中道改革連合が振るわない理由と「ショック・ドクトリン」の手法
武田:でもその「国民会議で議論した上でどうなるかわからない」という言い方は、国民会議にはいろんな政党の方が参加をするわけですから、「私たちはやる気満々でしたけれど、どこそことちょっと話が合わなくて、なかなか進まなかったんですよね」というようなゴールまで用意しているんじゃないかと疑ってしまいますけどね。
中島:ですから、こんな問題もちゃんと議論してもらわないといけない。そんな中、自民と維新で300議席を超えると。さらに参政党とかを足すと、もう明らかに3分の2を超えてくるわけです。 つまり憲法改正という問題が視野に入ってくるという数字なわけです。
まだ参議院のほうが自民党がそれほど多く持っていないですから、即ということではないですが、いろんな組み合わせによっては3分の2というのが現実的になってくるような状況です。
高市さんは憲法の、特に9条の改正に対して前向きという発言をずっとしてこられた方ですから、そこまでの数字というのが、この短期間で論点もよくわからない中で自民党に与えられるということは、どういう未来が待っているのかということです。
武田:まだ情勢調査途中ですから、結果がどうなるかはもちろんわからないわけですけれども、高市首相は今回の選挙で「自民と維新で過半数を超えれば」というのを一つ目安にすると。それを超えなかったらば自分は退くという言い方をしてたわけですけれども、現状の情勢調査だとそこは大きく超えてくるだろうと。
これ手元に表がありますけれど、公示前勢力と情勢調査に基づく議席の推計どうなるかという比較のグラフがありますが、中道改革連合は公示前の勢力からかなり届かず、グラフ的にはかなり短いところで、なかなか厳しい状況になりそうだぞということが予想としては出ているわけですけれど。
この中道改革連合の現状での振るわなさというのは、どこに原因があると中島さん自身は見てますか。
中島:僕は立憲と公明党が一つの勢力になっていくことには、批判的ではないんです。考え方がもともと非常に近くて、公明党と安倍内閣の組み合わせのほうがおかしかったと思っていたので、ここが選挙協力とかをやっていくことは重要だと思っています。
けれど今回、やはり一種のショック・ドクトリンの方法だと思うんです。何か大きな災害とかがあったら、一気にこれまで進まなかったような出来事がわーっと進んでしまったりとか。「オリンピックだ」と言うとみんなが熱狂して、こんなびっくりするような予算が次々に通っていったりとか。
何かドーンとショックがあって、それによって普段だったら無理だったことを一気に進められてしまうことをショック・ドクトリンと言ったりするんですが、ちょっとこの中道改革連合の作り方は、ショック・ドクトリンの方法ですよね。
突然解散したというパニックの中で、「こうしないと勝てない」といって、原発の問題とか、あるいは辺野古の基地の問題とか、安全保障の問題とかを、熟議といってきたはずなのにポーンと飛び越えてしまう。 そういったところに対して、「あれあれ」というふうに期待を持てないなと思っている方がたくさんいると思うんです。
もう一つはやはり、小選挙区制という問題なんですね。 やはり今の状況というのは、もう選挙区に一対一の対立になってないですよね。だって自民党と維新という組んでいるところ同士が大阪で争ってるという、意味がわからない状態が生まれているし、野党の側も乱立をしてしまっている。
結局のところ、この選挙制度と現実というのが合っていないという状況が生まれているんだと思います。なので、これ小選挙区制だから無理やり一緒になっていったところがあると思うんですが、このへんもちょっと見直していかないと、政治不信ばっかりが大きくなっていくんじゃないかと思いますね。
「私が民意だ」と言いかねない、白紙委任の危うさ
武田:まあでも、今のこの選挙制度だと、政権与党になっている側は、この選挙制度のまま行きたがるわけですよね。
中島:そうですね、そうなんですよ。だからこの状況ですよね。多党制という問題。かつ今回、すごいたくさんの指標が出るはずですね。聞いてらっしゃるみなさんも、「私は何々に(票を)入れようと思っているけれど、小選挙区で全然当選の可能性がないかもしれない」と情勢調査を見ると。
そうしたら「(選挙に)行ったって意味ないじゃん」となってしまったりすると、民主主義に対する投票の動機付けというものを、どんどん奪っていくことになるんですね。やっぱり現状と選挙制度の問題というのは、ちゃんと考えていかないといけない。
今回の選挙なんですが、高市さんは「私に対する信任」というものを記者会見で言ったわけですけれど、これもし自民党が大勝するということになったら、「私が全面的に信任された」、なんか「白紙委任された」というふうに言いかねないと思っているんです。
過去にも橋下徹さんとかが、「僕のやり方が間違っていれば次の選挙で落としてくれればいい。これが現代的な選挙の意味だ」というふうにして、「私に全部預けられたでしょう」という言い方をしたわけですね。反対をすると、「それは民意に反しますよ。私がこういうふうに圧勝したんですから」と。
安倍さんも「憲法解釈の最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受けているんだ」というふうに言って、選挙で審判を受けて勝ったら、「私が民意だ」というふうに近年の政治家は言いがちなんですよね。
いやまったく民主主義の原理と反対なんです。 民主主義というのは多数決であっては(ならない)、最終的な決断はそうなるんですが、しかし多数者からこぼれる少数者の声を汲み上げるのが民主主義の非常に重要なポイントなんですが、どんどんそうなっていっている。
そうするとこれ、高市さんは非常に側近政治というか、非常に身内の近い人たちでいろんなことを決めていくので、官邸の力が非常に大きくなる。そして白紙委任みたいなことで、いろんなことがどんどん進んでいくということが、考えられるんじゃないかなと思いますね。
西村:このコーナーは「PodcastQR」でも配信しています。ラジマガコラム『中島岳志と解く』でした。