ブログ削除が問いかける政治家の言葉 「保守」の看板と矛盾
武田:政治家が何かがあったときにXで発信したり、「詳しくはブログで書きます」と言ったりする人もたくさんいます。SNSで書かれることやブログで書かれることは、当然ながら政治家の貴重な発信源になっています。
このブログが削除されたことが話題になったとき、高市さんを熱烈に支持する人たちの声としては「そうやって昔のことに遡って、細かく追及するやつがいるからなんだよ」というものでした。
でも、これだけ強大な権限を持った人たちは、昔こういうことを言っていましたけれどどうですかと問われることは必ずあります。そのベースの記事がなくなってしまうと追及ができなくなりますね。
鹿島:削除という方法は、都合が悪いものは削除する、隠すということです。政治家とは言葉を武器にする人じゃないですか。衆議院議員なんて代議士、代わりに議論する人と言われているから、国会で何らかの議論をした結果、自説が変わる可能性もあります。変わっていいと思います。
変わるのだったら「私は今までこう思っていましたが、こういう考えに変わりました」と有権者に説明すればいいのです。むしろいいのです。ところが今回、もしこのプレジデントオンラインのコラムが書かれたから消費税減税に関するものを削除していたとしたら、それを拒否することになっています。
高市さんは「保守的政治家」と言いますが、保守の政治家とは過去の自分があって今があるわけですから、自分の言葉は大切にするはずです。
武田:信念をどこに置くのだ、ということですよね。
鹿島:保守政治家でもないですよね、過去を全部隠して否定するのですから。この消費税減税について問われているから過去のものをもし削除したのだとしたら、かなり悪い手ですし、政治家とは何かがわかっていないのかなと思います。
武田:削除されると、プチ鹿島や武田砂鉄みたいなやつは前向きになります。
鹿島:余計に探し回ります。このライターさんがやったように、過去の文献を洗い直すのはすばらしいです。本人がこう書いていたというのは、何よりの考えですから。何度も言いますが、意見は変わっていいのです。
武田:石破(茂)さんが首相になったときも、石破さんは鉄道好きだからリニアモーターカー建設には反対、みたいなことをブログに書いていて。首相になると、どうしてもそれを強く主張できるわけではなくなるから、このあたりをどう考えるかということをコラムに書いたことがありました。
それは昔言っていたからどうなのだということではなく、今それを踏まえた上でどう考えますかということは、これまでいろいろ議論されてきたことだと思います。それを塞いでしまうのは「逃げません」と言っているけれど、ものすごく逃げています。
「変わるなら説明すればいい」 圧倒的議席と他責の連鎖が招く危機
鹿島:自分の政治活動もなかったことになってしまいます。蓄積があって今の言論になるのですから。意見が変わるのだったら過去のブログを引用して「今はこう思いました」と言えばいいのです。
消費税減税論議なんて、財源をどうするのだという話もあるわけですから。過去の高市さんが言っていることもそうだよねと思う人だって、むしろ出てくるかもしれません。
これを国会などでも指摘してほしいのですが、野党が質問するとまた「悪口はやめろ」と大合唱が起きる可能性もあります。メディアも野党も、腰が引けて質問しない、確認しないということはやめてほしいです。
武田:今回これだけ大勝すると、各委員会の委員長も自民党から出したい。野党に譲ったポストも少なくなったわけです。なるべく自分が厳しく追及されるような場面を少なくしようという運営をしていきますよね。
鹿島:スピード感を持って、というのが耳心地はいいかもしれませんが、それは拙速なのかもしれません。今回、予算も年度内に可決させるんだと言いますが、そもそも遅くなったのは解散をしたからです。それに賛成しない野党が云々となると、これも一種の他責です。
今までの高市さんの過去をおさらいして、これどうなのだろうと今並べてきました。これは別に野次馬的興味で言っているのではありません。我々日本に住んでいる人間にとっても、重要な問題なのですよ。
というのは、今後、国家の命運に関わるような状況が勃発したとき、首相側の危機対応がここまで杜撰で悪い手を駆使していくと、僕らの話にもなります。防衛費をいくら増額しても、肝心の首相が杜撰な自己防衛ぶりだったら元も子もありません。
都合が悪いことがあったら逃げる、隠す。でもそれってすぐに見つかってしまいます。今回のブログ削除問題も、なぜ周りが「すぐに見つかるからやめたほうがいいですよ」と言えないのか。
武田:さすがに「むしろ掘り起こされますよ」となりますもんね。
鹿島:(周りが)そう言えないのか、それとも自分で削除してしまったのか。ここが本当に大事だと思います。
武田:問われたときに、なぜ削除したのですかと聞かれたら、また別の理由を出してくるかもしれませんね。
鹿島:この事実とは向き合ったほうがいいと思うんですよね。国内でこれだけ杜撰な方法を、この数年間もやらかしている人が、これから国外でトランプ氏やプーチン氏、習近平氏らと渡り合えるのでしょうか。何かを突っ込まれたら隠す、という対応では、日本に住んでいる人たちの危機になります。
「国民会議」「スパイ防止法」 問われるメディアの覚悟
武田:ブログの削除なんてなかなかやりませんよね。
鹿島:見られなくなっている事実にしっかりと向き合ったほうがいいと思います。
武田:今は保存している人も多いですから、結局は見られるようになります。
鹿島:砂鉄さんをブロックしたら砂鉄さんが騒ぐのと同じで、むしろ悪い手なのですよ。それをやってしまうから、周りも注意しなくてはいけません。圧倒的な議席を得たわけですから、むしろ注視して「そこはぐっと堪えたほうがいいですよ」と進言すべきだと思います。
そうでなければ、これだけで本当に存亡の危機ですよ。
武田:消費税減税の議論も「国民会議で決めます」と言っています。ここ最近、いろいろな新聞記事が出ていますが、国民会議というのはどういう枠組みになるのでしょうか。国会では駄目なのでしょうか。そもそも国会ですべて決められるだろうと思いますけど。
国民会議にどういう人が選ばれるのか。どういうふうに運営していくのか。もし減税になった際も、後でうまくいかなかったときに「これはみんなで決めたことではないですか」と言えるようにしているのではないか。
鹿島:もしくは「決められなかったでしょう、残念」という話にもなります。
手法も注目です。一昨日の朝日新聞の一面に「スパイ防止法 夏にも議論 政府有識者会議設置へ」という記事が出ました。朝日のスクープという言い方もできます。
しかし、記事を読むと「複数の政府関係者によると」と書いてあります。政権が朝日新聞に書かせたという見方もできるわけです。こういうのは今まで読売(新聞)が得意だったのですが、今回は朝日でした。
既成事実を先にニュースで流して、ショックを和らげる手法がマスコミ発で行われる予兆なのかなと感じました。「スパイ防止法、えっ?」という感じですが、「夏に議論を開始します」とマスコミ経由で先に出させると、自分の言葉ではなく、ワンクッション置く手法がこれからも行われてくるのかなと感じました。
武田:マスコミ側が逆にどう対峙するか。本当に問われている局面ですね。
西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ラジマガコラム『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』でした。