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勅使川原真衣の今日もマイペースで(全7記事)

選挙で拡散されたのは政策ではなく「推し動画」だけだった ファンダムマーケティングが政治に入り込んだ、“政策なき選挙戦”の正体 [2/2]

「認知→興味→愛着」の設計 ファンダムマーケティングが政治に入り込んだ

勅使川原:この「推し活政治」ですけども、まさに冒頭のニュースでも扱いましたけども、マーケティングの手法を取り入れているんですよね。特に「ファンダムマーケティング」と呼ばれるやつです。なんか9時台にも一回ファンダムマーケティングの話をしましたよね。

武田:どこかでありましたよね。

勅使川原:ありましたね。このファンダムマーケティング、第一人者とも言えるある広告会社は、このように解説しています。ちょっと読みますが、ファンダムマーケティングとは、「それなくしては生きていけない。人生の活力、癒やし、日々の最優先事項」。

これをサービスであるとか商品で醸し出していく、位置付けていくというやり方だと言っています。従来のタイアップとかインフルエンサー施策を単方向の告知で終わらせず、「認知から興味へ、興味から購買へ、購買から愛着まで」を一連の体験として設計する。すごくないですか。

武田:そうね。

勅使川原:疲れた人にはもってこいじゃないですか。

武田:そうすると別に、とにかくその物なり人がいると。それをもう立て続けに見せると、把握させる、で興味を持たせる。で、それを手にする、愛着を持たせる。ここが矢印でつながっているわけだ。

勅使川原:そうです。辛い日常があればあるほど、どこかに癒やしは絶対求めるわけですから。忘れてはいけないのは、多額のお金がかかるってことを忘れてはいけないんですけどね、ファンダムマーケティングっていうのはね。

あとファンダムマーケティングの話と並行させて、私「有害なポジティブさ」という考え方も少し絡めてみたいと思っています。トキシック・ポジティビティとか聞いたことございますか?

武田:なかなかないですけどね。

勅使川原:ないよな。これもね、でもうまく逆手に取った選挙戦だったんじゃないかなという気はしています。ポジティブ心理学とか流行ったの覚えていますか?

武田:はいはいはい、ありました。

勅使川原:2000年代だと思いますけど、ポジティブ心理学、アメリカでマーティン・セリグマンという心理学者が98年にアメリカで発表していますけども、日本では2000年代だったと思います。マインドフルネスとか、ウェルビーイングもその流れを汲んでいます。

それって要するに、なんかこう「楽しそうにしてないといけない」とか、「ワクワク」っていう言葉とかね、日本語ではだいぶ当てられたんですけども。なんか「文句を言うな」とかね。

武田:ああ、うん、よく言われるやつだ(笑)。

勅使川原:そうね、言われやすいですね、我々はね(笑)。ただ指摘しているだけなんだけども、なんか批判的だと言われたりとか。いやそうじゃなくて、日本語でいうと「ご機嫌」ってやつですよ。ご機嫌が幸せをつくるんだと。

いつも笑顔でいないほうが悪いんだ、というようなニュアンスもだいぶ入り込んできまして、それが「有害だよね」と。ポジティブポジティブって、そうじゃない時もあるわけだし、構造的な問題もあるのにね、という話になってきている。

だけども、今回はやっぱり、もう批判したら直ちに非難だと思われたし、「いつまで言ってんだ論法」もずっとありましたよね。

群衆心理は民主主義の敵ではない 疲弊させた社会設計こそ問い直すべき

武田:いやなんか今回ね、その高市首相が「私か、私以外かを選ぶ選挙です」というふうに、まあそういう選挙じゃそもそもないんだけど、首相を選ぶ選挙じゃないから。でもその問いかけに、ひとまず乗っかってみるとして、僕自身は「私か私以外か」って言われると「私以外かな」というふうに思っていたんで。

「私以外だと思います」というふうに書くと、いやあの、そういう批判良くないみたいなんだから、その「私か私以外か」で「私以外」って言うのを言うと、なんでそういうふうに言うんですか、というふうになるという、ちょっとそういうなんか仕組みが整えられていましたね。

勅使川原:おっしゃるとおり。これは健全な民主主義では明らかにないわけですけども、これぐらい疲れた社会では、まあ希望が欲しかったということは、否定し難いかなと思います。

で、こんなことは、特にリベラルだって知っていたわけだけども、ちょっと甘く見た部分は反省かなと思っています。砂鉄さんも書かれている『100分de名著』の、ル・ボンの『群衆心理』。ねえ、あれおもしろいですよね、今読んでも。

武田:確かにね、まあずっと人類は同じようなことを繰り返しているというのがよくわかりますけどね。

勅使川原:本当にそうなんですよね。群衆心理をこう「愚かだ」とかね、「流されているだけじゃないか」というのは簡単なんだけども、それだけじゃもうダメだよということではありますよね、今回の選挙結果も。

「ここまで個人を疲弊させた社会設計の当然の帰結」でもあったかなと思います。「考える余力は事実上ない」というところでどうやっていくかですよね。

私、クライアントの企業の若手の方とお話ししたりとか、社外取締役させていただいている会社の、まあスタートアップなんですごい働き方をけっこうされているんですけども、みなさんとお話しすると、「いやいや」と。「朝の10時から夜の11時まで毎日働いているから」と。

