【3行要約】
・首相による恣意的な衆議院解散が常態化する中、立憲民主党が提出した「解散権乱用防止法案」は解散10日前までの理由通知を義務付けています。
・ 三輪記子氏は「参政権は一人ひとりの大事な権利」と指摘し、現在の突発的な解散では受験生や豪雪地帯の住民など多くの有権者の権利が侵害されていると警鐘を鳴らします。
・ 権力は抑制的に行使されてこそ市民のためになるため、有権者は選挙において候補者の解散に対する見解を積極的に問い、解散権の適正な行使を求めるべきです。
立憲民主党が提出した「解散権乱用防止法案」とは
西村志野氏(以下、西村):ここからは前半レギュラーのラジマガコラム、月曜ピンチヒッター三輪さんのコラムのタイトルは「記子の気になる日本のほぉ~」となります。
武田砂鉄氏(以下、武田):これは御マライ選手(マライ・メントライン氏)へのリスペクトを込めましたね?
三輪記子氏(以下、三輪):そうなんです。まさにそうで、私はそんな世界のことは詳しくないですし、自分のすごく狭い領域として、日本の法律に関しては少しはお話しできるかなということで、このタイトルにしました。
西村:お願いします。今日はどんなお話でしょうか。
三輪:今はもうすぐ選挙なわけですけれども、問題になりました「解散」ですね。衆議院の解散について、去年(2025年)の6月に立憲民主党が解散権乱用防止法案を提出したんですよね。
もちろん成立していないわけですけれども、この法案をきっかけに、解散権はどういうふうに行使すればいいんだろうということを、前も木村草太さんがお話しされていたと思うんですけれども、具体的に実際に提出された法案をベースに、考えてみることができたらいいなと思いました。
武田:はい。
三輪:去年の6月10日に立憲民主党が議員立法で、解散権乱用防止法案、正式名称は「衆議院の解散に係る手続等に関する法律案」なんですけれども。これは総理大臣が国会との事前協議なしに解散するということが、今まで慣例化してきたんですけれども、それでは良くないよねということで。
なぜ良くないかという話がこの後きますけど、解散権をどういう条件の下に行使するかということを法律で定めて、この法律によると、この手続きを追いかけていかないと簡単に解散できないよというふうになっている法律案です。
武田:うん。
戦後27回の選挙のうち、26回が解散によるもの
三輪:この提案の趣旨というのが、戦後27回の衆議院議員選挙があったんですけれども、そのうち26回が解散による選挙なんですよね。任期を全うしたということはほとんどなくて、首相が就任直後に突然解散したという例もありますと。
武田:まあでもひどい話ですよね。ちゃんと与えられた任期を全うせずに、多くが「じゃあここで」というふうに大半がなっているわけですもんね。
三輪:しかも、自民党の総裁選の時に、自分が総裁になってその後総理になった時に、解散権を行使するのかどうかということが議論されたりして。それもずっと自民党の総裁選の話なのに、そこで解散するかどうかがテーマになっていることも、なんとなく納得いかないというか。
解散って衆議院議員全員の身分を突然失わせる行為なのに、まるでそれが自民党総裁選のテーマになってしまっているという。
武田:候補がバーッと並んだ時にね。「もしあなたがなったらどうします?解散します?どうします?」みたいな。そのこと自体がおかしい話ですよね。
三輪:そのこと自体がちょっとどうなんだろうという。例えば、どの人がなったとしても、国政の状況は誰がなるかによってそんなに変わるのかなと思ったりもするんですよね。
だからそういうことも含めて、やはり解散権の行使については一定の制限をかけるというか、恣意的に解散できないようにするというふうにしないと、本当に公正公平と言えるんだろうかという疑義が生じてくると思います。
武田:うん。
三輪:この法案が提案された経緯というのは、もちろんもっと前から議論はされていたんですけれども、特に2024年は首相就任からわずか18日後に解散が断行されたと。この時にも投票所の入場券の遅配とか準備不足が生じたんですよね。有権者の参政権が十分に保障されなかったということがありました。
ただ、有権者の参政権が十分に保障されないという意味では、今回の選挙も実は同じような問題をはらんでいるわけですね。
武田:そうですね。うん。
受験シーズン、豪雪、在外投票…参政権は保障されているのか
三輪:例えば今は本当に受験シーズンですし、受験生にとっても、大学受験の人ですよね、18歳以上ですから。大学受験生にとっても選挙どころじゃないよということもありますし。
それだけではなくて受験生を持つ家族。例えばそれが中学受験であろうと高校受験であろうと、受験生を持つ家族にとっても、やはり同じように、なかなか選挙どころじゃないよという家庭もあると思います。あとは豪雪地帯ですよね。
武田:大変なことになっていますよね、今ね。
三輪:豪雪地帯でも、やはり参政権の保障ができない。さらに在外投票ですね。海外からの投票というのも、本当に参政権が保障されていると言える状況なんだろうかと。仮にですけど、在外投票する人は全体の有権者から見ると一部なのかもしれないですけど、数で比べることではないと思うんですよね。
というのも、参政権というのは一人ひとりの大事な権利なのに、全体から見てわずかだからいいだろうとか、人権ってそういうことじゃないんですよね。一人ひとりにきちんと保障されてこその人権なのに、なんとなく数の問題にされてしまう。
大きな視点で語られて、一人ひとりの権利がないがしろにされてしまうんじゃないかというふうに、私はすごく懸念を抱いています。
武田:それこそ豪雪地帯で選挙に行けなくなる人、そういう人も出てくるのかもしれないけど、「だったらこれからネット選挙、ネット投票を解禁したほうがいいよ」みたいな議論にスライドさせたりする流れがあったりしますけど。
いや、そういう話じゃなくて、「今回行くことができなくなる人が出てくるかもしれないんですよ」ということを考えなくてはいけないわけですよね。それが本当に人数としては少なかったとしても、そこは保障されなければいけないわけですもんね。
三輪:保障されなければいけないということですし、しかも豪雪地帯では、移動期日前投票バスみたいなのを準備して、バスで回っているという地域もあるんですよね。
逆に言うと、それって本当に参政権の保障という意味ではすごくいいやり方ではあります。だけど、その時にしか投票できないとしたら、結局期日前投票を強制されているとも言えるわけですよ。十分に考える時間をある意味事実上奪われてしまうということもありますよね。
武田:そうかそうか。
三輪:これはいつも思うんですけど、選挙期間を長くしたほうがゆっくり考える時間ができるんじゃないのと私は常日頃思っているんです。ただ一方で、あまり長くすると資金力のある団体とか候補者のほうが有利になってしまう。
武田:そうね。
三輪:お金がかけられるから。そういうふうにお金の資力によって選挙活動に差ができてはいけないから、一定の選挙期間を区切っているわけですけど。
でも実際にその選挙期間をゆっくり有権者が考えることができるかというと、こういうふうに今回みたいに期日前投票を事実上強制されているような人もいる中で、本当に有権者はゆっくり考えることができるんだろうかという問題も感じているんですよね。