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記子の気になる日本のほぉ~(全4記事)

「引っ越し」をしただけで選挙権が消える 公職選挙法の“制度バグ”を10年放置した国に、司法修習生が慰謝料を求めた理由 [2/2]

司法修習のための引っ越しが招いた、原告・井上さんの悔しさ

三輪:今回の原告の井上さんの陳述書にも書いてあるのですが、どうして引っ越しすることになったのかというと、港区に住んでいたんだけれども、司法修習ってしばらく和光(市)なんですよ。ちょっとだけ和光で修習があって、和光に通うためには、その時住んでいた港区のところよりも要町のほうが近いしアクセスもいいからと。

更新料を払ってまで港区の部屋に住み続けるんじゃなくて、ちょっとの間だからマンスリーマンションに引っ越したんですよと。

そのマンスリーマンションに住む時期も短くて、その短い原因というのは、その後実務修習があって、それは京都なんです。だから彼女はその後、京都に転居するのです。

だけど京都に転居しても、まだその3ヶ月の要件を満たさないから、どこにも選挙人名簿に登録されていないことが生じてしまったということなのです。彼女が悪いわけじゃないんですよ、はっきり言って。

武田:和光に通うために要町のマンスリーマンションなんて、こんな生活感のある話はないですよ、これね。

三輪:そうなんです。本当に必要に迫られた話だし、そういうことが書いてあって。この陳述書に「2025年7月頃の思い」ということが書かれているのですが。

「選挙に参加したくてもできないという、生まれて初めての事態に直面し、制度設計に対して強い疑問を抱きました。選挙の存在を念頭に置いて住民票の移転を行っていたにもかかわらず、結果として選挙に参加できなかったことに納得しがたい思いを抱きました。そもそも参議院議員選挙のうち比例代表選挙は、全国を単一の選挙区として行われるものであり、国内に継続して居住している限り、どこからでも投票できてしかるべきだと考えます。それにもかかわらず、国内で住所を移転したというだけで選挙権を行使できなくなる現行制度は、選挙の公正の確保に資するものとは言えず、この制度に納得できる理由を見出せません」

というふうに彼女は述べていて。

選管の「もう少し長く住んでいれば」という言葉が示す認識の欠如

三輪:さらに、これは法的な話ではないのですが、選管の対応というのも、これ私も同じこと言われたら傷つくなと思ったのですが。

「豊島区の選挙管理委員会からは、『今後は3ヶ月以上居住すれば投票できる』旨の説明を受けました。港区の選挙管理委員会からは、『井上さんのように忙しい方は難しい。豊島区にもう少し長く住んでいればよかった』などの言葉を受けました。この時、私は正直とても驚きました。一度の投票の機会が失われることの重大さがまったく理解されていないように感じられたからです。私は司法修習のために転居をしたにすぎず、何かよからぬ理由で転居をしたわけではありませんし、憲法でも認められている移転を前提とした国民の生活実態に配慮されない対応を受け、正直とても困惑したのです」

というふうに書いていらっしゃるのですけれど。この「居住・移転の自由」というのも、憲法上保障されたとっても大事な権利・自由なんですね。

少し昔、近世というか少し前の時代だったら、人々は暮らしているそこの社会に暮らす人は、その土地から、たまたま生まれたそこから移転する自由もなかった時代があるわけですよ。この居住とか移転の自由というのは、本当に近代的な自由なわけですよね。

家とかに縛られずに、個々人として自分が行きたい場所で生きられるという、とっても自由な権利で、それを行使したことによってこの参政権、投票するという権利が奪われるという、めちゃくちゃ理不尽な状況にあって。

さっきの牧山弘恵さんの質疑の中にもあったのですが、今その非正規雇用とかも増えて、自分の働く場所に合わせて転居を繰り返す人も中にはいると思うんですね。そういう実態をまったく無視した制度設計が放置されているということなので、かなり問題ですし。

今回の衆議院議員選挙みたいに本当にまったく予測できない時に行われると、能町さんみたいに投票できなかったよという人が相当数いるんじゃないかと思います。

武田:今その役所の対応というのを聞いていると、おそらくそう申し出てきた人に対して「そちらの事情でね」というふうに押し付けている感じがありましたけれども。

でもこの井上唯さんという方が、弁護士を目指すお立場であるからこそ「これはおかしいんじゃないか」というふうに気づけたというところがあるとは思いますけれども。

「たった一人の権利」を守ることが、すべての人の権利を守ることになる

三輪:今回、自分自身は今後同じような状況に直面する可能性は低いかもしれないけれど、今の制度が続く限り、一定数の国民が選挙権を持ちながら投票の機会を失ってしまいますと。この問題を見過ごすことはできないし、こういうことは個人にとっても社会にとっても大きな損失ですと。

