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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全7記事)

「批判は悪口」論は、じつは権力側の秩序を守る“新手の論破術”だった 批判を封じるほど、職場と社会で「陰口」だけが静かに増えていく [2/2]

「センスが悪い」「私の感想です」 巧妙化する批判無効化の手法

勅使川原:最悪ですよね。批判を悪口と見なす社会は、陰口を増やすことになります。その陰口がどれくらい健全な社会の醸成に役立つかは一考に値すると思います。

武田:一見、すごく良い言葉やポジティブな言葉が溢れているけれども、剥がしたところや裏側ではジメジメしている。そうであれば、きちんと言うべきことはおかしいとおかしいと表で言えと。

勅使川原:表のほうが健全だと思います。物事は変わっていかないので、裏で言っても。まだあります。批判を悪口と呼ぶ社会の懸念ですが、こういう手法も出回りそうです。悪口を明確な悪い言葉で言わないケースです。「頭悪いよね」というのは、悪口だとすぐに言われるようになるとします。

こういうのはどうでしょうか。「趣味悪いよね」とか「センスないよね」論法です。

武田:グサッときますね(笑)。

勅使川原:実際に起き始めています。今回の衆院選の中盤以降にトレンド入りしたハッシュタグですが「#ママ戦場止めてくるわ」がありました。非常に話題になりました。若き論客たちがSNS上で「なんて悪趣味なハッシュタグなんだ」と言っていました。ある番組では「煽動だ」「戦争を煽動してどうするんだ」という言い方をされていました。

ぺこぱのシュウペイさんや松陰寺太勇さんらは、あるネット番組で語っていました。「選挙に行くという意味なら、選挙に行ってきますと言えばいいじゃないか」という発言もありました。これは批判への批判、すなわち悪口ではないかという気もします。

彼らはこう言うと思います。「これは悪口ではありません。センスの悪さを自分の感想として言及しているだけです」。この感想問題は、西村博之(ひろゆき)さんを思い出します。「それってあなたの感想ですよね」と言って論破していた時期がありました。その時代を思うと隔世の感があります。

論客自体が先に「これは私の感想なんです」と言って、相手の口を封じてしまう。批判を封じるという、批判の無効化バリエーションの進化系だと思っています。

あと、最近気になるのが、いろいろなことを言った後に最後に「自戒を込めて」とSNSで書けば、何でも相手を殴っていいと思っている人がいらっしゃる気がします。これも似たような感じかなと思うわけです。

武田:僕もよく思いますし、書いたこともありますが、批判するのは良くないと思うというもの自体が、なぜ批判ではないのかと本当によく思います。自分はこういう意見を持っています、そちらはこういう意見を持っていますということで、勅使川原さんの言う通り表に出た場所できちんと言い合えばいいと思うんですけどね。

勅使川原:批判していいはずですよね。

コトにフォーカスせよ トーンポリシングと「意地悪やなあ」という罠

勅使川原:では、どうしたらいいのか。批判の公共性をどう守るかという話をしてみます。基本的には、何が正しいかという話では拉致があかないと思います。相手には何が伝わり、何が伝わらなかったのか。これを考えて軌道修正を重ねていくことに尽きるのではないでしょうか。

正しさは人の数だけあるので、正義で議論はできません。何か問題提起したいときは、人となりや人格、正義の話にしないで、コトにフォーカスすることを訓練づけた方がいいと思います。議題をテーブルに置いて、感情抜きで一回議論することです。

私もけっこう言ってしまいますが「ちゃんと」とか「しっかり」話すとか「前向きに」とか。言っていそうでよくわからない曖昧な指標は、議論の際は避けた方がいいと思います。これだけでも批判の公共性は多少は増すのかなと思います。

ただ、ここで注意したいのが「言い方に気をつけよう系」の落とし込みです。これは雑で危険だと思います。

武田:よくありますね。

勅使川原:怒っている人に対して「もっと穏やかに言ってくれたらこちらも聞く耳持つのに」というもの。これは典型的なトーンポリシングという考え方ですよね。口調を理由に中身を退ける技法と紙一重になってきます。これではダメです。

思い出すのは2018年だったと思います。当時議員だった山尾志桜里さんが、待機児童問題の件で安倍晋三元首相と衆院予算委員会で質問していました。そのときに「いつまでに減らすんですか」という質問を何度もしました。

安倍さんは何をしたかというと「そんなに興奮しないでください」と言いました。場内は爆笑でした。麻生太郎さんが抜かれていましたけど、めちゃくちゃ笑っていました。これは結局、何が起きたかというと質問逃れをしただけなのです。

トーンポリシングは非常に危険です。冒頭の話ではないですが、感情は残るものです。感情は吐き出し口を持っておいた方がいいと思います。なくせないものなので。信頼できる方に話すのもいいですし、身近にいなければChatGPTでもいいじゃないですか。話を受け止めてくれます。黙って聞いてくれますね。

もっと人々には優しさをとか、思いやりがあれば違うのではないかという議論も出やすいです。そちらもあまり役に立ちにくいアドバイスです。特に優しさは非常に恣意的なものです。

