自分に厳しいことを言える人を選べ 良いリーガルアドバイスの条件
木村:やはりどういう法律家のアドバイスを受けるかというところが重要でして。これはきちんと裁判所でも勝てるようなアドバイスを受けないといけないと思います。
法律ってそういうもので、安保法制の時も日本であったんですけれど、自分の都合のいいことを言ってくれる人を探してきてそのとおりにやるというものではないですよね。
会計とかもそうですけど、ちゃんとルールがあって、ルールに当てはまっているかをきちんとアドバイスしてくれるのが良い法律家であったり、良い会計士であったり、良い税理士さんであったりしますので。
やはり自分に厳しいことも言ってくれる人をきちんと選ぶのがリーガルアドバイスの基本かと思います。
武田:そういう意味では、きちっと正しい判断が下されたということにはなるわけでしょうかね、法律の。
木村:ここはそうだと思いますね。やはり保守派の判事もさすがに、かなり保守的な判決に参加していた裁判官も今回はダメと言っていますから、やはりアメリカ法の解釈としてかなり無理のあることをやっておられたということだろうと思います。
武田:この1年間ずっとトランプはこの関税というのを武器にいろいろな対外交渉を進めてきた、強引な交渉を進めてきた。
日本側は、関税をこれ以上上げさせないためにも対米投資をするということを決めてきたわけですけれども。これは来月かな、高市さんが日米首脳会談を行うということになりますけれど、これはやっぱり日米間の関係というのも変わってきますよね、これによってね。
木村:第一義的にはアメリカ国内のことですが、首相としては、この後政策をどうするのかということは、聞かなくてはいけないということになりますよね。
武田:非常に難しい判断を強いられるとは思いますが。でも本当にトランプの横暴をどうやって止めるのか、一応止めることができたのかなと。この勇気ある、何でしたっけ今回の。
木村:飛び出しというかですね。
武田:飛び出し。
木村:勇気はいると思うんですよ。法律は法律ですけれども、一方でやはり大統領の、しかもあんまり重要でない政策とかではなくて、看板政策に無効を突きつけるわけですから、かなり裁判官としては緊張したのではないかなと思います。
またやっぱりこのまま、この話終わりではなくて、大統領府と裁判所の緊張感が高まると、大統領は司法を攻撃するようになったりするわけですよね。
三権分立を支えるのは国民の力 司法攻撃への備えと世論の重要性
木村:司法を攻撃するために例えば新しく裁判官を増やして、より保守的でより言うことを聞く人を裁判官に入れようとかいうことが画策されたことも過去にありますから。この後、三権分立をきちんと示したということをどこまで裁判所が守れるか、世論が守れるかというところも重要ですね。
なので、違憲判決とかが出る時、日本でもそうなんですけど、政権による司法への攻撃があり得るんだということも我々は理解しておく必要があって。画期的な判決、良い判決が出た時にちゃんと司法を支えることは、実は法律家だけじゃなくて世論についても重要だということですね。
武田:社会や公民の授業で真っ先に三権分立を習いますものね。三角の図表になっていて、どういう力関係というか、どうやって均衡を保つかというのは示されますけれど。
それって忘れがちですけれど、当然この社会を運営していく上では非常に大事なことだということが、こういうことが起きると改めて思いますものね。
木村:そうですね。三権分立、そして三権分立を支えているのは、実は国民の力なんだというところも重要ですね。
武田:藤井さんのこの手というのは、だいぶイレギュラーなことなんですか?
木村:かなり攻め込まれていて、本来お手本になるような指し方では当然ないんですけど。まあでも「こうするしかない」というところでど真ん中にやってきて、自ら受け止めたっていう感じですね。
この時5五に王様がいるんですけど、増田先生、先手の飛車は5九に下りまして、要するに飛車が攻めているど真ん中のところに、わざわざ王様が攻め入ったという手でしたね。
なので、現地で観戦されていたプロ棋士の方もちょっと叫び声が上がったような手ですし、観戦していた将棋ファンも見ていて楽しかったというか、藤井ファンの方はかなりヒヤヒヤした手ではないかと思いますけど。
武田:それは作戦なのか、動揺しちゃってるのか、どうしちゃったのかみたいな。
木村:完璧な作戦で。これはもうこうすれば守り切れるという計算があってやっていることですので。あまり真似してはいけないわけですけど。時にはこういう局面もあるという話ですね。
勝算あっての「勇気の飛び出し」 将棋もルールも守ることが大事
武田:よくボクシングの試合で挑発的にあえて構えずに、グローブを後ろにして「おいおい、打ってみろよ」と言ってそのまま殴られるやつとかいますけどね。
木村:それは単なる無謀な飛び出しですから(笑)。そこを見極めなくてはいけない。
西村:でもどんなシチュエーションの時に、こういう手を出すみたいなのがあるんですか?
木村:かなり攻め込まれていて、守り駒がどんどん削られていって、自分で守るしかなくなったという手ですね。先ほど野球の例で例えましたけれど、多分セカンドが転んで、ショートも転んで、ファーストに仕事があってみたいなそんな状況でキャッチャーが飛び出たみたいな、そんな感じでしょうね。
西村:かなりのピンチですね。
武田:でもそれでいて、キャッチャーがそのピンチの中でも捕球しに行くということなんですね。
西村:自分が行くしかないと。
木村:王将というのは取られたら負けの駒なんですけれども、なので守る対象なんですが、意外と攻めにも守りにも使えるということは時々言われるんですよね。
実際周りのマスどこにでも行けるというのはかなり強い動きをしている駒なので、効力的には高い駒なんですけど、取られたら負けなので、めったにこういうことはないという。しかし戦ってみると実は強い、上様のようなものであったということですね。
武田:まあでもトランプに将棋をさせたら、フィールドの外に出たりとか、ルールを変えて一番奥まで飛んだりとか、いろんな手を考え出しそうですけどね。
木村:そうですね。最初からポーンをクイーンにしておくぐらいのことはやるかもしれませんね。
武田:いろんな手がありますけどもね。将棋もルールを守ってほしいですし、国際社会というのもきちっとルール、慣例を守るというのは大事ですね。
木村:私ひとつ謝らなくてはいけないことがありまして、前回このコラムで糸谷哲郎さんのことを「九段」と紹介してしまったんですが、正しくは「八段」でした。段位の間違いを訂正する。時には間違いを正すことも重要ではないかと思います。
武田:なるほどね。
西村:このコーナーは「PodcastQR」でも配信しています。ラジマガコラム『木村草太の「今朝の一手」』でした。