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プチ鹿島の「朝からタブロイド」(全7記事)

首相を「かわいそう」と思って投票する、その危うさに気づいているか? SNSが生み出す「感情の政治」が民主主義を侵食する [1/2]

【3行要約】
・選挙で大勝した自民党と高市首相の人気は、政策より「わかりやすさ」と「エモさ」に支えられ、若者からは「毅然とした姿勢」が評価されていました。
・ 毎日新聞の調査では、高市首相を支持する20人超の若者のうち政策を挙げた人はおらず、メディア社会学者は「自己啓発キャラクター」として訴求したと分析しています。
・ 「選挙に勝つことで民意を得た口実を作る」という構図は高市政権と維新に共通し、今後の政治がSNSの「わかりやすさ」に流される危険性に注意が必要です。

選挙期間中の情勢調査は「当たっていた」 日経コラムと社説で割れた自民大勝の評価

西村志野氏(以下、西村): ここからは前半レギュラーのラジマガコラム。木曜日はプチ鹿島さんの『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』です。今日はどんなお話でしょうか。

プチ鹿島(以下、鹿島): 今日のテーマは、「高市首相と維新の信任選挙? 気になる記事を総ざらい」ということで、新聞読み比べとして、気になった記事を集めてみました。

結果は、みなさんご存知のとおり、自民党が大勝、300議席超えと。この結果に喜んだ人もいるでしょうし、驚いた人もいるでしょう。それぞれいると思いますが、どういう分析が出ているのか、興味深かったんですよね。

まず、それで言うと、選挙期間中の新聞の情勢調査ですね。あれはだいたい当たっていましたよね。

武田砂鉄氏(以下、武田):そうでしたね。

鹿島:オールドメディアと言われている中、組織的な情報とか調査分析は大事なのかなと改めて思いましたし、一方で、選挙期間中にああいう情勢調査を発表するのは必要なのか? とも強く感じましたよね。

武田:情勢調査をすると、またその情勢調査に基づいた報道というか、「こんなのが出ました」「こうなっているんですか」というのをただ繰り返すだけという、ワイドショーのね。

鹿島:そうそう。いろんな論点もあるんですが、ただやはり当たっていたなという分析力、組織力というのは必要なのかなと思いました。

では他に、月曜日、翌日から新聞を見ていたんですが、僕が印象的だったのは日本経済新聞の政治部長の一面コラムですね。

「力の時代の強い経済」というもので、どういうコラムかというと、「今回の選挙を受けて政策の争点はない。理性的な議論より感情に流される情動の政治とも言える。事実上の白紙委任との指摘もあった」と前半で書いています。ただ、こうも書いているんです。

結果を受けてですが、「国民はむしろ個別の政策で選んだのではなく、日本を舵取りするリーダーを積極的に選んだのではないか。つまり、ここ最近の国際情勢、力こそ正義という弱肉強食の中、みんなが不安を抱いている。こうした構図を考えると、『強い経済』という首相の言葉が受け入れられた背景には、世論の右傾化などとは言えません。厳しい国際情勢下で強いリーダーを望んだ民意のリアリズムと見ていい」。

武田:リアリズム。

鹿島:この言葉をどう考えるかですよね。では一方、同日の日経の社説はどう書いているかというと、「首相は驕らず、責任ある政策を」。

「解散の理由に『国論を二分するような大胆な政策への挑戦』を掲げていたが、にもかかわらず選挙戦では具体的に説明しない姿勢が目立った」。あと、「ポピュリズムの波が日本にも及ぶ中で、民主主義の質を高める責務を各党が負っている」。

これは日経の社説だけじゃなく、各紙社説はだいたいこういう大勝をしたから「数に驕るなよ」、もしくは「警戒するよ」という内容でしたね。

武田:はい。

政策を挙げた若者はゼロ 毎日新聞が追った「高市フィーバー」の正体

鹿島:一方で、これは毎日新聞のWeb記事だったんですが、「若者に刺さる高市フィーバー」。若い世代に高市さんが受けているという。時に失言もあり、首相として大きな実績がまだあるわけでもない。その人気の秘密はなんなのかという冒頭で書いて、各現場を記者が訪ねたと。

例えば、公示の日に秋葉原で大学19歳の方は、「演説は身の上話が多くて親近感が湧きますね」と。若い世代が高市氏の印象を語る時、「身近」という言葉がよく聞こえてくる。

あと、こういう若者たちも多い。「舐められない首相に惹かれる若者たち」。例えば専門学校生の男性19歳は、「中国や韓国にもズバズバ言っているのが気持ちいい。舐められない首相という感じが良いです」。

男子大学生21歳も、「自民党はハト派からタカ派までいろんな人がいましたが、これからの時代は対外的に強く言う必要があります」という意見を言っていた。

武田:うん。

鹿島:都内に住む男性会社員29歳は、「昨年は国民民主の参院選投票をしたんですけれども、首相が高市さんに変わってから日本は明るくなった、ということで自民候補に投票しました」。

