報連相の強化で、本当に問題は解決するのか
勅使川原: その見直しですけども、「性悪説にすればいい」とかいう話ではやっぱりなくて、一定の統制はもちろん必要だと思いますけども。性悪説の例として会見によりますと、今後、営業社員の活動報告の厳格化。「何時にどこで誰と会って何をやっていたか」というのを厳格化するというお話とか、それを報連相ですね。
武田: 報連相。
勅使川原:青梗菜じゃないですよ。
武田:青梗菜じゃない、 報連相。
西村:(笑)。
勅使川原: 報告・連絡・相談を強化するとありましたけども。そんなことで大丈夫ですかね。
武田: 青梗菜。それはいいや(笑)。報連相ね。今までは、そういうのをけっこうフリーでやらせていたということなんですよね。数値だけ持ってくればいいということに。
勅使川原: おっしゃるとおりです。まさに「売れていればいいじゃないか」の価値観を組織的に体現してきたということなんですけども、それを覆すってけっこう大変ですよ。だって営業員を集める際にも、この「売れていればいいんですよ、何でも」というのは、相当効いているはずなんですよ。
フルコミッションでハイリスク・ハイリターンではあるけども、とにかく2年我慢すれば3年目からかなり自由なので。「平日からお客さんと旅行へ行ったり、ゴルフをやったりということもできるよ」と言って集めていますから。
これをどうするんですか。そうやって言って集めた自由人に対して、「今後厳格に管理しますよ。何時何分どこで何してたって」と。これがまかり通るようには、ちょっと私は思えない。
武田: この件が報道された後に、プルデンシャル生命のわりと成績がいい人の1日みたいな動画があったので、見ていたんですけど。僕はそういうのを見るのが好きなんで。なんか週に2回ミーティングに行くのだけが決められていて、あとはもう自由にやって、成績発表の場とかにはみんなで来てという。
本当にオフィスに「美しく勝つ」みたいな標語とかが掲げられていて、うわっ、大変な職場なんだろうなと思いながらね。
勅使川原: 武田さんとか私はたぶん無理ですよね、働くにはね。
武田: ダメでちょっと厳しいかも。
西村: 私も無理だと思います。
勅使川原: そうなんです。独特の世界観で、自由と引き換えにしっかり成績を出せよという価値観でやってきたと思うんですけども、やっぱりそこはけっこう限りがあるかなと思います。
なので徳丸新社長ですね。性善説か性悪説かみたいな、わかるようなわからないような二択でぜひお茶を濁さないでほしいなと思います。人がどういう前提の下で行動を選択しているのか、個人の行動を規定するものとしての組織をひもとく必要があると思います。
成果が出ている時でも、この成果は何かを犠牲にして成り立っていないだろうかとか、この評価はどんな行動を誘発しているだろうか。変なことを引き寄せちゃっていないだろうかということ。こういう問いを続けられるかどうかがたぶん正念場になりますので、重視していきたいなと思います。
問題の本質は「一国一城型」の組織構造にある
勅使川原: それからもう一つ、お伝えしたいんですけども。ここまで、報酬制度とか評価軸の見直しは意味があるはずですよねという話をしてきました。ただし、「性悪説にしよう」とかそういう曖昧な議論にしなければの話ですけどね、というように話してまいりましたけども。
もう一つ大事なことがありまして、プルデンシャル生命の組織構造について。ここはメスを入れないのかなというのが気になったんですよね。
ちょっと調べますと、プルデンシャルは本社があって、その下にいくつも支社というカタチであるんですよね。支店みたいなものですよね。そして支社の下に、さらにかなりの数の営業所があるんです。で、その下にさらに個々の営業部員がぶら下がっている状態にあります。
いわゆる「一国一城型」の営業組織ということなんですけども、プルデンシャルは営業所を全国に配置して、営業所長に営業員の採用から育成、日常のマネジメントまですべてを委ねるスタイルを取ってきています。で、その営業所長をさらに束ねるのが、本社の下に連なる支社という単位になっているという構造なんですけども。
これ、いい面ももちろんあったはずなんですよ。現場の裁量を重視できますよね。そして結果にコミットする。「お前らがやらなかったら大変なことになるぞ」というカタチで、結果にコミットするリーダーを育てるという意味では、合理性があったはずです。
が、やっぱり構造的なリスクありますよね、これ。営業所が小さな会社になりますので、価値観とか事例などが良くも悪くも閉じるはずです。秘伝のタレのようなものも閉じるし、膿のようなものも門外不出になるはずですよね。
業績が出ている限り、これは外からチャチャ入れにくいじゃないですか、一国一城なんで。
武田:「うちはこれだけ出していますんで」と言われたら、もう「じゃあそっち頑張ってくれ」ということになるわけですもんね。