2月10日の「リハック」という番組で、石丸伸二さんもすでに使っていました。開票速報のときに、爆笑問題の太田光さんが責任を問う質問をしました。それに対して、高市早苗さんが「意地悪やなあ」と答えました。

武田:あれは本当に、まさに勅使川原さんの今言っている返し方ですよね。

勅使川原:あれについて、さらに石丸さんがリハックという番組でこう言っていました。

「やろうとしているのにうまくいかなかったら責任取りますかと言われたらズレますよね。あれは僕も意地悪な聞き方するなと思いますよ。僕が言われたらめっちゃ仕返ししますけどね。今なんと仰いました?逆に質問しますけどって必ず殴り返しますけど。高市さんは優しいし真摯だから」。

武田:殴り返すんだ、石丸さんは。でも高市さんは優しいと。

勅使川原:優しいからできないみたいです。意地悪論は、批判と悪口くらい曖昧で雑な区分です。わかるようでわからない言葉を見つけたら、相槌を打つ前に「と言うと?」と。私もけっこう使うようにしています。わからないことは聞く。これは定石だと思います。わかった気にならないことです。

優しさを盾に批判を退けるような社会では、批判の場そのものが縮小していくはずです。現に非常に危険だなと思うのは、高市さんはすでに「野党の質問時間はそんなにいらない」と仰っています。これに困るのは批判された側の自民党ではありません。私たちであり、社会のほうだと思います。甘く見ないほうがいいですね。

揚げ足取りのすすめ 民主主義はもともと面倒くさい

武田:最近、揚げ足を取るという言葉は非常に悪く使われます。あえて言うならば、揚げ足って取る必要があると思うのです。日常会話でお前ああ言っただろうこう言っただろうということではありません。

それだけ政治家など、非常に大きな力を持っている人たちが何を言うのか。何を言わないのかというのは、こと細かにチェックしていくべきです。言葉尻を捉えるとか揚げ足を取ると今はすごく悪い言葉として使われますが、その言葉を細かく見ていったらどうでしょうか。

あの時はこういうことを言っていたのに、こういうことを言わなくなりましたよねとか。ここの表現はなぜ出てきたんでしょうねということを細かく捉えることは、すごく重要なことだと思います。それをせずに「言葉尻を捉えて、でもあの人は気合入ってるから」とか「優しい人だから」となって、その言葉が溶けていってしまう感じが、非常に心地悪い状況になっていると思います。

勅使川原:このラジオだけでも萎縮しないでやっていきたいなと思いますね。批判を悪口と呼び始めた社会が何を守っているのか。今一度お伝えすると、多数派や体制側の秩序です。権力者側の円滑さは守っているでしょう。その代わりに手放しているもの。これはまさに修正する力だと思います。

あるいは声なき声に耳を傾けることも、なかなかしにくいです。でもこれが、本来の政治の役割なんですよね。民主主義はあえて考えると、最初から面倒です。時間もかかりますし遅いです。先ほどの揚げ足ではありませんが、感じが悪く一瞬見えることも多々あるのが民主主義なのです。

なぜならば、すべからく私たちは違うからです。違いのある人というのは優劣の差じゃありません。まずもって違って生まれてきていますので。そういう違いのある人同士が一緒に生きるというのは、あまり美しくありません。美しい多様性は幻想的な話であって、楽ではありません。

揉めることもたくさんあります。揉めちゃいけないとなると、何もできなくなってしまいます。「悪口でしょう」と一蹴するのではなく、ぜひそこから先の議論を。

具体的には「どの違いを理不尽だと今感じているんですか」ということをちゃんと問う。あるいは「どの点について、あなた様は一方的に割りを食っているような気分になっているんですか」というのは、福祉を考える上では基本的な質問になると思います。

わからない表現であれば「と言うと?すみません、ちょっとわからなかったんですけど」と返せる。このほうがよっぽど健全な社会ではないでしょうか。

武田:これだけ圧倒的に選挙で勝利をして、これから国会が始まるときに。勅使川原さんの言ったこの悪口とか陰口という言い分が、どこまで侵入してくるか。「それは悪口じゃないですか」ということが、意地悪やなで返したわけだからね。

そういうことが国の中心まで入り込んでくると、そこでのコミュニケーションの質が気になっちゃう。それを世論が支援するんだとしたら、どうなるかなと思ってしまいますね。

勅使川原:東大の教育学系研究科の先輩の、二瓶(美里)さんという教授が朝日新聞の記事を出していました。若者が最近はルールを守るべきであるとか、大きな権力には従うべきだという意識調査結果が出ている。ゆえにこの自民大勝につながったのではないかと書いていらっしゃいました。

私の中ではまったくつながらないのです。ルールを守っていなかったのは誰ですか。

武田:そうですよね。ルールを守っていなかったからこそ、大変な目に遭って選挙を繰り返したりすることになったわけです。

勅使川原:それを指摘したら、悪口と言われてしまうのが現在地かなと思います。

西村:このコーナーはポッドキャスト「PodcastQR」でも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム、『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』でした。

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