記者の形が若者の声を聞く中で、やはりイメージ先行で高市さんを支持している姿も浮かび上がりました。

例えば、男子大学生18歳が「車の燃料代が安くなった。だから高市さん支持だ」って言うんですけど、ただこれ事実を追うと時系列ですね。ガソリン税の引き下げとかは、元々国民民主党などが提案していて、高市政権だけの実績とするのは難しい。

武田:しかも本当はもう年度末まで引き伸ばそうとしていたのを、前倒しせざるを得なくなったということでしたけどね。

鹿島:あと高市さんの演説会場にいた若者たちには、生の姿を見てみたい人も少なくありませんでした。会場で配られた日の丸を振ったり、演説に涙ぐんだりする人もいたと。

記事のまとめとして、現場を見たまとめとしてですね、やはり親近感が湧く動画や外交での立ち振る舞い、毅然としているとか、コミュニケーション能力が高いんじゃないかという意見とか。20人超の若者のうち、政策を挙げた人はいなかったというんですね。

他の新聞の現場レポートを読んでも、高市さんは「わかりやすい」「はっきりしている」「毅然としている」という評価が挙げられていたんですね。特に若い人たちの間でね。じゃあこの現象をどう見ているのかということで、毎日新聞の昨日の一面で、伊藤昌亮さんというメディア社会学の方が「石丸現象に似ている」と言っているんですね。

武田:ほう。

鹿島:どちらも政策論争せず、人々を勇気づける自己啓発キャラクターとして訴えかけたのではないかと。

若者論にも触れていて、伊藤さん曰く「社会をどう良くするかという政治的領域よりも、自分がどう生き延びるかという生き方の指南者を求めているんじゃないか」。そう悩んでいる人々に、高市さんは働いて働いて働いてと徹底したポジティブ思考の生き方をロールモデルとして見せたのではないか。

高市さんがパワーを与えてくれると感じ、応援されている気持ちになり、自分も高市さんを応援したくなるという分析を伊藤さんはしていましたね。

武田:うーん。

討論欠席でフォロワー急増、YouTube5000万再生 SNSが増幅する「かわいそう」の空気

鹿島:おもしろかったのが、一昨日の読売新聞で「高市旋風SNSでも」ということで、読売新聞が公示日以降のXのフォロワー増加数を各党首調べたんですね。そうしたら、前の日と比べて最も増えたのが高市さんで、2月1日でした。

2月1日に何があったか。NHKの党首討論番組を急遽欠席、いわゆるドタキャンしていたということですよね。首相はXに「関節リウマチの持病があり手が腫れてしまった」と投稿して、ではドタキャンに対する投稿も相次いだんですが、「逃げた?」「違う、現場に立つ覚悟の代償」などと同情する内容も目立ちました。

つまり、あの討論会欠席で首相がどう言うかということで、逆に高市さんのXに注目が集まってフォロワー数もかなり増えたということで。むしろあの欠席の件は、「じゃあまた再設定してよ」とかではなくて、「何をどう言うか」「擁護するか」、もしくは「批判するか」というので、むしろ注目が増えた件だったという。

武田:そういうことなんですよね、分析してみるとね。

鹿島:これおもしろいですよね、そういう意味ではね。

武田:確かになあ。

鹿島:YouTubeも高市さんが訴える動画、一応5000万回再生。これ、金を掛けるだけで再生回数を増やせるわけでもないんじゃないか。やはり高市さんの人気がここまで回数を押し上げているんだろうという識者のコメントもあるということで。

第三者的にはやはり「切り抜き動画」が今回、高市動画にすごく集まりましたということなんですよね。

武田:いろいろSNSの反応を見ていると、僕は意図的に高市さんを支持するTikTokとか動画を見るようにしていましたけれども、そうするとキーワードとしては「かわいそう」みたいな言い方をするものが、けっこうありまして。

でも冷静に考えると、現在首相なわけですから、この国の中で一番権限を持っている人に対して「これはどうなんですか」「あれはどうなんですか」と柔らかく迫っていたら、それは答えないわけだから。ある種痛いところを突かれて「これはどうなんですか」と厳しく聞かれるのは、これは高市さんだけじゃなくてどんな首相であろうが、それに対する応答責任って責務なわけですけれども。

その厳しい声を向けられた時に、「なんかかわいそう」「なんであんなことを言うの」というふうになって。その「かわいそう」みたいな声を、また今回高市さん自身は「大変なんですよ」みたいなことを柔らかく受け止めるみたいなね。

太田(光)さんの番組に出た時も、「意地悪」みたいな発言をしたという時もありましたけれどね。

鹿島:こんなこと言うと太田さんに怒られるかもしれませんが、太田さんは別に特に切り口鋭いみたいなことじゃなくて、キャスターとして普通のことを聞いていただけで。それを「意地悪」とか言われちゃうと、「太田はなんてこと聞くんだ」みたいな論が多いというのが、ちょっと驚きますよね。

武田:ええ。

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