【3行要約】
・高市首相の「円安ほくほく発言」と討論番組欠席が注目される中、経済発言のブレや沈黙戦略が選挙戦の争点に浮上しています。
・ プチ鹿島氏は過去の橋本龍太郎首相の例を挙げ、選挙期間中の経済発言の重要性と説明責任を指摘。
・ 3年前の奈良県知事選でも姿を見せなかった高市氏の姿勢に既視感があり、首相として議論のプロセスが問われています。
検証・高市首相はドタキャンキャラ?
西村志野氏(以下、西村): ここからは前半レギュラーのラジマガコラム。木曜日はプチ鹿島さんの『プチ鹿島の「朝からタブロイド」』です。今日はどんなお話でしょうか。
プチ鹿島(以下、鹿島): 今日はズバリ「検証・高市首相はドタキャンキャラ?」。クエスチョンマークをつけていますよ。
武田砂鉄氏(以下、武田):はい。
鹿島:ここ1週間もそうなんですけども、実はここ数年も含めて記事をおさらいしてきました。
武田:数年。
鹿島:はい。先週末に注目を集めたのが、高市首相の円安「ほくほく」発言ですね。1月31日、土曜日ですよね。街頭演説で円安について、「外為特会の運用は今、ほくほく状態だ」と述べたんです。
これは円安で政府が保有する外貨資産の評価益が膨らむことを指したものなんですよね。ただ、輸入物価の上昇といったデメリットには触れなかったということで、この発言を日本経済新聞が報じて、ロイターも海外向けに配信したと。
日本の首相が円安のメリットを強調した発言として注目された、もしくはされてしまった格好なんですよね。で、その直後、先ほどのニュースでもありましたけども、高市首相はNHKの『日曜討論』という番組を、腕の痛みを理由に開始直前で欠席したと。
ただ結果として、あらためて「ほくほく」発言が注目されることにもなったということなんですよね。僕、先ほども申し上げたんですけど、やっぱり欠席したのは高市さんにとっても悔しいと思うんですよ。
武田:ねえ。
釈明の機会を逃した高市首相 選挙期間中の経済発言の重要性
鹿島:で、東京新聞の社説、こう書いてるんですね。「高市氏は1日のNHK番組の党首討論会を急きょ欠席した。持病の治療を理由としているが、国民や野党に対する釈明の機会を逸したのではないか」。いや、本当にそうだと思うんですよ。
武田:そうね。
鹿島:つまり高市さん側からしても、説明の機会を逃してしまった。本当だったら「いや、これはこういう意味でね」っていうのを、たぶん他の党の党首の前で言えば、「なるほど高市さんそうですか」とか、「いやでも」とか、いろいろ議論が活発になったと思うんですね。
それをこう……ね、まあ体調のことだからしょうがないんですけど、逃してしまったと。まあ本当に無念だと思うんですよね。
武田:うん。
鹿島:実際、ほら、釈明の機会って必要だと思っていて。選挙期間中にこの発言が出て、市場も反応しているんですよね。発言3日後にはもう155円台に下落していますし。そもそも昨年10月以降、高市さんが就任して以降ですね、日本の財政悪化に対する懸念から円安が続いて、物価の高騰も続いていると。これ日経とかていねいに報道しているわけですよね。
じゃあやっぱり、これ説明・釈明する機会を、まあ選挙期間中にもう一度、ね、NHKも含め設定すべきじゃないのかな。リベンジしたいんだから。っていうのはあるんですよね。というのも、選挙中の首相、総理大臣の経済に関する発言はとても大事なんですよ。下手をすると命取りになる。
1998年橋本龍太郎首相の教訓 経済発言の「ブレ」が招いた惨敗
鹿島:過去のケースを言いますね。1998年。まあちょっとだいぶ前ですけど。7月の参院選というのがあって、当時、橋本龍太郎さんという方が首相でした。この方もとても人気のある首相だったんですね。
武田:うん。
鹿島:で、この時は国内が深刻な金融危機と不況にあえぐ中、経済再生が最大の争点となっていた選挙だったんです。ただ橋本さん、とても人気がある方だったので、序盤はもう自民勝利と言われて予想していたんですよ。ところが、投開票まで残り1週間の首相自身の発言で、情勢は一変しちゃったんです。
当時報じる読売新聞を元に振り返ってきますけど、まず橋本さんは記者会見で、税制の改正を巡って、「特別減税のようなものではなく、恒久的な税制改革を打ち出していくと期待している」と発言したんです。「打ち出していく」と「期待している」っていうのも何かね、ちょっとややこしいですけど。
まあつまり、恒久減税をやるんだなということで受け取られたんですが、この2日後のテレビ番組に出た時にですね、「財源はどうするんですか」って追及されると、「恒久減税という言葉を使っていない」ってトーンダウンしたんですよ。