「私は幸いにも司法修習生として司法にアクセスしやすい立場にあります。私と同様の立場に置かれた人々の存在と無念を思う時、この問題を社会に示すことは私の責務であると感じました。今や在外国民も選挙に参加することができるのに、国内を転々とすることにより国政選挙に参加できないこととなるのはおかしなことだと思います」

ということで、今回提訴に踏み切ったということが書かれているのですよね。確かに国政選挙と地方選挙は別で、地方選挙というのはその地方に暮らして実情がわかった上で投票するべきだということで、一定の居住要件を設けることには、もしかしたら合理性はあるのかもしれない。

しかし、やっぱり国政選挙というのは、国民である以上はどんなところにいたって関わりを持つわけですから、投票できなくなるのはおかしいんじゃないかということなんです。

選挙人名簿を、国政選挙も地方選挙も同じにすることでこれが生まれてしまっていることなのですが。デジタル化というか、確認するのが大変だみたいな議論もあるんですが、もうちょっと緻密な制度設計というのは可能なんじゃないかということで、今回の裁判になっているということです。

武田:今回、選挙期間が非常に短かったので、在外投票もなかなかできなかったりだとか。これもいろんなところで話題になっていますけれども、点字の公報が間に合わなかったりということで、選挙の公平性というのも今あらゆる局面で問われる選挙になってしまったけれども。

この「2回の引っ越しで投票が不可能になる」という件も、かなり注目されているということですね。

三輪:そうですね。在外投票も確かに手続きとしてはめちゃくちゃ大変なんですけど、でも事務処理が大変だからという理由で投票させないって、やっぱりおかしいじゃないですか。だから今回の国政選挙に、転居をしただけで投票できないという問題について、事務処理はおそらく理由にはならないと思います。

事務処理が大変だからという理由で重大な権利を制限していいのかというと、そんなのしちゃいけないよってすぐわかることだし。実際、在外選挙はどんなに事務処理が大変でも一応やっているわけじゃないですか。今回もできなかった人も多いかもしれませんが。

というのがあって、この裁判の行方が気になりますし、まだまだ始まったばかりなんだけれども応援したいなと思っております。

武田:本当に多くの人が、まあ99%の人が家に(投票所入場券が)届いて、選挙に行くかというふうに難なく投票できる人たちばかりなわけですけれども。

でもこの限られた人たちが投票しようとした時に、なかなか投票が難しい状態に置かれているということは、それはもう全員の投票する権利が蔑ろにされているというふうに考えなくちゃいけないですよね。

三輪:本当にそうですし、前も話したと思うのですが、一人ひとりの人権って数の問題じゃないから。そのたった一人の人でも、その人の権利をちゃんと保障しないと、権利が保障されていると言えないわけだから。そこにも注意してほしいなと思いますね。

全体からすると数が少ないからいいじゃんとか、数の話になりがちなことですが、数じゃないよという権利・人権は特に、ということをあらためてこの件でも思いましたね。

武田:こうやって実際に声を上げることによって、だってこれ「違憲だ」というふうに訴えて、「いや別にそんな問題ないっすよ」というふうになかなか返せない案件でしょう、これはね。

三輪:返せないと思いますね。やっぱりこれは。在外選挙もこういうふうにやっぱり裁判で戦った人がいたからこそ、今ちゃんと事務処理も、大変だったとしても一応実施もされているわけじゃないですか。

今回、実際にこの裁判で仮に勝ったとしても、彼女がもう一回投票することはできない。できないけど、でもこういう制度自体はやっぱりおかしいという声を上げる。終わったことだからいいじゃないんですよね。

司法の場面というのはほとんどが事案としては終わっている。終わったかもしれないけど、やっぱりこのまま、ずっとその状態が続いていいわけじゃないよねと言って、声を上げている人がたくさんいるということも、併せて知ってほしいなと思います。

武田:極めて重要な事案だなと思いましたね。これがどういうふうに行き着くのか見ていく必要がありますね。

西村:このコーナーはPodcastQRでも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム『記子の気になる日本のほぉ~』でした。

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