に輸入をレギュレート(規制)する権限を与えた1977年の国際緊急経済権限法があります。大統領に輸入をレギュレートする権限を与えていたわけですが、このレギュレートという文言の中に関税が入っているのか、ここがポイントになったわけです。

武田:ふむ。

木村:多数派の裁判官たちは、レギュレートという文言の中には関税は含まれないとして、大統領側の主張を退けました。

重要問題を勝手に大統領が決めてはいけないという法理は、保守的な最高裁がバイデン大統領の政策を止めるために使われてきた側面もある法理なんですけど、今回の判決は法は誰に対しても平等に適用されるという法の支配の理念を見事に示した格好となっております。

今回、権威主義的な大統領の横暴を止めるために最高裁が前面に出てきたわけですけれど、日本の法律家たちも勇気ある藤井棋王の5五玉のような飛び出しに、法の支配の重要性を改めて感じ取っているのではないかと思われる話でした。

「最高裁が忠誠を捨てた」 トランプの猛反発と関税の本質

武田:アメリカの最高裁判事がもう保守6、リベラル3だから、トランプ大統領の方向性に従うんじゃないかと、言われたこともありますけれど。

今回はこの保守とされる、トランプ側に指名された2名も「これはもう関税は違法だ、違憲だ」という判断に加わって、それに対してトランプ氏がかなり罵るような言葉というか、いつもの流れと言えばいつもの流れなんですけれど、トランプにとって見たらやっぱり非常に憤慨している状況でありますよね。

木村:トランプ大統領は「最高裁が憲法への忠誠を捨てた」とかそういうことをおっしゃっていまして。トランプさんには言われたくない、というセリフだとは思いますけど。

武田:そうですよね。「あなたこそ」と皆さんが思ったと思いますけれどね。トランプ氏はまた別の方法で関税をかけていくことに切り替えようとしていますね。

木村:「150日間限定でそういうことができるかもしれない」みたいな法律を使うことを検討しているそうですが、それはそれでまた限界があるでしょうし、やはりこれはきちんと議会を通してやっていくべき話であったということかと思います。

どうも関税というものが輸出、アメリカから見ると輸入ですが、その業者さんというか、輸出元が払うようなものというイメージがあるようなんですけれど、関税というのは入れる時にかかるお金で、その分が消費者に掛かってくる税金なので。

結局、消費者に税金をかけているのと一緒ですので、そこはやはりきちんとアメリカの消費者の代表、すなわち連邦議会が決めなくてはいけない問題でしょうというお話ですね。

武田:でもトランプは一度自分が決断したことに対して反省はしないというか、必ず自分がやったことは良かったことなんだと言い切り続けてきたわけですから。

こういう判断が出た時にどうやって自分の正当性を主張するのかというのは、強引な手口になるんでしょうけど、「さらなる強引さでやるべきだった」とか「今から別の方法でやっていく」というふうに、自分を肯定する術だけは持っている感じがありますものね。

木村:そうですね。

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