勅使川原: ということですよね。外からも言えないし、これ実は中からも非常に言いにくい構造になっているというのがポイントだと思っていて。だって営業所長が営業員の採用から育成までを担うということはですよ、そこである種の恩義が発生するわけですよ。個人にとってはね。
なんで、営業員が仮に「ちょっとこのままじゃまずくないですか」とか「組織としてどうなんですか」という問題提起をしても、下剋上じゃないけど、世話になった人に物申すスタイルを取らなきゃいけなくなる。これ、問題提起の抑止力になってしまうんですよね。
じゃあと言って、営業所長が支社長におかしいと思いますみたいなことを言えるかというと、これまた支社長が営業所長の面倒を見てきていますので、これまた言えない親子関係みたいになってしまうと。
なので社員の倫理観の問題であるとか、組織風土の問題にするというのはもちろん論外です。ですけども、報酬制度や評価軸の見直しだけでも不十分じゃないかということが、私が伝えたいことです。
一国一城型の組織体制そのものが、もしかすると問い直される段階に来ていないでしょうか、というのは問題提起したいと思います。
武田: まあ、でも、こうやって大きく話題になって問われてしまうと、この会社自体の信頼性がガタガタッと崩れるわけじゃないですか。そうすると、今、勅使川原さんが言っていたように、膿がこうやってブワッと噴出した時に、結局、企業としてこれまで築いてきた信頼が崩れるわけですよね。
これまで、メンテナンスしてこなかったがゆえに、こういうことが出てきてしまったともいえるわけですよね。
勅使川原: ということですよね。しかも保険ってご存知のとおり、解約返戻金みたいなものってある程度続けないと減ってしまうものなので、いきなりはスイッチングできないんですよ。「今回、不祥事があったから」という話じゃないので。
冒頭のニュースでも、金融庁が立ち入りして行政処分を厳しくするかもという話でしたけども、処分して終われないんですよ。しっかり返してもらわないと、こっちとしては続けなきゃいけないので。「しっかりお願いしますね」というところです。
報酬制度を見直すのであれば同時に、ぜひとも営業社員個人が抱いた違和感をどこで拾い、どこで受け止めるのかという組織構造も見直される必要があると思います。これがない限りは、一過性の変革ムーブに過ぎないはずです。
「誰のおかげで飯を食えているんだ」が破滅への道につながる
勅使川原: ちなみに今日はプルデンシャルの件を出させていただきましたけども、これは他業界もすごく関係しているし、なんなら教育、福祉、医療、そういった世界。なんなら家庭もそうかもしれないですよね。
大問題になるまで、組織の個々人の違和感が表面化できないケースが散見されますので、ちょっと胸に手を当てて考えてみたいんですよ。
特に実績のある権威に対してとかね、お医者さんでも先生でもいいんですけど、あと人気のある人に対して、なかなか私たちってやり方に問題を感じても物申せないじゃないですか。成果が出ているうちは誰も物申せないんだけど、これが破滅への道につながりかねないということを、あらためて言っておきたいなと思います。
嫌な言い方ですけどね、「誰のおかげで飯を食えているんだ」という言い方。これは、実はプルデンシャルも思っているはずだし、一部の売れている社員がね。家庭でも、家父長制的なお父さんとかお母さんが言っているかもしれない。でもそれってやっぱりそもそも歪んでいるよということを指摘しておきたいと思います。
武田: 「誰のおかげで飯が食えているんだ」と、あと「同じ釜の飯を食う」、このフレーズが聞けたら逃げたほうがいいですね。
勅使川原: 危ないかもしれないですね。そうかもしれない。
武田: まあでもなあ。でもこれで、この会社の中で、すごい成績を収めていた人はいるわけじゃないですか。それは正当な、個人の気持ちでやっていた人たちからすると、これでチェックが厳しくなったりすると、「ここではやりづらくなっちゃうよ」みたいな人も出てくるのかもしれない。
勅使川原: かもしれないですよね。他の外資に流れるのか、どうなのかとか。
武田: まあ、でも、これは一つの会社ですけれども、やっぱり他の生命保険会社からすると、「こういうイメージを持たれたら困るんだけど」と思うけど、ちょっと離れた目線からすると、「この業界ってこういうことばっかりやっているの?」と思われちゃうかもしれないですね。
勅使川原: そうですね。なのでぜひ、これは組織構造自体が特殊だったという話と、コミッションの取り方も特殊だったというのは強調しておきたいかもしれませんね。
西村:このコーナーはポッドキャスト「
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