武田:大変。

勅使川原:ニュースは見ません。見る時間がありません。新聞、まさかですと。疲れすぎてスマホでTikTokだけ気分転換に見ているという、おっしゃる方は少なくないですよね。これ、その若者に責任があるって話じゃないですよね。

武田:確かに。

勅使川原:考える余力を労働の構造的に奪っておいてですね、「ちゃんと考えろ、もっと賢くなれ」って、それは残酷だなと思います。

ただ、だからしょうがないよねと言いたいわけじゃなくて、私、この群衆心理そのものは民主主義の敵ではないというふうに思っています。だって群衆心理はもうとっくの昔から研究されているんだから、これを踏まえて設計し直す、「人が人を選ぶ」ってことをですね、できるんじゃないかと思うんです。

だって現に今回、疲れて選べなくなった人の陰に、それを利用した人たちがいたってことじゃないですか。これはもう思想関係なく、利用したもん勝ちになってしまった今回というのは、ぜひ学びの糧として、今後どんな思想の人も考慮していかないといけないことかなと思います。

また報道についてもね、選挙というのはまあ戦だけじゃ本来ないので、選挙戦を煽りすぎたんじゃないかみたいなことも、ぜひちょっと群衆心理も絡めて考えてほしいなとは思います。

武田:まあでも本当にその、こういう、毎回選挙が行われるたびに思うことですけれども、昨日のゴールデンラジオでも少し話したんですが、なんかこう、どうやったら届いたかみたいな検証ばかりになるじゃないですか、終わると。

勅使川原:霧の構造というお話もされていましたね。

武田:そう、届く、だから届きましたとか、だから届きませんでした。届かなかった政党はどういうふうに届くか考えなければいけません、みたいなことって。でもその政党が訴えていたことがどうだったかということはあまり検証されないわけですよね。

「届いた」「届かなかった」だけで終わらせない 負けても終わらない社会のつくり方

武田:まあ今回の選挙じゃないですけど、何度か前の選挙でわりとこう野党が連携した時に、ジェンダーの問題とかフェミニズムの問題とか、そういうのがけっこう大きなテーマになった時に、そこがなかなか芳しい成績を収めなかった時に、なんか「ジェンダーとかフェミニズムじゃもう票取れないよね」みたいなことを言っていて。

いやそれってその、ジェンダーの問題を考えるってことはもう基本的な人権のことを考えることだから、その票が取れるとか取れないとかっていうことになると、じゃあその問題はもういいのかってことになってしまうという。

勅使川原:いや本当にそうなんですよね。

武田:その一方で、まあ確かにその結果として見たらなかなかいい結果が出なかったってことになると、じゃあその問い自体は考え直さなくちゃいけない。考え直さなくちゃいけないけど、でもじゃあその問題をどうでもいいことにするってことではもちろんいけないわけだから。

そこがすごく、選挙が終わって「届いた」「届かなかった」みたいな話だけになると、なんかこぼれ落ちちゃう。

勅使川原:おっしゃるとおりだと思います。選挙戦と政治そのものについてはやっぱり分けて、しっかり議論していく必要があると思います。

私『ポリタス』で、途中で共産党の山添拓さんと直接お話しする機会があったんですけども、やっぱり彼もその「届ける」というネタと、じゃああのしっかり政策実行していくってところで、あのまあ困っている場面も見られたんですけども。

まあ繰り返し地道に議論を分け続けるってことしかないのかなというふうにおっしゃっていました。私もそういうことかなとは思います。

今回の選挙、まあ最初からね、始まりから納得しきれてなかったので、だいぶ振り回されたような印象ありますけども、ただ政治も人生も、まあ受験もそうかもしれない、「短距離走」じゃないんですよね。もう考えたくないと思ってしまうことを、個人の責任にしない社会、これをどう作るかだと思っています。

競争とか選抜をすべてなくせばいいって話じゃないし、なくす必要はない部分もあるんです。だけども、「命を奪われるような競争とか選抜」っておかしいじゃないですか。

武田:そうね。

勅使川原:スポーツでもしないですよね、命守られるんですよね。これが国民生活で起きるなんてあり得ないので、そこのとこちょっと勘弁してくださいと思っています。人々はなんで勝ち馬に乗ろうとするんですか? それは「負けたら終わりの社会」だからじゃないですか。

武田:そうかそうか。

勅使川原:だから考えるべきは、いかにして「負けても終わらない社会」をつくるかということだと思います。ジリ貧の中ですけども、ここはね、諦めたくないですね。

武田:なんかでもこう、今選挙のたびにいろんな風が吹いて、今ここの政党にこういういい風が吹いているなっていうのを、なんか見極めてそこに乗っかると言う人が多く出てきますけども。まあでも冷静に考えてみると、その風ってけっこう早めに止むんですよね。

勅使川原:そうなんですよ。

武田:それってだから風が吹いたとしても、その風の後のことを考えるとか、どっからどういう風が吹いているのかっていう、この風の発生源みたいなのを「見極める」ってことをしないと、ただね、風に乗せられて。

勅使川原:そうなんですよね。

武田:まあこれでもずっと続いていることではあるんだけどね。

勅使川原:そうですね。維新の閣内協力なんかも気になりますよね、その意味で。

武田:でも風を起こさないと、まあもしかしたら旧来の党はなかなかそのね、届かないということ、それこそなっちゃうっていうね。ここが難しいところですな。

西村:このコーナーはポッドキャスト「PodcastQR」でも配信しています。ぜひチェックしてください。ラジマガコラム、『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』でした。

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