【3行要約】
・日本では特別休暇制度が増えても年休消化率が低く、国際的にも最下位という「休めなさ」が課題となっています。
・ 勅使川原氏は「臨機応変さ」を評価する日本の雇用慣行が、その場にいないと評価されない構造を生み出していると指摘。
・ 休みやすい職場づくりには「その場にいる人が優秀」という価値観の転換と、いなくても回る仕組みの構築が必要です。
「休めなくないですか、私たち」
西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーの「ラジマガコラム」。水曜日は、勅使川原真衣さんの『勅使川原真衣の「今日もマイペースで」』。今日はどんなお話でしょうか?
勅使川原真衣氏(以下、勅使川原):はい、今日は「休めなくないですか、私たち」という話をしようと思っています。どうです? 休んでいますか?
武田砂鉄氏(以下、武田):「休みとは」という感じの働き方ですよね、なんかね。
勅使川原:本当にそのとおりだと思います。考えさせられたきっかけは、2月1日付の日本経済新聞でした。こういう見出しがありました。「特別休暇拡大でも年休は未消化。ちぐはぐ続く日本企業の休み」という記事だったんですね。特別休暇ってご存じですか?
武田:特別休暇?
勅使川原:有給休暇と別で設定されているものなんですよね。年休とは別に、法律で定められた休暇と異なって企業が任意で設定する法定外休暇のことですよね。有休も休暇も企業に裁量があるというようなものです。
厚労省が24年に調査していて、勤務先に特別休暇があると答えた人は41.9%ということで。我々は関係ないですけども。
武田:それなりにけっこうな割合ですよね。
日経新聞の中でも、やはり特別休暇が増えていることをいろんな事例から示していました。だけどやはり、「休むのは難しくないですか?」というのは新聞でも言っていることなんですね。なので、このコラムではさらにそこから考えを深めたいと思っています。
働き方を変えたほうがいいのは間違いないと思うんですけども、そのために意識を高めようとか、休暇制度を増やそうというのが本当に得策なんだろうかと考えたいんですよね。ないしは、「日本文化はそういうものだから」みたいな意見にも少し抗いたいなと思っています。
記事では最近、病気の治療や学び直しのための特別休暇制度の導入企業が増えているとありました。例えば、日本たばこ産業のJTさんは、更年期障害や不妊治療などの健康課題に向き合う社員が特別休暇を使える制度を導入されたそうです。
記事に担当者の言葉が載っていて、良くも悪くも印象的だったので読み上げますが、「休むだけじゃなくて、治療してパフォーマンスを上げるまでが1つのストーリー」とお話しされていました。うがった目で見ますと、「ただ休むのはダメなの?」という感じがしたんですけども。
武田:パフォーマンスを上げなきゃいけないわけですね、最終的にはね。
勅使川原:そうですね。
有給取得率は上がっても、国際的にはまだ最下位
勅使川原:まあでも、休むことが人生とか仕事を続けるためのプロセスとして捉えられ始めているのは、いい変化なのかなとも思いました。JTの他にもサンリオさんとか、小売の丸井さんとか、あとロート製薬さんなんかの事例が挙げられていました。
一方でやはり考えたいのは、休みの制度が増えていても「私たちは休みベタじゃない?」ということなんですよ。実際にこれは特別休暇じゃなくて年次有給休暇で考えたいんですけども、取得率は上がってきているそうです。でも国際的にはまだまだ低いということも、新聞には載っていました。
追加で調べてみたんですけれども、厚労省の25年就労条件総合調査によりますと、2021年までは年休取得率は40〜50%台だったんですって。それが近年上昇して、24年には66.9%まできている。
武田:66%?
勅使川原:もう67%、けっこういいんじゃない? と思うんですけども、国際比較しますと、これを行っている調査は、アメリカの旅行予約サイト大手のエクスペディアさんが11カ国を対象に調査しています。23年の調査なんですけども、63%ということで、調査対象国11カ国中最下位の結果でした。
フランスとかを見ると、支給日数も多いんですけども取得日数も多くて、取得率で言うと94%とか。ドイツも93%というふうに出ていますので。
武田:63%ってことは、もう3分の2ぐらいしか使えていないってことですよね。
勅使川原:ということになりますよね。そして、休まない理由も載っていました。おもしろいなと思ったんですけど、「急な用事のために残しておきたい」。
武田:ああ、多いでしょうね、それはね。
勅使川原:「病気や怪我に備えてとっておきたい」。つまり、有給休暇はそもそも元気に休んで仕事以外のことをしようとか、楽しもう、充実させようという発想じゃないんですよね。
有給休暇を「保険」としてとっておく日本人
勅使川原:動けなくて仕事ができない時のために、保険としてとっておく発想になっていることがわかりますが、これは言わずもがなですけども、年次有給休暇は労働基準法第39条で保障された労働者の権利です。
労働者の心身の健康保持や生活の安定を目的として、基本的には好きな時に労働者側が決めて取れることになっています。一部「時季変更権」というのを会社が持っていますので。
武田:時季変更権。
勅使川原:例えば、洋菓子店に勤務されている方が、「12月23日から25日まで休みください」と言ったら、「ああ、ちょっとそこピークなんだけど」と言う権利は一応会社にある。
武田:そうなんですか。でも嫌です。12月23日から25日まで休みます。
勅使川原:それはありってことですよ(笑)。
西村: クリスマスですもんね。
勅使川原:そうなんです。でもやっぱり現実的には、記事の中でも早稲田大学の水町勇一郎教授の言葉が出ていたんですけども、「周囲の目を気にするジレンマがあるよね」というお話をされていました。あと「こういうのは良くない(こと)ですか?」とか「忙しいのはみんな同じなのに、自分だけ抜けられない」みたいな。
この気持ち、わかるなという気はします。制度があっても休めない。これは日本の働き方の特徴かもしれません。
武田:これ、有給休暇取りますとか言った時に、どうしても「え、なんかどこ行くの?」とか「なんで休むの?」と聞いてしまうようなところがありますけど、それも別に答える必要はないわけですよね。
勅使川原:そうなんです。本来は聞かないほうがいいですよね。理由の如何によらないものなので。
武田:そうするとさっきの特別休暇って、これこれこういう理由でとか、健康課題とかというのも、それも、本来言う必要はないじゃないですか。
勅使川原:そうですね。
武田:だけど「特別休暇取得」ということ自体がわかってしまうということなんですかね。
勅使川原:まあそうですね。でも欠勤になるよりはマシという考えだとは思いますけどね。勤続年数にも加味されますし。まあ、そういう制度的な面でも、やっぱり日本で仕事を休むのは抵抗があるなというのは、わかるわけなんですけども。