そうすると、「あれ? 言っていること違うじゃん、ブレているじゃん」ということで、「首相迷走」って一気に批判を浴びた。これ読売は書いてますね、当時のことを。
すると橋本さん、数日後の記者会見で、「99年からの所得税の恒久減税をやります」、まあだから(当時の)来年以降ですよね、を明言して収拾を図ろうとしたんですが、「いや、ブレブレじゃないか」ということで、有権者の不信感を払拭することはできなかった。
武田:うーん。
鹿島:で、これで選挙を迎えて自民党は惨敗して、首相は退陣したと。これは読売の報道なんですけど。こうした歴史を考えると、やっぱり高市さんも、選挙期間中に円安ほくほく発言の真意を、やっぱり説明したほうがよかった、いいと思うんですよね。過去の例があるから。
ましてやこれ消費税とか減税とかと同じ論点なんですよ、これ。ほくほく発言とは別に。だからやっぱり、説明・釈明する機会をしたほうがいいと思うんです。
消費税減税を巡るブレと立場の使い分け 首相と党総裁の二つの顔
鹿島:で、高市さんの消費税減税を巡るブレについては、先週のこのコーナーでちょっと時系列を追って説明したんです。ちょっとまとめてみると、要は初日第一声で消費税に対して言及しなかったんですよね。
その前の解散表明会見では、「減税は私自身の悲願」とまで言っていたんです。
武田:悲願とまで言っちゃったね。
鹿島:悲願とまで言っていた方が、いざ選挙戦になると……。
武田:しゃべらない。
鹿島:しゃべらない。なぜか沈黙した。で、あと立場の使い分けも目につくんですよ。首相としては「すぐ早くやりたい。例えば年度内を目指す」と語りだした一方、党の総裁という立場では「国民会議で決める」っていう。使い分けをしているんですよね。
武田:はいはい。
鹿島:だから日経新聞なんか「首相と党総裁の立場を使い分けるのは問題だ」と社説で批判してます。こう見ると、だから98年の橋本龍太郎さんどころじゃなく、高市さんも同じように、いろいろブレているんですよね。だからピンチなんですよ。だから今こそ説明したほうがいいと思うんですけども。
武田:これだからもう先週の鹿島さんと矢沢(永吉)がね、「俺はいいけどYAZAWAはどうかな」って言っている発言につながってくるってことですよね。
鹿島:ただ矢沢永吉さんは、やっぱりこう、公的なキャラクターを追求するために、「素の俺はいいけど、YAZAWAはどうなのかな」っていう、ある種理想を追求した発言で、ブレてはいないわけですよ。
武田:そうですね。ブレてはいないですよね。
鹿島:逆なんですよね。だからこれ、使い分けとかすごく日々変わっているので、じゃあ実際のところどうなのかっていうのを早く釈明したりしたほうがいいと思うんです。
そもそも、例えば橋本龍太郎さんはテレビ番組で「財源はどうするのか」と追及されて、さっき言いましたよね。これって実は田原総一朗さんの番組だったんです。
武田:あ、そうだったんですね。
鹿島:あの、日曜午前にやっているやつ。で、それをきっかけにその後もメディアでよく話題になったので、あの時と今回ってなんか違くねえかって僕は思うんですよね。なんか大人しいなと思うんです。
メディアの「沈黙戦略」報道 論評なき“垂れ流し”への疑問
鹿島: 例えば昨日の朝日新聞、これ1面で報じているんですよね。「消費減税 首相が沈黙」「争点潰し成功」「透ける戦略 衆院選」っていう。
まあ要は首相が消費税について選挙期間中沈黙しているんですけども、それは情勢調査で自民の優勢が伝えられているので、消費減税という選挙の争点潰しに成功して、野党側に批判の口実を与えぬよう、余計なことは言わないっていう。幹部の証言ですね。戦略も透けて見えるっていう。
だからまあ、首相の沈黙の理由を他の幹部の「すでに争点潰しをしたからだ。だからもう余計なことは言わないリスクマネジメントだ」という証言を載せているんですが。
ただ、この記事を読んで驚いたんですが、朝日新聞は首相側の戦略を解説しているだけで、消費税に沈黙していることに対してこの記事で論評してないんですよ。
武田:はいはいはい。
鹿島:要はもう説明を垂れ流しているだけ。だって「戦略」って言っちゃってるわけだから。
武田:そうですよね。
鹿島:「ああ、争点潰しの戦略」って、これを1面に載せているわけです。
武田:ただ伝えているだけですもんね。
鹿島:そう。で、記事の最後を読んでみると、「首相は1日のNHKの討論番組を手のケガを理由に欠席し、公示後に党首討論には参加していない」って書いて終わっていて、なんか腫れ物に触るように……。
武田:そうですよね。
鹿島:なんか論評したら怒られるのって僕、読んでいて思ったんですけど。
武田:普通ならここからあと5行ぐらい必要で、「ならば討論会に出てくるべきだろう」っていうふうに書くべきですもんね。
鹿島:なんかこう、「手のケガを理由に公示後に党首討論には参加していない」、あとはみんなで考えてねみたいな感じの、投げかけられちゃってるんですよね、こっちにね。僕、新聞って論評も必要だと思うんですけど、「透ける戦略」ってね。しかも完全にこれ政局記事じゃないですか。
例えば僕、おじさんが読んでおじさんがこう興奮する政局記事のことを『オヤジジャーナル』って呼んでいるんですけど。例えば、戦国時代風の表現って好きじゃないですか。
武田:はいはいはい(笑)。
鹿島:ねえ、やっぱり「短期決戦」とか、急に解散したことを「奇襲戦法」とか、なんかこう戦国時代のノリで報道しちゃうじゃないですか。
武田:「討って出るのかどうなのか」みたいなね、ありますもんね。
鹿島:なんかそういう、うっとり感になっちゃってるかなと思うんですよね。で、実は今朝の産経新聞も1面で、消費税について、「首相、消費税言及を封印」「支持離れ回避へ安全運転」っていう。「安全運転」(笑)。
武田:安全運転。すごい乗っかり方だね(笑)。
鹿島:産経新聞はもともと高市さん推しですから。高市さん側に立って「封印。よし、これは安全運転だ」って言っているのは、まあわかるんですけど、まあ結果的に朝日と産経、だいたい同じ説なんですよね。
武田:でもその橋本龍太郎さんの時に、まあ発言がブレブレになることによって、まあかなりダメージが大きかったっていうこと、まあそれを反面教師的に、もし高市政権が受け止めるんだとしたら、「あ、あんまりいろんなとこに出てかないほうが、ブレが出なくなるわけじゃないですか」。
2つのとこに出るよりも、もう1つのとこに出たほうがいいとか、出なければゼロにしたほうがブレはなくなるっていうことにもなっちゃいますよね。
鹿島:それを朝日新聞に言わすと、「透ける戦略、戦略が透けて見える」って言うんですけど、「じゃあさらに朝日はどう思うんですか」っていう論評は必要だと思うんですね。
ただこんな状況なんですが、これ新聞読み比べマニアとしては、ちょっと今回声を大にしたいのが、高市首相へのチェック役、ある意味ツッコミ役の急先鋒が、朝日でも毎日でもましてや読売でもなく、日本経済新聞であるということはちょっとお伝えしておきたいんですよね。
まあ日経は以前から「財政規律が大切」とか、「消費税を下げるなら財源を示すべき」っていう主張、これは頭に入れておいてください。しかも財界人の方が読んでいるっていう、そういう新聞という頭を入れておく必要があるんですよね。
ただ最近はそういった立ち位置を超えて、つまりもう市場の反応がシビアなんですよね。日経も底をついていると。じゃあどうするんだこれと。
社説でもね、「将来に悲観を持ち選択に臨もう」とか、1月26日は論説委員の方の「忍び寄る財政破綻の足音」ってコラムを載せて。これなかなかなコラムですよね。そうするとこのコラムを、今度は日刊ゲンダイが紹介しているっていう。
武田:まさかのね(笑)。
鹿島:僕からすればもう夢のセ・パ交流戦みたいな……。
武田:まさかあそことあそこがね、くっつくとはいう。
鹿島:ゲンダイと日経が連立しているのかと。交流しているのかこれと。そういう状況になっているんですよね。
ただ情勢調査や世論調査では高市さんの人気は高いじゃないですか。これもいろいろね、各社の世論調査の理由を見ると、高市さんなら何かやってくれそうとか、わかりやすいとか、毅然としているっていう、まあ言ってみればわかりやすさとかエモさが理由の中心なんですよね。
ただそれに対して日経とか市場を見ていると、「いや、市場はこう言ってるけどYAZAWAはどうなの」みたいな感じになっているんですよ。だからおもしろいですよね。エモさと数字の戦いになっているんですよね。
武田:このほくほく発言について、片山財務大臣がね、「いやこれ教科書に載っていることを言っただけなんで」って言ってましたけど、教科書になかなか「ほくほく発言」って載ってないとは思うんですけどね。
鹿島:ほくほく発言は載ってないと思うし、まあ片山さんはまあ擁護派でしょう。そりゃだってね、内閣の一部ですから。
武田:まあ擁護せざるを得ないってことですもんね。